ソードアート・オンライン ~PotetoEdition~ 作:水名(仮)
それではどうぞ
「「DDAに囲まれて槍をパクられた!?」」
翌日、予定通りの時間にやってきたキリトさんとておさんがやってきて近くのカフェテラスで朝食兼情報整理しようということになったがキリトさんとておさんが昨夜私達と別れた後、シュミットさん率いるDDAのメンバーに囲まれて〖ギルティソーン〗を半ば強引に奪われたということを聞いた
でも私はシュミットさんのことは覚えていないので訊ねる
「で…シュミットさんって誰でしたっけ?」
「ほら…でっかいランス使いの…」
「そうそう 高校の馬上槍部主将って感じの」
「そんな部活は聞いたことないけどな」
そのことを聞いた私は思わず思ったことを口に出していた
「…よし DDAの本部にカチコミに行きましょう」
「物騒だな!?」
「大丈夫ですって 先にやったのはあちらですし いざとなれば
「そういうのを権力の乱用って言うんだぞ」
私は6割ほど冗談のつもりで言ったがておさんに軽くおでこを叩かれたので私は両手でおでこを押さえる
「でも俺が感じたのはあれはDDA全体が…じゃなくてシュミット本人がっていう感じだったな」
「…ってことはシュミットさんが犯人?」
「その可能性は無いと思うぞ もし仮にあいつが犯人だったらこんな自分が犯人ですっていう行動は起こさないだろうし… あの槍は寧ろ何かのメッセージのように感じられた」
キリトさんが昨夜の件をシュミットさん個人が起こしたことだという考察をしているとアスナはシュミットさんが犯人なのではないかと考えたらしくそれを口にしていたがておさんがそれを否定する
「そうだね… あの殺し方に加えて武器の名前が罪の荊…単なるPKのパフォーマンスっていうよりも、公開処刑って考えたほうが自然よね…」
「つまり動機は復讐…いや 制裁っていうところかな 過去にあのカインズ氏が過去に何かしら罪を犯して 今回の件はその罰だと 犯人はそうアピールしてるんじゃないか?」
アスナとておさんが今回の事件の動機についての考察を立てていく
「となるとシュミットは寧ろ狙われる側…昔にカインズと一緒に何かしらして 共犯であるカインズさんが殺されたからあわてて行動した…といった感じか」
「その何かが判れば自然と犯人も洗い出せそうですね …でもこれがすべて犯人の演出っていうことも在り得ますし先入観は持たないようにしましょう」
「特にヨルコさんに話を聞くときには…だな」
キリトさんの言葉に私達は同時に頷く
この後10時からはここの近くの宿屋に泊まっているヨルコさんに話を聞くことになっている
因みに今日は完全にオフなので私は若緑の長袖のシャツにベージュのカーディガンを羽織って紺色のショートパンツにブーツは黒柿色のものを履いている
今日はておさんに服装を褒めてもらったので若干上機嫌ということを付け加えておく
今は黒パンと野菜スープというわりかし質素な朝食を食べているがはっきり言って美味しくなく、これだったら自分で作ってきた方がまだましだったとさえ思った(因みに私の料理スキル熟練度は720ある)
しかし食べ終わってアスナの方を見ているキリトさんを除いた2人は普通に食べているので私の味覚がおかしいだけなのかなと思ったので思わず隣のアスナに聞いた
「それって美味しい…?」
「あんまり美味しくない…」
良かった…私の味覚がおかしいだけなのかなと…
アスナはスプーンでかき混ぜていたポタージュっぽいものを脇に押しやると軽く咳ばらいをし、口調を改めた
「昨夜私ちょっとだけあの黒い槍が発生させてた貫通属性ダメージについて考えてたんだけど…」
「うん」
「例えば圏外で貫通属性武器を刺されてそのまま圏内に移動したら継続ダメージはどうなるのか知ってる?」
そういえばそんなこと考えたことなかったや… どうなるんだろ…
キリトさんもどうやら知らないらしく首を傾げていた
「俺も知らないな… でも毒や火傷などの状態異常系の持続ダメージは圏内に入ると消えるから貫通属性ダメージについても同じなんじゃないか?」
「そうだとしたら刺さっている武器はどうなるんだ? 自動で抜けるのか…?」
「なんかそれはそれで怖くないですか? ておさん…」
ておさんの発言に私は咄嗟に突っ込む
そこから少しするとキリトさんが何かを思い立ったかのように発言した
「…よし まだ時間はあるし実験してみるか」
「実験って…?」
「百聞一見」
キリトさんはそう言うとマップを確認し始めた
~~~~~~
しとしとと降る霧雨をかき分けて一番近い場所にある主街区の外へと出る門の近くまでやってきた
そして門の外へと出ると視界には«OUTER FIELD»の警告が表示される
圏外に出たからと言ってすぐにモンスターが襲ってくるわけではないがそれでもかなり緊張する
服は私服だが腰にはいつものレイピアを装備したアスナが前髪についた水滴を煩わしそうに払いながらキリトさんに訊ねていた
「で…実験ってどうやってするつもりなの?」
「これを使う」
キリトさんが取り出したのはたまにキリトさんが扱っている〖スローイング・ピック〗だった
この世界唯一の投擲武器には私の知っている限りでは4種類あり、キャラメレさんが使っているダガータイプのものと今キリトさんが手に持っているピックタイプのもの、ネズハさんが使っていたチャクラムタイプのものとブーメランタイプのものがある
ダガーはレイピアや槍などのいわゆる刺突タイプに属しており、チャクラムやブーメランは剣などの斬撃タイプ、キリトさんの持っているピックは貫通タイプになる
その為検証にはうってつけではある
キリトさんは左手のグローブを外すと手の甲を広げると右手に持っていたピックを振り上げそれを振り下ろす…
「ちょっと待って!」
前にアスナが鋭い声を上げてキリトさんの手を止めさせるとアイテムウィンドウを開いて〖治癒結晶〗を取り出すとキリトさんは苦笑いした
「大げさだなぁ… 第一、こんなピックが刺さったぐらいじゃちょっとしかHPは減らないって」
「バカ! 圏外じゃ何が起こるか分からないのよ!? 早くパーティを組んでHP見せて!」
アスナはまるで弟を叱るように怒るとその勢いのままキリトさんにパーティ要請を飛ばした
キリトさんはその勢いに押されてそのままパーティを組むと緊張した面持ちで〖治癒結晶〗を持っているアスナをキリトさんはまじまじと眺めていた
「何…?」
アスナもキリトさんの視線に気が付いてキリトさんに訊ねるとキリトさんは慌てた様子で答えた
「いや…なんつうか… そこまで心配してくれるとは思わなくて…」
キリトさんがそう答えるとアスナは頬を真っ赤にして怒鳴った
「別にそんなんじゃ…! いや そうだけど…やるんだったらさっさとやってよ!」
アスナに怒られたキリトさんは慌ててピックを構える
「じゃぁ…いきます…」
キリトさんは≪シングルシュート≫を自分の左手目掛けて放つとしばらく様子を見ていたが
「…早く圏内に入ってよ!」
と強張る声でアスナが言いながらキリトさんの背中を押したのでキリトさんは頷くとピックを見ながら圏内へと向かった
«INNER ARER»の表示が浮かんでからもしばらくはキリトさんの左手を見ていたが5秒ごとに赤いエフェクトが出ていること以外は特に変わった様子はなかった
「…HPの減少は止まったわね…」
アスナの呟きにキリトさんは肯定するように頷く
「武器は刺さったままだけど継続ダメージは停止…か」
「感覚はどうだ?」
「残ってる これは…武器を体に突き刺したまま圏内をうろつく人が出ないようにするためかな…」
「今のキリトさんみたいに?」
私がさっきの2人のやり取りをからかうように言うとキリトさんは首を縮めたがすぐさまピックを一気に引き抜いたが仮想世界独特の鈍い痛みを感じたのか顔をしかめて、その後も残留感をなくそうと手をフーフーと吹きながら呟く
「ダメージは確かに止まった… だったらどうしてカインズは死んだんだ…? あの武器の特性か…? それとも何か未知のスキルか…ってうわっ!?」
考察していたキリトさんの左手を唐突にアスナが両手で掴むと胸の前に引き寄せて思い切り握ったのでキリトさんは驚いていた
「ちょ…おまっ…な…なっ‥」
数秒間はそのままの状態だったが手を放すとキリトさんに向けて言った
「これで残留感はなくなったでしょ」
「あっ…うん…ど…どうも…」
何というか…気まずくなりました。
~~~~~~
その後、ヨルコさんが泊っている宿屋へ向かうと10時きっちりにヨルコさんが宿屋から出てきた
昨夜はあまり眠れなかったのか何度も瞬きを繰り返しながらもお辞儀をしたので私達もすかさず一礼する
「悪いな…友達がなくなったばかりだっていうのに…」
「いえ…いいんです」
ヨルコさんはブルーブラックの髪を揺らしながら軽くかぶりを振る
「私も早く犯人が見つかってほしいですし…」
そう言いながらアスナに視線を移した途端ヨルコさんは目を丸くした
「わぁ! 凄いですね! その服全部アシュレイさんのお店のワンメイク品でしょう! 全身揃ってるの初めて見ました!」
ヨルコさんは若干興奮しながらアスナに詰め寄るがキリトさんはその名前を知らないのか訊ねていた
「それって誰…?」
ふとておさんの方を見てみるとこっちも知らないような様子だった
「ご存じないんですか!?」
ヨルコさんは2人のことを駄目な人を見るような目で見るとアシュレイさんについて解説し始めた
「アシュレイさんはアインクラッドで最初に裁縫スキルをカンストさせたカリスマお針子さんですよ! 彼女に服を作ってもらうには最高級のレア生地素材を持参しないといけないんです!」
「へ…へぇ~…」
始めにアシュレイさんに会った時はまだまだ下積みっていったような感じでよく意見交流とかしてたなぁ…
最近はめっきりになっちゃったけど久々に服を作ってもらうのもありかもと考えているとておさんが私に質問してきた
「たみの服もその…アシュレイさんが?」
「違いますよ これは私お手製です」
私が軽くかぶりを振りながら答えると私をヨルコさんがまじまじと見ているのに気が付いた
「あの…昨日からそうなんじゃないかって思ってましたけどタコミカさんですよね?」
「そうですけれど…どうしたんですか?」
私がそうだと答えるとヨルコさんは手を合わせて目をキラキラとさせながら私に詰め寄ってきた
「やっぱり! いつも特集見てます! 私は補色を使ったコーデ集がとても好きで今日は違うんですけれどそれをよく参考にコーディネートしてるんです! 勿論他の記事なんかも拝見させていただいてるんですけどどれも参考になるものばっかりで!」
「あっと… どうもです…」
その気迫に押された私は思わずたじろぐ
「そういえばタコミカさんってアシュレイさんの一番弟子っていう噂があるんですがそれって本当ですか?」
「え!? その噂って誰が…?」
「アシュレイさん本人が話しているのを聞いたっていう人からです!」
まぢで…? でもアシュレイさんが言ってたんだったらそうなんじゃないかなぁ…?
「本人が言ってたんだったらそうなんじゃないですかね…?」
「やっぱり! 実は私もそうなんじゃないかって思ってたんですよ!」
うーん… 変な噂にならなきゃいいけど…
「えっと… この事は…」
「解ってますって 内密にしておきますよ」
一応念のためヨルコさんに口止めをするとヨルコさんは快く頷く
「あの… そろそろ…」
「あっ… そうでしたね すみません」
流石に結構長話をしていたのでておさんがヨルコさんを催促させ、私達は昨日のレストランへと向かうことになった
タコミカの裁縫スキルはカンスト済みです
それではまた次回に