ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~ 作:水名(仮)
それではどうぞ
P.S.:劇場版ソードアート・オンライン プログレッシブ 冥き夕闇のスケルツォ の公開日が9月10日に決まりましたね~ 今から楽しみです
SIDE:リオン
ノーチラスによって即席で組まれた私を含む救助隊14人は西門から圏外へと出た
第40層のフィールドは大部分が寒々しい荒野で切り立った岩壁が迷路のような地形になっておりに視界を阻む
先を行く曲刀使いを追いかけるユナとノーチラスの背中を私達も追いかける
やがて半ば崩れたような形のシルエットが見えてきた
そこで曲刀使いは振り返り叫ぶ
「もう少しだ!」
「急ぎましょう!」
ユナは叫び返すと私達は更にスピードを上げた
~~~~~~
曲刀使いの仲間が閉じ込められているというフィールドダンジョンは主街区の<ジェイレウム>にかなり似通った監獄の遺跡である
しかし中にいるのはNPCではなくモンスターで目的の場所であるダンジョンの中央に向かっている最中にも2回ほど交戦したが流石最前線プレイヤーというべきか特に問題なく、西門を出てから約8分ほどでダンジョンの中央部へと辿り着いた
広い通路の突き当りは頑丈そうな鉄格子に閉ざされており奥からはプレイヤーの叫び声やモンスターの咆哮、武器がぶつかるような金属音…つまり戦闘音が聞こえてくる
「良かった… まだ生きてる!」
曲刀使いは叫び、鉄格子に飛びつくとその隣からノーチラスも覗き込む
しばらく奥の様子を見ていたノーチラスが曲刀使いに向かって叫んだ
「この鉄格子の開閉装置はどこにあるんだ!?」
それを聞いた曲刀使いは奥を指しながら答えた
「あのボスの奥にそれらしいレバーがある! …でも恐らくレバーに近づけばボスが動き出す 俺は鉄格子が閉まるギリギリで何とか脱出できたんだ」
つまり現状こちらからは何もできないと…
曲刀使いの言葉を聞いたねじり鉢巻きを巻いている[風林火山]のメンバーが唸った
「つまり 俺らが救援に入るには中のやつらがレバーを操作してこの鉄格子を開かないといけないわけか…」
続いてもう一人の[風林火山]のメンバーの痩せぎすな刺股使いも口を開く
「でもそいつは掛けじゃないか? 多分格子が開いてるのは2、30秒ってとこだろ ボスが動き始めたら全員が脱出するのは相当難しいぜ」
2人の言う通り一旦ボスを
下手に全員を脱出させようと思えば今閉じ込められているプレイヤーたちの二の舞になりかねない…
ならいっその事…
「だったらボスを倒したほうが早いだろうな」
私の言葉に周囲のプレイヤー達がざわめくがノーチラスが続ける
「僕もリオンさんの案に賛成だ 下手に急いで全員を脱出させるよりボスを倒してゆっくり脱出させる方が確実に脱出させられる」
「で…でも俺達ボスと戦ったことなんて…」
周囲のプレイヤーからそんな声が上がったがノーチラスは振り向いて懸命に語りかける
「大丈夫 ボスのタゲは僕と[風林火山]の2人、それから[フリッツ・フリット]の4人が取る 主街区にほど近いフィールド・ダンジョンのボスだしそこまでレベルも高くない おまけに中の人達を足せば19人いるんだから レベルが40…いや35以上あれば充分いけるはずだ」
ノーチラスの言葉に曲刀使いの必死な声が重なる
「頼む…! ダチを助けてくれ! 危なくなったら逃げて構わねぇから!」
「…だ…だけど…」
ここまで来てくれた勇敢なプレイヤー達は中々最後の1歩が踏み出せないらしい
その時これまで成り行きを見守っていただけだったユナが曲刀使いに呼びかけた
「あの 中の人達を近くまで呼べますか?」
「え? あ…あぁ…」
ユナの言葉に頷くと鉄格子を両手で握り、大きく息を吸い込んだ
「おーい! 助けに来たぞ! こっちまで来れるか!?」
すると閉じ込められている5人が拷問吏と戦いながらもじりじりとこちら側に寄ってきてくれた
近くで見てみると彼らの消耗具合が目に見えて明らかとなった
全員がHPバーの残りが7割を下回っており動きにも精彩さがない
しかしこちら側に呼んで彼女は何をするつもりなのだろうか?
そんな私の疑問を横目にユナは持っていた小ぶりなリュートをかき鳴らし、それに重なるように高らかに歌い始めた
始めは拷問吏と戦っていた彼らもユナの突然の行動に戸惑っていたが徐々にまるで歌から活力を貰ったように戦う勢いを取り戻していった 剣や斧が閃き、モンスターのHPが目に見えて減る
彼女の歌声には不思議と
ユナが歌っている時間は30秒ほどだったが私にはその十倍ぐらいの時間聞いていたように感じられた
そしてリュートで最後の和音をかき鳴らすと同時に私達のHPバーに鮮やかな黄色に輝くバフが点灯する
「おおっ!」という歓声が鉄格子の向こう側から聞こえたためそちらを見てみると先程まで減っていたHPが徐々に回復していた
リュートを下ろしたユナが叫ぶ
「
「おう!」
雄たけびで応じた彼らは次々にソードスキルを発動させ次々と拷問吏を倒す 即座に広場の中央で新たなモンスターが湧くエフェクトが出るが臆することなくそのままボスに向かって突撃して行く
10メートルラインに近づいた時ボスが反応して雄たけびを上げ、凶悪そうな斧を振りかざす
頭を鋼鉄のマスクで覆ったその姿はワーダーチーフ系のモンスターに違いはないだろう
突進する5人のうち4人はそのボスの注意を引き、残りの1人がレバーに飛びついてぶら下がるようにして引き下げる
〔ゴゴォン!〕と重々しい音が鳴ったと思うと目の前の鉄格子が持ち上がり始めた
半分ほど上がった時点で待ちきれないとばかりに曲刀使いが鉄格子をくぐったので私達もそれに続く
全員が中に入ると私はいつかの青髪の
「戦闘開始!」
「おう!」
それに続いてノーチラスも剣を掲げるとボスに向かって行った
ボスとの距離が縮まると鉄仮面を被ったボスの頭上にHPバーと名前が表示された
名前は【フィーラル・ワーダーチーフ】…私の予想通りワーダーチーフ系だ
ボスのタゲを取っている4人の後ろからノーチラスが叫ぶ
「タゲを引き受ける!」
それに合わせ左右に分かれた中央を突っ切ってノーチラスは≪レイジスパイク≫を発動させ、ボスの左膝を抉る
ボスが怒りの咆哮を挙げ、攻撃してきたノーチラスに両手斧を振り下ろすが彼はそれをタイミングよく回避する
すると斧が地面に深々と刺さりボスの動きが一瞬止まった その時間を利用してノーチラスは仲間と合流した曲刀使いに指示を出す
「ボスは僕たちが対処するから取り巻きを頼む!」
「わ…解った!」
曲刀使い達が新しく湧いた拷問吏の相手をするために走り出したと同時に後方で鉄格子が閉まる
やっぱりボスを倒すほうが現実的だな…
私はそう思いながら私は側面からボスに攻撃を仕掛けることにした
~~~~~~
戦っている最中私はボスの体の大きさに比べ部屋がやけに大きいことに薄っすらと気が付き始めていた
何かあるのではないか… そう考えている間にボスのHPバーが2本目に突入し、それが残り5割を切った
「よし…あと少しだ! みんな 頑張ろう!」
ノーチラスの掛け声に全員応じる
ボスの攻撃を躱し、ノーチラスが≪スネークバイト≫を打ち込むと【フィーラル・ワーダーチーフ】のHPバーは黄色からオレンジへと変化する
そこで[風林火山]の刺股使いがノーチラスに向けて叫ぶ
「赤で攻撃パターンが変わるかもしれねぇ! いったん離れるか!?」
「いや… ワーダーチーフ系にパターン変化はなかったはずだ!」
それに答えるとノーチラスは盾を構えてボスの蹴り攻撃をガードする そしてボスが体勢を崩した瞬間左右のアタッカーがソードスキルを叩きこむとHPバーがさらに減少しレッドゾーンに突入した
念のためノーチラスは盾を構えて防いでいたが特に何もないと判断し声を張り上げた
「ラスト! 集中していくぞ!」
しかしその直後、私の悪い予感が当たったように重々しい金属の音が何重にも響き渡った…
今まで開いていなかった壁の鉄格子が全て上にスライドし、暗い通路から次々と小型のモンスターが広場に降りてくる 姿は取り巻きの拷問吏と同系列だが持っている武器がまるで包丁のような大鉈である
その数は15、6体…元からいたのも合わせると20体になってしまいとてもではないが曲刀使い達に対処できるような数ではなくなった
それだけだったら隊を分ければ済む話だったがボスから目を逸らしてしまったのがいけなかった
「全員回…」
廻道の声が聞こえた直後、【フィーラル・ワーダーチーフ】は大斧を両手で持ちまるで砲丸投げのように体を一回転させる
私はそれを剣のガードで防ごうとしたが咄嗟に不味いと思い軽業スキルで避けた
ノーチラスと[風林火山]の2人は体勢を崩されるだけで済んでいたがユナと私以外の側面アタッカーが斧の直撃を受けてしまって幸い死者はいないものの攻撃を喰らった全員が麻痺のデバフを受けてしまった
私は腰のポーチを探り、出てきた2つの〖治療ポーション〗を左右にいたテツロンとキャラメレに渡す
一度状況が悪い方向へと転がればそれが坂道のように転がり続ける
つまり何が言いたいかと言うと…
ポーチに入れていたはずの〖浄化結晶〗は無いことに気が付いて そこで今朝、フロアボス討伐に行った2人に渡してしまったことを思い出した
その間にも範囲攻撃の硬直から回復したボスがゆっくりと体を起こしつつある…
さらにそれに追い打ちをかけるように叫び声が響いてきた
「うわあっ… 駄目だ…!」
「沈黙を喰らっ…!」
曲刀使いのパーティが先ほど出てきた取り巻きに完全に包囲されていた
一応壁を背にしてはいるものの槍と鉈の連続的な攻撃には対処できなかったのだろう HPがものすごい勢いで減少している
…完全に積みともいえるような状況になってしまった
彼らのHPが完全に削り切られれば次はこちらの番だ そしてその時はもう間近に迫っている
一応私だけなら〖転移結晶〗で脱出できなくもないが…それだけは絶対にやってはいけない
考えろ…この状況を打破する方法を…全員が生還できる方法を…!
私が思考を巡らせていたその時、ユナが叫んだ
「エー君 リオンさん お願い ボスを倒して…みんなを助けて!」
「ユナ!? 何を…!」
私の声を聞かずユナはダガーをリュートに持ち替えると包囲されている6人目掛けて走り始めた
「む…無理だ! やめろ! ユナ!」
ノーチラスはユナを必死に呼び留めようとする
1体1体は大したことはない取り巻きだがそれが20体いるといくら攻略組であろうと無事では済まない
その時、ユナがリュートをかき鳴らしながら歌い始めた
全員にリジェネ効果をかけた時よりも更に勇ましく、それでいて明るい まるで太陽の光のような歌…
始めはバフをかけるのかと思ったが取り巻き達の様子を見て直ぐに違うと気が付いた
これは…ヘイトを自分に向けさせるための歌だ
まさかユナは自分を…!? それだけは絶対に… たとえ私が犠牲になろうと彼女だけは死なせない!
私は考えるより先に取り巻きである拷問吏の元へと向かって行くと滅茶苦茶に拷問吏達へと攻撃を開始した
通常攻撃で貫いたりこのボス戦で使わなかった上位のソードスキルを使ったりもしながら次々と撃破していく
今はただ…彼女を…!
~~~~~~
そこからどれぐらいの時間がたっただろうか?
私の視界の端でボスが膨大な音と光を振りまいて爆散した…
それを確認すると同時に一気に疲労が来たように剣を支えとして立膝になった、若干過呼吸気味になりながらも辺りを見回すと地面に倒れているユナとそれに駆け寄っているノーチラスの姿があった
良かった…本当に…
ユナが無事なのを見て若干頭が落ち着いてきてしばらく休憩しているとこちらに向けられている視線に気が付いた
その視線の元を見てみるとキャラメレと廻道、テツロンの姿があった
「えーっと… ひとまずお疲れ様…かな…?」
廻道が労いの言葉をかけてきたので私は息を整えようとしながら返す
「はぁ… はぁ… お疲れ…」
やっぱり慣れないことはするものじゃないな…と思っていると 今度は頭が痛み始めた
「えーっと… ホントに大丈夫?」
「だ… 大丈夫だ…」
「いやそれ大丈夫じゃないじゃん」
キャラメレが改めて大丈夫かと聞いてきたので私は大丈夫だと答えると少し呆れたような声を出した
「とりあえず今日はもうギルドホームで休もうか」
「そうだ…な…」
テツロンの言葉に賛同すると私は帰る前に少しだけ休憩することにした
しばらくダンジョンの床に座って休んでいるとノーチラスとユナがこちらに寄ってきた
「リオンさん ユナを助けていただいて本当にありがとうございます」
「あ~ 気にしないでくれ 私も必死だったから」
ノーチラスは私にお辞儀をしてきたので私は少しだけ適当に返す
「あの… リオンさん… 今日はごめんなさい… あの時は私が何とかしなきゃって思って… でもエー君に言われて気が付いたの 私の命は私だけのものじゃないって」
「そうだな 次からはああいうことはやめてくれ 毎回やられると私の命が持たない」
続いてユナが謝ってきたので私は冗談を交えながらも少しだけ怒る
そこから少しだけ休むと私は立ち上がってボス部屋を出ようとするがそれをノーチラスが止める
「あの! リオンさん! どうしたらそこまで強くなれるんですか」
その質問に私はこう答えた
「私の主観だが守ろうという意志とありのままの自分を信じることかな」
「ありのままの自分を信じること…」
ノーチラスは私の言ったことを呟いている間に私はボス部屋を後にした
結局ギルドホームに戻ってからは頭痛と倦怠感でその日はずっと休んだ
~~~~~~
その数日後
私の言葉で何かを掴んだのかボス戦の翌日にフレンド交換をしたノーチラスから[血盟騎士団]の一軍に戻れたという報告があった
それとユナからメッセージがあってノーチラスの紹介でユナが[血盟騎士団]の補助要員としてギルドに加入することとなったらしい
確かに
知的なキャラが考えるのをやめて大切な人を全力で守るのって良いですよね(唐突な自分語り)
地味にノーチラスがNFCをほぼ自力で克服してるや…
次は一気に飛んで黒の剣士編になります
それではまた次回に