春嵐   作:パズル飴

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車酔いを乗り越えて

プランタンストーム、絶賛車酔い中です。

ヒト時代は電車の揺れとか入眠装置として割と好きだったし、高速バスの中で寝過ごした事とかもあったけれど、馬となった今はそうもいかない。

 

なぜかというと、今私が乗っている馬運車の車内があまり広くないので寝転がって睡眠をとるということができないからだ。

どうやら私は寝そべらないとまとまった睡眠をとれないタイプの馬だったようで、立っている状態だとまともに眠れない。

目を瞑って仮に眠れたとしても5分くらいで目を覚ましてしまう。

馬運車はたぶんゆっくりめに動いてくれているはず……なんだけど、今通ってる道路が綺麗に舗装されてないのかはたまたタイヤに何かあったのか。

振動が半端じゃないせいでなおさら眠れない。

文字に起こすならがたごとどころかドゴバゴって感じのが定期的に来る。

馬の器官の都合で吐くということも出来なさそうなので、ただひたすらに揺れと眠れないストレスに耐えながら体感3週間ほど。

実際はたぶんそんなに長くない。

 

 

 

外だ……!!

シャバの空気は美味いぜとか言ってみたりしながらよろよろと馬運車から降りる。

なんかもうすっごく久しぶりに外の空気を吸ったような気がする。

青い空!白い雲!というか雲が多くて白い空!

そして前方に人影発見!第一村人ではない。

あの優しそうな風貌はたぶんきっと写真で何回も見た高川さんだ。たぶん。

逆光気味なのもあって意外と顔がわかりにくかった。

 

「お、比良山くんお疲れ様。その馬が今日からうちに入る子だよね?」

 

「はい、プランタンストーム号です。父親があのミホノブルボンだそうで、もうそれ聞いた時びっくりして泡吹きそうになりましたよ」

 

「ははは、比良山くんは大袈裟だなぁ」

 

「笑わないでくださいよー、自分ほんっとうにミホノブルボン好きなんですよ!?まさか自分がその産駒の世話を担当できるなんて思いませんでしたし、今でもなんだか夢みたいで……」

 

ミホノブルボン!?

生まれた時にランがミホノブルボンがどうのこうのって話をしてたような気はするけどミホノブルボンって今はっきり言ったよね!?

サイボーグと呼ばれるほど機械的な逃げを打ったあのミホノブルボンが私の父親か……これは私も華麗なる逃げ足を披露する必要がありそうで不安になってきた。

母上が現役時代に逃げでぶいぶい言わせてなければ良いんだけど。

 

そんでもって、やっぱりこの人は高川さんだった。

ヒラヤマ(平山?)って呼ばれてる茶髪の人は会話内容から察するに私の厩務員になる人っぽい。

 

「さて、とりあえず今日は馬房で休んでもらおうかな。結構長い時間馬運車乗ってたから疲れてるだろうし」

 

なんと。

疲れてるのに今日からいきなり走り込みとか言われてたら地面に転がって全力で駄々をこねつつ拒否するつもりだったので、非常にありがたいお言葉だった。

 

「了解しました」

 

厩舎に向かう途中、ヒラヤマさんは寝藁をふかふかに敷き詰めておいたからしっかり休んでほしいとか何かあったらすぐに教えてくれれば良いとか、そんな感じの話をしてくれた。

初めて見た時正直ちょっと軽薄そうというか、ストレートに言うとチャラそうだなって思ったけど、厩務員という仕事についてるくらいだし馬には真摯に向き合ってくれる人のようだった。

 

馬房に行くまでの道のりで他馬に威嚇されるとかいう事もなかったし、人馬共に優しそうなここなら上手くやっていけるかもしれない。馬だけに!……ごめんなさい馬として生まれたからには一回言ってみたかっただけなんです許して。

 

 

「……なんでこの馬ひとりで焦ったりしてるんだろう?」

 

心の中だけで言ってるつもりだったのに、そんなに不審な挙動をしていたのだろうか。

軽くショックを受けつつその日は久しぶりに快眠できたのであった。




アーッ文字数が思ってたより少なかった!!後悔。
久々に文章書いたら思いっきり書き方忘れてて少し焦ったんですよね。
笑ってる場合じゃないわよ!
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