に゙ゃ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙(トリガー起動)   作:吾輩はネコ助である。

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こんなに楽しそうな催し物があったのに気付くのが遅れてしまったことを悔やむばかりです。

最終日ですが、投げさせていただきます。よろしければお楽しみください。



に゙ゃ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙(トリガー起動)

 

 

界境防衛機関・ボーダー。

 

空間を切り裂く(ゲート)から現れる、異世界からの侵略者、近界民(ネイバー)と戦い、これを滅する事で侵攻を止める民間組織。

 

そんな、日々異形の怪物と戦う組織にしては似つかわしくない、と言うべきかもしれないのだが────

 

 

 

 

ボーダーには、1匹の猫が住みついている。

 

 

 

 

「おーい。ネコ助ー?」

 

 

 

巨大な箱を思わせる建造物、ボーダー本部の一角。ボーダー所属の技術者(エンジニア)・寺島雷蔵は、トリガーの開発に精を出すでも、最近できた口の悪い黒い角の隣人と映画を見るでもなく、いつの間にやら姿を消していた1匹の猫を探して歩き回っていた。

 

第二次大規模侵攻にて、ある隊員が拾った迷い猫が、飼い主が見つからないままおよそ1ヶ月。

 

拾い主の隊員について回るせいか、すっかり本部の隊員たちと顔見知りになり。

 

あれよあれよという間に本部猫として正式に飼うことになってしまったのだった。

 

「どこいったんだ?あいつ」

 

拾い主から名義上の飼い主になった隊員が本部にいない時、主に技術者(エンジニア)が世話をしている。ふらりといなくなった猫を雷蔵が探し回っているのは、その為だ。

 

ちなみに特に名前はつけられていないが、No.1狙撃手(スナイパー)から呼ばれた『ネコ助』が愛称として定着しつつある。

 

「あ、そういえば」

 

思い出したようにポケットから端末を取り出す。

本部飼いの猫となった際、迷子防止用に、とつけられた首輪に位置情報を転送する機能が搭載されていたのだった。

 

猫1匹に対してだいぶ手厚いな、とか。あれ地味にトリガーでできてるんだよな作ったやつ暇なのか、とか。そんな呑気なことを考えながら、端末を操作する。

 

 

「…………………は?」

 

 

表示された画面を見た瞬間、雷蔵はふとましい身体をピシリと硬直させた。

 

位置情報が示した先は、ボーダー本部の敷地内ではなく。

 

その外側、警戒区域と市街地の境目あたりだった。

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

 

 

「やばいやばいやばいやばい……っ!!!」

 

ボーダー本部所属・狙撃手(スナイパー)所属のC級隊員である夏目出穂は、人生で稀に見る全力疾走を敢行していた。

 

両腕には青い顔をした少年を2人抱きかかえており、不安定な姿勢で走ることを余儀なくされながらも、世界のトップアスリートなど比ではない凄まじいスピードで地面を蹴る。

 

そして、その背後では。

 

 

【──────────ッッッ!!!】

 

 

鳴き声なのか、はたまた駆動音か。判別のつかない異音を響かせながら、数階建ての一軒家程はありそうな大型の近界民(ネイバー)が、猛然とこちらを追いかけてきている。

 

「ほんとなんでアンタその足でそんな速いの!?!?」

 

鈍重な見た目に反してやたらと素早いトリオン兵相手に、並よりも俊足な自信がある出穂でも降り切れるという希望的観測は消さざるを得なかった。

ただ、速度としてはこちらがわずかに勝っているのか、全力で走り続けていればなんとか追いつかれずに済むようだ。

 

 

 

 

何故こんな地獄のような鬼ごっこをする羽目になったのか。

 

課題の提出で下校が少し遅れ、急ぎ足でボーダー本部へ向かっていた途中のこと。

 

出穂は、小学生くらいの少年が2人、立ち入り禁止のはずの警戒区域に入り込んでいるのを目撃し泡を食って止めに入ったのだ。

 

見たところ腕白盛りな少年たちは、街を探検している間に警戒区域の近くまで来てしまったらしい。

 

つい数週間前にあれだけ大規模な戦闘があったのに元気だな、と間近でその戦いを見てきた出穂は呆れながらこの場所の危険を説いた。

 

とにかく早くこの場から離れるように、と続けようとした瞬間、すぐそばで唐突に(ゲート)が開くのを見てとっさにトリガーを起動して────今に至る。

 

「おっ、おねっ、おねえちゃんっ」

「大丈夫だから!喋ってると舌噛むよ!」

 

がくがくと揺さぶられながら不安そうな声を上げる少年を励ましながら、建物の間をかきくぐり、散乱する瓦礫を避けながらなんとかスピードを落とさずとにかく走り続ける出穂。

トリオン体に換装しているお陰で普通よりも速く走れているし、息切れを起こす心配はない。障害物に突っ掛からなければ、最高速度を維持したまま走り続けられる。

 

(早くこの子らを避難させないと……!でもこのまま警戒区域を出たらこいつも市街地に……!)

 

周囲に出穂たち以外の人間がいないためトリオン兵の狙いが釘付けにされてしまい、迂闊に警戒区域から出ることができない。かと言って、さらに区域の奥まで逃げる事もできず、結局市街地との境界線を一回り小さくなぞるように走るしかなかった。

 

(C級に戦闘は許可されてない……っていうかルール無視して戦うにしても狙撃手(スナイパー)のあたしじゃ守りながら倒すのなんて無理…!)

 

正隊員ではなくC級隊員の出穂は避難誘導や救助活動の時のみトリガーが許されているが、戦闘は規律違反になる。そもそも、未だ練度の低い出穂では倒そうとしている間に少年2人が襲われる可能性の方が高いだろう。

 

「っっっっ!あっぶなっっ!!」

 

思考に意識を割きすぎたせいか、大きな岩に足を取られそうになるのをなんとか堪える。いよいよ集中力も限界に近づいてきたのを悟った出穂は、

 

「こうなったら、一か八か……!」

 

ギュル、と一気に方向を変え、直角に左へ進路を切った。

 

【──────────ッッ!!!!】

 

車は急には曲がれない。

 

出穂たちを捕まえるべく全速力を出していた近界民(ネイバー)は、小回りの効かない身体で無理に方向を変えようとした結果大きくバランスを崩し、大きな地響きとともに倒れ込んだ。

 

「よっ、し────!」

 

千載一遇のチャンス、とばかりに一気に警戒区域の外へ一直線に走る。少年たちを降ろす。

 

「あのデカいのが来る前に、急いでこっから離れて!!!」

「う、うん!」

 

散々揺さぶられた後だというのに、しっかりとした足取りで走っていく2人を見送る。元気が有り余ってるようで何より、と呆れる間もなく、既に起き上がっている近界民(ネイバー)の前で大きく腕を振って見せる。

 

「こっちだこんにゃろー!!」

【───ッ、───ッ!!】

 

挑発の甲斐があったのか、逃げていく2人ではなく出穂1人に的を絞ったようだ。

巨大を揺らしながら再びこちらに迫ってくる近界民(ネイバー)に、出穂は再び走り出す。

ひとまず民間人の避難は済ませた。あとは市街地の方へ行かないようにしながら正隊員が来るまで逃げ回るだけだ。幸い、攻撃らしい行動は体当たりと噛みつきくらいのものらしい。距離を空けてさえいれば、避けられないものでは────

 

 

 

「────えっ?」

 

 

 

少年2人の無事を確保できたことで、気が緩んでしまったのか。

気付けば、目の前に近界民(ネイバー)の尻尾のようなものが勢いよく迫ってきていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

******

 

 

 

 

 

 

 

「けほっ、こほっ」

 

砂煙に反応し涙を流す目。肌に食い込む砂利の感覚。塵を吸い込んだせいか痛む喉。

疑いようもなく、トリオン体への換装が解け、生身の体に戻っている。

尻尾の先端が強烈な武器になっていたのか、勢いよく叩きつけられた出穂は揺れた視界でふらつく頭を抑えながら立ち上がる。

 

近界民(ネイバー)は未だにこちらを標的として捉えているらしく、地響きを立てながらこちらに近づいてくる。

 

「ちょっと、洒落に、なんないって……!」

 

ああ、怖い。

 

恐ろしい。

 

震えが止まらない。

 

「メガネ先輩、どんな度胸してんの……」

 

戦場で生身を晒すという行為の恐ろしさを文字通り身をもって体感した出穂は、自分からトリガーを解除して大怪我を負いながらも近界民(ネイバー)を撃退した友人の幼馴染を思い出す。

 

おまけに今回はあの時と異なり、ここは本部より遠く離れた場所で、周囲には出穂しかいない。

 

あの質量で攻撃を喰らえば即死しかねない上に、仮に生きながらえたとしても手当てが間に合わずに、という可能性の方が高い。

 

【──────ッッ!!】

「うわぁぁあぁぁぁあぁあぁぁっっ!!」

 

戦闘体を失ったせいでトリガーはもう使えない。なんとか立ち上がって逃げようとするも、思い切り頭突きをするように巨体が突撃してきた。直撃はなんとか避けたものの、衝撃で大きく吹き飛ばされる。

 

「ぐっ……ゔぅ………ごっ、ほっ……!」

 

地面の上をゴロゴロと転がる。

全身が鈍く痛い。立ち上がって逃げないといけないのに、うまく力が入らない。身体を起こすことが、できない。

 

(本気で……死ぬかも……)

 

断続的に迫ってくる地響きは止まる気配がない。本気で出穂を仕留めるまで止まるつもりがないらしい。

 

 

嫌だ。

 

 

嫌だ。

 

 

死にたくない。

 

 

しにたくない。

 

 

だれか。

 

 

だれか。

 

 

ユズル。

 

 

おチビ先輩。

 

 

メガネ先輩。

 

 

 

………チカ子。

 

 

 

 

 

 

「……………たす、………けて……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「にゃー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………え?」

 

 

この場で聞こえるはずのない声が、頭の上から聞こえきて、恐怖も忘れて視線を上げる。

 

 

「にゃー」

 

 

猫がいた。

 

 

大規模侵攻のあの日、出穂が拾い、いつの間にやら飼い猫ということになっていた、あの猫が。

 

「あんた……なんで……こんな、ところに………?

 

【──────ッ!!!】

 

「………………っ!!」

 

呆然と問いかける出穂の耳に、近界民(ネイバー)が迫る音が届く。

一瞬忘れていた恐怖と、それ以上にこんな場所にノコノコやってきたこのバカ猫に対する怒りが湧いてきた。

 

「さっさと逃げな!!」

 

喉の痛みも無視して叫び上げる。しかし、射撃用トリガーの発砲音を聞いても微塵も動じないこの猫は、ちょっと叫んだくらいじゃ動かないし、少し地面が揺れてる程度じゃ動じない。

 

「何してんの、こんなとこにいたら、アンタも────」

 

 

死んじゃうよ、と言おうとした口を。

 

 

 

 

 

 

 

「にゃー」

 

 

 

 

「もがっ……!?」

 

 

 

てし、と。

 

 

手のひらを、否、肉球を押し当てられて止められた。

 

一体なんなんだ、といよいよ困惑した出穂は、────信じられないものを目にして固まった。

 

 

 

 

 

「にゃー」

 

 

 

 

 

────光が。

 

 

 

────猫の頭の上から、2本。

 

 

 

────()()()()()光が、生えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

に゙ゃ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙あ゙

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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