ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~ 作:水名(仮)
それではどうぞ
第50層の主街区である<アルゲード>はかなりごちゃついておりハッキリ言って地図を見ながら歩いたとしても迷う自信がある
でもその代わりというか物件の値段がかなり安いらしくて、キャラメレさんとじんじんさんはここにプレイヤーホームを持っていると聞いた
エキゾチックなBGMと呼び込みの掛け声に屋台からいい香りが漂ってくる中をキリトさんの先導で進んでいく
その途中で美味しそうな串焼き肉を見かけたアスナがそれを4本買うと1本を私に手渡してきた
「いいの?」
「いいの」
私達が串焼き肉を食べながら歩いているとキリトさんが立ち止まり、振り向くと怒った様子だった
「おい急ごうぜ…って 何買い食いしてるんだよ!」
それに私達は悪びれる様子無く一口齧るとアスナが答えた
「だってさっきはサラダだけ食べて飛び出してきちゃったし…うん 意外と美味しいわねこれ」
もぐもぐと食べながらアスナは2本の串をキリトさんとておさんに差し出した
「くれるのか?」
「だって最初っからそういう約束だったでしょ ほらテオ君も」
「あっ… どうも…」
頭を下げつつ2人が串焼き肉を受け取るとエギルさんのお店を目指した
因みに串焼き肉はエスニック風な味付けで美味しかったと言っておく
エギルさんのお店に到着したのは全員が串焼き肉を食べ終わった頃だった
音もなく消滅した串を見て私は便利だな…と思っているとキリトさんがお店の扉を開いた
「うーっす 来たぞ~」
「客じゃねぇ奴にいらっしゃいませとは言わん」
「悪い…エギル…」
エギルさんがむくれ声でそう言うとておさんは申し訳なさそうな声を出しながらエギルさんのお店に入ったので私達もお店に入る
「すまねぇが今日はこれで閉店だ」
「えー」というお客さんの納得いってない声ににエギルさんは逞しい体を縮めながら謝罪するとお客さんを全員お店の外に追い出し、メニューを操作して閉店作業を行う
陳列棚が自動で収納され、表の鎧戸が音を立てて閉まったところでようやくエギルさんは私達の方を向いた
「あのなぁ キリトよ 商売人っていうのは1に信用 2に信用 3,4が無くて 5に荒稼ぎ…」
そこまで言ったところで私達の方(正確にはアスナの方)を見ると髭を震わせながら棒立ちになると急に2人をカウンターに引っ張り込んで何かを相談し始めたので私達は苦笑いする他なかった
~~~~~~
「圏内でHPが0になっただと? ホントにデュエルじゃないのか?」
エギルさんに用意してもらった椅子に腰かけ、同じく用意してもらったテーブルを取り囲むと今回の一件をエギルさんに話した
「あの状況で全員がウィナー表示を見つけられなかったっていうのはあり得ないし今はそう考えるしかない」
「もし仮にデュエルだったとしても夕食を食べに来たプレイヤーがしかも完全決着モードのデュエルなんて受けるわけがないしな」
「直前までヨルコさんと歩いていたんだったら睡眠PKっていう線は無いからね」
エギルさんに用意してもらったお茶を飲んだアスナがておさんとキリトさんの言ったことに捕捉する
「突発的なデュエルにしてはやり口が複雑なんです だから私達はこれが計画的な犯行だと思ったんですよ」
私はそう言うとキリトさんに合図を出す
合図に応じたキリトさんはウィンドウを操作して1つのアイテムを出した
「そこで…こいつだ」
キリトさんが取り出した現場で使われたロープは片方の先端が解けているがもう片方の先端は大きな輪っかのままである
エギルさんはその輪っかを目の前に持ってくると嫌な顔をし、鼻を鳴らすとロープをタップして出てきたポップアップウィンドウを操作していく
私達が鑑定をやろうとしても失敗するだけだけど鑑定スキルを持っているエギルさんがやると多分…
そう思っていると鑑定結果が出たみたいで太い声で解説し始めた
「…残念だがこのロープはプレイヤーメイドじゃなくてNPCショップで売っている汎用品だ ランクも高くないし耐久度も半分近く減っているな」
エギルさんの解説に私はあの光景を思い出して頷いた
「それはそうですね… 重装備のプレイヤーを吊るしていたらかなり負荷がかかりますからね」
私がそう言うと全員納得した様子で頷く
「まぁロープにはそれほど期待していなかったさ 次が本命だ」
そしてキリトさんは先ほどロープを取り出してから開きっぱなしだったウィンドウを操作すると黒く輝くショートスピアを実体化させた
それは先ほど見た時よりもより一層重い雰囲気を放っているように思える
確かに性能としては私達の主武器よりも明らかに下だろうけどこれは実際に使われた本物の凶器というものだ
キリトさんは慎重にそれをエギルさんに渡すとエギルさんは先程のように鑑定し始めた
改めてエギルさんの手元にあるショートスピア見てみると最初に見たときのように全体が同じ素材の黒い金属でできており全長は恐らく1メートル半ほどあろうと思われ石突の部分は輪っかになっており、ボロボロの赤黒いリボンが結ばれている
それだけでも何か禍々しいものを感じるがしかし何より注目するべきは穂の部分にある無数の逆棘だろう
これがあることによって抜きづらくなるのはこっちも同じで抜くには高い筋力パラメータが必要になるのは勿論の事、プレイヤーの精神的な部分も必要になってくる
正直に言って死の間際にいつも通りの力を発揮できる人は限られてくるのでカインズさんがこれを抜けなかったのも解る
私がそう考えているとエギルさんの声が聞こえてきた
「プレイヤーメイドだ」
「本当か!?」
エギルさんの声にほぼ同時に私達は身を乗り出すとキリトさんが叫ぶ
このショートスピアがプレイヤーメイドなら作り手から犯人を追えるかもしれない… アスナもそう思ったのかエギルさんに向かって切迫した声で尋ねる
「誰ですか! 作成者は」
エギルさんはシステムウィンドウを見下ろしながら答えた
「グリムロック…綴りはGrimlock 聞いたことがない名前だ 少なくとも一線級の刀匠じゃねぇな まぁ自分用の武器を鍛えるために鍛冶スキルを取ってるやつはいないわけじゃないが…」
商人をやっているエギルさんが知らない鍛冶屋を私達が知るわけがなく部屋には沈黙が流れたが直ぐにアスナが硬い声で言った
「でも探し出すことはできるはずよ このクラスの武器が作れるようになるレベルに上がるまで全くソロプレイを続けてるとは思えない 中層の街で聞きこめばグリムロックさんとパーティを組んだことがある人はきっと見つかると思うわ」
「そうだな こいつみたいにソロや極々限られたやつとしか組まないような馬鹿がそうそういるとは思えんからな」
「あはは…」
エギルさんが深く頷くとアスナとエギルさんはキリトさんの方を向いたので私は苦笑いするとておさんと共にキリトさんの方を向いた
「お…俺だってその限られたやつ以外とでもパーティを組むぞ」
「それはボス戦の時だろ ノーカンだ」
思わずキリトさんは反論するがておさんが冷静に言うと押し黙った
「まぁ正直 グリムロックさんを見つけてもあまりお話はしたくはないけどね…」
確かにアスナの言う通りこの武器を作ったグリムロックさんは事前にこの武器をある程度は何に使うかを予想していたと思われる
このような貫通属性武器はモンスター相手には効果が薄く仮に刺したとしても直ぐに抜いて投げ捨ててしまう
その為この槍はそもそも対人を前提として作られたものであることが解る
良識のある鍛冶屋さんだったらそもそもこの依頼を断るだろう(武器に愛着を持っている人なら尚更)
なのでこの槍を製作したグリムロックさんは倫理観の薄い人―――もしくはレッドギルドに内通している人なのではないのかと予想できる
私が考えているとキリトさんが呟いた
「…少なくとも話を聞くのにタダっていう訳にはいかなそうだな もし情報料を要求されたら…」
その呟きに対してエギルさんは首を横に振り私達はキリトさんの方を向き、アスナが一瞥した
「4人で折半しましょ」
「解ったよ」
「そうですね… やるって言いましたし」
「だな 乗り掛かった船だしな」
それに対して私達が覚悟を決めるとキリトさんはエギルさんに質問した
「最後に手掛かりにはならないと思うけど一応武器の固有名も教えてくれるか?」
エギルさんはウィンドウを見ながら答える
「えーっと… 〖ギルティソーン〗となっているな…直訳で罪の茨っていうところか?」
「ふーん…」
武器の名前はゲームシステムがランダムに命名しているとリズから聞いたことがあるためこの名前に深い意味が込められているわけではないが
「罪の…荊…」
その名前には何か寒々とした印象を感じた
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私達はエギルさんと共に{黒鉄宮}にある生命の碑へグリムロックさんの名前があるかどうか(ついでにカインズさんの名前に線が引かれているかどうかも)確認するために<アルゲード>からアインクラッド第1層の主街区の<はじまりの街>へと向かった
ここに来るのは随分と久々になるが空を見上げても今でもまるで昨日のことのようにはじまりの日のことを思い出す
しかし夜ということやあの時から<はじまりの街>からは人が減っているということを差し引いてもプレイヤーの姿がほとんど見当たらない
少し小耳に挟んだ話ではあるが現状は下層の自治もやっている[アインクラッド解放隊]が巨大化した組織である[アインクラッド解放軍]が夜間の外出を禁止したという噂がありそれがプレイヤーが少ないという理由になっていると思ったりもした
それが私の思い過ごしで合ったらよかったが重装備を着込んで緑色のマントを羽織っている軍のプレイヤーが徘徊しているのを見る限り本当の事であると確信した
私達が{黒鉄宮}に向かっている間にも徘徊している軍の人達が凄い勢いで駆け寄ってきたがアスナの冷たい視線を浴びると直ぐに撤退していった
「こりゃ <アルゲード>が賑わうのも解るな… 物価が高いのに…」
キリトさんが一連の流れを見て呟くとエギルさんが補足するように言った
「これは噂程度の話になるがな 何でも軍は近々プレイヤーへの徴税を始めるらしい」
「えっ!? 税金!? どうやって集めるんです!?」
「あくまででも噂だから俺も詳しいことは知らねぇが… モンスターのドロップから自動的に天引きされたりしてな」
「お前の店の売り上げも差し押さえられたりな」
私達は会話を続けていたが{黒鉄宮}に入ると同時に黙る
この場所はβ時代にはリスポーンする場所だったが今では生存者を確認できる生命の碑が置いてあり、黒光りする鉄柱と鉄板のみで造られていることも相まって冷たい空気に満たされているように感じた
気を取り直して私達は青みがかった無人の広場を足早に歩く
そして左右数十メートルに続く生命の碑へと辿り着くと私とておさんとエギルさんはKのブロックを眺め始めた
綴りはKains ということは事前にヨルコさんから教えてもらい、メモもしたので探すのはそう時間はかからない…はず
メモを参照しながら探していると… 確かにその名前に線が引かれていた つまり死亡しているということである
「ありました…が死んでますね…」
「あぁ… みたい…だな」
そのことをGのブロックを探して生きていることを確認したのか一息ついているキリトさんとアスナの元へと向かった
「カインズさんは確かに死んでいますね… 死亡時刻は
「日付も時間も合ってるわね」
私の言葉にアスナは呟くと瞼を閉じて俯き黙祷を始めたので私もそれに続いて黙祷をする
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全ての用事を終えた私達は足早に{黒鉄宮}から出るとグリムロックさんを探すのは明日にしようということになり、転移門へたどり着くと明日からは参加しないことになったエギルさんが一足先に転移門から帰っていき、アスナも一旦ギルドホームに戻ると言った
「明日は第57層の転移門前に朝9時に集合にしましょう ちゃんと遅れないで来るのよ」
「アスナこそ遅れないでね」
私が笑みを浮かべながら言うとアスナがこっちを睨みながら「タコミカ!」と怒鳴ったような気がしたが無視し、転移門から自分のホームがある第34層へと向かった
本当は間違えてCのブロックを探すという流れにしようとも思ったんですけど難しいと思い断念しました
サラッと煽るタコミカ氏ぇ…
それではまた次回に