インフィニット・ストラトス ~Bird of prey~   作:Hans Ulrich Lutz

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最後の投稿から3か月ちょっと…失踪してませんよ…


第2話

IS学園、正門前

 

「さてと…ついたぞ」

 

「…ここが?」

 

「ああ。ここがあのIS学園ってわけよ」

 

「乗せてもらって下さってありがとうございます」

 

「あーいいよ気にしなくて。教師なんだし、別にこれぐらいは別に困るわけじゃないし」

 

「それに…君が相手だからね」

 

「ハァ…そうですか…」

 

呆れながら荷物の入ったボストンバッグとリュックを車のトランクから取り出す。

 

「じゃあ、また後でね」

 

「ええ、また」

 

そう言って彼女は車を走らせ、何処かへ消え去った。

 

「ハァ…」

 

アルフレッドは大きなため息をつく。

 

「ここだとお酒って飲めたっけな…」

 

そんなことを一人でつぶやいていると…

 

「君がアルフレッド君かしら?」

 

「…どなたです?」

 

「えーっと…君は「まずは自分の名前を言うべきでしょう?」アハハ…そうね…」

 

「私の名前はジェシカ・ブラウン。この学園で教師をしてるわ。リースって呼んで頂戴。よろしくね」

 

「ええ、よろしくお願いします。ジェシカさん。」

 

「そ、そんなに固くならなくていいのよ?別にため口でもいいし…」

 

 

手に紙を持ったジェシカ・ブラウンと名乗る女性にアルフレッドはついていく。

 

 

「こんなに朝早くに来てもらってごめんなさいね。普段だったらもっと遅いんだけれど…色々事情があってね…」

 

「でしょうね。こちらも色々と有ったので」

 

「まぁ、そこはお互い様って事で…。ところで…IS学園に来てみてどう?何か…色々考えちゃったりする?」

 

「別に…特に何も」

 

「そ、そうなんだ…アハハ…」

 

アルフレッドの冷たい態度に若干引くリース。

 

 

「別に…気にしなくてもいいのよ?"男だから"だなんて…もっとこう…はしゃいでもいいのよ?」

 

「男だからってはしゃぐ覚えはないんですけどね」

 

 

アルフレッドは冷たくそう言い放つ。

 

 

「…もしかして…シャイ、だったり?」

 

「時間がないんじゃなかったんですか」

 

「そ、そうよね。ごめんなさい」

 

 

アルフレッドにそう言われ、急ぎ足で歩き始める。

 

 

「ふう…ここよ。さ、入って」

 

 

リースはそう言ってアルフレッドを検査室へ入らせる。

 

 

「お待たせしました、織斑先生、山田先生」

 

「こいつが例の"男"か」

 

「おはようございます、アルフレッド君。今回の臨時試験担当の山田真耶と…」

 

「試験責任者の織斑千冬だ」

 

「ええ…よろしくお願いします」

 

「それではアルフレッド、ついてこい」

 

アルフレッドの前に立つのはかつて世界を沸き立たせた戦乙女(ブリュンヒルデ)の称号を持つただ一人の女性。しかし彼は何の興味も示さない。

 

 


 

 

「怖いもんだ。山田真耶とか言ったっけなあのやたらと胸のでかい女。あの女も含めてみんな目が眼がギラついてる」

 

アリーナの近くにある更衣室でアルフレッドがそう言うと彼の背後に一人の女性が現れる。

 

〈…随分と酷い覚え方だな〉

 

彼女は彼に背中を見せ、顔を見せずにそう言う。

 

「別にいいだろ。あんな奴らの呼び方なんか」

 

〈…とは言え、怖いのはIS委員会や女尊主義者のほうだろう。よりにもよって一番女尊主義を嫌っているスイス出身。で…IS同士の試合じゃやり方がエグ過ぎて一時モンドグロッソから参加停止を言い渡された元スイス代表の弟…仮に無国籍だったとしてもどの国も引き込みたくはないだろう〉

 

「スカンジナビア半島のスウェーデンとかは喜びそうだけどな」

 

〈まぁ…確かにあの国も反女尊主義だが…〉

 

「ま、俺にはそんなこと(自分の国籍と政治的なこと)なんて関係ない。俺は俺がやりたい事をここ(IS学園)でするだけだ。邪魔する奴がいればこの世から消せばいい。そうだろ?…シュヴァルベ?」

 

アルフレッドは微笑みながらそう話す。

 

〈フッ…相変わらずの発想だが…嫌いじゃないな〉

 

そう言って彼女は消え去る。それから彼はヘルメットを抱えてアリーナまで歩き出す。

 

 

 

 

 

 

国際IS委員会のメンバーは、学園の監視カメラを介してアルフレッドの検査の様子を見守る。

 

「IS適正はA+…相当な逸材ですね。女性でも中々いないというのに。」

 

「そもそも、それ以前に自律稼働やあのようにISコアの人格が実体を持つ事事態が前代未聞だろうに…名前は何だったか…確か――」

 

Schwalbe(シュヴァルベ)。スイスの公用語であるドイツ語でツバメを意味する言葉です」

 

「そんな下らん説明はどうでもいい。それより大切なのはあの機体、スペックは素の状態でも現行の第三世代型を超える性能だぞ。あんなものをスイス人なんぞに持たせていいのか!」

 

「あの機体のパイロットでさえ奪い合いという名の戦争に発展しかねんが、仮にそうなった(他国に奪われた)としても、またスイスに彼が戻るだろうに…」

 

 

会議が白熱する中、委員長は一旦全員の会話を止めさせる。

 

「諸君。君たちの言いたいことは分かっている。だが…本案件に関しては極力関わらないか、手を引くべきだろう。スイスがどの様な態度を我々(IS委員会)に対して取ってきたかは皆も知っての通りだ。下手に扱いを間違えれば、国際的な非難はおろか、最悪、スイスと国交を結んでいる反女尊主義の国々の国際IS管理連盟からの脱退やスイス国内での我々に対する国を上げた大規模なデモまでに発展する。本件は我々の手の内に収めるべきではない…」

 

「私も委員長の意見に賛成です。この件に下手に首を突っ込めば、最悪国1つが消えるかもしれません。おっと、失礼………はい。…はい。了解です。理事長、日本政府からです。『本件に関しては我々が何とかする』…と」

 

「理事長!奴ら(日本政府)にこの件を任せて連中がヘマを起こせば我々も巻き込まれて――「落ち着け。…この件は全て日本政府に一任するよう伝えろ」理事長!」

 

「彼らには男性操縦者とそのISに関するデータ収集や研究に関する全てを我々は黙認する。我々IS委員会は絶対に関わらず、尚且つ、何かしらの事故があれば日本政府が全ての責任を負うよう釘を指してある。これで幾分かはマシになるだろうが…それ以外にはまだまだ話すべきことがあるだろう…」

 

それから静かだった会議は先ほどと同じ様にうるさい程の議論が飛び交い始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

専用のヘルメットと共にISスーツを着たまま、第一アリーナへと移動したアルフレッド。

 

彼のISスーツには肌の露出面がなく、全身に被覆を付けたケーブルと手や首に突き出た機材が付いている。ヘルメットにはケーブルが何本も通っており、内蔵式の黒いバイザーも備わっている。

 

 

「これから行うのは、訓練機を用いた一対一の模擬戦を行う。簡単に言えば入学試験だ。訓練機は打鉄の予定だが…何か要望はあるか?」

 

「リヴァイヴはありますか?」

 

「ああ、リヴァイヴか。勿論あるぞ。だがどうしてリヴァイヴを?」

 

「別に。下手に日本で左ハンドルの外車に乗るより右ハンドルの日本車の方がいいでしょう?そういう事ですよ」

 

「そうか…少し待っていろ。今とってくる」

 

表情を変えずに淡々と話すアルフレッド。千冬が指示を出す間も、ヘルメットに書かれた文字とコネクターを見つめている。

 

「待たせたな。これから試験を始めるが、ISの搭乗方法は…」

 

「言われなくても分かっています」

 

そう言ってヘルメットを被り、ヘルメットに通っているケーブルをまとめたコネクターを首のパーツに差し込む。

 

「っ…」

 

ほんの少しだけ痛みを感じ、顔を歪ませる。

 

それから直ぐに普段の表情に戻り、手慣れた様子でラファール・リヴァイヴに乗り込む。

それを見ていた千冬も驚いた表情を浮かべるがすぐ平静を取り戻して試験開始を告げる。

 

カタパルトへと搭乗し、両腕にアサルトライフルのヴェントを握る。

 

 

 

カタパルトがアルフレッドの乗るラファール・リヴァイヴをアリーナへと打ち出す。

 

アサルトライフルのヴェントを握り、機体をうまく操りその場所に静止する。それから直ぐに、教員用にペイントされたもう1機のリヴァイヴがアリーナのもう1つのカタパルトから発進する。

 

彼の相手は山田真耶先生だった。あがり症か、ただ緊張しているだけかは分からないが、言葉が途切れ途切れになっていた。

 

「よっ、よろしくお願いします、アルフレッド君!」

 

Ja, bitte tun Sie das.(ええ、よろしくお願いします)

 

千冬と一人の少女がピット内で行われている模擬戦を管制塔から監視していた。彼らの戦いを見る中、最初に口を開いたのは千冬の方であった。

 

「楯無。どう思う?」

 

「明らかに素人がしていい動きじゃありません。たった数分前にISを渡された人間では到底あんな動きはできませんよ」

 

「やはりそうか、それに、武装の切り替えも非常に素早い。アルフレッドが着ていたISスーツとヘルメットのおかげなのかどうかは分からないが…仮に機械の補助込みでも高速切替(ラピッド・スイッチ)の域に達している。何年も前からISに乗ってきたか…それとも――」

 

「…本当の命の奪い合いをして来た人間か。先生は彼のことは何者だと思いますか?」

 

「…さあな…スイス生まれの遺伝子強化試験体(アドヴァンスド)か、亡国機業(ファントムタスク)のスパイか、もしくは戦場を渡り歩いてきた傭兵か…これ以上は予想できんな」

 

「私も先生と同意見です。部屋割り…どうしましょう?」

 

「確か、1年3組の教員部屋に1つ空きがあったな?」

 

「…余りいい考えとは思えませんが」

 

「新人教師の…ナターシャ・キオラだったか?少しだけこっちでも調べて見たが…シュヴァイツァー家とは仲が良いようだしな」

 

「それに残りの2人の教師もそれなりに腕の立つ奴だ。それにだ、女と男でタイマンを張れば負けるが4人なら男1人くらいは十分倒せるだろう。全員が腕の立つ奴なら尚更だ」

 

「そうですね」

 

楯無がそう言うと同時に、両手にサブマシンガンのガルムを装備したアルフレッドは、その連射速度による制圧力によって真耶のリヴァイヴを倒していた。

 

 

 

 

夜の8時、IS学園の生徒と教員が使う寮まで楯無に案内されるアルフレッド。

 

「それで…織斑先生から伝えられた通り、君はこの学園に入るにあたり、スイスの国家代表として入学します。これはスイス政府、並びにスイスの現連邦大統領からの要請によるものです。IS学園内での他人への無意味な殺傷、暴力行為、その他の裁判や犯罪扱いされる行動は全てスイスの法によって裁かれます。飲酒喫煙なども同じです。IS学園内での銃火器の携帯は許可されているけど、実弾、非殺傷弾又は警棒や銃剣を使用した自衛行為はその必要があると感じた時にのみ行うこと。銃火器や近接格闘を使用した自衛で発生した損害などの責任や賠償金の支払いはこちらもスイス政府がすべて担当します。一応言っておくけれど持ち込んだ銃火器は全て調べたうえで、貴方のクラスの担当教師に預けてあるわ。」

 

「…長ったらしい説明をどうも」

 

若干イラついた調子で答えるアルフレッド。

 

「むーっ、お姉さんが頑張って説明したのに酷い!ていうかもっと年齢相応の反応ってのを――「あーはいはい分かりましたからとっとと私の部屋まで案内してくれませんか?私は一応公務員なんですよ。仕事があるです」…わかったわよ…」

 

そう言って拗ねる楯無。

 

(日本政府はよくもまあこんな奴に国防なんか任せるもんだ。ここの連中も緩み切ってる。こんなんじゃいつか死人が出るな…)

 

そんな楯無をほったらかしてそんなことを考えるアルフレッド。

 

「ほら!ついたわよ!」

 

「ん」

 

「…なに?」

 

「鍵は?」

 

「ふふん。教えてほしかったら私の事を楯無お姉ちゃんと――Geben Sie mir schnell die Schlüssel.(早く鍵を渡せ。) Ich habe nicht so viel freie Zeit wie Sie.(お前みたいに暇じゃないんだ。)…はい…」

 

渋々と言わんばかりアルフレッドに鍵を渡す楯無。

 

「…どうも……なに見てる!とっとと自分の部屋に帰れ!」

 

愚痴りながらカードリーダーにカードキーを通す

 

「ちっ…どうして俺の周りには面倒な奴ばかり…」ガチャ

 

「お!アルフレッド君じゃん!朝使ってたライフルを少し触って見たけど良いもの使ってるじゃん!これどうやっていじる――バタン!…」

 

Du lügst, lass mich in Ruhe.(嘘だろ、勘弁してくれ)…」

 

 

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