ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~ 作:水名(仮)
それではどうぞ
道中はパーティの練習をしつつ先を急いでいた
どのパーティも即席にしては連携が凄まじく順調に進んでいっていたので私はB隊の近くまで行くとアスナがキリトさんの左腕を突いているところだった
「どうしたんだ? アスナ」
「なんだか周り…それっぽくなってきたわよ」
確かにアスナの言う通り通路の装飾が多くなってきたような気がする…
時間を見てみても午後7時過ぎで登った階段の数から考えてももうそろそろボス部屋についても良い頃合いだとは思っている
「やれやれ… やっとボス部屋か 流石に迷宮区を一気に突破すんのは楽じゃねぇなぁ…」
エギルさんはスキンヘッドの後頭部に手をあてがいそんな感想を呟くとキリトさんはエギルさんににやりと笑いかけた
「いやいや… 5、6層あたりはまだ部屋も少ないし、構造も単純なんだぜ? それに比べると10層の迷宮区なんかとんでもなくデカくて複雑でβの時は3日かけてもボス部屋にすらたどり着けなかったよ」
「あ~…確かに大変だった…」
キリトさんの言葉に同意するようにひま猫さんは頷いていた
「一応俺たちはβテスト最終日にボス部屋に向かってはいたんだけど途中でヘビザムライが使う刀のソードスキルで麻痺を喰らっちゃって… それでやられなかったのは良かったけど今度はタイムリミットが迫ってて…≪レイジスパイク≫も発動させて少しでもボス部屋に近づこうとはしたんだけど結局ボス部屋に辿り着いたのはキリトだけだったよ 俺もあともう少しのところまではいったんだけど…」
「それはかなり惜しかったですね…」
「俺よりも前に行ったのはキリトと鎌使いの大男のプレイヤーだけだったよ」
ひま猫さんが言ったその鎌使いのプレイヤーについて聞こうとした時少し前にいるA隊から声が飛んできた
「おい! あれを見ろ!」
その言葉につられて背伸びをしながら前を見てみるとこれまでのような大扉ではなく通路いっぱいに広がる上へと上がるための階段がそこにはあった
「気を付けて進んでくれ!」
キリトさんがA隊に呼びかけるとハフナーさんから「おう!」という返事があった
数十秒間左右と後方を確認しながら歩いたが特に変わった様子はなく、大階段の手前で立ち止まっているA隊と合流した
「横に隙間はなかった」
キリトさんの言葉にハフナーさんが頷いた
「つまりここを上るしかないってことか… 因みに座標はタワーの大体中央だ」
「うーん… 上った先に通路と扉があるのか… それともいきなりボス部屋なのか…」
「βの時は違ったのか?」
ハフナーさんと話しているキリトさんの背後からシヴァタさんが話しかけるとキリトさんは振り向いて頷いた
「あぁ βの時は今までと同じように扉があって、それを開けるとボス戦だった まぁここまでの構造も大分変ってたからこの変更もあんまり意味がないものなのかもしれないけど…」
そう言いながらキリトさんは正面に向き直ると階段の上の暗い空間を見上げていた
キリトさんがしばらく暗い空間を見上げているといつの間にかキリトさんの右隣にやってきていたアルゴさんが左手にカンテラを掲げながら言った
「ま 行ってみるしかないだロ」
「そ…そうだな んじゃぁ いきなりボス部屋だった時を想定して、まずは予定通り俺が1人で偵察してくるよ」
そしてキリトさんは全員に指示するため後ろに振り向こうとしたがアルゴさんがいつになく真剣な声を出した
「待っタ ここはオレっちに任せてクレ」
「え…?」
「この階段がちょっと気になるんだよナ もしかしたら階段がせりあがって入り口を塞ぐトラップかもしれなイ もしそうなったとしてもオイラの素早さなら完全に閉まる前に脱出できル」
そう言いつつアルゴさんはつま先でこんこんと石段を蹴る
よくよく石段を見てみると壁にもあるルーン文字っぽいものが段の側面にも浮き出ており、いかにも何かありそうな感じがした
キリトさんもそれを感じ取ったのかアルゴさんに声をかけていた
「…なら2人で行こう これは譲れない」
「エェ~?」
「そんな顔をしてもダメ! アルゴや朱猫ほどじゃないけど俺だってスピード型なんだからな 階段が動き出したら脱出するぐらいのことはできるよ」
「…チェ しょーがないナァ…」
キリトさんの提案にアルゴさんは口を突き出しながらも承諾した
そしてシヴァタさん達に階段を見張っているように指示を出し、進み出てきたアスナに声をかけるとアルゴさんとキリトさんは階段を上っていった
~~~~~~
しばらく2人を待っていると…
〔ゴゴゴゴゴゴ〕
地響きの音が聞こえてきた
「戦闘中ですかね?」
「と思います でもキリトさんがおっしゃってた通りお二方が戻ってくるまで待ちましょう」
まぁポテトさんの言う通り戦闘中だろう その証拠にさっきからあからさまに金属音っぽい音は聞こえてきてたし…
私も行きたいのは山々だけどそれを押さえて2人が戻ってくるまで待機しようと提案したが
「上で戦ってるかもしれねぇのに呑気に待ってられるか!」
「ちょっと!? ハフナーさん!?」
ハフナーさんはそれを無視して階段を上って行ってしまったので私達はハフナーさんの後を追いかける他なくなった
「おい! 大丈夫か!?」
階段を勢いよく駆け上がりながらハフナーさんがそう叫んだ
階段を上がった先にあったのは今までのボス部屋のように大きな広間でボスはまだ出ていない様子だった…?
「なんだ…まだボスは出てない――「回避! 回避だ!!」」
シヴァタさんが安堵しようとしたがキリトさんが全力でこちらに指示を飛ばしたので私達は咄嗟にその場から大きく飛び退いた
しかし20人余りの人数が全員バラバラの方向に飛んだのでシヴァタさんとローバッカさん、たまさんが交錯し、バランスを崩してその場に倒れこんでしまった
その直後、轟音が響いて床からは巨大な両手が生えてきて、天井からは巨大な両足が降ってきた
右手と思しき方は空気を握りつぶすように指を勢いよく閉じ、両足は地面を思いきり地面を踏んだ
そして左手が倒れこんだ3人をまとめて掴むとそのまま空中高くへと運んでいった
「ぬおあ!?」
「うおッ!」
「のわっ!?」
3人の叫び声を5本の指が勢いよく閉じてかき消す
流石に男性3人を掴んでいることもあってか指の隙間から手や足がはみ出してはいるが脱出できるような隙間は無さそう…
それでも徐々にHPバーが減ってきていたので私はどうすればいいのかと悩んでいた
その間にもリーテンさんとハフナーさん、ポテトさんが武器を取って3人を掴んでいる腕に攻撃しようとしていた
私も悩んだ結果腕に攻撃しようと武器を手にした時
「腕にパラレル!」
という指示が飛んだと同時にアスナが≪パラレル・スティング≫を発動させ、腕を攻撃しつつあったリーテンさんやハフナーさん、ポテトさんを追い越して超高速の2連撃を腕に命中させた
攻撃が腕にヒットすると同時に天井から大きな咆哮に似たような音が聞こえてきて拳が開いてシヴァタさんとローバッカさん、たまさんを解放し、リーテンさんとハフナーさんとポテトさんがそれぞれキャッチする
10メートルぐらいの高さから落ちたので流石に無事とはいかず、6人共少々ダメージを受けた様子だったが普通に落下するよりは絶対ましだ
空振りした右腕と両足は既に引っ込んでおり、さっき避けるときに見た予測円が階段のすぐ近くにいるネズハさんの足元にあり、天井を見てみると2つの予測円がネズハさんの近くにいるオコタンさんとナイジャンさんの真上にあたる位置に出現していた
「もう退避は無理ダ!」
キリトさんの隣でフードが外れた状態のアルゴさんがそう叫んだ
「全員最寄りの壁際まで走れ!」
キリトさんがそう指示を出すと同時に私達は壁際まで走った その直後に階段のすぐ近くの予測円から手が突き出てきてその近くでは両足が激しく地面を踏みつけた
「壁際まで行ったら床のラインを踏まないように静止するんだ!」
再びキリトさんから指示が飛んできたので足元を見てみると模様だと思っていた床の青いラインが不規則に視認できない程速いスピードで変動していたが徐々に減速していきやがて視認できるほどのスピードになっていき…それが止まったところでキリトさんがまた指示を出した
「ここだ! 全員ラインを避けて止まれ!」
その指示で私はラインを丁度跨ぐようにして制止した
なんか前にやった指定された色の所に向かうミニゲームみたいだなと不謹慎にも思っているとネズハさんが片足立ちの状態で手をぶんぶんと振りながらバランスを取っているのが見えた
理由はFNCだろう…恐らく自分とラインの距離感が分からずにああやってバランスを取っているものだと思われる
「今そっちに行くからあと少しだけ頑張ってくれ!」
私との距離が10メートルぐらい離れているキリトさんが声をかけ、ラインをうまくよけながらネズハさんの元へと向かうがそんな不安定な状態がいつまでも続くわけがなくキリトさんがネズハさんの元へ向かう前にネズハさんはバランスを崩して床に倒れこむ…その直前にリオンさんがネズハさんを支えた
「オーケー そのまま真下に足を下ろせ」
「は…はい!」
リオンさんの助けもあってネズハさんは特に問題なく体勢を安定させることが出来たところでキリトさんが大声で話し始めた
「ダメージを受けたやつはPOTを飲みながら聞いてくれ! どうやらさっきの腕と足が今回のフロアボスみたいだ!」
キリトさんがそう言うとハフナーさんはPOTを飲みながら目を見開いて驚いていた
「床に青いラインが見えるだろ! それを踏むと床と天井のラインがランダムに動き始めてラインを踏んだやつの足元か頭上にターゲットサークルが出る! 床の場合は腕が生えてきて掴み攻撃をしてきて、天井の場合は足が出てきて踏みつけ攻撃をしてくる!」
「っつうことはこうやって線をまたいでいる間は腕も足も攻撃してこないのか!?」
キリトさんの出した情報を呑み込んだのかエギルさんが遠くから怒声でキリトさんに聞くとキリトさんは頷いて答えた
「そういうことだ! 最大腕が2本、足が2本、同時攻撃してくる! 腕に摑まれるとさっきみたいに10メートルぐらい持ち上げられてHPと防具の耐久度に同時にダメージを受ける! だが片手武器の二連撃クラスのソードスキルを当てると掴まれたやつを解放できる!」
私達が頷いてからキリトさんは続けた
「足はまだ攻撃を受けてないから分からないけど多分腕よりダメージは大きいと思う! あと2層のバラン将軍みたいに踏んだところから衝撃波が広がるからそれに足を取られると転ぶかもしれない!」
再び私達が頷くとキリトさんは少し沈黙したが
「えーっと 俺からの注意点は以上だ!」
キリトさんのその叫びに私達は虚を突かれたように沈黙していたが少し離れたところからアスナがキリトさんに質問した
「じゃぁこのままでいてもボスは攻撃できないけどこっちも攻撃できないんじゃない?」
「そう…だと思うけど幸か不幸かフルレイドじゃないから今の状態を維持できてると思う」
キリトさんがそう言った直後、天井中央部のラインだけが動き出した…と言ってもこっちは何もできないので天井を見ていると重低音を響かせながら天井が複雑な形に出っ張り始めた
それはやがて3メートルぐらいはありそうな左右対称で巨大な顔へと形を変え、漆黒の目の奥にぼっと音を立てて青白い光の輪が現れ、額の中央には紋様が浮き出てきた
私達が声もなく見上げていると巨大な顔の上部に6本のHPバーが現れたが1本目のHPバーがわずかに短かいような気がする
そして最後にボスの名前が白々と輝くフォントで表示された
名前は【フスクス・ザ・ヴェイカントコロッサス】…β時代とはまるっきり違っていた
そんな私の考えを読んだのかその顔は瞳のない両目が動き、角ばった口を大きく開き、額の青い紋章を鮮やかな赤へと変色させた
ひま猫が話していたシーンはプログレッシブの劇場版を見た方だったらすぐにわかると思います
それではまた次回に