一党追放   作:藤咲晃

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オークの騎士団

 ユキナとレノの目前に迫るオークの群れ、いや彼らはさっそく群れなどという生易しいものでは無かった。

 騎士の真似事か。オークの一頭一頭が鉄鎧に盾、鉄剣や鉄槍、果ては弓兵まで備えた一つの部隊だ。

 

「オークにこんな知能が有ったのか?」

 

 レノの疑問ももっともだが、ユキナはオークが盾を媒介に魔障壁を展開した様子を見て確信を抱く。

 オークはエデンによって戦闘訓練を施されこの地に転送されたのだと。

 一体どうやって魔物に魔障壁や戦闘訓練を施したかまではユキナに理解が及ばない。

 

「エデン絡み」

 

「……何を企んでんだ? もう壊滅してんなら大人しくしておけばいいのによ」

 

 オークの盾兵が隊列を成し徐々に距離を詰める中、ユキナは剣を構え直す。

 すると砦の入口で大剣を突き立てたオークが魔物の言語で指示を飛ばす。

 盾兵の後方から指示を受けた弓兵による魔法の矢が二人の頭上に降り注ぐ。

 咄嗟に左右に別れ魔法の矢を避けるが、盾兵が二人を囲む様に距離を詰める。

 

「……退路断ち、包囲、殲滅」

 

 オークがやろうとしている事は、盾兵が獲物を追い立て弓兵が牽制を加え、更に剣と槍で確実に討伐するという動きだった。

 おまけに盾兵は盾を媒介に魔障壁が展開されているためレノの魔法による一撃突破は不可能。

 しかし元々大規模の媒介を必要とする魔障壁だ。ゴブリン同様に魔障壁が護れるのは前方のみ。

 ならばとユキナは、頭の中でテュラリア騎士団で受けた訓練を思い出す。

 

「レノ、盾兵の後方に魔法を」

 

「おう。一発かますか!」

 

 レノは左手に魔法の弓を作り、右手に雷の矢を作り出す。

 そして魔力の弦に雷の矢をつがえ、斜上に矢を引き絞る。

 更にレノがもう一つ詠唱を加えると彼の腕の筋肉が膨れ、

 

「食らえっ!!」

 

 一発の矢を放つ。

 強化された筋肉により限界まで引き絞られた雷の矢は、オークの盾兵を飛び越え部隊の中心部に飛来する。

 そして一頭のオークを穿つや否や雷が爆ぜた。

 中心部に生じた雷が部隊全土に走り、背後から襲い来る雷に盾兵のオーク共が衝撃に負け隊列を乱す。

 そこに白髪が月明かりに照らされながら舞う。

 体制を崩した盾兵の盾を足場にユキナが弓兵部隊の前方に着地。

 するとユキナは水平に剣を振り抜き、一振りで弓兵を斬り捨てた。

 同時に地を弾ける様に駆け、弓兵部隊を斬り崩しながらオークの隊長の下に駆ける。

 槍兵のオークが隊長を護るべく転身すると、レノが魔力を込めた拳を放つ。

 拳による連打が槍兵の背中を腹まで貫き、血が留めなく土を穢す。

 

 ユキナの背後をレノが護る。そしてオークの隊長と距離を詰める中、オークが重々しい大剣を持ち上げた。

 大剣の刃を炎が燃やし、それを振り下ろさんとオークの隊長がユキナに狙いを定める。

 

「……!」

 

 足に筋力を込め、ガラ空きの首筋に狙いを定めたユキナは一気に弾けた。

 大剣の炎の明かりに照らされた一閃が、あっさりと隊長の首を刎ねる。

 首筋から夥しい量の血が噴水の如く噴き出しながら、オークの隊長はその場に崩れ去った。

 

「そっちは終わったか?」

 

 レノの声に背後に視線を向ける。そこには既に拳を血に染め、亡骸の山を作り上げた彼の姿が有った。

 

「うん。速かったね」

 

「オーガの戦闘でコツを掴んだからな」

 

 笑って答える彼にユキナのアホ毛が揺れる。

 元々オーガを討伐できるレノが相手では通常のオークは無力に等しい。

 しかし今回は異質なオークだった。騎士の真似事に武装した魔物を相手に負傷も無く討伐を果たした彼は間違いなく成長している。

 

「もうルイもレノの事を新米くんって呼べないかも」

 

「そうかぁ? たかがオークを討伐した程度で調子に乗らないでくださいって言われそうだが」

 

 ルイがレノに微笑みながらそんな事を言う光景が想像できたユキナは小さく微笑んだ。

 

「……言うかも」

 

「アンタの笑顔をずっと見ていたい気分だが、まだ中が残ってるからなぁ」

 

「うん。夜明けまでには終わらせて寝たい」

 

 小さく欠伸を噛み殺したユキナは砦の扉に手を触れ、ゆっくりと重々しい扉を開く。

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