一党追放   作:藤咲晃

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最終章 さよなら
動く者と薬売りを襲った事件


 燭台に照らされた洞窟の中で三つの影が動く。

 そこに静かな足音が反響し、一様に影が振り向いた。

 

「……独断が過ぎるのでは? アダム」

 

 腕に刺青を入れた老人が皺枯れた声で静かに咎める。

 そんな彼にアダムはわざとらしく肩を竦め、

 

「君達が用意した彼女を見に行っただけだよ」

 

 光を宿さない瞳で返した。

 

「あの失敗作の回収も急務ですが、嗅ぎ回る狂犬の注意もありましょう」

 

「確かにね。彼らと遭遇したのは僕の過失だ。けど、君達は君達で僕に内密に動いてるようだけど……一体今度は何を企んでるんだい?」

 

 アダムの指摘に三人の顔が僅かに強張る。

 彼に内密で進めていた件が何処からか漏れた。そう理解した時には既にアダムの瞳が心の内を見透かす。

 

「……ゴブリンなんかに魔障壁を仕込んだと思ったらそんな事を。くだらない、君達は僕を産み出してからもずっと愚かだね」

 

 吐き捨てるアダムに今度は老人が開き治り、したり顔で宣う。

 

「しかし我らが居なければ、永くはないでしょう?」

 

「……そうだね。僕と君達は運命共同体、全く腹黒い連中だ」

 

 アダムが呆れ返った表情で呟くと、背後から突如爆音が鳴り響く。

 同時に複数の金属音が響き、アダムは薄ら寒い笑みを浮かべる。

 それに対して三人は怒りの表情を浮かべ、

 

「着けられたのか!?」

 

「チッ、ここで連中とやり合うのは下策!」

 

「また拠点捜しか……はぁ、落ち着いた場所が欲しいなぁ」

 

 三人は口々に漏らすとたちまち転移魔法を唱え、何処かに消えて行く。

 そんな彼らを見届けたアダムは、訪れた騎士団の面々に眼を細めながら、彼もまたその姿を消した。

 後に残ったのは、誰かが拠点にしていた生活痕と悔しげに顔を歪める騎士達の姿だけだった。

 

 ▽ ▽ ▽

 

 騎士の追撃が徒労に終わった頃。

 晴れ渡り、強い日差しが差し込む湖の畔で金髪の親子が薬草を摘み額に流れる汗を拭う。

 ふと茂みが動き、それに気付いた少女は注意深く眼を凝らす。

 魔物か動物か、それともクエスト中の冒険者か行商人か。

 

「お母さん、何か居る」

 

 警告に母親が娘を庇うように背に隠す。そして母親が魔力を全身に巡らせる。

 すると突如茂みから影が飛び出し、甲高い鳴き声と共に影が母親を弾き飛ばした。

 何が起きたのか脳の理解が遅れた少女は呆然と甲高い鳴き声を鳴らす獣を見つめる。

 そして、地面に薬草を散乱させ頭から血を流す母親が漸く視界に入った頃、理解が追い付いた少女が叫ぶ。

 

「お母さんっ!? しっかりして!」

 

 駆け寄り母親を抱き寄せる。

 弱々しい吐息。しかし少女の手を母親が握り返し、

 

「……だ、大丈夫よ。それよりも……早く逃げなさい」

 

 少女の背後から鼻息と蹄の音が響く。

 

「で、できないよ!! お母さんを置いて逃げるなんて、できない!」

 

 少女が涙混じりに叫び、母親を抱き寄せた時だった。

 背後の獣が少女の頭上を飛び越え、茂みの向こうに走って行ったのは。

 

「……白馬の一角獣?」

 

 少女は立ち去った白馬の一角獣を頭に入れながら、その後母親と薬草の入った籠を抱え村に帰るのだが……。

 道中で大量のオークが砦を築く光景を目撃することに。

 

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