映画バカ一代〜Tetsuji Arafune〜   作:木野兎刃(元:万屋よっちゃん)

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映画バカ、現る

ボーダー隊員にはポジションというものがある。近接系の武器で近界民やトリオン兵と戦う攻撃手、弾トリガーを用いてアタッカーのサポートなどを主にする射手や銃手、スナイパーライフル型のトリガーを使う狙撃手。

 

隊員達にはそれぞれ功績点、ポイントがある。使用トリガーのポイントが4000点を越えればB級隊員、つまりは正隊員として認められ、8000点を越えるとマスタークラスと呼ばれる。

 

そして複数のポジションでマスタークラスになるとオールラウンダーとなる。更に、近・中・長距離トリガー全てで8000点に至るとパーフェクトオールラウンダーの称号が得られる。

 

しかし、この称号を持つ者はボーダー隊員の中でも1人しかいない。難易度の高さからその偉業に挑む者は居ない、ただ1人を除いて…………………

 

 

「レイジさんなんだよな、荒船がパーフェクトオールラウンダーを目指す理由」

 

 

荒船隊の隊室にてダンベル片手にアクション映画を見ている男、穂刈篤が隣で食い入るように映画を見る男に尋ねる。

 

 

「どうした急に」

 

 

男の名は荒船哲次。ボーダーB級部隊の中でも異色の戦闘員全員が狙撃手というチームの隊長にして、スナイパートリガーとアタッカー用トリガーの二つでマスタークラスの武闘派スナイパーだ。

 

この荒船こそパーフェクトオールラウンダーという偉業に挑む男であった。しかもこの男、自身がパーフェクトオールラウンダーになった暁にはその方法をメソッドとし、ボーダーにパーフェクトオールラウンダーを量産しようと画策しているのだ。

 

 

「聞いてないと思ってな、ちゃんとした理由」

 

 

「そういえばそうか。俺がパーフェクトオールラウンダーを狙ってるのはレイジさんへの憧れもあるがそれが全てじゃない」

 

 

「じゃあなんなんだ」

 

 

「俺はランボーやマクレーン、メイトリクスに憧れてボーダーに入った」

 

 

「登場人物だよな、映画の」

 

 

「あぁ、映画史に残る名作達の主人公だ」

 

 

ランボー、ダイ・ハード、コマンドーといったアクション映画の主人公の名をあげる荒船。

 

 

「様々な銃を使ってバッタバッタと敵をブチ抜くその様は最高の一言に尽きる」

 

 

「なんで孤月なんだ。銃トリガーじゃなくて」

 

 

ボーダー隊員は入隊時に使用するトリガーを一つ決める。そのトリガーでの功績点が4000点を越えるまではC級隊員、つまりは訓練生として正式な隊員として認められない。

 

荒船は入隊時、孤月を選んでいる。

 

 

「入隊式の前日にファントム・メナスを見ちまってな」

 

 

「スターウォーズを見たからなのか、孤月にしたのは」

 

 

「そして、俺がパーフェクトオールラウンダーの量産を目指そうと思ったのはG.I.ジョーを見たからだ」

 

 

気恥ずかしいのか、帽子を深く被り直しながら語る荒船。G.I.ジョーとはアメリカで展開されている男向け玩具を映画化したものである。

 

アメリカの軍の特殊部隊であるG.I.ジョーが世界を脅かさんとするテロリストと戦う爽快アクション映画。

 

 

「この前見たやつだな。筋肉が良かったな、イ・ビョンホンの」

 

 

「あぁ。ストームシャドーの肉体美もだが、あの刀を使ったアクションが良くってな。俺が孤月を逆手持ちするのはストームシャドーに影響されている」

 

 

「逆手持ちは微妙じゃないか?実用性的に」

 

 

何気なく放った穂刈の一言に荒船は視線を鋭くする。穂刈はその瞬間、悟ってしまった。

 

映画バカの変なスイッチを押してしまった事を。

 

 

「お前とは隊を組んでそれなりになるが、そんな事も理解してなかったとはな……………」

 

 

「わ、悪かった」

 

 

あまりの剣幕に思わず気圧される穂刈。荒船は無言で立ち上がると何処からかホワイトボードを穂刈の前に運んでくる。

 

そして有無を言わせない迫力で書き込んでいく。防衛任務前の打ち合わせやランク戦前の作戦会議でもこれほどの気迫は感じなかった。

 

 

「お前に映画を見る上で行ってはならない言動を教えてやる‼︎穂刈、何か思いつくものを言ってみろ」

 

 

ドンッとホワイトボードを叩く荒船。

 

 

「ネタバレとかか?」

 

 

「確かにネタバレは映画に限らずタブーとされている。だが中にはそれを気にしないやつもいるし、ネタバレを見た上で太刀川見るという楽しみ方もあるから一概にそうとは言えない。まぁしない方が良いのは確実だがな。だが、違う。俺が言いたい事とは違う」

 

 

荒船とてネタバレは好きでは無い。楽しみにしている作品なら尚更されたくないし、したくない。しかし、ネタバレを見た上でそうなるのかなどと映像で見ると一味違って見えるなどと楽しみ方の一つとしてあるというのは知っていた。

 

ミステリーものなどは結末を知った上で見ると序盤での行動や何気ないセリフなどがフラグや伏線になっていたという事に気付いたり出来る。

 

だからといってネタバレを良しとしている訳では無い。映画の楽しみ方は人それぞれ、強制する事こそご法度なのだ。

 

ネタバレを知った上で楽しみたい人もいれば、少しでも情報を知らないまっさらな状態で楽しみたい人もいる。

 

映画の楽しみ方の多様性という観点から荒船はネタバレ事態認めているが賛同はしていなかった。

 

 

「なんなんだ、じゃあ」

 

 

「今さっきお前が俺に言ったような事だ。現実じゃあり得ない、こうはならない、といった発言は全ての映画好きを侮辱する言葉と知れ‼︎」

 

 

「そ、そうなのか」

 

 

「アクション映画で銃弾の雨に晒されているのに弾が当たらない事を突っ込んだり、弾薬が尽きないとか、無敵過ぎるとか宣い笑う輩は何を見ているんだ。俺たちが見ているのはフィクション、つまりは夢を見せてもらっているんだ。リアリティを追求する美学も楽しさも分かる。分かるが、現実にはない事の素晴らしさを楽しめない奴に映画を楽しむ資格はない‼︎」

 

 

「それは済まなかった」

 

 

肩で息をする程の熱量で語る荒船に気圧されたのもあるが不思議と納得した穂刈。

 

 

「荒船くーん、そろそろ防衛任務前のミーティング始めたいんだけど」

 

 

「そんな時間か。分かった、すぐに準備する」

 

 

すると、荒船隊のオペレーターを務める加賀美が声をかけてきた。荒船は帽子を被り直すと穂刈の肩をポンポンと叩く。

 

この後防衛任務を終え、隊室に戻ってきた後に隊員全員で荒船の解説付きでアクション映画を見るのであった。




個人的に好きな映画についての話をする感じです。
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