うてー!
ペガサスさん登場の騒ぎを振り切り、僕達は停めてあったリムジンに乗った。
ちなみにリムジンは運転手さんが気を利かせ離れた所に停めてあった。もちろん、超有名人であるペガサスさんへの配慮としてだ。
だがそんなのお構い無しのペガサスさんの行動で無駄になってしまったんだけど。
リムジンに乗り込んで出発する直前にチラリと今作品の主人公である【遊城十代】が時間ギリギリに受付に駆け込んだのが見えた。
この後、彼はデュエルアカデミア実技担当最高責任者の【クロノス・デ・メディチ】と実技試験を行うんだろうなとそんな事を考えていたらリムジンは僕達の家に向かって出発していた。
リムジンなんて前の世界では縁もゆかりも無かった物に乗れるなんて、と最初の頃は思っていたがもう何回も乗ってるので今はもう慣れてしまった。
慣れというのは恐ろしいものである。
車が出発し数分後、ペガサスさんはユーリに声をかける。
「それではユーリボーイ、もう出て来くれても大丈夫デース!」
ペガサスさんはユーリの姿は見ることが出来ない。
が、気配でどこにいるのか位は分かるそうだ。
そしてこの車は窓は曇りガラスになっていて、運転席からも仕切りで区切られており【これから起こる現象】を第三者に見られる事はまず無い。
『はいはい、分かりましたよ』
その言葉の後にユーリの体は光りだし、光が収まるとユーリは実体を持って現れていた。
この実体化を赤の他人に見られたら何も無い空間に急に人が現れたように見えるので、絶対に人が居ない場所でこうやって実体化をしている。
「オー! ユーリボーイ! これでゆっくり3人でお話ができマース! それで遊利、今日の試験はどうでしたか?」
「まずまず、ってところかな」
「容赦無くボコボコにしてたよ。完璧に悪目立ちだったね」
「うるさいよ、ユーリ」
「ハッハッハ! 試験が上手くいたがいったのなら良かったデース! では今日は2人の家でパーティーをしまショーウ!」
「「パーティー?」」
ペガサスさんから出た意外な言葉を反復する2人。パーティーって……気が早過ぎるんじゃ?
「そうデース! 遊利の実力であれば合格は確実。早いですが遊利の合格と2人の門出を祝いまショーウ!」
なんかこそばゆいな……。
ペガサスさんは僕達2人のことを本当の弟のように大切に思ってくれている。
他にも遊戯さんや海馬さん、城之内さんなど僕達は本当に周りの人に恵まれていると言ってもいい。
そして僕を含め、彼らはユーリの数少ない友達でもある。
「そうそう。パーティーにはマナガールも呼んだのでとっても賑やかになるはずデース!」
「えっ」
【マナ】。それは遊戯さんのカードである《ブラックマジシャンガール》の本名だ。
そしてユーリに実体化を教えてくれた彼女でもあり、ユーリの初めての異性の友達でもある。
「良かったね、ユーリ」
「何? 喧嘩売ってんの? カードにされたいの?」
「……そんなに過剰に反応しなくても」
こうしてユーリにマナに関してからかうのは本当におもしろい。……おもしろいんだがやり過ぎると後で酷い目に合うから加減が大事なんだ。
「まぁまぁユーリボーイ。もう当分マナガールには会えないのですから落ち着いてくだサーイ」
「……別に長期休みに入れば童実野町に帰ってこれるし」
「え! 家にそんなに早く帰りたいの? 全くユーリは仕方な……ごめんなさい、もうやめるから許して」
あっぶな。ユーリが僕に向けた視線だけで人が殺せそうだ。
そうこうしている間にリムジンが僕達が住んでいるタワーマンションのエントランス前に止まった。
そのままエレベーターに乗り込み、カードキーをタッチした後、最上階である45階のボタンを押す。
このタワーマンションは40階より上に行くためには専用のカードキーをタッチしなければならないのだ。おまけに部屋も2人で住むにはあまりに広く、眺めも最高の物件である。
そしてこのセキュリティの高さ。
こんなマンションの一室をプレゼントしてくれたペガサスさんは太っ腹とかそういうレベルじゃない。
エレベーターが最上階に着き、部屋の扉を開けるとそこには……。
「ちょっと城之内。その飾りはもう少し上に付けなさいよ」
「別にこんなもんで平気だろ、杏子。つか、あの2人もそこまで飾りにこだわんねえって。メシさえウマけりゃ良いんだよ」
「そんなわけないでしょ! 遊利とユーリはあなたなんかと違ってオシャレでそういう所にも目をしっかりと向けるものよ。静香ちゃんもそう思うわよね?」
「はい。お兄ちゃん、しっかりしなきゃ。今日は2人の門出を祝うパーティーなんだから」
「ぐっ……。分かったよ」
「あははっ。本当に静香ちゃんには弱いね城之内君は」
「うるせえぞ、遊戯! お前も見てないで手伝え!」
「ごめん、僕はそろそろマナの料理の盛り付けを手伝わなきゃいけないから出来ないや」
「クソッ! 俺、こういうの苦手なのに……」
そこにはわいわいとパーティーの準備を進める友人【達】が居た。
マナが来るとだけ聞いていた僕とユーリは遊戯さん、城之内さん、杏子さん、静香さんの存在にただ驚いていた。
「あっ! 3人とも帰って来ちゃったわね」
「げっ、本当だ! じゃあ急ぐためにも残りの飾り付けはサクッとやっちまえ」
「ちょ、ちょっと城之内!」
杏子さんの制止も聞かず城之内さんは残りの飾り付けを雑に付け終え、椅子の上から飛び降りた。
「ふぅ。一仕事終えたぜ!」
「もう、お兄ちゃんったら」
「いいじゃねえか。おう! 遊利にユーリ! お疲れ!」
「久しぶりです。城之内さん」
「相変わらずみたいだね」
城之内さんは親父さんの借金を無事完済して今はプロのデュエリストとして活躍しながら世界中を飛び回っている。
あの【凡骨】と言われていた城之内さんが今ではプロデュエリストになるとは……。
【人生何が起きるか分からないものである】の典型的な良い例だ。
……ちなみに舞さんとはまだそういった関係では無いらしい。
そして1度、舞さんに城之内さんのことでいじってみたらかなり荒れた。舞さん、荒れまくった。そしてボコられた。
いや、もうものスゴく痛怖かったです……。
僕のトラウマランキングのベスト5にランクインするぐらい怖かった。
そしてその城之内さんの妹の静香さん。
生まれつき目が悪かった彼女は彼の兄である城之内さんの優勝賞金で回復したと言う過去があり、それがきっかけで現在は看護師として自分がかつて入院していた病院で働いている。大変なことも多いが自分と同じような境遇の子供の力に少しでもなれたらと、日々頑張っているとのこと。
良い人飛び越えてまじ聖人である。
「2人共お帰りなさい。お疲れ様。ごめんね、もうそろそろ料理が完成するから少し待ってて」
「平気だよ。ありがとう、杏子さん」
優しく僕達を労ってくれるのは杏子さん。彼女はアメリカでプロダンサーとして活動していて今は童実町へは里帰り中だ。
……ちなみに遊戯さんとはまだくっついていない。
ホント見ててこっちがもどかしくなる。中々、次の一歩を踏み出せない遊戯さんにあのマハードでさえも呆れる程だ。
昔よりワイルドになっても、まだまだアテムさん並のワイルドさは身についてないらしい。
「ユーリ! それに遊利も久しぶりー!」
リビングに居たユーリにキッチンの方から声がかけられた。そこにはいつもの魔導師の衣装では無くエプロン姿のマナがいた。
あのデュエルモンスターズのアイドルカード代表とも言えるBMGが目の前にエプロン姿で居ると思うと感慨深いというかなんというか……。
「今日の料理はマナが作ったの?」
「そうよ。楽しみにしといて!」
「へー。キミって料理出来るの?」
「むぅ。私が料理出来ないって言いたいわけ? 私だって……料理くらい……練習すれば……」
最後の方がゴニョゴニョ言っていて聞き取れなかったが、言いたいことは察しがついた。
「マナ、ユーリは本心で言ってるわけじゃないよ。ただこいつが素直になれなくてそういう事言っちゃうのさ」
「いや、ちが」
「そ、そう? もー! 仕方ないなーユーリ、照れちゃってー! 素直じゃないんだからー!」
僕のフォローを聞いてすぐに機嫌が良くなるマナ。ホント、普段から単純だけどユーリが絡むともっと単純になる。
要するに扱いやすいってこと。
「サプライズ大成功! 実は前もって色々な人に声を掛けておいたのデース! 2人共驚いてくれましたか?」
ポンっと後ろから僕達の肩に手を乗せるペガサスさん。
「全く……。人が悪いよペガサスさん。けど……」
ここまで大掛かりなパーティーだとは思ってもみなかったので凄く嬉しかった。
「最高だよ」
僕の答えにペガサスさんはニッコリと笑みを浮かべる。
「おかえり、遊利くん。2人の迎えありがとうペガサス」
「ノープログレム! 遊戯ボーイ! それにしても予定ではもう準備が終わってるはずでしたが?」
「ごめんよ、電車の遅延で僕とマハードとマナが遅れてね。食材担当が僕らだったから料理を間に合わせるように、飾り付け担当の杏子と静香ちゃんにも手伝ってもらってたんだけどね」
結局は間に合わなかったんだ、と遊戯さん。
いやはや今日の電車遅延は十代だけでなくこんな所でも影響が……待てよ……。
「遊戯さん! ここに来る間に何かありませんでした⁉︎具台的に言えば出会い系で!」
「いや、出会い系って……言い方あるよね」
うるさい、ユーリ。それより今はこっちが重要なんだよ!
「え? うーん……あ、そういえば君ぐらいの歳のデュエリストとぶつかったよ」
よ、良かったー…。ここで僕らのパーティーの為に遊戯さんが十代とぶつからなくて歴史改変ー! だなんてシャレになってない…。
「そうそう、その時に《ハネクリボー》のカードをラッキーカードとして渡したよ。アイツが彼に付いて行きたがってたからね」
「あー…ハネクリちゃーん…あのふわふわが恋しいよー」
「…そしたらマナがこの通りでね」
遊戯さん、マナの落ち込み具合に苦笑い。
「ハネクリボーと仲良かったもんね……」
よしよしとマナの頭を撫でる杏子さん。
ホームシックならぬハネクリボーシック…。というよりたった数時間でコレ? これからどうなっちゃうんだよ…。
マナの様子があまりにもアレだったのでそれならと僕はデッキを入れてあるポーチからあるカードを取り出した。
「出てきてマナの相手をしてあげて、《クリボール》」
『クリ〜』
そうすると毛がない、綺麗な球型の見た目のクリボーが出て来た。
このカードは僕のデッキに入ってあるマスコットカードの《クリボール》だ。
《ハネクリボー》とは親戚? のような関係らしく、よくマナと3人? 3匹? 3体? まあどれでもいいや、とにかく遊んでいた。
「クリボールちゃーん!」
マナはすぐにクリボールを抱きしめて、愛で始めた。
『クリ〜♪』
クリボールもマナに撫でられて嬉しそうである。
君、クリボーだったらなんでもいいの?
仕方ないな。マナに朗報を伝えてやるか。
「たぶんだけど、そのデュエリストならアカデミアで会うよ」
クリボールを撫で回しているマナがすぐに食いついて来た。
「え! なんでわかるの?」
「なんとなく。転生者の勘ってやつさ」
「へー! よかったねークリボールちゃん! ハネクリちゃんに会えるってー」
『クリクリ〜!』
クリボールも仲の良いハネクリボーと一緒に学校生活が送れると知って嬉しそうだ。
でも今のハネクリボーの持ち主は実は遊戯さんを継ぐ者で遊戯王GXの主人公なんです。……なんて言えるわけないよな。
理由を適当にはぐらかしたがマナの目はキラキラと輝いている。
よっぽどハネクリボー好きなんだな。
…あっユーリが若干不機嫌になってる。
そんなユーリを見て、クリボールも若干呆れている。
「モグ……ユーリ、男の嫉妬は……ムグムグ……見苦しいぜ」
「城之内さん…アナタは何を言ってるんですか?」
料理をつまみ食いしながらユーリをいじる城之内さん。
そして益々不機嫌になるユーリ。
「もうかわいいなあユーリも」
マナが頰をプニプニと突っついている。
…イチャイチャしてるなあ。
ユーリも心底嫌がってるわけでは無さそうだし。
その後、マハードが料理を運び終えて(おいマナ、決闘じゃなくて仕事しろよ)パーティーは始まった。
僕、ユーリ、マナの3人はジュースで他の皆の大人組ははワインやらビールやらカクテルやらアルコール類で乾杯した。(誰が何を飲んだかは想像に任せます)
料理はどれも美味しく、ペガサスさんも唸る程だった。皆に褒められて照れているマナだったが、1番嬉しそうにしていたのはユーリにぶっきらぼうだが「美味しいよ」と言われていた時だった。
マナの顔が少し赤くなっていたのは僕の見間違いじゃないはずだ。
城之内さんは見事に酔っ払いに変貌し、めんどくさい絡みをしてきたが杏子さんと静香さんが対応してくれてとても助かった。
遊戯さんはペガサスさんと実体化したマハードと談笑し、デュエルやゲーム開発の話に花を咲かせていた。新しいカードのイメージはこういった話の中でも生まれるとペガサスさんは言っていた。
所持品はバックとデュエルディスクとデッキのみ。
そんな状態で別の世界に連れてこられた。
……そんな僕が、こうした幸せな時間が過ごせる事は本当に奇跡と言える。
このかけがえのない恩人を、友人を、そして家族を守る為に。
これから起こる事件に対処する為に、僕はデュエルアカデミアの入学を決意した。
もちろん原作キャラに関わりたいという気持ちもある。
けれど、やっぱり僕はこの人達を守っていきたいんだ。
(でも今はこの時間を思いっきり楽しもう)
そう思いながら僕はペガサスさん達の会話から抜け、クリボールを挟んで会話をしているユーリとマナの方に向かった。
……決して2人のイチャイチャを邪魔したいわけじゃないよ?
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そして出発の日。
「さてと、今日でこの部屋とも当分さよならだ」
『そうだね。ところで持ってくデッキはそれだけでいいの?』
僕が持っていくデッキは3つ。
全て、僕が元の世界に居た時に愛用していたデッキだ。
基本は
そして僕のカードは全てこの世界に来た時に手にしていた、タブレット端末から入手している。
……いや正直自分でも何言ってんだろって思うけど本当にそうなんだって……。
タブレットを操作し、自分が欲しいカードがあったらタッチして上にスワイプ。
そうすればあら不思議。タブレット端末に繋いであるICカードリーダーからお望みのカードがスッと出て来るという何ともご都合主義的なシロモノだ。
こんなチートアイテムにも弱点は一応ある。
まず1つ目が僕が今まで1回でも所持したカードしか出せないという点。
そして2つ目は神のカードと呼ばれているカードは出せない。
つまり《三幻神》や《三邪神》といったこの世界では特別なカードは出せないのだ。
それでも遊戯王をやってきて10年以上。入手したカードは数知らず。
ある程度のカードはノーリスクで何枚でも出せるこの現状。(1回、《
良くない。色々と良くない。非常に良くない。
なので僕はユーリと共にこのタブレットを乱用しないように制約を作った。
使うとしたら(あまり無いと思うが)誰かにカードをあげたい時やどうしても必要になった場合のみとした。
これで多少はマシになる……はずだ。
マンションを出るとそこには実体化をしていないマナがフワフワと浮いていた。
『2人ともおはよう!』
「おはよう、マナ。どうしたんだいこんな朝から?」
『えっとね、実は渡しそびれた物があって…』
チラチラとこちらを見てくるマナ。
あーはいはい、わかったよ。
「はいはい。お邪魔虫は消えますから、後はお二人でごゆっくりどうぞ」
『え、ちょっと遊利』
『ありがとう遊利! すぐ終わるから!』
ここは空気の読める男として2人きりのムードを作らないとね。
…え? パーティーの時は邪魔したろって? …それはまた君…なんのこと?
2人の会話はすぐ終わり、マナは僕にも別れの挨拶をし、去って行った。
どうやら遊戯さん達も来たかったらしいが外せない用事があったらしい。
マナが帰り、ふとユーリの姿を見ると首元にカード型のペンダントをぶら下げていた。
まるで海馬兄弟みたいだ。
「ユーリ、それは貰い物だよね?」
『うん。マナから、ちょっとね』
「へぇ……」
『なにさ?』
「その中には〜何が入ってるのかな〜?」
『……ボクが見せるとでも?』
「無理矢理にでも見る!」
ペンダントの奪い合いという名の死闘を繰り広げながら僕ら2人は飛行場まで向かって行った。
太陽も輝き、最高の門出となった。
ユ「疑問に思ってたんだけどさ」
遊「なに?」
ユ「こんなカード三十六枚も持ってるよって、あれどう言う意味?」
遊「あれね、昔モクバくんが似たセリフを哀れみを込めて言ったことあってそれのパロディ的な?」
ユ「なるほど、確かにそれは殺されるね」
遊「でしょ? それにしてもこんな日常回って読者の方は興味持ってくれるのかな? ドマヌケの手抜きを感じるよ」
ユ「そこは読者の感想を聞けばわかる事じゃないの」
遊「そうだねー、けど当分ユーリに対してマナいじりはできな・・・あぶな!なんで殴ってくるのさ、うわちょっ!まっ!」
作「いいぞやれやれー、出来れば相討ちで頼むぞー」