ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~   作:水名(仮)

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今回から本格的に圏内事件編に入っていきます

それではどうぞ


11話:圏内事件発生

その悲鳴に私達は咄嗟に椅子から立ち上がるとアスナが先ほどとは打って変わり鋭い声で囁いた

 

「店の外からだわ!」

 

この中で一番素早いであろうアスナが店の外へと向かったため私達も慌てて追いかける

 

 

表に出ると再び絹を裂くような悲鳴が聞こえてきた…恐らくこの先の広場からだろう

 

私達は顔を見合わせて頷くと全力でそこへと向かう

 

そして悲鳴が聞こえてきた円形の広場に飛び込むようにして辿り着く

 

 

そこで目にした光景に私は思わず目を見開き口に手を当ててしまう

 

広場の北側にある石造りの教会の2階中央の飾り窓から1本のロープが垂れており、その環になっている先端にフルアーマーの男性プレイヤーがぶら下がっていた

 

この世界では窒息で死ぬということはないため広場に集まっているプレイヤーたちの悲鳴の原因はそれではないだろう

 

恐らくその原因は男性プレイヤーの胸に深々と突き刺さっている1本の黒いショートスピアであると私は確信した

 

男性はそのショートスピアの柄を両手で掴み、何かを言っているように口を動かしていた その間にもショートスピアが突き刺さっている部分からは赤いダメージエフェクトがまるで血のように明滅を繰り返している…つまり今この瞬間にも男性は貫通属性ダメージを受けているのだと思われる

 

男性に突き刺さっているショートスピアをよく見てみると穂先の部分に無数の逆棘があるのが見え、恐らく男性に刺さっている部分にも逆棘があるのだろう

 

早く抜け!

 

キリトさんがその男性に対して叫ぶと男性はその槍をのろのろとした動きで抜こうとする

 

しかし食い込んだ槍は容易に動こうとしなかった 恐らく先程も述べた通り逆棘が付いているのと死の恐怖でうまく抜けないのだろう

 

でもジャンプして男性の手助けをしようにも男性は地面から最低でも10メートルは離れてる…

 

そう考えている間にも男性のHPが危険な状況かもしれない

 

私がどうしようかと考えを巡らせているとアスナの鋭い叫び声が聞こえてきた

 

「キリト君は下で待機! タコミカは教会から誰か出てこないか監視! テオ君は周りの人たちの中に怪しい人がいないか探して!」

 

私達にそう指示を出すとアスナは教会の入口を目指して駆け出していった

 

多分2階まで行って上でロープを切るつもりなのだろう

 

「了解!」

「解った!」

「任せろ!」

 

私達はアスナに対して叫び返すとそれぞれ行動を開始した

 

 

だが私が教会の入口へと向かっている途中でガラスが砕け散るような音がしたためそちらに目を向けると男性がおらず代わりに無数のポリゴン片が四散しているのが見えた

 

支えるものがなくなったロープは壁にくたりとぶつかり、男性を突き刺していたショートスピアは真下の地面の石畳に重い金属音を響かせて突き立った

 

無数のプレイヤーたちの悲鳴が聞こえる中私はあと数メートルだった教会の入口へと行くと入口を塞ぐようにして立つ

 

その直後にプレイヤーたちのざわめきを圧するようなておさんの大声が響いてきた

 

全員! デュエルのウィナー表示を探してくれ!

 

しかし発見の声は無く男性が消滅してから15秒が経った

 

なら教会の中にいるのかと思っているとアスナが問題の2階の中央の窓から顔を出した

 

「アスナ! そっちはどうだ!」

 

キリトさんの問いかけにアスナは顔を蒼白にしながら首を横に振る

 

「駄目! デュエルのウィナー表示もないし誰もいなかったわ!」

 

 

キリトさんは次に私に対して叫んだ

 

「タコミカは!?」

「こっちも誰も出てきてないです!」

「どこにいる…?」

 

それに私は首を横に振るとキリトさんは呻いた

 

 

そして…

 

「30秒… タイムリミットだ…」

 

ておさんが無情に時間切れを告げた

 

~~~~~~

 

ひとまず現場保存の為ておさんがこの件を見ていたプレイヤー達にこの場から離れないように告げて足止めをし、私はそのまま教会の入口に立っていた

 

 

しばらくするとキリトさんとアスナが出てきたため私はどうだったのかを聞く

 

「中はどうでしたか?」

「中には誰もいなかった 因みに隠蔽(ハイディング)で隠れてる可能性も無し」

「そうですか…」

 

私はキリトさんの収穫なしという言葉にやや俯くともう一つ質問をした

 

「回収したショートスピアやロープに何か特徴はありましたか?」

「いいや ショートスピアは見た目以外は特に特徴は無いよ ロープは普通にNPCショップに売ってそうなものだ 詳しいことは誰かに鑑定してもらわないとだけど…」

 

私はそれに頷くとこれからどうするのかと聞く

 

「それで…これからどうするんですか?」

「俺らはこのままこの件を解決するよ」

「そうですね… もし仮に圏内PK技なるものを誰かが発見したのだとしたら街の外だけじゃなく中も危険になりますからね…」

「そういうこと タコミカ達はどうするの?」

 

アスナにそう聞かれたため私は蜘蛛を模した頭装備を軽く触れると口を開いた

 

「勿論私達も協力しますよ その…見てしまいましたし…」

 

私が少しだけ俯くとておさんが私の肩に手を置いてキリトさんとアスナに告げた

 

「俺もだな この事件は最後まで解決しないと多分後悔する」

「ということは2人も協力してくれるのね?」

「邪魔かな…?」

「そうじゃないわ むしろ人手は多いほうが良いし」

「じゃあ お願いしますね」

「あぁ!」

 

私達は改めてキリトさんとアスナに握手を交わした

 

~~~~~~

 

そのまま広場へと向かい、そしてキリトさんが足止めをしていたプレイヤー達に呼びかける

 

「すまない! さっきの件を最初から見ていた人がいたら返事をしてくれ!」

 

キリトさんが呼びかけた数秒後、おずおずという感じで1人の女性プレイヤーが人垣から出てきた

 

顔に見覚えは無く武装も恐らくNPCが売っているであろう剣で中層からの観光プレイヤーと思わせる

 

 

彼女にアスナが優しく声をかける

 

「ごめんね 怖い思いをしたばかりなのに あなた お名前は?」

「あ…あの 私ヨルコって言います」

 

その声に私達は聞き覚えがあり、私はておさんと顔を見合わせる

 

キリトさんも分かったのかヨルコさんに声をかけた

 

「もしかして最初の悲鳴も…君が?」

「あっ… はい」

 

ヨルコさんは濃紺色の緩やかなウェーブがかった髪を揺らしながら頷く

 

不意にダークブルーの瞳の純朴そうな大きな瞳に薄い涙が浮かぶ

 

「私… さっきの殺された人と… 友人だったんです 今日は一緒にご飯を食べに来て でもこの広場ではぐれちゃって探してたんです…そうしたら…」

 

それ以上は言葉にならなく口許を両手で覆う

 

ヨルコさんの震える肩をアスナが優しく押して教会の内部へと案内したので私達はそれに続く

 

 

そして何列にも並ぶ長椅子の1つに腰かけさせると自分も隣に座った

 

キリトさんとておさんはやや離れた場所に立ち、私はアスナに近い所に座るとヨルコさんが泣き止むのを待った

 

アスナが背中をさすっているとやがて泣き止んで消え入りそうな声で「すみません…」と言った

 

「ううん いいの ヨルコさんが泣き止むまで待つから 落ち着いたらゆっくり話して?」

「はい… でももう大丈夫…ですから」

 

ヨルコさんはアスナの手から身体を起こすとこくりと頷く

 

「あの人… 名前はカインズって言うんですけれど 昔 同じギルドにいたことがあって…今でも偶にパーティを組んだり食事をしたりしてたんです…それで今日もこの街まで晩御飯を食べに来て…」

 

一度ギュっと眼をつぶってから震える声で続ける

 

「…でも結構人が多くて 広場で見失っちゃったんです それで辺りを見回して探してたらいきなりこの教会から人…カインズが落ちてきて 宙吊りに…しかも胸に…槍が…」

「その時に誰か見なかった?」

 

アスナの問いにヨルコさんは一瞬黙ったがゆっくりと首を縦に動かした

 

「はい…一瞬…本当に一瞬なんですけれどもカインズの後ろに誰かが立っていた…ような気がしました…」

 

私はその人はとてつもなく素早い人だという印象を抱く

 

でも私達の知らないような常識を覆すアイテムやスキルが存在するのかという疑問を抱いた…もし仮にそのようなものがあれば…

 

一瞬恐ろしくなり私は身を震わせる

 

アスナも私と同じような反応をしたが直ぐに顔を上げるとヨルコさんに訊ねた

 

「その人影に見覚えはあった?」

 

アスナの質問にヨルコさんはしばらく考えていたが数秒後、分からないと言わんばかりに首を横に振った

 

それに対して今度はキリトさんがかなり穏やかな声で質問した

 

「えぇっと… その…嫌なことを聞くようだけど…カインズさんが誰かに狙われることに関して心当たりとかあるかな…?」

 

その質問にヨルコさんは目に見えて身体を硬くしたが今度も首を横に振るとキリトさんは「そっか ごめん」とお詫びを入れた

 

恨みの路線の犯行じゃないのかな? 勿論ヨルコさんが知らないだけということも普通にあり得るけど…

 

でもオレンジプレイヤーに犯人を絞るにしても何百人いるか分からない ましてやその予兆のあるプレイヤーも入れると途方もない時間がかかる

 

どうやら全員同じ結論に至ったようでアスナとておさんは軽く溜息をついていた

 

~~~~~~

 

1人で下層まで戻るのが怖いというヨルコさんを最寄りの宿まで送ってひとまず転移門広場まで戻った

 

事件から30分ぐらい経過しているので流石に人の数は少なくなっているがそれでも20人余りの攻略組の人達が残っていたため私達は現状の報告と今後警戒するように伝えると全員真剣な表情で頷いてくれた

 

「分かったよ 情報屋の新聞にも載せてくれるようお願いしておく」

 

大手のギルドに属している方が代表して応じたのを皮切りとしてその場は解散となった

 

「さて…次はどうする…?」

 

キリトさんがアスナに訊くとアスナは直ぐに答えた

 

「手持ちの情報を整理しましょう 特にあのロープとスピアを」

「あ~ そうだね 製作者が判ればそこから犯人が分かるかもしれないからね」

 

私がそう言うとアスナは頷く

 

「成程 動機が駄目なら物証か」

「そうとなると鑑定スキルがいるよな… お前は上げて…るわけないか」

 

ておさんが頷きながら言うとキリトさんが続け、アスナに訊ねた

 

「当然君もね…というか…」

 

アスナはキリトさんのお前呼びに眉をしかめるとキリトさんに向く

 

「そのお前っていう呼び方やめてくれない?」

「じゃぁ…あなた? 副団長様? 閃光様?」

 

アスナはキリトさんを睨むとプイっと顔を背ける

 

「普通にアスナでいいわよ タコミカやテオ君もそう呼んでるんだし」

「わ…解った…」

 

キリトさんは今度は素直に頷くと慌てて話題を戻す

 

「で…さっきの続きだけど…フレンドにあては?」

「う~ん… 友達で武器屋やってる子がいるんだけど今は一番忙しい時間帯だと思うし今は無理かな…タコミカはどう?」

 

アスナが首を横に振りながら言ったので時間を確認してみるとまだ午後7時を過ぎた辺りだった

 

「わ…私? あ~やる気君もリズと同じで今は忙しい時間帯だと思うし駄目かな…」

 

今は夕食時真っただ中だから絶対に頼めないからね…

 

「きるもダメか…じゃぁ熟練度がちょっと不安だけどあいつに頼むか」

 

キリトさんは私の言葉に少し考えるとウィンドウを開きメッセージを打ち始める

 

「あいつって…もしかしてエギルか? でもあいつもやる気と同じで今は忙しいと思うぞ?」

「知るか」

 

ておさんがそれを止めるがキリトさんはエギルさんに無慈悲にメッセージを送信した




きるやんは屋台形式のお店を開いています(そこら辺についてはまた話で書こうと思っています)

それではまた次回に
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