ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~ 作:水名(仮)
それではどうぞ
何かが来る予感はしたが防ぐ余裕がなく、【フスクス・ザ・ヴェイカントコロッサス】は迷宮区全体を震わせるような雄たけびを上げた
それに私達は大小よろめいたが幸いラインを踏んだ人はいなかった しかしその咆哮でHPバーの下に防御力低下のバフアイコンが付き、更にそれまで静止していた青いラインが再び動き出した
その中でキリトさんは大声を出して私達に指示を出した
「散開してラインの動きをしっかり見るんだ! 極力避けて仮に踏んでしまった場合は天井と床をそれぞれ確認してサークルが出ていた場合は大きく回避! もしも余裕があれば手足に攻撃してくれ!」
キリトさんの指示にすかさず私達は力強く返事をした
そしてキリトさんはネズハさんにさっきより声のボリュームを落として指示を出していた
「壁際はラインの隙間が大きいから避けやすい! 動きが止まったら顔のおでこにある紋章をチャクラムで狙ってみてくれ!」
「りょ…了解です!」
ネズハさんは頷くと最寄りの壁際まで走っていった
少しすると目まぐるしく動いていたラインが徐々に減速を始めてきたところでキリトさんは私とておさん、アスナとアルゴさんを呼んだ
「アスナ! アルゴ! タコミカ! テオ! 今からわざとラインを踏むからソードスキルで攻撃の準備をしてくれ!」
「解ったわ!」
「おいサ!」
「了解です!」
「はいよ!」
「…行くぞ!」
私達が返事を返すとキリトさんは速度がゆっくりになってきていたラインのうちのひとつを踏んだ
するとそのラインが反応してキリトさんの足元に予測円を描き、それが固定されたところで飛びのいた
直後に黒い腕が出てきてそれを取り囲むように5方向からそれぞれ私は≪カラタクト≫をアスナは≪パラレル・スティング≫をキリトさんとておさんは≪バーチカル・アーク≫をアルゴさんは技名はちょっとわからないがクローの3連撃ソードスキルを繰り出した
私達の攻撃を受けた腕は苦しそうに身動ぎし、天井の方から怒りのような声が聞こえてきたので見上げるとHPバーの一本目が明らかに減少していた
腕が床に沈み、再びラインが動き始めてふと自分のHPバーを見てみたがまだ防御力低下のバフアイコンは消えていなかった
HPバーを確認するときにちらっと見えたボスの顔は再び口を大きく開こうとしていて額の紋章も赤くなっている
咆哮なので防げないが一応防御の体勢を取った、しかしボスが吠えるより一瞬早く銀色の光がボスの額を攻撃した
攻撃が額に当たると赤かった紋章が青色に戻り、顔は怯んだように少し引っ込んだ
そして急なカーブを描いたチャクラムはネズハさんの元へと戻っていく
β時代から結構変わってはいたものの額の弱点だけは変わっていない様子だった
その直後にラインが静止したので先ほど同様キリトさんがラインを踏むと今度は天井に予測円が出てきて足が降ってきたがやることはさっきと同じで、足を回避してタイミングを合わせてソードスキルを打ち込む
そして天井に戻っていく足を見ているとハフナーさんの声が聞こえてきた
「大体解った! 今度は俺達もやってみる!」
ハフナーさんとは別の所からエギルさんとオコタンさんの声が聞こえてきた
「こっちもやってみるぜ!」
「我々もやってみます!」
更に別の所からポテトさんの声が聞こえてきた
「こちらもやってみます!」
それらを聞いたキリトさんはありったけの大声で返した
「あぁ! 思いっきりぶちかませ!」
静止する瞬間にわざとラインを踏んで、両手両足の攻撃をかわしソードスキルを打ち込んで時々ある咆哮はネズハさんのチャクラムで無力化してもらう
即席のレイドメンバーだけどきっちりとその流れをパターン化し3回目ぐらいからは危なげなく一連の動きをこなせるようになってた
両手足への同時攻撃の威力はすさまじくあっという間に1本目、2本目、3本目とHPバーが削れていって4本目に突入しても特に変更点は無かった
勿論このまま変更点はないとは思ってないけどもう1本ぐらいは削れそうだと思いつつ何回目かの≪カラタクト≫を発動させた瞬間ネズハさんが驚きながら叫んだ
「皆さん! 壁が!」
その声に応じるように壁を見てみると先ほどまで無地だった壁に床と天井からラインが伸びていき、やがてそれが繋がった
「…A隊 B隊 C隊 D隊の順に階段へ撤退!」
キリトさんがそう指示を出したがハフナーさんは納得していない様子だった
「だが…!」
咄嗟に叫びかけたハフナーさんのマントをシヴァタさんが無言で引っ張るとシヴァタさんは不服そうに頷いて中央の階段へと向かって行く
私はボスが雄たけびを上げようとしていないかどうか確認しようと天井を見た…しかしそこにはボスのHPバーと名前があるだけで肝心なボスの顔がなかった
「キリトさん! ボスの顔が…!」
それをキリトさんに呼びかけながら天井に指を指すとキリトさんは驚いた表情で天井を見ると辺りを探し始めた
「シバ 駄目っ!」
その直後に金属兜のエフェクトを貫きそうなリーテンさんの悲鳴が聞こえてきたのでその場所に目を向けると階段があったはずの場所に黒々と盛り上がるボスの顔とそのボスの口に腰辺りを咥えこまれているシヴァタさんの姿があった
どうしてあんなところに…!? あまりにも急な状況に私は軽くパニックになっているとやる気君がリーテンさん達と一緒になってボスの口からシヴァタさんを引っ張り出そうとしながらこちらに顔だけ向けた
「階段が急に口に…!」
唯一の出入り口である階段が使えないとなると戻って体制を整えることが出来ない…
シヴァタさんの装備している重装鎧が身代わりみたいになっているので今はまだHPが減っていないがもしこれが壊されれば大ダメージは免れることが出来ないだろう
「畜生 またかよ…!」
シヴァタさんは若干毒づきながらも両手でボスの口を押し開けようとしており、リーテンさん達もそれに協力しているがボスの口が開くような気配はない
その反対側ではエギルさんが両手斧をボスに何度も打ち下ろしてはいるが怯んでいる気配がなく、斧の刃を平然と跳ね返している
腕や足同様ソードスキルを打ち込めばダメージを与えられるかもしれないけどシヴァタさんを巻き込んでしまう可能性があるため使うのをためらっているのだろう
私達もそこに駆け付けたかったが床ではまだラインが動き続けているので行きたくてもいけない状態になっている…
私がどうしようかと考えているとキリトさんから声が聞こえてきた
「くそっ… さっきから顔や腕が生えたり消えたり… このボスはいったいどうなっているんだ…!」
キリトさんは歯噛みをしながら絞り出すような声でそう言うとキリトさんの近くのアスナが何かを分かったような顔をした
「【フスクス・ザ・ヴェイカントコロッサス】…成程… そういう意味だったのね」
そして私達に顔を向けると意味を説明し始めた
「ヴェイカントは虚ろなという意味でコロッサスが巨像…虚ろな巨像…多分だけどそれはこの部屋自体を指してる つまりこの部屋自体が第5層のフロアボスなんだわ」
アスナの説明でなぜ体が繋がっていないのにあのボスは腕やら足やらを生やし、それを動かせるのかがようやく理解できた
同時にボスの強さを再確認することとなった この部屋全体がボスならどこからでも腕やら足を生やすことが出来る…恐らくあのラインのある範囲がボスが自由に操作することが出来る範囲なのだろう…と言ってももう部屋全体がその範囲なのだけれども…
「いくら魔法のゴーレムだからってこんなの…!」
キリトさんもようやくこのフロアボスの異常性を理解したのか呻き声を出した
それに重なるようにシヴァタさんの焦るような叫び声が聞こえてきた
「駄目だ! 全然外れない!」
すかさずハフナーさんとリーテンさんが励ますがその声には恐れているような色が含まれている
「諦めるな! シヴァタ!」
「シバ! 今助けるから!」
「もう限界だ…鎧が壊れる! リッちゃん、口から手を放せ!」
シヴァタさんは覚悟を決めたようにリーテンさんに言ったがリーテンさんは激しくかぶりを振った
「嫌だ! 絶対…絶対に諦めない!」
リーテンさんの言う通り最後まで諦めるわけにはいかない
キリトさんもそう思ったのか顔の近くにいるエギルさんに指示を飛ばした
「エギル! ソードスキルで額にある紋章に攻撃してくれ!」
しかしエギルさんは首を横に振った
「駄目だ! こいつ…紋章がねぇんだ!」
「なっ…!?」
嘘…!? 紋章がないって…
もし仮にそうだとしたら攻撃を与えることが出来ないのではないか
そう考えていた私の思考をシヴァタさんの鎧が発する金属質な嫌な音が無理やりかき消す
いや…まず最優先にするべきなのは救出だ
青いラインが減速し始める中、私はシヴァタさんの救出のためにボスの顔へと走り始めた
しかしそれより早くシヴァタさんの鎧が鮮やかなダメージ光を発してひび割れる
私がもはやここまでなのかと思ったその時
「シバを…殺させてたまるかああああああああ!」
リーテンさんがボスの四角い顎に飛び乗ると躊躇なくボスの口へと飛び込んだ
その直後、シヴァタさんの鎧は砕け、ボスの歯がシヴァタさんに食い込んだがリーテンさんのスチールアーマーが強烈な衝撃音と激しい火花を散らしながらそのままボスの口が閉じるのを阻止した
「なっ…リッちゃん!? どうして…!」
シヴァタさんがリーテンさんの肩を掴みながら叫ぶとリーテンさんは両手でボスの口を押し開けようとしながら答えた
「だって私はタンクだから! 守るのが仕事だから…!」
リーテンさんの言葉に私はハッとした、リーテンさんが諦めていないのに私が諦めかけてどうする
私は私にできることを…!
私はボスの顔の近くに来るとエギルさん同様攻撃し始めた
無駄だと分かっていてもやらないよりはましだ!
顔に何回か攻撃をしているとキリトさんが私達に向かって叫んできた
「皆、何とかしてラインを避けてくれ! それが無理そうならボスの顔に登れ!」
そこで一旦攻撃を中断して私を含む重装備系の人は顔に登り、それ以外は散開して床に集中した
「アスナ! アルゴ! それにネズハはラインを踏んで腕と足を出してくれ! そのどこかに紋章がある可能性が高い! 見つけたらそれを全員で攻撃!」
「了解!」
「解っタ!」
「やってみます!」
キリトさんの指示に3人は同時に応答すると腰を落としていつでもラインが止まってもいいよう身構えていた
そしてラインが静止すると同時に4人はラインを踏み、予測円が出たタイミングで大きく避けた
タコミカは極限状態の時は考えるより先に行動する派です
それではまた次回に