レジェンド ~精霊術師の軌跡~   作:ミヤシュン@

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第4話 一門の遺産、ミスティリング!

 「これは……ホルスターと刀身の付いた二挺の銃?」

 

 腰に巻くタイプのホルスターと銃剣と呼ばれる武器だった。大きさは刀身を含めて、60センチ程の大型拳銃だった。また床には、黒一色に蒼の縁取りと銀色のラインが入った服が、落ちていた。

 

 「これを、どうしろと?」

 

 「グルゥ」

 

 これはお前のだ、と言わんばかりにクチバシに咥えたホルスターを差し出され、反射的に受け取り腰に巻き、銃剣を抜く。銃身と刀身は黒く、刃の部分は右が紅、左が蒼と左右で色が違う。銃身には、銀色の龍が刻印された銃剣を手に、リオはふと思い出す。

 

 「そもそも俺が研究室に来たときは銃剣や服は存在していなかった。いつの間にかあったんだよな。……考えられる可能性は一つ、だな。」

 

 今日だけで何回目だろうか。再度ゼパイルの知識から情報を引き出すと、その結果はすぐに出た。

 

 「やっぱり魔獣術が原因、か」

 

 ゼパイルの知識によれば、魔獣を生み出す過程で莫大な魔力が放出され、生み出された魔獣が許容出来る以上の魔力が放出されると、その余剰魔力はマジックアイテムとして生み出されるらしい。もちろんそうなるよう術式に手を加えたのはタクムだった。

 だがゼパイルやその一門が行った儀式では、放出された魔力全てが魔獣を生み出すのに使用されていたため、マジックアイテムが生み出されることは無かったらしい。つまりタクムがお遊びで付け加えた術式が、リオの莫大な魔力ゆえにその効果を発揮したのだ。

 

 「で、タクムが関係しているとなると……」

 

 その二挺の銃剣を手に、ステータス、と内心で呟くリオ。すると当然とばかりに持っていたマジックアイテムのステータスが脳裏へと表示される。

 

   【双龍銃剣 右:神焔 左:煌焔】

 

 「名前は、双銃剣に龍の刻印があるからで、左右のそれぞれの銘が、神なる焔と煌めく焔か、大層な銘が付いたな。」

 

 とは言っても、文句を言うべきタクムはすでにこの世に存在していない。溜息を吐きつつも双龍銃剣の説明を読んでいく。

 一つ目の能力は、魔力や使用者の精霊術を吸収して、刀身に纏わせたり、銃身から撃ち出すことができる。また、精霊術の発動を補助する能力がある。

 二つ目の能力は、魔力を流すことで刀身の形状を変える能力と、二挺を一つにすることで双刃劍やバスターグレイブ等の武器に変形機構を持つ。

 三つ目の能力は、セトと同じく魔石を吸収してスキルを獲得することが出来る。同時にセトと同じように獲得したスキルのリスト化も可能。二つで一対のマジックアイテムのため、吸収する魔石は一つでいい。

 四つ目の能力は、重量軽減。双龍銃剣と同じ魔力波長を持つ者。つまりリオとセトに限り、殆ど重さを感じずに扱える。一方で、それ以外の者が持った場合は本来の重量となる。

 五つ目の能力は、魔力を流すことで双龍銃剣としての基本性能が上がる。魔力を吸収して自己修復もできる。

 これらの事柄が脳裏のステータス一覧には表記されていた。

 

 「これは……確かにこれだけで様々な状況に応じて武器の形状を変えれるのは嬉しい。嬉しいんだが……習得するのに時間がかかるな」

 

 性能と能力は圧倒的だが、使いこなすのが難しそうな二刀流のマジックアイテム。それが、双龍銃剣を持って感じたことだった。

 試しに、刀身を大きくしてから双龍銃剣を持ち上げ、重量軽減と形状を変える能力の効果を早速実感する。

 本来、この大きさの金属なら重量は10㎏や20㎏どころではないだろう。だが、今リオが持っている双龍銃剣は殆ど重さを感じない。感覚的に100gあるかどうかといった所か。

 

 「確かにこれは凄いな」

 

 「グルゥ」

 

 リオの言葉に、セトも喉の奥で鳴いて同意する。

 

 「となると、そっちの服もマジックアイテム、か」

 

 そう言って、床に落ちている服の一つを手に取り、双龍銃剣同様に、ステータス、と内心で呟く。そして、ステータスが脳裏に表示される。

 

    【黒七曜の装衣】

 

 「見た目どおりの名前だな。……七曜は、属性のこと、か」

 

 名前に納得して、黒七曜の装衣の説明を読んでいく。

 一つ目の能力は、物理防御、魔法防御、衝撃防御と破格の防御能力を誇る。また、魔力を流すことで基本性能が上がる。

 二つ目の能力は、防汚機能で、魔力を流すことで汚れを落とすことができる。

 三つ目の能力は、自己修復機能を持ち、魔力を吸収して破損部位を直すことができる。

 

 「これも、防具として優れた能力ばかりだな」

 

 「グルゥ」

 

 それを見ていたセトも、そうだね、と鳴く。

 

 「さて、最大の目的であった魔獣術は無事継ぐことが出来た訳だが……これからどうする?」

 

 セトの、まるでシルクのような滑らかな毛を撫でながら呟くリオだったが、これからの目標はともかくこのままこの建物にいるという訳にはいかないというのはすぐに分かった。何しろ飲料水はともかく、食料が十日分程しか残っていない。

 

 「いや、食料はあっても俺の分だけでセトの食べる分が無いな」

 

 魔獣術で生み出された存在だといっても、当然生きている以上は食料は必要だ。セトの体長は2メートル以上という大きさを考えると、この屋敷に留まっていられるのは一日。頑張っても二日が限界だろう。

 

 「と言う訳で、早めに人のいる街なり村なりに行かないといけないんだが……」

 

 ゼパイルの知識によると、この屋敷は空間魔術による結界が張られているのだが、周囲の森には凶悪な魔獣が多数生息しているとある。何故そんな場所にこの屋敷を建てたのかと言えば、ここがゼパイルたちにとって一種の避難所のような場所だったからだ。そのため、凶悪な魔獣が多数生息しているこの森に強力な結界を張って魔獣は屋敷に入ってこられないようにし、なおかつ外敵への防衛用に魔獣を利用することを考えたのだ。

 

 「それはいいんだけど、この世界初心者の俺がそんな魔獣の住んでる森を抜け出せるかどうか……ってのは考えて欲しかったんだがな」

 

 愚痴るように呟き、思わず溜息を吐くリオ。

 

 「グルルゥ」

 

 片方2メートル近くもある翼を広げるセトだったが、リオは軽く首を振る。

 

 「空を飛んでいくのはちょっと難しいな。何しろ竜種すら住み着いているらしいし」

 

 「グルゥ」

 

 「気にするな。そもそもセトにしろ俺にしろ、どれだけの力を持っているのか分からないんだからな」

 

 セトの頭を撫でながら慰めるように話し掛けつつ、何か無いかと周囲に視線を向けると宝石箱が視界に入る。そう、ミスティリングの入っている宝石箱がだ。

 ミスティリングの中に何か使える物があるかもしれない。そんな期待を胸に宝石箱の前へとセトと共に移動する。

 

 「グルルルルゥ」

 

 何故か宝石箱を見て機嫌良さそうに喉を鳴らすセト。その様子を見ていたリオは、グリフォンは宝物を集めるという伝説があったのを思い出す。

 

 「セト、しばらくその宝石箱で遊んでていいぞ」

 

 「グルゥ」

 

 その言葉に、セトは嬉しそうに宝石箱へと頬を擦りつける。リオはその様子を微笑ましげに眺めながらミスティリングへ右手を通す。するとリオの腕よりも幾分か大きかったはずのミスティリングは見る見る縮まり、リオの手首に丁度いい大きさへと自動的に変化した。

 

 「で、ゲームとかだとリストが表示されるんだけど……あぁ、思うだけでいいのか」

 

 脳裏に電話されたリストを見たリオは思わず溜息を吐く。確かにミスティリングの中には幾つかの本と道具、それもマジックアイテムが入っていた。だが、その数は全部で十にも満たず、最も期待していた食料の類も存在していない。

 しょうがないので、現状を打破するために必要そうなマジックアイテムをゼパイルの知識から探っていく。その結果見つけたのは自分がどの系統の魔術を使えるのかが分かる『診断のオーブ』と呼ばれる使い捨てのマジックアイテムだった。

 世界最高峰の魔術師であるゼパイルから莫大な魔力を持っていると断言されたリオは、自分がどのような魔術に向いているのかを確認するためにも診断のオーブをミスティリングから取り出して自分の魔術適性を調べることにする。

 自分の魔術適性を想像しながら診断のオーブへと掌を置く。これで使用者の魔術適性のシンボルがオーブへと現れるのだ。例えば水の魔術適性がある場合は水滴が、空間魔術の適性がある場合は扉が、錬金術の適性がある場合はフラスコが、という具合にだ。

 そして期待しながらオーブへと視線を向けたリオの目に映ったのは炎、水、土、風、雷、氷、光、闇に周囲を囲まれた精霊のシンボルだった。そして、精霊のシンボルが現れたと同時に使い捨てのマジックアイテムでもある診断のオーブは、サラサラと細かい砂のようになって崩れていった。

 

 「待て。ちょっと待て」

 

 数秒と経たずに消え去った診断のオーブのあった場所を見て、思わずといった様子で呟く。

 

 「グルゥ?」

 

 少し離れた場所で宝石箱を愛でていたセトも何かを感じたのか、振り向いてリオの方へと視線を向ける。

 

 「俺の魔術適性が全属性系統のなんだ?」

 

 属性のシンボルに囲まれた精霊の意味が分からず、ゼパイルの知識から情報を見つける。

 

 「精霊術。詠唱と魔法発動体を必要としない魔術、か。」

 

 精霊術。術者のイメージを魔力に込め、マナと呼ばれる自然エネルギーに伝えて魔術的事象を発生させる。発動速度と規模は、術者の技量に左右されるが、自由度が高く応用がきき、術者のイメージ次第では、様々な事象を発生させることができる。魔力の感知、魔力の可視化、マナの感知と三つの技能を習得してと、習得難易度が高く、才能の有無と才能の開花に左右されるために使い手が少ない。

 

 「なるほど……。精霊術に関しては分かった。双龍銃剣の能力も俺の適性が精霊術だったからか。全属性の系統が使えるのはいいな。森の中でも安心して使えるし。……ただ、練習する時間は無いな。」

 

 本来なら十日分の食料があるといっても、それはあくまでリオだけを対象にした場合だ。2メートル以上の肉体を持つセトにしてみれば、それこそ数食分にしかならないだろう。このままこの屋敷に残っていたら餓死をする。ゆえに明日にでもこの屋敷を出てなるべく早く村なり街なりに向かうというのがリオの出した結論だった。

 

 「なら、まずは精霊術をきちんと使えるかどうかの確認だな」

 

 未だに宝石箱を愛でている様子のセトからも心配そうな視線を向けられつつ、魔獣術に使う魔法陣から少し離れた場所へと移動する。

 一応床に描かれている魔法陣は魔獣術以外に反応はしないと知識は教えているが、それでも念には念を入れて困ることはないだろう。

 深く深呼吸をして意識を集中。すると自然に己の身に宿っている魔力を認識し、魔力を可視化し、マナの感知をすることが出来た。

 自身のイメージを魔力に込め、マナに伝達することで精霊術が発動する。また、技名を言うことでイメージを補強することができる。

 思い描くのは、光の玉をイメージし、伝達する。

 精霊術により世界の法則が書き換えられ、リオのイメージが浸透していく。

 

 『光玉』

 

 詠唱によりイメージが固定され、リオの右手に拳大の光が現れる。

 

 「人生初めての魔術、いや、精霊術、か」

 

 正確に言えば魔獣術こそがリオの人生初の魔術だったのだが、魔獣術は床の魔法陣の上で特定の呪文を唱えると魔法陣が施術者の魔力を吸収し、魔獣を生み出すという殆ど自動的に行われる魔術だ。最初から最後までを己の意志で行ったという意味では、確かに今の光の精霊術がリオが自力で行った人生初の精霊術と言えた。

 

 「練習はしたいがこれ以上はちょっと難しいな。下手をしたらこの屋敷が壊れる可能性もある。特に魔獣術の魔法陣を消失するのは絶対に避けたいし」

 

 チラリ、と魔獣術の魔法陣へと視線を向け、時間は無いとばかりに次にやるべきことを思い出す。

 ミスティリングの中に入っていたマジックアイテムの確認だ。その中の一つは使い捨てのものだったが、ゼパイルの知識によると残りはきちんとしたマジックアイテムだったからだ。

 よほど宝石箱が気に入ったのか、猫のように喉を鳴らしながら顔を擦りつけているセトを横目に、先程同様にミスティリングのリストを脳裏に展開する。

 まず最初に目に入ったのは『ドラゴンローブ』だった。武器と防具共にあるが、予備は必要だ、と思ったから探したが、それっぽいのはドラゴンローブしか無かったのだ。

 小さく溜息を吐き、ゼパイルの知識からドラゴンローブの情報を引き出す。

 幸い、ミスティリングの中に入っている各種のマジックアイテムに関しては、ゼパイル曰く最小限の知識の中に入っていたので問題無く情報を引き出すことに成功する。

 

  【ドラゴンローブ】

 数百年を生きた竜の革を利用して作られたローブ。皮自体を竜の血や骨粉を使って染め上げているので、破格の魔術防御を誇る。また、竜の革を二枚重ね合わせて作らているローブで、革と革の間に竜の鱗を挟んであるために物理的な防御力も高い。使われている革は火竜と水竜の物なので、暑いときには涼しく、寒いときには暖かくして快適な着心地を得られる。一見して高性能なマジックアイテムには見えないような隠蔽効果や魔力を通すことによりあらゆる汚れを消去する効果も付けられている。

 

 「なるほど。防御能力では、コートもローブも似た性能だけど、温度調節機能は助かるな。普段はローブでいいか」

 

 そう言い、ミスティリングのリストからドラゴンローブを選択すると、次の瞬間には右手に黒いローブが現れている。

 ドラゴンローブを身に纏い、次のアイテムへと目を移し、先程同様にゼパイルの知識から情報を引き出す。

 

  【スレイプニルの靴】

 八本足を持つ馬型の魔獣であるスレイプニル。その速度は地上を走る魔獣の中でも最高峰であり、なおかつ空をも走ることが出来る。その魔獣の革を使って作りあげた靴。効果として装備している者の速度を上げてくれるというものと、数歩ではあるが空を蹴って跳ぶことが可能になる。

 

 

  【風操りの腕輪】

 装備している者に飛び道具、あるいは攻撃魔術が放たれたときに一度だけだが防いでくれる。使用後は十時間経たないと再度の効果を発揮しない。

 

 

  【剛力の腕輪】

 装備している者の力を上げる腕輪。

 

 

  【吸魔の腕輪】

 装備している者が敵を攻撃してダメージを与えた場合、ダメージ量に比例して魔力を吸収する。

 

 

  【ミスリルナイフ】

 魔力と親和性の高いミスリル鉱石。その中でも最も高品質な鉱石を使って作られたナイフ。流した魔力量によって斬れ味が変化する。

 

 以上の五つをミスティリングから取り出して床へと並べる。

 使い捨てでもあった診断のオーブとミスティリングを合わせてこの八つのマジックアイテムとモンスター辞典と何故かある料理関係の本がゼパイルがリオへと残した遺産だった。

 黒七曜の装衣に着替え、双龍銃剣の入ったホルスターを腰に巻き、ミスリルナイフの入った鞘を腰にぶら下げ、精霊術を使う関係上吸魔の腕輪を左腕に身に付け、コートをミスティリングへ収納し、スレイプニルの靴を履き、ドラゴンローブを身に纏ってからセトへと声を掛ける。

 

 「セト、ちょっとこっちに来てくれ」

 

 「グルゥ?」

 

 リオの呼びかけに、何? と小首を傾げたセトが宝石箱から離れて近寄ってくる。

 そしてそんなセトへと風操りの腕輪と剛力の腕輪を差し出す。

 

 「このマジックアイテムをセトに身につけさせたいんだが、いいか?」

 

 「グルルゥ」

 

 主人であるリオからのプレゼントに嬉しそうに喉を鳴らしながら左右の前足を差し出す。

 

 「これは……嵌められる、のか?」

 

 どう考えても腕輪の大きさよりも足の方が大きい。そう思いつつも、マジックアイテムだけに何とかなるだろうた判断して右足に風操りの腕輪、左足に剛力の腕輪を近づける。すると次の瞬間、スゥッと浮かび上がった腕輪が大きさを変えてセトの両足へと綺麗に収まった。

 さすがマジックアイテム、と感心しながら嬉しそうに喉を鳴らすセトの頭を撫でるリオ。

 武器に魔獣術で作成された双龍銃剣と腰に装備しているミスリルナイフ。防具に竜の革を使ったドラゴンローブと黒七曜の装衣。足下にはスレイプニルの靴。右手首にはミスティリングを装備し、左手首に吸魔の腕輪。本人は全く自覚していないが、セトに装備させたマジックアイテムも含めて、この世界では超一級品とも言えるマジックアイテムばかりだった。

 装備した品を満足気に眺めていたリオだったが、ドラゴンローブに包まれた腹にセトが自分の頭を擦りつけてきた感触で我に返る。

 

 「どうした?」

 

 「グルルゥ」

 

 悲しげに鳴きながら、再びリオの腹へと頭を擦りつけるセト。

 

 「腹が減ったのか?」

 

 「グルゥ」

 

 コクリと頷き、空腹を訴えるセト。それを見ていたリオも、自分がかなり空腹であるのに気が付く。

 

 「そういえば起きてから何も食べてないしな。じゃあ、食堂で食事にするか。あ……。セトその前に、一度外を見て来ていいか?」

 

 「グルゥ……グルルゥ!」

 

 リオの問いかけに悩みながらも、いいよ! と喉を鳴らす。

 

 「ありがとう。じゃあ、行こうか」

 

 研究室を出て、玄関へと向かい外へとつながる扉を開ける。この先には、巨大な樹木が連なるにもかかわらず、月明かりに照らされていた。

 

 「凄いな……」

 

 「グルルゥ」

 

 と、リオとセトは外の景色を眺めていた。

 そこに、第三者の……女性の声が響き渡る。

 

 「強大な魔力を感じてきてみれば、随分と珍しい者達ね」

 

 

 

 この声の正体は、一体!?

 

 

 

 

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