2008年2月25日。
嵐のような猛吹雪の中、小さな牧場でその馬は誕生した。
立春を越えると暦の上では春となるものの、北海道や東北のような雪深い地域ではそんな区切りは意味をなさない。
凍てつくような空気の中、数人の牧場スタッフに見守られながら母馬が産み落としたのはクリーム色の仔馬だった。
「あ、あ!!生まれましたよオーナー!!
わぁぁ、お母さんと比べるとやっぱりちっちゃい……」
「栗毛にしては明るい気がするけど仔馬だからこんなものか?」
仔馬を見つめてやいのやいのと話す2人はここ芳松牧場のスタッフである
「頑張ったわね、プランタンガール。お疲れ様」
「ようやく生まれたか。」
母馬であるプランタンガールを労るのはオーナーの妻
生まれたての仔馬を愛おしげに見つめるのはこの牧場のオーナーである
「しかし、今まで見てきた馬たちに比べて小さい気がするな。
ちゃんと育つかなぁ……」
「それを育てるのが私たちの仕事でしょうが。
ガールだってどっちかといえば小さい馬だったし……いやまぁそれにしたって小さい気はするけど……父馬のミホノブルボンはムキムキで大きい馬だったと思うし、大器晩成型って事で!」
出生時の体重は平均より軽い35kg。
こんなに小さな馬が後に短距離戦の名役者になる事は、まだ誰も知らない。
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
いやさっむ。
馬として生を受けての第一声がこれは自分でもちょっとどうかと思うけど寒すぎる。洒落にならんよこれ。
まぁそれもそのはず、今ここは猛吹雪の屋外。
母馬は髪の長い女の人に労られてどっか行きました。
仔馬を置いていかないでほしい。切実に。
凍死しちゃうじゃん……。
スタッフっぽい2人ともう1人のおじさんはなんか喋りながらこちらを見ていた。
生まれたばっかりなんだからもう肉にするとか言う話はしてないよね?大丈夫だよね?
そんな一抹の不安を抱えながらとりあえず足に力を込めて立ち上がった。
神らしき人物(といっていいのか分からないけど)に別れを告げた後から薄々勘付いてはいたものの、どうやら自分は牝馬として生まれたようだった。
だってなんか一人称が自動的に「私」に移行したし。
ぐだぐだ考え事してても何にもならないのでとりあえず体を温めるために走り回る事に……あれ?
走れない。
普通に走れない。
なんなら生まれたての子鹿レベルで足ガッタガタである。
生まれたての仔馬が普通どれくらいで立つものか知らないけどこんなに足が震えるものなのだろうか。
「あ!立ち上がりました……え?立ってるよね?」
立ってます!!!!
「やべえこいつ足……ふっ、やば、足……」
男の方笑いすぎでは?
……。
走り回って体あっためるのは無理そうなのでやめます。
ふて寝してやる。
冒頭の部分最初は「その馬は生まれた」だったんですけど、作者が謎の笑いを堪えられなくなったのでやめました。
あと主人公は馬になった事で若干ですが知能が下がってるので言葉遣いが砕けました。
ヒト時代の記憶まるまる受け継いで良いよとは言ってないからね。