レジェンド ~精霊術師の軌跡~   作:ミヤシュン@

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第8話 魔石吸収と精霊石

 

 

 大きな岩のある場所で、セトに落ちている倒木を拾ってきて貰い精霊術で火の準備をしたリオはミスティリングから水熊と刃ムササビの死体を取り出し、解体の準備をする。

 

 「セト、水熊と刃ムササビの解体をするから、血の臭いとかで魔獣や獣が寄ってこないように警戒しててくれ。ティアは精霊術で明かりを頼む」

 

 「グルゥ」

 

 「えぇ、任せて」

 

 リオの言葉に小さく頷き、少し離れた場所へと移動して周囲の様子を警戒するセト。そして、ティアは実体化し、精霊術で岩の周囲を明るく照らし出す。

 

 「さて……解体のやり方は最小限の知識から中にあったけど、解体なんてやったことないぞ。……そもそも、こいつらの本来の名前はなんだ? ティアは知ってるか?」

 

 「いえ。見たことはあるけど、人間が何て呼んでいるかは分からないわ」

 

 「そうか。……あ、そういえばこの身体の眼は魔眼だったな。忘れてた」

 

 「どんな能力なの?」

 

 「アナライズ。鑑定能力だ。タクムの数術を魔眼化したものらしい」

 

 「へぇ、そうなの。じゃあ、この魔獣たちのことも分かるのね」

 

 「あぁ、さっそくやってみるか」

 

 そう言うと、リオは眼に力を込めて魔眼を発動させる。そして、視界に写し出されたのは。

 

 

 ウォーターベア

 ランクC

 

 ジャムル

 ランクF

 

 「ウォーターベアとジャムル、か。ジャムルのFは単体でだろうけど、あの数の群れだともう少し高くなりそうだな」

 

 魔獣の名前とランクを見て、そう感じたリオだった。そんなリオにティアがある質問をする。

 

 「ちなみに、その魔眼に名前はあるの?」

 

 「名前か? ……えぇと、天眼って言うみたいだ。また大仰な名前だけどタクムの仕業かな」

 

 と、ティアの質問に答えながら名付け親についても予想していった。

 

 

   天眼

  ゼパイル一門のタクムの数術を魔眼化したもの。能力はアナライズ。鑑定能力で、発動中に視界に入っているモンスター・マジックアイテム等を解析することができる。モンスターなら、名前とランクを、マジックアイテムなら名前と能力を知ることができる。ただし、視界外や障害物があると鑑定できない。また、強力な隠蔽効果が付与されているは鑑定することがしづらい。

 

 「ん? ジャムルが魔獣なら、セトが何体か食い千切っていたけどそのときに魔石は吸収できなかったのか?」

 

 先程の戦闘を思い出したリオは、念のためにセトのスキルをチェックしてみるが、そこに表示されているのは空欄で変更されていることはなかった。

 疑問に思ったリオは、再度ゼパイルの知識を探る。

 それによると、魔石を体内に取り込めば必ずスキルの習得が出来る訳ではないとあり、あまりに実力が低すぎる魔獣の魔石を取り込んでも意味は殆ど無いらしいという事実も新たに判明するのだった。

 

 「なるほど……。魔石を取り込んでスキルの習得が出来るかは確定ではない、と。どの魔獣の魔石でスキルが習得出来るかは分からないしな。それに、スキルが習得出来なかったとしても強くなっていくわけだし無駄になる訳ではないな。……さて、解体を始めるか」

 

 双龍銃剣の形状では、解体に向かないということでミスリルナイフを取り出してウォーターベアの死体と向き合う。ウォーターベアの首元から魔力を込めたミスリルナイフを差し込む。するとさすがミスリルと言うべきか、何の抵抗もなく、まるで水面に刃を刺したような感覚でスッとナイフの刃が毛皮へと差し込まれる。

 そのまま筋肉に沿って慎重に当然初めての経験だったので、間違って毛皮を切るといった失敗はあったが、ナイフの斬れ味のおかげで比較的綺麗な状態で毛皮を剥ぎ取ることに成功した。

 ひとまず剥ぎ取った毛皮はミスティリングの中へとそのまま収納し、次にウォーターベアの心臓へと魔力を流していない状態のナイフを突き立てる。ズッと肉を切る感触の次に、コツッとナイフの刃先が何かにぶつかったので注意してナイフの刃でその異物を抉り取る。出て来たのは、リオの拳ほどの大きさの結晶、すなわち魔石。全ての魔獣がその身に宿している物質であり、同時に魔獣術で生み出した魔獣を成長させる上で必要不可欠の物。

 手に入れた魔石を破壊しないようにそっと横に置き、次は自分とセトの食料としてウォーターベアの解体へと取り掛かる。自分で食べる分の肉の解体で、なおかつ凄まじい斬れ味を誇るミスリルナイフがあるということで数分でウォーターベアの解体を終えるのだった。

 

 「グルゥ」

 

 血の臭いを嗅ぎつけたセトが、喉を鳴らしてリオへと近寄ってくる。その視線はウォーターベアの胴体から取り出した内臓へと向けられていた。

 

 「……我慢できないか?」

 

 その様子を見ながら、すでに癖になったようにセトの頭をコリコリと掻くリオ。

 魔獣の内臓ということで毒の類がある可能性も一瞬考えたが、セトが全く問題にしていない様子を見ると食べても大丈夫なのだろうと判断する。セトのおねだりするような視線に負けたという面もあったのだが。

 

 「セト、食ってもいいぞ。心配はいらないかもしれないが、毒には気をつけてな」

 

 「グルゥ!」

 

 嬉しそうに喉を鳴らし、早速目の前にある内臓をクチバシで突き始める。それを、見た後ジャムルの解体を始める。身体は小さいが数が多いためウォーターベアと同じぐらいで解体を終え、毛皮と刃物のような尻尾、吸収する必要のない魔石をミスティリングに収納する。

 よほど空腹だったのか、セトは瞬く間にウォーターベアの内臓を食べ尽くし、猫が満足したときのように喉をゴロゴロと鳴らす。

 

 「落ち着いたみたいだな、ほら、ちょっと来い」

 

 リオに呼ばれて頭を寄せてきたセトのクチバシ、内臓を食べたために汚れているそこを岩の近くの木から取った葉で拭いてやると、それが気持ちよかったのか、セトは目を閉じて喉の奥で機嫌良さそうに鳴いていた。

 やがてクチバシの掃除も一段落したリオは、ウォーターベアとジャムルから採取した魔石へと手を伸ばす。

 

 「この魔石を食う……んだよな?」

 

 「グルゥ」

 

 当然、とばかりに頷くセト。もしかしたらセトにとってはデザート感覚なのかもしれない、と思いながらもジャムルの魔石を差し出すリオ。だが、セトは首を横に振りそれを拒絶する。それを見てリオは、

 

 「やっぱり、先の戦闘で吸収してたか」

 

 「グルゥ」

 

 吸収してたのがわかり、セトもそれに頷いたため、リオは手に持っていた魔石を上に投げて、神焔で斬るが何も起きずリストを確認しても変化がないのを確認するのだった。

 

 「ジャムルでは、スキルの習得はなし、と」

 

 そう言って、ウォーターベアの魔石を手に取り、差し出すリオ。

 そしてセトはその魔石をクチバシで咥え……特に躊躇もせず一飲みにする。

 リオがそんなセトの様子を注意深く見守っていた、そのとき。唐突に頭の中で声が響く。

 

 【セトは『水球 Lv.1』を習得した】

 

 それはまるで、RPGで新スキルを習得したのを知らせるアナウンスメッセージのようだったが、リオにはそのようなゲーム的な趣向を凝らす人物に不幸にも心当たりがあった。

 

 「タクム、お前か……」

 

 【セト】

 ・水球Lv.1

 【双龍銃剣】

 ・なし

 

 毎度の如く行われたタクムのお遊び的な要素に溜息を吐きつつも、それが有用なのは事実だったので、諦めたように受け入れるリオ。

 そんなリオに、どうしたの? とばかりにセトは顔を擦りつける。

 

 「いや、何でも無い。それより水球ってのはウォーターベアが使ってた奴だよな?」

 

 「スキルの習得が出来たのね」

 

 リオとティアの言葉にセトは喉を鳴らしながら頷く。  

 

 「よし。なら早速使ってみてくれるか?戦力の把握はしておきたい」

 

 「グルルルルルゥッ!」

 

 セトが雄叫びを上げると、クチバシのすぐ前に直径30センチ程度の水球が現れる。その様子は、確かにウォーターベアが使っていたものと同じように見えた。

 

 「よし。次は、あそこに、生えている木の幹にぶつけてみてくれ」

 

 リオの指示に従い、水球を飛ばすセト。放たれた水球はウォーターベアのものよりも速度が遅かったが、それでもそれなりの速度は出ている。そしてそのまま木の幹へとぶつかり……木の表面だけを周囲へとばらまいた。

 

 「グルゥ……」

 

 ウォーターベアの使った物に比べると、明らかに水球の飛んでいく速度も遅く、威力も低い。水球の数に関しても、ウォーターベアが三つを同時に使っていたのに対してこちらは一つだ。セトとしても自信があったのか、予想外の結果を見て残念そうに俯く。

 そんなセトの背を、リオとティアは励ますように撫でながら声を掛ける。

 

 「そう落ち込むな。そもそもまだLv.1なんだからこんなものだろう。お前ももっと魔石を吸収すれば水球のLvもあがるだろうし、他のスキルも入手出来るさ」

 

 「そうよ。Lvが上がれば、ウォーターベアの水球より強くなるし、他にも色んなことが出来るわ」

 

 本当? とでも言うように小首を傾げてリオとティアを見上げるセト。その様子は愛らしく、とても空の王者である鷲と百獣の王と呼ばれる獅子が合わさった姿とは思えないものがあった。

 

 「ああ。それに水球は別に攻撃だけに使えるという訳じゃない。少なくとも、これでセトと一緒にいる間は水には困らないしな」

 

 そんなリオの言葉に、任せてと短く喉を鳴らしてあっさりと機嫌を直すセト。この辺りの単純さは生後一日目だからだろう。

 

 「さて、ウォーターベアとジャムルの解体も終わった。魔石の吸収もして、その効果も確かめた。なら食事にするか」

 

 「グルゥ!」

 

 リオの食事という言葉に嬉しそうに喉を鳴らす。ウォーターベアの肉をミスリルナイフで切って枯れ木に突き刺して串焼きにしてセトと共に口へと運ぶ。

 

 「……美味い。ティアも食べたらどうだ?」

 

 「私も?」

 

 「ああ。食事をしなくてもいいとは言っても食べられない訳じゃないだろ」

 

 「そうね……。じゃあ、貰おうかしら」

 

 ティアも串焼きを手に取り、口に運ぶ。それを見たリオは、自分も再び串焼きを口に運ぶ。そして感じたのは圧倒的に芳醇な肉の味だった。以前、熊肉について聞いたときは、かなり癖が強い肉だということだった。だが、ウォーターベアの肉はそんな癖がないといえる味だった。魔石を取るときに解体して結果的に血抜きとなったのが良かったのだろう。血腥さは殆ど感じられず、微かに残る血腥さも風味豊かな、と表現すべきものになっている。

 ただ、惜しむらくは調味料が全く無いので純粋に肉の味しかしないことだろうか。せめて塩だけでもあれば随分違うのだろうが。

 実はリオは知らなかったが、魔獣の肉というのは基本的に持っている魔力が高ければ高いほどに美味くなる傾向がある。もっとも、あくまでも傾向は傾向でしかない。魔力が高くても不味い肉を持つ魔獣や、魔力が低くても美味い肉を持つ魔獣というのも存在しているのだが。そういう意味では、初めて食べるのがウォーターベアの肉だというのは幸運だったのだろう。

 こうして、リオとティアとセトは予想外に満足出来る食事を楽しむのだった。

 

 

 食事を終え、地面に寝そべっているセトへと寄り掛かり食休みをしていたリオにティアがある物を差し出すのだった。

 

 「リオ、これを」

 

 「? ティア、これはなんだ?」

 

 リオが渡されたのは、拳大はある無色の結晶だった。それが何か分からないリオは、無色の結晶を眺めながらティアに質問をする。それに対してティアは、こう返した、

 

 「それは、精霊石と言って、私のような高位や準高位の精霊が作ることが出来る魔力を蓄えておける結晶よ」

 

 そう言い、精霊石に関する詳しい説明をティアはするのだった。

 

  精霊石

 準高位や高位の精霊が作ることが出来る希少な結晶。中に魔力を蓄えて魔力の回復剤として使用することができる。結晶の品質によって込められる魔力の限界量は異なり、込められた魔力量によって結晶自体の色が変化するのが特徴。中でも翡翠色に変化可能な物は高品質とされ、サイズが大きくなると、それに込められる魔力量も増えていく。ちなみに内包する魔力量は、翡翠色のものが最も大きく、黄緑、青緑、青、無色の順で小さくなる。

 

 「なるほど。魔力の回復に使えるのか。確かに、これがあると助かるな。それにこのサイズなら、かなりの量を蓄えておけるだろうし。それで、どうすればいいんだ?」

 

 「マジックアイテムに魔力を流す要領でいいわ」

 

 「わかった」

 

 ティアから、魔力の蓄え方を聞いたリオはさっそく精霊石に魔力を蓄えていく。数十秒後には、精霊石が翡翠色に染まる。

 

 「よし、できた」

 

 「やっぱり、リオの魔力量は規格外、ね」

 

 数十秒で、拳大サイズの精霊石を翡翠色に変化させていながら、リオ自身から見て、感じ取れる魔力が減っていないのに、苦笑しながら再認識していた。

 

 「ちなみに、ティアはこの精霊石からでも魔力を得られるのか?」

 

 「ええ、もちろん。……でも、それがどうかしたの?」

 

 「いや、何かの理由で俺とティアが別行動する時に、精霊石があれば、ティアもある程度は自由に行動できるかと思ってな」

 

 「確かに、そうね。そうなると、予備で精霊石を準備した方がいいかしら?」

 

 「まぁ、そうしてくれると助かるが、いいのか?精霊石を作るのは難しいんじゃ?」

 

 「ええ、ある程度の時間は必要だけど、作るのは大丈夫よ」

 

 「そうか。……なら、頼む」

 

 そう言い、リオはティアに精霊石の作成を頼んだのだった。

 

 

 それから、十数分後セトへと寄り掛かっていたリオは、不意に立ち上がる。

 突然のその行動に、少し目を開けてリオへと視線を向けるセトだったが、周囲に危険は無いと判断したのか食休みに戻るのだった。

 リオはそんなセトの様子に微かに笑みを浮かべ、少し離れた場所まで移動して、身体の調子を確かめるかのように柔軟体操を始める。数分後、準備体操はもう十分だと判断したのか、ホルスターから双龍銃剣をその手に取り、構える。

 

 「さてと、武器の能力や自分の身体について色々試してみるか。まずは、武器の変形機構を確認する、か」

 

 そう呟き、双龍銃剣の機能を試していき、理解を深めていった。さすがに、夜ということで銃撃と砲撃の機能を試すことはしなかったが……。それから、十分後、

 

 「なるほど……。刀身を互い違いにして柄を合わせることで、双刃剣に。銃身を合わせることで、バスターグレイブに。刀身の形状変化は大剣と太刀の二つがあれば十分かな。」

 

 武器の機能を確認したリオは、双龍銃剣を持って構える。

 

 「はぁっ!」

 

 気合いの声と共に神焔の刃が空を裂く。だが、本人は何か気に入らないらしく、首を傾げつつ再び双龍銃剣を構える。

 無言で再度一閃。前のときとは身体の捻りが違っていた。神焔を振り下ろすときに腰の回転を意識し、その動きが正確に神焔に伝わるように放たれたのだ。

 たった二度の振り下ろしで双龍銃剣の扱いを理解したのか、両手に握る神焔と煌焔を交互に、同時にと思いつく限りの素振りを延々と繰り返す。

 そんな状態が続くこと三十分ほど。最初は腕力任せでどこかぎこちない扱いだった双龍銃剣を、次第に自由に、そして素早く、鋭く操れるようになっていく。その一撃は、普通の戦士が見たら思わず嫉妬する速度と鋭さ、と言えば想像出来るだろう。

 袈裟懸けに振り下ろした神焔の刃が地面にぶつかる直前で止め、刃を真上に来るように調整しながらはね上げ、煌焔を真横に薙ぐ。

 もし今の一連の攻撃が人間に加えられたのだとしたら、まず袈裟懸けに神焔で斬られ、その後切り上げられた一撃で右腕を切断され、煌焔の横薙ぎの一閃で首が胴体から飛ばされるだろう。

 その後も双龍銃剣を連続で振るい、ときには双刃剣やバスターグレイブに形状を変えて、普通の武器に比べると酷く扱いの難しい双龍銃剣という異形の武器の扱いを急速に習熟していく。

 すでに現在のリオの動きは、一撃を入れては止まって、また一撃、といったようなぎこちない動きではなく、剣舞と言っても過言ではないほどに研ぎ澄まされた舞となっていた。振るわれる刃の一撃は空気を切り裂くかのような鋭さを持ち、突きの一撃は生半可な鎧なら貫通するような威力がこめられている。

 そんな死の演舞とも言える動きをリオは一心不乱に続けていた。そしてその動きはますます研ぎ澄まされていき……

 

 「はぁああぁぁぁぁっ!」

 

 渾身の一撃で真横にバスターグレイブ状態の双龍銃剣を一閃してその動きを止めた。

 双龍銃剣での訓練を始めてからすでに数時間。双龍銃剣に殆ど重さを感じさせないという能力があったとしても、一度の休憩も無しに形状によっては身の丈以上もある双龍銃剣を振り続けていたリオは息一つ乱していなかった。そんな様子に、リオは世界最高の魔術師たちが創りあげた肉体の能力をしみじみと実感する。何しろ額に汗がうっすらと浮かんでいるが、見て分かる変化と言えばその程度のものなのだから。

 その結果に満足し、バスターグレイブ状態の双龍銃剣をミスティリングに収納しながら焚き火をしている場所へと戻ると、セトがおかえり、とでも言うように喉の奥で鳴いてリオを出迎える。

 通常のグリフォンとは違い、セトはリオの桁外れの魔力を基に生まれてきているのでその思考力は通常よりもかなり高く、さらには魔力的にリオとセトは繋がっている。リオの言葉を理解しているのがその証拠だろう。今もリオがやっていたのは自分の肉体のスペックを確認するというのと、双龍銃剣という扱いにくい武器を使いこなすための訓練だと分かっていたので、甘えたがりのセトであってもじっと我慢していたのだ。

 だからこそ。

 

 「セト、水を貰えるか?」

 

 「グルゥッ!」

 

 そんな大好きなリオに頼まれると、喜んで水球を発動させるのだった。

 セトに出して貰った水球がプカプカと浮かんでリオの前で停止すると、そこに手を突っ込んで水を掬って汗を洗い流し、人心地付くと地面に座っているセトの身体に寄り掛かる。そんなリオの行為を、甘えた鳴き声を発しながら受け止めるセト。

 頭を擦りつけてくるセトに相手をしながら、内心で明日の予定を考える。

 

 (取りあえず、当初の目的通りに街か村に行くとして……どっちに向かう?幸か不幸か森からある程度離れても街道と呼べる物は発見出来なかった。となると、この森はかなり辺境にあると考えていい)

 

 「まあ、その辺は街なり村なりに行けば判明するか」

 

 「グルゥ?」

 

 どうしたの、と喉の奥で鳴いているセトの頭をコリコリと掻きながら何でも無いと首を振る。

 

 「とにかく、明日だ。明日の朝になったら人のいる場所を探しに行こうか。セト、見張りを頼めるか?」

 

 「グルゥ!」

 

 任せろ、とでも言うようなセトに鳴き声を聞きつつ、シルクのような体毛と心地よい体温に包まれ眠りに落ちるのだった。ちなみに、ティアはすでに霊体化して、リオの体内で眠っていた。

 

 

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