春嵐   作:パズル飴

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最近タイトルのつけ忘れが多くて恥ずかしい


私と馬着とご飯と自主練

さて、長い長い北国の冬を越えて馬として生まれて初めての春が来た。

とはいえまだ私が起きる時間は薄暗く、空気もひんやりとしている。

馬としてはそこそこ遅起きな方だと思うけど、それでも日の出よりは普通に早い。

 

「ラーンー、おはよう。馬着脱ごうねー」

 

えっやだ。これ意外と着心地良くて気に入ってるんだよ!?

雪の上転がってもちょっと顔が凍りかけるくらいで済んでたからお気に入りなんだよ!!

もうちょっと着てても良いよねお願いお願いの意を込めてきゅるんと上目遣いしてみるものの、菫の返答は変わらなかった。

 

「ダダこねてもダメ。日が上って暑くなったら大変でしょ」

 

そんなぁ!

ショックを受けながら冬の間に着せてもらっていた真っ白な馬着と渋々お別れを果たす。

最初はあんなに雪積もるのに真っ白なやつ着て大丈夫なのかと不安になったが、私はどうやら芦毛ではなさそうなので大丈夫だった。

良かった、雪に埋もれて馬版テケテケみたいに見えるとかならなくて本当に良かった。

縁起でもないな、やめようこの話。

成績残せなかったらよっぽどエンターテイメント性のある馬でもない限りウマ娘になんてなれないだろうし、ストレートお肉行きとかは本当に避けたい。

 

ちなみにランというのは私の幼名である。

ハルトが「生まれた日の吹雪やばかったしアラシで良いんじゃねえの」と言ったところスミレが「女の子なんだから可愛い名前が良いでしょ!」と猛反対し、「嵐」を音読みした「ラン」と名付けられた。

どうしても嵐が良かったのだろうかという疑問はさておき、前者を聞いて某アイドルグループが頭を過った私は彼女に感謝するべきかもしれない。ランにしてくれてありがとう。

 

「今日は兄さんが風邪ひいて休みだから私が飼葉もってくるねー。お腹空いてても柵とか噛んじゃだめだよ」

 

噛まないよ!

不満の意をたっぷり込めて鼻を鳴らすとスミレは明るく笑いながら一度姿を消した。

私が暮らしている芳松牧場だが、スタッフはハルトとスミレの2人だけっぽい。

もしかしたら他にもいるのかもしれないけれど、まだ見たことがないので2人と仮定する。

私の他にここにいる馬は母であるプランタンガールと2年ほど前に引退して帰ってきたというネオプランタンの2頭がいる。

プランタンガールは割とおっとりめな性格でのんびりしてる。

ただ生まれて何日か経っても私のこと認識しなかったり牧場内を散歩してる時に突然私の進路にある草を食み始めたり、と天然という言葉で片付けて良いものか不安な言動もちらほら。

ネオプランタンさんは静かな牡馬。

知恵が回る人(馬だけど)みたいで夜中に自室の鍵をどうにかして解除して草を食べに出てきてる事がある。

夜中に物音がするなと思いながら放置して、起きたあと辺りを確認したら気に入ってるエリアの草がミステリーサークルみたいに消えてた時は泣いた。あれは許さない。

 

まぁなんだかんだで馬生満喫しちゃってる感はあります。

スミレはブラッシングとか掃除が、ハルトは意外と寝藁の管理とか飼葉の調整が上手。

秋になればこの2人や2頭とも離れ離れになるのかと思うとノスタルジックな気持ちになるけどまだ遠いし別に良いか。

 

優秀なお馬さんになるために今日ももりもり飼葉を食べて運動しましょう。

 

「ランはちっちゃい割に大食いだよね。体重もそこまで増えてないし、何か異常があるわけでもないし……」

 

むむむ、と唸るスミレを横目に見ながら優雅に朝ごはんを頂く私。

最初は草を食べることに抵抗があったけど、味覚はちゃんと馬仕様になってたみたいだしどんな形であれご飯がたくさん食べられるのは幸せなことなので無問題です。

 

放牧してもらったら広いところまで走っていって、ちょっとだけ休憩してまた全力で走り回る。

これでスタミナをつけておけば、トリプルティアラ……じゃなかった、牝馬三冠でも十分戦えるはず!

ここの牧場は敷地こそ広いものの設備は見た感じだいぶ古いので、私がたくさん稼いで親孝行せねば。

もう一本ダッシュ!

地面を踏みしめて、風を切ってとにかく前へ前へと進む。

 

走るのがこんなに楽しいなんて、ヒト時代じゃ想像もできなかったな。




主人公(幼名:ラン)
2008/2/25生まれの牝馬
父 ミホノブルボン
母 プランタンガール
母のガールさんは短距離マイルでそこそこ走ったお馬さんという設定です。
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