ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~ 作:水名(仮)
それではどうぞ
SIDE:リオン
この世界で彼女に初めて出会ったのは第39層でのことだった
第39層は言ってしまえば特に何もなく、しいて上げてば王道のファンタジーと言ったような感じでフロアボスも古風なデザインの中型のドラゴンだった(たみ等の一部メンバーは王道のファンタジーということで少しテンションが上がっていたが)
だが私にとってはお気に入りの層のひとつに入っており偶に散歩することもある
その日もいつも通り主街区の<ノルフレト>であてもなく適当に街を散歩していた
そうは言っても時刻は午前2時をとうに過ぎており、プレイヤーの姿はほとんどない
そろそろギルドホームに戻らないとポテト達が心配すると思い転移門広場へと急ぐ
やがて広場が見えてくるとNPCとプレイヤーが合わせて5,6人ほど集まっているのが見えた
しかし私は不思議な光景に気が付く
プレイヤーのカラーカーソルが一か所に固まっていたからである
そのまま円形の広場に入るとNPC楽団のスローテンポな管楽器の演奏が耳に聞こえてくる
どうやら彼らはNPC楽団の前に集まって演奏を聴いているらしい
NPCの通行人がいる分にはまだわかるがプレイヤーまでいるのは珍しい…
基本的に彼らが奏でる演奏は2~3曲しかなく普通だったら一週間程度で飽きてしまう
何が彼らをNPC楽団に釘付けにさせているのかを知るため私は更に近づく
小さな人垣に加わった時、その理由が分かった 管楽器の演奏に交じって囁くような歌声が聞こえてきた
何かに引っ張られるようにそちらを見るとそこにはNPC楽団と並んで立ち、両手を胸にあてて歌っている女性プレイヤーの姿があった
白いフードを目深に被っており口許しか見えないがそこから聞こえる歌声は限界まで抑えたような歌声だがこのSAOで聞いたどんな音楽よりも美しいと言える
まるで子守唄のようなその歌は彼女が考えた歌詞なのだろう
ふと横を見てみるとグリーンカーソルのプレイヤーのみならずイエローカーソルのNPCまでこの歌に聞き入るように目を瞑り、体を揺らしている
私もそれに続くように瞼を閉じると済んだ歌声に耳を傾けた
しばらく聞き入っていた歌が終わり瞼を開けるとペコリと一礼をした女性プレイヤーが足早にステージから降りていく
その時一瞬だけ私の方を見たかと思えば私の元へと足早に向かってきて腕をつかんだ
そしてそのまま引きずられるようにして転移門へと向かって行き、そのまま彼女と一緒に転移した
~~~~~~
転移した先で再び腕を掴まれると路地裏へと連れていかれた
そして立ち止まり彼女は私の腕を離すとこちらに向いた
「そろそろ私を連れてきた理由を説明してもらってもいいんじゃないのか?」
「あぁ ごめんなさい… 説明不足でしたよね…」
彼女はそう言いながらフードを外した…その時の私は心底驚いたと思う
「こっちでは初めましてになりますね 梅宮さん」
まさか重村教授のご息女がこの世界にいるとは夢にも思わなかったからだ
~~~~~~
私達は軽くこちらの世界での自己紹介を済ませると路地裏にあるベンチに腰掛けた
「じゃぁ今はそのポテトさんっていう人のギルドにいるんですね」
「そうだな 結構楽しくやっているよ ところでそっちはソロなのか?」
「昔はエー、じゃなかった…ノー君と一緒にいたんだけど今はノー君が[血盟騎士団]に入っちゃったからそうなっちゃうのかなぁ…?」
「KoBか… そういえばたみも誘われたって言ってたな…」
私が呟くように言うと少し引っかかりを覚えたのかユナは聞いてきた
「たみって誰ですか?」
「私達のギルドにいる女性プレイヤーのことだよ こちらではタコミカという名前だがな」
「あっ! 攻略本に載ってた人の名前だ! そんな人とも知り合いなんて凄いですね! うめみ…リオンさん」
「この世界では第2層からの縁だからな」
一瞬ユナは私の現実での名前を言いかけたので目を細めると慌てて訂正する
しばらく私はユナと話していたがふと時間を見てみると午前3時を既に回っていたので話を切り上げる
「すまないユナ 私も名残惜しいがそろそろ戻ることにするよ」
「…そうですよね 私もすみません急にこんなところに連れてきちゃって」
「別に構わないさ 私も久々に話せて嬉しかったからな ではまた機会があれば歌を聞かせてくれ」
「勿論! あっ! そうだ! フレンド交換しません? またこうやって会うのは不便ですし」
「構わないよ むしろこっちから頼もうと思っていた限りだ」
そしてユナとフレンド交換をすると今度こそ私はギルドホームへと戻っていった
~~~~~~
そして明くる日私はユナのメッセージを受け取ると第36層へと足を運び、大勢の聴衆から少し離れたところでユナの歌声に聞き入っていた
大勢のプレイヤーの前で歌う彼女は昨日とは違い、白色の羽根付き帽子と青いワンピースに姿を変えていた
その翌日にはギルドメンバーの全員でユナの元へと足を運んだ
~~~~~~
2023年10月18日 第40層主街区の<ジェイレウム>
ここの西門広場にあるカフェで私は優雅に休日を楽しんでいた
この日は第40層のフロアボスである【ブラッケン・ザ・プリズンワーデン】の討伐に攻略組の選抜メンバーが向かって行った
これに[フリッツ・フリット]から選抜されたのはたみとメラの2人だけである
なので私とキャラメレ、廻道とテツロンのポテトを除く大人組はこうやって突然にできた休日を楽しんでいる(2人以外の未成年組とポテトはまたそれぞれ違った休日を楽しんでいる)
そしてキャラメレは紅茶を一気に飲むと愚痴るように言った
「なんで俺をレイドから外すんだよ… ディアベルとアスナちゃんは見る目ねぇなぁ!」
「でも仕方ないよ… 攻略組は100人近くいるし まして今回選ばれたたみさんとメラさんは攻略組の中でもトップの実力だから…」
キャラメレはお酒を呑んだ時のようにディアベルとアスナに対して愚痴を吐くが廻道はそれを「まあまあ」と言いながら宥める
因みにディアベルに関してだが実は最前線が30層辺りの時に攻略組に戻ってきた
私がディアベルに戻ってきた理由を聞くと「キリトさんとタコミカさんに恩を返せると思ったからこうやって戻ってきた」と答えた
勿論当初は非難とかもあったもののヒースクリフには劣るがほぼ伝説になりかけている青髪の
「まぁこの悔しさをバネにして俺達大人組が頑張っていかないと いつまででもキリトとか未成年達に任せていられないだろ?」
「そりゃ当たり前だ じゃぁこの後憂さ晴らしも兼ねてレベリングやろう!」
「憂さ晴らしはともかくとしてそうだな キャラメレの言う通り一通りティータイムを楽しんだら レベル上げを頑張ろうか」
テツロンが心意気を話すとキャラメレはそれに当たり前だと答えその勢いのままこれからの予定を決めた
それに私は反論せずキャラメレの案を採用し、フォークを手に取るとチーズケーキをそのまま食べ…
「だ…誰か! 頼む…! 助けてくれ!」
る直前に西門から一人のプレイヤーの叫び声が聞こえきた
その叫び声に私達は反射的にそちらを見ると全身を革装備で固めているが所々がボロボロに破損している曲刀使いの男性プレイヤーの姿があった
よく見てみると男性の背中にはどこかで見たことのあるデザインのショートスピアが刺さったままだった
「おいおい 大丈夫か!?」
近くにいたプレイヤーが駆け寄ると男性プレイヤーからショートスピアを抜く
その時にショートスピアの出所の答えが分かった あれはこの層のダンジョンに出現する
それが分かった私達はこの焦りは不要なものだったとして再びティータイムに戻ろうとしたがその曲刀使いは自分のことなどお構いなしに声を上げる
「な…仲間が5人 フィールドダンジョンに閉じ込められて モンスターの大群に追いかけ回されてるんだ! そう長くは持たない…誰か 頼む! 一緒に助けに行ってくれ!」
主街区の名前の通りこの40層のテーマは⁅牢獄⁆ この層のダンジョンには厄介な閉じ込めトラップがあり、攻略組はかなり手こずった
しかし解決策がないわけではなくほとんどが同じ空間内に解除できるギミックがありそれを操作することで罠を解除できるが同時にモンスターも湧くため必然的に解除できるのはモンスターを倒した後になる
これは私の仮説になるがこの曲刀使いは罠の解除に失敗し自分だけ脱出してきたのだろう
私は詳しい話を聞くためその男性の元へと駆け寄ったがその前に茶色のレザーアーマーを着た男性プレイヤーがベルトポーチから〖ハイポーション〗を手渡しながら訊ねた
「〖転移結晶〗は!? この層で戦えるんだったら最低でも1つは持ってるだろ!?」
彼の質問に曲刀使いは首を横に振る
「駄目なんだ…! 湧いたモンスターの中に沈黙デバフをかけてくる奴がいてクリスタルが使えなくなったんだ! 俺もようやくさっきデバフが解けたばかりで…!」
その言葉に再び周囲に緊張が走るが臆せず私は曲刀使いに声をかける
「咳止めポーションは持っていなかったのか?」
私の問いに曲刀使いは呻く
「…咳止めはだれも持ってない… まさか沈黙デバフをかけてくるモンスターがいるとは思わなくて…!」
最前線に出るんだったらせめて無料配布の攻略本に目を通せ! と言いたくなったがここでそんなことを言っても時間の無駄だ
曲刀使いの言う言葉が本当ならば今すぐにでも行かなければ閉じ込められている5人が危ない
茶色のレザーアーマーを着た男性プレイヤーもそう思ったのか[風林火山]の選抜漏れしたであろう2人のメンバーに声をかけると今度は私達に声をかけてきた
「なぁ あんたたちも攻略組だろ 一緒に行ってくれるか?」
彼の質問に私達は迷わず頷く
それに続いてさらに5、6人の勇敢な男性プレイヤー達が「俺も行くぞ!」と名乗りを上げる
そして彼はHPが回復した曲刀使いを助け起こしながら立ち上がるとウィンドウを開いて装備フィギュアを素早く操作する
すると先程まで来ていた茶色のレザーアーマーが白地に赤の差し色が入った[血盟騎士団]の装備へと変わった
それを見ていたプレイヤーたちは大きくどよめき口々に「KoBだ!」「これなら行ける!」と言っていた
そんな声を受け彼は一歩前進すると隣にいるユナに声をかける
「ユナ 君はここで待っていてくれ 大丈夫 すぐに戻ってくるよ」
しかしユナは首を横に振った
「私も行く」
「えっ…」
彼の言葉を待たずにユナは右手でウィンドウを操作すると白いケープの下で装備変更エフェクトの光が輝き、それが消えると同時にケープを脱ぐ
中から現れたのはこの前より明らかに装備のレベルが上がっており、左手には白いリュートを持っており右手にはダガーを装備している
そして帽子の鍔を跳ね上げながら
「私 剣は使えないけど歌でならみんなを援護できる 絶対に足手まといにはならない」
「歌…?」
ユナの言葉を繰り返した[風林火山]のメンバーのうち1人が何かに気が付いたように叫ぶ
「まさか 最近噂になってる
ユナが[風林火山]のメンバーの言葉に頷くとほぼ全員が歓声を上げ、曲刀使いもまるで救いの女神を見ているような視線を向け「頼む! 助けてくれ!」と叫んだ
そこからは急ピッチでパーティを組み、[血盟騎士団]の彼もといノーチラスが指揮を執り、私はもしもの時の指揮役を任された
タコミカが攻略本に載っているのは主にファッション関連です
それではまた次回に