巡光   作:イルセニア

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初めまして。今作はミトラスフィアの二次創作です。
作者が飽きたりハマったりしながら、今作に肉付けを行っています。
不定期更新かつ自己満足のものですのであしからず。


プロローグⅠ

天空と大地に海が存在する世界

 

 

「ミトラスフィア」

 

 

空を覆った海は いつしか天海と呼ばれ

 

 

そこにただよう生命樹からは 金色に輝く命の源

 

 

「ミトラ」が地上へと降り注ぐ。

 

 

その豊穣の大地には 様々な種族が共存し

 

 

時に争い 共に戦う

 

 

未知なる天海に人々が挑む時

 

 

「ミトラスフィア」その名を冠した謎の遺物”羅針盤”は

 

 

世界の理を現す鍵か 未来を指し示す希望の光か

 

 

これは、ミトラに導かれし者たちの物語

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今日この日

 

動物が 草木が 花々が

 

虫達が 人々が 魔物が 

 

大海が 大地が 天空が  

 

みな例外なく 世の全てが浮足立ち また心揺らしているように見える。

 

これから起こる出来事を 一瞬たりとも見逃さぬように。

 

 

天空に、どこまでも続く蒼き海が見える。

蒼き海には、建造物でも、魚影でも、海藻でもない。

それらよりも異彩な空気を放つ存在が、中心に漂っている。

根は網目状に張り巡らされ、中からは溢れんばかりの輝きを放っており

幹は太く、硬く、まるで鋼鉄のような様相をしている。

 

樹冠には、一枚一枚大振りな葉が生い茂り、瑞々しさを感じる。

それは、世の全ての命を司る巨大樹。生きとし生けるものの母。

 

"生命樹"である。

 

生命樹はその巨体をひとつ身震いをさせると

自身の根から命の源「ミトラ」を降らせる。

 

辺りがミトラで満ち溢れ、まるで黄金色の海原のように錯覚させられる。

輝きを放つその命の源は、世界中に広がり浸透していく。

 

 

何者であるかに関わらず、全ての生物はその恩恵を預かっていた。

 

世界は金色の祝福によって包まれている。

そんな”何度も繰り返された”光景の中

 

 

”私”は自身の視界の端に浮遊物を捉える。

 

視線をずらすと 生命樹を中心に囲うように、六対の人物が漂っている。

 

みな、まるで怒気を孕んでいるかの如くその身に魔力を纏わせている。

 

一人は深緑の髪を束ね

金色の眼で大樹を睨みつける。

 

一人は淡い水色の浴衣を纏い

虚ろげな表情で揺蕩っている。

 

一人は灰茶のハルパーを肩にかけ

狂気的な笑みを浮かべている。

 

一人は銀朱の鎧を身につけ

戦士のような出で立ちで静かに佇む。

 

一人は陽光のように煌めく光輪を背に

両の手を合わせ祈りを捧げている。

 

一人はフォーマルな黒い紳士服を着用し

ハンカチで額の汗を拭っている。

 

 

「今日でこの世界は終わるのね」

 

深緑髪の女が愛おしそうに大樹を撫で

舌先で乾いた唇をぺろりを舐めている。

 

「うん、もっ、最高っ!素晴らしい日だよ!」

 

それに応えるのは虚ろげな表情を一転させ

満面の笑みを浮かべる青水晶のような髪の女である。

 

「世界には残留した"ミトラ"がありますよ」

 

「確認できてない龍人がいるやも知れないし、まだ終わりでは無いな」

 

次いで焦げ茶色の瞳を瞬かせ、耳元まで裂けた口を持つ女と

鎧を身にまとう寡黙そうな戦士がそう答えた

 

「我が主よ…我らを導き、今日この日こそ…我らが業を解放したまえ…」

 

正に聖人といった風貌の修道女が祈りを捧げている。

 

「さてさて皆さン。この木ィ、折っちまえば

そこデ全て終わリ。"僕ら"の役目も終わりまス」

 

早口で諭すのは紳士服を着た、中性的な雰囲気を醸し出す人物である。

 

「そうね」

 

『ああ、終わる。今に、ほら、終わる。終わる。止まる。

ほら、ほら、終わる。そら、世界が止まる。ほら』

 

「じゃあ、終わらせましょう。

私に魔力を同調させてちょうだい」

 

深緑髪の女はひと呼吸おいて、みなに呼びかけると

気を、意識を深く静かに集中させた。

その掌の上には"魔法"が宿っている。

 

女達、否"魔女達"は肯定の意を示すと

生命樹を中心に六角形へと広がった。

各々祈りを込めて掌に魔法を顕現させる。

 

それは超圧縮された台風のようで

それは絶対零度の如く冷えきる氷塊のようで

それは極度に密集した金剛石のようで

それは太陽を具現化したような炎で

それは夜空に瞬く流星のようで

それは闇夜すら更に真黒に染める暗澹とした影のようで

 

六人の魔女達はその両の手を生命樹へと向ける。

深緑髪の魔女は自らの"魔法"と

他の魔女から受け取った"魔法"を練り混ぜ

圧縮…圧縮…更に圧縮させる。

織り交ざるその"魔法"はもはや原型を留めず

極彩色の輝きを放つ"暴虐の化身"といった体をしている。

 

「さようなら。我ら全ての母よ」

 

深緑髪の魔女はそう告げると、魔力の結晶

"暴虐の化身"を生命樹へと衝触る。

 

瞬間、刹那。

 

ゴォォォォォォォォ〜〜ッッッ!!!!!

 

閃光―――目も開けられぬ程の光量と共に

雷鳴とも豪雨とも地割れとも表現出来ぬ轟音が

辺り一面に鳴り響いた。

衝撃によって生じた煙霞が生命樹を包み込む。

 

「ついに…!」

「ああ、我らが悲願は達成された」

 

煙霧の間から、大樹がその姿をのぞかせる。

 

そこに残っていたのは 幹に大穴を開き、焼き爛れ

葉は全て焦げ落ち、今まさに地に伏せようとしている

生命樹の姿であった。

 

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