一党追放   作:藤咲晃

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依頼主の忠告

 シュルク村は、開拓期230年に農村地としてシュルクという名の冒険者に開拓された土地だった。

 当時まだ開拓地には村も無く、有ったのは拠点として港に建てられたアスガルのみ。

 そこから西に向けて開拓が進み、今ではシュルク村はアスガルとイルミナを継なぐ中継地点としての役割も担うことに。

 

 そんなシュルク村は現在、村から近い山の麓の洞窟に巣食うゴブリンに畑や牧場を荒らされ困っていた。

 日々拡大する農作物と家畜の被害に村長は冒険者ギルドに依頼することで解決を目指したのだが……。

 村長ハシマは落胆していた。

 派遣された冒険者は二人の若者、それも一人は女の子で何とも頼りないように見えて仕方なかった。

 ブラウスとスカートと言った冒険者に不釣り合いな軽装備、腰の剣と背中の荷物に眼が行くが、彼女の腰には雑嚢の類はなかった。

 何よりも華奢な体格で戦えるのかと不安が芽生える。

 そしてハシマは少女から黒髪の少年に眼を移す。

 

 気の緩んだ陽気な印象を受ける顔立ち、しかし緊張してるのか、表情は心無しか硬い。

 少年の黒衣の装いに更にハシマは眉間の皺を深める。

 武器の類い無し。そして腰の雑嚢に眼が行く。同時にハシマは成る程と理解する。

 待つべき物を二人で役割分担しているのだと。

 一人納得するハシマに少年はおずおずと手を挙げた。

 

「クエストの詳細を聴きたいんだが」

 

「……此処から山が見えるじゃろ? あそこの麓にゴブリンがこさえた巣穴が有る。クエストはゴブリンの全滅か巣穴の破壊じゃ」

 

「……なるほど。一応確認するが具体的な被害は?」

 

 レノの質問にハシマは農地に視線を向け、

 

「主だった被害は依頼書に記した通りじゃが、お主らが到着する前にまた家畜が数頭連れ攫われたよ」

 

「襲撃の時間帯は?」

 

「朝、昼、晩、深夜の四回じゃ。連中は繁殖時期じゃからのう」

 

 一日四度に渡る襲撃。

 レノはゴブリンが大規模な群れを形成しているのではないかと睨んだ。

 推測の裏付けを取るため、彼はもう一度質問する。

 

「群れの規模は?」

 

「そうさのう。村の若い連中が魔法で討伐してはおるが、一度の襲撃に十匹、それを四度。交代制なのかは知らんが、これまでに村の集で討伐したゴブリンは二十五匹に及ぶのう」

 

 村の防衛力だけでゴブリンを二十五匹蹴散らせる。

 しかし必ず十匹で四度の襲撃となると巣穴には相当数の数が居るとレノは想定した。

 しかもゴブリンの雌が一度に産む数は五から十と言われており、妊娠から出産までの期間も二日程度しかないという。

 妊娠から出産期間が短ないのは何もゴブリンに限った話ではない。

 他の魔物も同様に出産期間が短く、決して雌を狩場に出さない。

 聞き齧った程度の知識を踏まえ、レノはハシマに告げる。

 

「ゴブリンはしっかり討伐してやるから、アンタらは安心して暮らすと良いさ」

 

「……不安じゃのう。その類の言葉を使う冒険者は調子に乗って失敗しやすいからのう。先日だって若い冒険者が来たが、生きて帰って来る事は無かった」

 

 ハシマの忠告とも取れる言葉にレノは頷き、一旦用意された宿屋で荷解きをしてから山の麓に向かうのだった。

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