遊利とユーリの遊戯王GX奮闘記   作:laver

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書き溜め投下どーん。


第1章:デュエルアカデミア1年
1話:捕食植物


 遊利 LP/4000

 手札 5 場 なし 伏せ 0

 

 試験官 LP/4000

 手札 5 場 なし 伏せ 0

 

「先攻は私だ! 私のターン、ドロー!」

 

 えー試験官が先攻を取っちゃうの? そういうのって普通は受験生に先行を譲ってあげるものじゃないの? 

 

『あの試験官、率先して先攻を自分から取りに行ったね』

「気にすることはないさ。それに」

 

 どうせ僕が勝つし、ね。

 

 自分の手札の良さに思わず笑みがこぼれる。

 それに相手が使っているのは試験用のデッキ。いくら試験官の腕が良かろうが負ける道理は無い。

 

 あれ? 

 ……プレイが続行されない。

 ……なんで? 

 目線を試験官に向けるとカードをドローした試験官が僕を見て驚きの顔を浮かべていた。

 ……なんで?? 

 

『遊利。君、今すんごい笑顔を浮かべてたよ。ニヤッとしてる……狂気の笑顔? みたいなの。ホント見ててビックリするぐらいのさ』

 

「うるさいなぁ……僕の顔も、笑顔も、元々は君の顔でもあるし、君の笑顔でもあるの。主に君のせいなんだよ」

 

 そんなにすごい笑い方してた? この体になってデュエルをする人にデュエル中の笑顔がヤバいと結構な頻度で言われてしまう。

 ほんと、どうにかならないかな。

 

『はいはい。あっ、動き出したよ』

 

 その言葉に再度試験官を見ると、試験官はさっきまでの僕の笑顔に驚愕した顔を引っ込め、プレイを始めていた。

 

「私は魔法カード《古のルール》発動! この効果で手札からレベル5以上の通常モンスターを1体特殊召喚する! 私は《エメラルド・ドラゴン》を召喚!」

 

《エメラルド・ドラゴン》

 (レベル)6 ATK2400 /DEF1400

 

 海馬さんも使った事のあるエメラルドのドラゴン。

 いきなりレベル6のモンスターを召喚か。やっぱり例に漏れず彼も通常モンスター主体のデッキみたいだ。

 横では『また通常モンスター……』というユーリの呻きが聞こえるけどとりあえず無視。

 

「更に私は800ポイントのライフを払い、魔法カード《魔の試着部屋》発動!」

 

 おーここで魔の試着部屋か。

 このカードは僕が居た世界でもローレベルデッキのキーカードだったな。エクシーズ召喚の素材回収はもちろん、シンクロが主軸ならチューナーの通常モンスターと素材となるモンスターを同時に特殊召喚出来てしまう本当にお得なカードだ。

 …ギャンブルカードだから結局運任せなんだけど。

 

「デッキの上からカードを4枚めくりその中のレベル3以下の通常モンスターを自分フィールド上に特殊召喚する!」

 

 試験官 LP/4000→3200

 

 さて、運が良ければ最大4枚特殊召喚、悪ければただライフを払ってシャッフルしただけになるというギャンブル性も孕んでるカードだが、試験官様の本日の運勢は? 

 

「……私は《ジェリービーンズマン》を特殊召喚! 3枚のカードはデッキに戻しシャッフルする」

 

《ジェリービーンズマン 》 (レベル)3 ATK1750/DEF0

 

 出したカードは1枚だけ、試験官の今日の運勢は悪そうだね。

 可愛らしい豆の戦士のジェリービーンズマンは攻撃力1750というレベル3通常モンスターの中で最強と言っていいほどのステータスを誇っている。

 

「さらに私は《人投げトロール》を守備表示で通常召喚!」

「うげ」

 

《人投げトロール》 (レベル)4 ATK1000/DEF1000

 

 肌がピンク色で、図体がでかいトロールがフィールドにデンッと現れた。

 通常モンスターに人投げトロールってことはー。

 

「人投げトロールの効果発動! 自分フィールド上の通常モンスターを生け贄に捧げ、相手ライフに800ポイントのダメージを与える!」

 

 やっぱりそう来たか。

 人投げトロールがジェリービーンズマンを掴む。

 …….あーあ、あのジェリービーンズマン凄く涙目だ。プルプル震えてるし……でも周りの人にはただのソリッドビジョンにしか見えないんだろうな。

 というより、もうそれは人投げではないんじゃ……。

 

 そんな余計な事で思考が一杯になってる間にトロールは思いっきり振りかぶってジェリービーンズマンを投げつけて来た。

 気づいたら号泣のジェリービーンズマンがこちらに突っ込んで来て僕の手前に落ち、その衝撃が僕を襲った。

 

「っ!」

 

 遊利 LP/4000→3200

 

 まさかの相手の先攻1ターン目でダメージを受けるとは。別に僕が悪いわけじゃなくて相手の手札が良かったのが要因だけれどちょっぴり悔しい。

 

「更に私は永続魔法《凡骨の意地》を発動! カードを1枚伏せ、ターンエンド」

 

 凡骨の意地か。だったら十中八九あの伏せカードは《決戦の火蓋》だ。

 凡骨の意地で手札を潤沢にして人投げトロールでバーンダメージ。

 その墓地に送ったカードを除外して決戦の火蓋にて通常モンスターを再度召喚、そして人投げトロールの効果、以下エンドレス。

 そしてちゃっかりステータスが高いエメラルド・ドラゴンで牽制を入れてくるあたり卑しいな。

 

『意外と頑張るね、あの試験官』

「全くだよ」

 

 正直ノーダメージで終わらせようと思ってた手前、ちょっとイライラしてる。

 

「でも、ここまでかな」

 

 ボソッとした僕の呟きはユーリにしか聞こえておらず聞いたユーリは僕の言葉にニヤッと笑っていた。

 なるほど、その顔を僕はさっきしてたのね。

 

 ……急にそんな顔で笑ってたら誰だって驚くわ。笑ったのは僕だけどさ。

 

「さあ! 君のターンだ!」

 

 一向に自分のターンに入らない僕を見かねた試験官が声を掛けてきた。

 周りで観戦しているギャラリーも試験官のここまでのデュエル運びを見て、僕が何もしないのはビビって何も出来ないからだと囃し立ててる奴も何人かいた。

 ……その中にあの万丈目がいたけど気にしないでおこう。

 

「これ以上好き勝手されるのはイラつくな。さてと……」

『そうだね、遊利。それじゃあ』

「『始めますか』」

 

 ここからはただひたすら叩き潰すだけだ。

 

「いやー試験官さん、すごいですね!」

「うん?」

「ここまでの鮮やかなデュエル運び! 見事です! 実技試験でこんなハイレベルなデュエルが見れて幸運だなぁ!」

 

 突然、笑顔で試験官を褒めちぎる行動をとる受験生に試験官は面食らい、ギャラリーはざわめいた。

 

「じゃあ僕も……本気、出しちゃおっかな」

 

 が、その言葉とともに受験生が浮かべてた明るい笑顔は消え、見るものをゾッとさせる笑みを浮かべていた。

 その笑みはざわめいたギャラリーを黙らせるのには充分だった。

 

「僕のターン!」

 

 ドローしたカードを一瞥し、自分の出すべき一手を頭の中で再構築する。

 

「相手フィールドに攻撃力が2000以上のモンスターが存在する場合、僕は手札から《限界竜シュヴァルツシルト》を特殊召喚する!」

 

《限界竜シュヴァルツシルト》

 (レベル)8 ATK2000/DEF0

 

 無限大の∞を模したドラゴンが僕のフィールドに現れた。自分の尾を咥えようとしてる様はさながらウロボロスを表している。

 攻撃力が2000以上のモンスターが場に出る状況なんてザラだからこのカードはとても召喚しやすいのが良い。

 更に闇属性・レベル8といったところが僕の裏エースを引き立ててくれるからなお良い。

 

「攻撃力2000のモンスターをいきなり召喚か。中々やるな」

 

 試験官は驚きながらも余裕の態度は崩していない。

 きっとエメラルド・ドラゴンよりもまだ攻撃力が低いからだろう。

 

 安心してよ。まだ僕のターンは始まったばっかりだからさ。

 

「速攻魔法、《捕食生成(プレデター・ブラスト)》発動! 手札の《プレデター》カードを任意の数、相手に見せ、見せた数だけ相手フィールド上のモンスターに捕食カウンターを1つずつ置く」

「捕食カウンター?」

 

 聞いたことないカウンターに試験官が眉をひそめる。周りの受験生もざわめき始めた。

 

「僕は《捕食植物(プレデター・プランツ)サンデウ・キンジー》を1枚だけ見せてと。うーん…そうだなあ…。それじゃあ人投げトロールに捕食カウンターを置くとしよう」

 

 すると捕食生成(プレデター・ブラスト)のカードから捕食カウンターが人投げトロールに向かって飛んで行き、噛み付いた。

 

「そして、捕食カウンターの置かれたレベル2以上のモンスターはレベルが1となる」

「レベルが1に?」

 

《人投げトロール》 (レベル)4→1

 

 レベルを変えるカードはこの時代にはまだあまり存在しない。その理由は需要が無いからだ。シンクロ召喚やエクシーズ召喚が無いので自分のモンスターのレベルを調整したり相手のモンスターのレベルを変動させ邪魔をするといった概念が無いのである。

 だから試験官もレベルを下げる効果を不思議に思ったのだろう。

 だけどこの捕食カウンターはこのデッキの重要な要素の1つでもある。

 

「そう。そして僕はさっき見せた《捕食植物(プレデタープランツ)サンデウ・キンジー》を通常召喚」

 

捕食植物(プレデタープランツ)サンデウ・キンジー》

 (レベル)2 ATK600/DEF200

 

 モウセンゴケの大きな葉が襟巻きになっているエリマキトカゲが出て来た。

 この姿が現れた時、ギャラリーの中で悲鳴をあげる子も出て来た。

 こんなに可愛いのに……みんな分かってくれないんだよなあ。

 おっと、そんなことは今はいいや。とりあえずこのデュエルを終わらせよう。

 

「行きますか。サンデウ・キンジーの効果発動! 闇属性の融合モンスターカードによって決められている、フィールドのこのカードを含む融合素材モンスターを自分の手札、フィールド及び相手フィールドの捕食カウンターが置かれたモンスターの中から選び、墓地へ送ってその融合モンスター1体を融合デッキから融合召喚する!」

 

「なに! モンスター効果で融合召喚だと⁉︎」

 

 そんなバカな。

 

 なんだあのカードは。

 

 気持ち悪い。

 

 やっぱり驚くよね。このカードはこのデッキを回すのにあたってのキーカード、これを3枚集めるのにどれだけの金が飛んだか……。

 あと3つ目のセリフを言ったヤツ、後で集合ね。捕食植物(プレデタープランツ)の魅力をたっぷり教えてあげるから。

 

「僕は自分フィールドのサンデウ・キンジーとあなたの人投げトロールで《捕食植物(プレデタープランツ)キメラフレシア》を融合召喚する。ちなみにこのカードは捕食植物(プレデタープランツ)モンスターと闇属性モンスターを素材としますよ」

「なっ…! 人投げトロールは地属性…! 融合素材には出来ないはずだ‼︎」

 

 わざわざ解説してあげてからのその食いついてくる反応。いいねぇ…僕の思い通りによく喋ってくれるよ。

 おかげで結構、楽しめてるよ。

 

「あれ? 説明してませんでしたっけ? うーん…あー! してなかったですね! ではサンデウ・キンジーのもう1つのモンスター効果発動!」

『ホント、いやらしいねキミも』

 

 君には負けるよ。

 

「ふふっ。このカードがモンスターゾーンに存在する限り、自分が融合素材とする捕食カウンターが置かれたモンスターの属性は闇属性として扱う!」

「なん…だと…」

「驚いているところ悪いけれど先に進ませてもらうよ。──奈落へ誘う香しき花よ! 闇に染まりし巨人の全てを吸い尽くし、新たな美しき花を今咲かせよ! 融合召喚! 現れろ! レベル7! 《捕食植物(プレデタープランツ)キメラフレシア》!」

 

 融合の渦が現れた後にユーリと同じ、両手を合わせる融合召喚ポーズを行う。そうすると2体のモンスターが融合の渦に吸い込まれていった。

 渦の中で、サンデウキンジーが人投げトロールの全てを取り込みその姿を変えていく。

 

 現れたのは名前の通りラフレシアを模したモンスターではあるが、実際のラフレシアとは似て非なる姿だった。

 花の周りには食虫植物であるハエトリグサのような葉が付いていて獲物を求め、蛇のように鎌首をもたげている。

 中央のくぼみには本来は多数の突起物があるが、キメラフレシアにはその代わりに牙があり、まるで獰猛な動物の口のようになっているモンスターだ。

 まさしく捕食植物(ほしょくしょくぶつ)

 

捕食植物(プレデタープランツ)キメラフレシア》

 (レベル)7 ATK2500/DEF2000

 

「くっ……! だが、君はミスをしている! 捕食カウンターを乗せるべきだったのは攻撃力の高いエメラルド・ドラゴンの方だったはずだ!」

 

 ステータス重視のこの世界だとそう考えるか。エメラルド・ドラゴンにキメラフレシアで攻撃してもダメージはたったの100、人投げトロールだったら1500だったのだから。

 それじゃあダメ押しの効果を発動しますか。

 

「そ、その通りだ……なんて事をしてしまったんだ…僕は! …ってなーんてね! 僕はキメラフレシアの効果を発動!」

「なにっ!」

 

「1ターンに1度、このカードのレベル以下のレベルを持つフィールドのモンスター1体を対象として発動できる! そのモンスターを除外する! 僕が除外するのはもちろん、レベル6のエメラルド・ドラゴンだ。やれキメラフレシア、《エクスクルード・アロマ》!」

 

 キメラフレシアは紫色と視認できる煙を芳しい香と共に撒き散らし、それに包まれたエメラルド・ドラゴンは苦しみながらフィールドから消え去った。

 

「……っ!」

 

 試験官もここまで整えたフィールドをバトルもしないで1ターンで崩されて動揺しているようだ。

 

「最後に……速攻魔法《サイクロン》発動! その伏せカードを破壊する!」

 

 伏せカードは……と。

 あっやっぱり《決戦の火蓋》だったか。一応確認しといたけど必要は無かったかな。

 

「バトル。まずはシュヴァルツシェルトで攻撃」

 

 シュヴァルツシェルトが猛スピードで試験官の前まで突っ込み、その勢いを殺さずに鋭い尾を振り抜いた。

 

「ぐあっ……!」

 

 試験官 LP/3200→1200

 

「そしてトドメだ。やれキメラフレシア! 《紫炎の棘(サポートソーン)》!」

「ぐおぉぉぉぉ‼︎」

 

 試験官 LP/1200→0

 

 うん、ダメージは受けたけどこっちは1ターンキルだし結果としては充分だろう。

 僕が自分のデュエル結果を振り返っていると試験官がこちらにやって来た。

 

「受験番号66番。……試験はこれで終了だ。結果は後日に追って伝えるので今日はもう帰って良いぞ……」

「あっ、はーい」

 

 少し意気消沈している様子だった。

 やり過ぎたかな? デュエルってなるとユーリみたいにどうも人を弄びたくなる衝動に駆られるんだよね。

 

「ほら、ユーリ謝りなよ」

『何でそうなるのさ……やったのキミでしょ』

 

 いや、間接的にユーリがやったようなもんだったから。

 僕がフィールドから離れ、試験会場を後にしようとする道中、受験生からの異質のモノを見る目線が僕に突き刺さっているのを感じた。

 それもそうだ、見たことないモンスターを出して、派手に場を荒らして1ターンキルは悪目立ちしてしまうのも納得だ。

 

『強過ぎて誰も近づかなくなった』……か。

 

 かつてのユーリの言葉を思い返しながら僕は試験会場を後にした。

 

 

「何なの、あの子」

 

 遊利(とユーリ)が会場を後にした後、天上院明日香はそう呟かずにはいられなかった。

 彼女は中等部からの進学で、もうオベリスクブルーの寮入りも確定しているが、高等部からの編入生で誰か面白いデュエリストが居ないか、わざわざ本土まで見に来たのだ。

 そこで、受験番号が50番を切る前にとてつもない受験生が現れたのだ。

 

 最初はその珍しい容姿に目が引かれた。

 紫色の髪に触覚のように跳ねている2本の髪の毛、それに桜色の独特な形をした眉。

 服が白のYシャツに、茶色のズボンという地味な格好だったのもありその派手な髪型と顔立ちはより際立って見えていた。

 最初は中々の美形で、ももえが見たら喜びそうだなと思っていただけだった。

 

 だが、彼の実技試験でそんな事など頭から離れてしまった。

 見た事も無い奇妙なカード。それらを使いこなしバトルを行う前に試験官のフィールドをガラ空きにするタクティクス。

 何より明日香が恐れたのはデュエル中の彼自身だった。

 悪魔のような顔で笑い、試験官をコケにし、それを心底楽しみながらデュエルをする。純粋な子供のような悪意を彼のデュエルから明日香は感じ取っていた。

 

 相手をリスペクトし、互いのベストを尽くしてデュエルを楽しむ事を信条としている隣にいるカイザーこと丸藤亮とは全く違うデュエルだった。

 

「あいつは間違いなくアカデミアに上がって来るな」

 

 そうカイザーは呟いた。

 

「ええ、そうね。……ねえ、亮」

「なんだ?」

「あなた、彼のデュエルを見てどう思った?」

「あいつのデュエルは俺のデュエルとは似ても似つかないが……なんだろうな、闘いたいとは思うな」

「え?」

 

 明日香は意外に思った。彼とカイザーのデュエルは少なくとも似通った点など見つからない。そこには納得したが、そんな彼のデュエルを見て『闘いたい』と言うカイザーは確かに明日香が思うように意外であった。

 

「決してあいつのデュエルを褒めているわけではない。ただ、あいつもデュエルを純粋に楽しんでいる気がしてな」

「純粋に、楽しんでいるですって?」

 

 あれが? と怪訝に思う明日香。

 デュエルを通して人をコケにしていると感じた彼女からすれば予想外の言葉だった。

 

「あぁ。必ずあいつとは近いうちに闘うさ。その時に真偽を確かめるとしよう」

「そう……」

 

 カイザーの言葉に疑問を覚えつつ、あの受験生がアカデミアに入る事を考えると少し憂鬱になる明日香であった。

 

 

 

 

 

 

 さて、そんな事を思われてるとは露ほども知らない遊利はというと。

 

「さてと、この後はお迎えを寄越してくれるという話だったけれど……」

 

 海馬ランドを出た入り口あたりで迎えを寄越してくれるらしいのでキョロキョロと視線を動かして探している真っ最中だった。

 

『それっぽいの……どこにも居ないじゃん』

「……だね」

 

 あるのは受付の机と係員が何名かだけだった。迎えの車らしきものはどこにも停まっていなかった。

 

 受付時間がもうそろそろ終わりに差し掛かってるのか時間をしきりに腕時計で確認しているサングラスの男の人がいる。

 

 はたして十代は間に合うのか……? 確か電車の遅延に巻き込まれて、その後で遊戯さんに会って《ハネクリボー》をラッキーカードとして貰うんだよね。

 

 そんな事を考えていると僕の耳にある声が聞こえて来た。

 

「遊利ボーイ!」

 

 いや違う、僕の耳には此処に居るはずがない……否、此処に居てはいけない人の声が聞こえて来た。

 いやいや、なんでわざわざあなたが来たんですか……。あなた超忙しいでしょ! 

 

「ペガサスさん、何やっているんですか?」

「もちろん! 2人の可愛い弟を迎えに来たのデース!」

「『……はあ』」

 

 ため息をつきたくもなる。

 

 目の前にいるのこの人はインダストリアル・イリュージョン社、通称I2社の社長でありデュエルモンスターズの生みの親、ペガサス・J・クロフォード氏である。

 そしてこの人は僕がこの世界にやって来て右も左も分からない時に手を差し伸べて来た恩人の1人でもある。

 

 ペガサスさんは僕をペガサスさんの義理の弟という形で戸籍を作ってくれたりタワーマンションの一室を住居としてくれたりと様々な援助を行ってくれた。

 生活面の事だけじゃない。僕の《イラストやテキストが消えてしまったエース達》や《とっておきのカード達》の事も調べてくれている。まあこっちに関しては興味があるのも確かだろう。

 ちなみにこの世界に来た時に腕に装着してあった動かなくなった融合次元のデュエルディスクの検査はあの海馬瀬人さんが行ってくれている。

 ペガサスさんからデュエルディスクの事なら私より海馬ボーイの方が適任デース! と言って海馬さんに僕らの事情を話して掛け合ったらしい。

 そして意外にも海馬さんはペガサスさんの依頼を受け入れ、今もデュエルディスクは検査中だ。

 リアルソリッドビジョンに興味もあるだろうが、身寄りも何も無い僕ら2人を自分達兄弟に重ね合わせたのでは? というのが海馬さんが検査を引き受けた理由だとペガサスさんは考えている。

 

 本当にペガサスさんには感謝をしてもしきれない。この恩は一生忘れないだろう

 ……忘れないが……今回はちょっと勘弁して。

 

 いきなりのペガサス・J・クロフォードの登場に受付にいた係員達は騒然としていた。しかも僕を弟と呼んでしまった為、僕にも注目が集まってしまう。

 

 

 

 いや、本当に勘弁してください……。

 




ユ「記念すべき、初デュエル回だね」
遊「ステータス表記の仕方とかは他の方の小説を参考にしてみたんだって。僕たちのデッキだとレベルの表記もあったほうが分かり易いだろうってさ」
ユ「そこまでの心遣いが出来るのであれば、後はあの凡骨にはデュエル内容に穴がない事を祈るよ」
遊「作者に対して、そこまでボロクソに言えるなんて、君もいい性格してるね」
ユ「キミには負けるよ」


作「物語始まってまだ2話なのにトーシローと凡骨という不名誉なあだ名がつきました」
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