インフィニット・ストラトス ~Bird of prey~ 作:Hans Ulrich Lutz
《side ナターシャ・キオラ》
料理の匂いで目が覚める。まだ朝の5時、スマートフォンのアラームが鳴るのにも目を覚ますにしてもまだ早すぎる。
「♪~~♪~♪~~~」
アルフレッドの鼻歌が聞こえてくる。昨日の夜にかなりの量のリキュールを飲んでいたはずなのにとても元気そうだ。
「ふあぁー…おはよう…」
大きなあくびをしながら挨拶をかける。
「
「ああ…随分と…あー、元気じゃないか?」
「ええ、前からよく乗ってたバイクが今日
「それで早く起きたって事か…」
「ええ、2人はまだ?」
「寝てるよ。ぐっすりだ」
「そうですか。貴方の分も含めて朝ご飯は作っておいたので…6時か7時…ぐらいに2人を起こして食べてくださいね」
「分かった、ありがとうな」
「私はもう食べたので、早めに着替えて行って来ますね」
「分かった、私はもう少し寝るから。気を付けてな」
「ええ、分かってます」
「あ、そうだ。今日、始業式が8時ぐらいからあるから早めに帰って来いよ」
「了解です」
「じゃ、気を付けて」
そう言って話を終わらせて、私は布団に戻った。
《side アルフレッド》
私服に着替え、必要な書類や道具などが入ったカバンを持って部屋を出て、IS学園のモノレール乗り場まで歩く。
『ふーん。随分と…早起きよね』
「これから毎回人の車を借りなくて済むからな」
『この時間…警備員って仕事してたっけ?』
シュヴァルベがそう聞いてくる。
「いや、今は監視カメラだけだぞ」
普段なら警備員がいるであろう正門にある詰所を指さす。
『ほんとね。結構警備はザルなのね…モノレール使っていくのよね?』
「当たり前だろ。馬鹿かお前。あそこまで歩いていくと思ってるのか?」
『バカって何よ、バカって。IS使って飛んで行くかなと思って聞いただけよ』
「IS使ったら面倒ごとに発展するからめんどくさいんだよ」
『そういやそうだったわね…面倒じゃない?』
「面倒に決まってるだろ?ISを使って移動するくらい
シュヴァルベとそんな会話をしながらモノレールの待合スペースにある椅子に座り、モノレールが車でスマホを触る。
「…これと言ってなんか面白いものないな」
直ぐにスマホをしまった。
『あきるの早っ…あっそうだ、何でも最近
「…で?本音は?」
『ざまぁみろ!って感じ?』
「相変わらずひねくれてんな…」
『今更じゃない?それはそうと…モノレール来たみたい』
「ん」
『「ん」だけじゃなくてもっと何か言葉付け足してくれない?わかりずらいのよ…』
「未だに俺の返事の仕方を理解してないお前が悪い」
『なんでそうなんのよ?』
そんな他愛のない会話を交わしながらモノレールに乗る。目指すは在日スイス大使館。6時半か7時までには着きたいところである。
――――――――
在日スイス大使館前、6時半37分
『結構早く着いたわね』
「早いほうがいい、後々なんかやらかしても対処する時間がある」
『そうね』
大使館の入り口にある検問の窓を軽く手で叩く。
「
「
「お久しぶりですね、大佐どの。身分証明書を見せてもらっても?」
「ああ…ちょっと待ってくれよ…ん、ほらよ」
「どうも。わざわざIS学園から?」
「ああ、モノレールに乗って…後はタクシーで」
「なるほど。バイクに関してはもう既に組み立ててあるそうなので、後は書類を出すだけです。あ!ちゃんとヘルメットは付けてくださいね?ここはスイスじゃなくて日本なので。とりあえず、身分証はお返しします」
「わかってるさ。じゃ、頑張れよ」
「そう言って貴方は何回ノーへルでバイクを乗り回したんですか?ま、今じゃいい思い出ですけどね。そちらも頑張ってくださいね」
「ああ、また後で」
そう言って検問所にいた警備員との会話を終わらせる。
『意外ね。貴方ノーへル運転とかしてたのね』
「ああ、一時期な。顔に当たる風の感覚が好きでな」
『ISじゃ味わえない快感ってやつね。前のパイロットが言ってた』
「ああ、そういうこと」
『そうしてみると血筋の力ってすごいのね』
「…そうだな」
『あれ…今の地雷だった感じ?』
「まぁな…」
『次からこの手の話題は控える事にしましょう…そのほうが私も楽だし』
「だな」
駐車場に止めてある1台のバイクの前で止まる。
『これ…?』
「そ、これ」
目の前にはつや消しが施されたグレーカラーのコンドル A350があった。
『随分と…古い…奴じゃないこれ?』
「1970年代のやつだよ。軍の予備品の倉庫にほったらかしにされてたから…な?」
『それはー…ま、いっか。埃被ってるくらいなら使ったほうがいいし。で…ヘルメットは「大人しく着けると思うか?」ちゃんと着けないとサツにつかまると思うんだけど』
「知ってるよ」
バイクのエンジンをかけ、ヘルメットを着ける。
「じゃ、帰りますか。シュヴァルベ、今何時?」
『6時54分。多少寄り道しても十分間に合うけど?』
「さっさと学園に戻る。言い訳考えるのがめんどいし」
『ん、りょーかい』
「お前も俺の返事の仕方が移ったな」
『ねー』
その後もくだらない会話をシュヴァルベとしながら、そのままバイクに乗って学園まで走った。
――――――――
高速道路、IS学園行き
「結構ギリギリじゃないか?」
『ギリギリじゃなくて遅刻ね。もう8時過ぎてる』
「でも始業式には出ないから実際は関係ないんだよな。コーヒーブレイクしてた時に始業式に遅れるってメールしたから大丈夫でしょ、…多分」
『結構時間の決まりとか緩くない?私としてはうれしいんだけど』
「そうだな、IS学園が見えてきたし…そろそろ着くか」
「…っ!」
ハンドルを左に切る。
直後、数発の弾丸が地面に命中した。
「
『ほんとね…ほら、殺しに来たやつのお出ましよ』
空を見ると水色の装甲と大きなランスを持ったISがいた。
「あの機体…
『ええ、パイロットは更識楯無、日本の暗部、更識家の現17代目当主よ』
「そうかい…おい、何の警告もなく生身の人間に射撃とは随分といい心構えじゃないか、ええ?」
『あなたがアルフレッドね?』
『今すぐバイクから降りてISを渡しなさい』
「…は?」
突然すぎて理解が追い付かない。
「なんだこいつ…」
『あー…如何やら日本政府とあいつの前当主から貴方を捕縛するよう命令されてるみたいね。付け足すとIS委員会の許可つきよ』
「"女尊主義者の役員"が足りないな」
『聞こえてなかったのかしら?早くISを渡しなさい。でないと…』
突然、頬に痛みが走る。
「っ…」
頬の痛みが走った部分を指でなぞり、見る。
「…あのクソアマ、やりやがったな?」
指には血がついていた。
『やっちゃいましょ!ほら、時は金なりよ!』
「ハァ…シュヴァルベ、バイクとヘルメットしまえるか?」
『ええ、もちろんよ…で武装は?』
「《シュトラール》、《ミルヒシュトラーセ》、《シュヴェールト》。あと背中に《メテオール》と《ナーデル》を」
『りょーかい。どうせだしぃ…ブリュンヒルデ呼んじゃう?』
「頼む」
バイクから降りる。
『早くISを渡してくれるかしら?』
「ISを渡せって?ほしけりゃ…――
ISを展開し、武装を構える。
力尽くで奪うことだな!」
シュトラールを霧纏の淑女に向けて発砲する。
『ちっ!…いいわ!望み通り力尽くで奪ってやるわ!』