レジェンド ~精霊術師の軌跡~   作:ミヤシュン@

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文章を書くのが難しい上に、時間がかかるなぁ、と思いながら投稿してるけど、いずれ慣れるかな


第2話 魔獣術、発動!!

 ある建物の一室で、

 

 「ここは一体?」

 

 周囲を見回し、額にてを当て数秒考え込むが、すぐに何かを理解したかのように頷く。

 

 「そうか、俺はあの光球を吸収して……あぁ、なるほど。知識はある。そして意識は俺のままだ」

 

 呟きながら周囲を見回し、ようやく自分がベッドで寝ていたのに気が付く。床には魔法陣が描かれており、つい今し方まで眠っていたこの肉体に何らかの魔術を施していたのだろうと予想出来た。

ベッドから起き上がり、枕元に置かれていた衣服を身につける。

 

 「新しい肉体か。……どんな身体になったんだ?」

 

 あの光球、ゼパイルの用意してくれた水の入った桶へと自分の顔を映してみる。

 そこに映し出されているのは蒼銀色の髪をした青年の顔だった。顔立ちはどちらかと言えば中性的な美形よりと言っても問題無いと思う程度には整っている。目の色は綺麗な蒼色をしている。身長180センチ程度で、外見年齢は18歳前後といったところか。生前とさほど変わらないぐらいだった。

 

 「もっとも、ゼパイルから貰った知識によると十分とんでもない肉体らしいが」

 

 ゼパイルの知識によると一門が魔力と技術の粋を結集して創ったもので、不老処置を施されている。そして、不老ではあっても不死では無いというのがポイントだ。さすがに世界有数の魔術師たちが集まっても不老不死という人類の夢には到達出来なかったようだ。その代わりに驚異的な回復力が宿っており、身体能力に関してもかなり高性能に創られているらしい。

 ゼパイルの知識から自分の肉体の性能の知識を引き出し、大体の事を理解した後はテーブルの上にある水差しへと視線を向け、ふと気が付く。

 

 「そう言えばこの水も数百年前の物なんだよな」

 

 そう呟き、コップへと水を注ぎじっと見つめる。ゼパイルの言葉が正しいのなら、魔獣術の後継者を捜すためにあの光球になって世界の狭間にある精神世界に引き籠ったのが数百年前。当然この肉体や水、ベッド、衣服等にしても、ゼパイルが光球になる前に用意した物のはずだ。それがここまで新しい状態を保っているのを考えると、世界でも有数の魔術師たちが集まって出来た一門というのを実感することが出来た。

 まるで山奥の清水を今汲んできたばかりと言われても、信じられるほどに新鮮な水だ。あまりの美味さに一息でコップの中の水を飲み干し、さらに数杯。そしてようやく一段落する。

 ゼパイルの知識でどこにどういう物があるかは理解しているが、実際に自分の目で確かめる必要がある。そう判断し、最初に部屋の中を見回す。と、

 

 「ん? これは……」

 

 最初に目に留まった壁に掛けられている一枚の絵だった。そこには十二人が描かれている。地術、水術、風術、光術、闇術、時魔術、空間魔術、召喚魔術、錬金術、数術、古代魔術。そしてそれらを率いる火術を操るゼパイルの十二人だ。この絵に描かれている魔術師が一門の者たちはだとゼパイルの知識が教えてくれる。

 だが、その絵に目を奪われたのはそれだけではない。その絵の中の一人数術を操る人物の着ている服だ。それはどう見ても日本の中学生や高校生が着ている黒い学生服で本人も黒髪に黒目と日本人の特徴を備えている。ゼパイルの知識からこの人物のことを引き出す。

 

 「タクム・スズノセ。数術士、か。これはどう考えても俺と同郷だろうな」

 

 ゼパイルの知識にあるタクム・スズノセという人物は、不老の特性を持っていた。その特性を取り入れ、より改良されて創り出されたのが今の肉体だとゼパイルの知識が教えてくれる。

 だが、不老のはずの人物が死んでいる。それを不審に思い再度ゼパイルの知識を引き出す。

 その結果判明したのは、タクム・スズノセは大国の権力闘争に巻き込まれた末に毒を盛られたこと。その後、何とかゼパイルたちの下に逃げ込めたが、結局解毒が間に合わなくてそのまま……という流れのようだ。

 

 「王侯貴族が普通にある世界らしいから、権力闘争に巻き込まれたらそうなるか」

 

 ちなみにタクム・スズノセの使う数術というのは彼個人のオリジナル魔術であり、彼以外に扱える者はいなかったらしい。その効果は対象を数値化出来るというものだった。数術を魔眼化して肉体に存在している。

 

 「これは……時魔術を使ってこの屋敷の時間を止めていたのか」

 

 先程の部屋から外に出て塵一つ無い廊下を見て思わず呟き、そしてゼパイルの知識に導かれるように廊下を進み、数分と経たずに『この扉を開ける者、魔獣術の資格無き者には呪いが降りかからん』と書かれたプレートが掛けられている研究室へと辿り着く。

 この世界の文字で書かれている文章だったが、ゼパイルを吸収したことで、全く問題無くプレートの文字を読むことが出来ていた。

 ゼパイルの知識によると、魔獣術の後継者となれるほどの魔力を持たない者がこのドアを開けようとした場合その瞬時に燃やし尽くされるほどの業火が襲い掛かってくるらしい。

 

 「随分と過激なセキュリティだな」

 

 茶化すように呟きつつも、扉へと手を伸ばす。ゼパイルから魔獣術の後継者としてお墨付きを貰っていても万が一を考えてしまうのだろう。

 だが、伸ばした手はあっさりと扉へと触れ、簡単にドアは開かれる。

 安堵の息を吐きつつ、研究室の中へと入って行く。

 研究室の中は先程の部屋と比べてかなり広かった。およそ、三十畳ほどの部屋となるだろう。そのうちの半分、奥の方にある床には巨大な魔法陣が描かれている。入り口近くには、テーブルが一つ置かれているだけだ。

 ただ、その代わりという訳ではないのだろうが、唯一存在しているテーブルの上には細緻な飾りの施された宝石箱が置かれているのを発見した。手を伸ばして蓋を開けると中には、直径十センチ程度の腕輪が一つ入っていた。

 ゼパイルの知識によると、この腕輪はゼパイル一門の空間魔術師リズィ・フローと、世界最高の錬金術師と言われたエスタ・ノールの二人をメインに、数術士のタクムも協力して魔力と技術の粋を集めて作りあげた代物で、ゲームでよくあるアイテムストレージでは、名前は『ミスティリング』というらしい。

 思わぬ品にニヤリとした笑みを浮かべて、ミスティリングを一旦宝石箱の中へと戻し、続けてベッドの奥にある魔法陣へと歩み寄っていく。

 

 「これが魔獣術のための魔法陣、か」

 

 魔獣術。すでにそれがどんな魔術なのか、ゼパイルの知識から引き出して知っていた。

 この魔法陣の中心で呪文を唱えると、魔法陣が施術者から魔力を吸収する。そして吸収した魔力を基に魔獣が生み出されるのだ。

 生み出される魔獣は、施術者の魔力、内面、性格、深層心理、趣味嗜好といった様々な要素が複合的に関係してくるので、自分で任意に選んだりは出来ない。

 それだけならゼパイル一門の奥義と言える魔術とは言えないだろう。だが、この魔獣術により生み出された魔獣は、ある特性を持っている。すなわち、魔獣の体内に必ず存在している魔石を魔獣術により生み出された存在が捕食することにより、より強く、より強大に、より素早く成長・進化していくのだ。そしてその進化は捕食した魔石により千差万別であり、無限の可能性と称されるのに相応しい可能性をその進化の先、すなわち魔獣がどこまで強くなれるかについては、理論上では際限が無いとなっているが当然そこまで魔獣を育て上げた者は存在していない。だが、ゼパイル一門の魔術師が魔獣術で作り出した魔獣は、一国の軍隊を相手にしても互角以上に戦えるほどの存在と化していたらしい。

 ただし、注意事項として魔獣術で生み出された存在が捕食出来るのは、あくまでもその魔獣や魔獣術を使った者が戦闘に参加して倒した魔獣の魔石でなければいけないという制限がある。これは、敵の魔獣と戦うことにより魔石の放っている魔力と、自分の魔力の波長を合わせることが魔石を吸収するためのプロセスの一つとなっているためだ。

 すなわち、魔獣術とは己と共に育っていく魔術、とでも言い換えられる代物なのだ。

 なお、魔法陣が吸収する魔力が莫大なために、通常の魔術師では魔力どころか生命力や命といったものまで吸収されてしまい、さらに不純物が混ざってしまう関係で魔獣が生み出されずに儀式は失敗に終わる。

 改めて魔獣術についての知識を引き出すと、深く深呼吸をして魔法陣の上へと進み出る。

 

 (ゼパイルとの契約もあるし、何より俺自身が魔獣術とやらには興味を惹かれている。ならここで試さない手はないな。……にしても、俺はもう少し慎重だったと思ったけど……これも吸収の影響か?)

 

 内心で呟き、吸収前にゼパイルが言っていた変化、それがこれかもしれない。そう考えつつ、魔法陣の中央に立ち口を開く。

 魔法陣を起動させる呪文については、ゼパイルの知識の中に存在していたので躊躇いは無かった。

 

 『我、魔力と共に魔獣を生み出す者。魔獣と共に生きし者。我が魔力を喰らい、我が内に眠る魔獣をこの世に顕現させよ。我と共に生き、我と共に死す。その姿を現せ!』

 

 魔力を言葉に乗せて紡ぐのがすなわち呪文。本来なら数年の修行が必要なその行為も、ゼパイルの知識を受け継いだことで寸分の狂いもなくやってのけていた。世界最高峰の魔術師であるゼパイルですら驚いたほどの莫大な魔力をその言葉に乗せて。

 すると次の瞬間には魔法陣が光り始め、徐々に、徐々にその輝きは強くなっていく。放たれた莫大な魔力を吸収してその光を増しているのだ。しかし、いくら莫大な魔力を持っているとは言っても、その魔力は当然無限ではない。魔法陣が輝き始めてから五分、十分、二十分。

 

 「ぐぅっ!」

 

 やがて限界が近付き、魔法陣に片膝を突く。そして次の瞬間、すでに周囲を見ることすら出来ないほどの輝きを放った魔法陣が一際眩く輝き……唐突に魔法陣からの発光が消え去る。

 

 「で、出来た……のか?」

 

 限界近くまで魔力を魔法陣に吸い取られたため、半ば朦朧とした意識のまま周囲を見回す。その目に入って来たのは、艶のある黒。漆黒とでも呼ぶべき色の繭のようなものだった。その繭が次第にひび割れ……砕け散ったのを見た瞬間、意識は闇へと沈んでいく。気を失う寸前に感じたのは、ふさふさとした温かい何かと、『グルルゥ』という甘えたような声。そしてカランッ、バサァッと何かが床へと落ちる音だった。

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