ノー格ゲー・ノーゲーム   作:茅倉 遊

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久しぶりの投稿と思ったら、新作の発表です。
どうも、最近いろいろ遭った茅倉 遊です。
部活を引退し、中間考査も終わり、委員会では≪副委員長≫に就任しました。
いやぁ~、≪進路達成≫って壁も高くなっていく一方ですよorz
 まぁ、そんな僕の作品ですが読んで観て下さい!


オープニング・アクト

 ―――こんな噂を聞いた事があるだろうか?

 

 とある『異世界』を、たった一年で統一・統治した≪英雄≫がいると言う噂。

 たった≪二丁の拳銃≫と≪一人の嫁≫と共に、『神』にまで挑んだ≪男≫がいると・・・・

 

 しかし≪英雄≫は≪自分を英雄と担ぎ上げる世界≫、≪自分が治める世界≫に嫌気を感じた。

 それは何故か、簡単だ。

 ―――≪退屈≫だから。

 理由なんて、それくらいで十分だろ。

 

「はぁ~、何か【面白い事】でも起きねぇーかな?」

 そう呟く≪英雄≫に、一人の≪少年≫が声を掛けに来たのは何時だっただろう。

 それが【物語の始まり】。

 

「だったら―――≪僕の世界≫に連れて行ってあげるっ! きっと面白いよ♪」

 

「は?」

 ただそれだけ答えた≪英雄≫の視界はすぐに暗転し、気付いた時には空から地上に向かって≪落下≫していた。

「・・・・わぁ~」

 隣で悲鳴染みたセリフを棒読みで口にする≪嫁≫と共に、≪英雄≫は地上に向かって落下する。

 「ようこそ、僕の世界へッ!」

 目の前の少し離れた所で、≪少年≫は両手を広げて声を上げていた。

 そう。この日、この瞬間。

 

 とある≪夫婦≫が【神様転生】に遭った。

 『異世界』で≪英雄≫とまで言われた≪青年≫と、その青年に「生涯、添い遂げる」と誓った≪機甲種(メカニクル)≫の≪少女≫。

 彼らの新たな物語は、こうして始まったのである。

 様式美として、もう一度言って置こうか・・・・

 

 ―――こんな噂を聞いた事があるだろうか?

 

 

 

 

 

 

 気が付くと、そこは木々の生い茂った森の中だった。

 かなりの高さから落下したようだが、どうやら身体は無事のようである。改めて周りを見渡すが、やはりただの森が続いているだけだ。何の変化も無い。

 つまり・・・・、ホントに≪異世界≫に来てしまったようだ。

(さっきまで室内に居た筈なのに、いったい何が起こったんだよ?)

 ≪青年≫は真っ青に染めた髪を当たりながら、半眼で辺りを見回していた。

「たぶん、【転生術式】を使用されたと思う」

 すると青年の隣から、まだ幼い≪少女≫の声が聞こえてくる。

「でもな≪シェリア≫。俺たちを【転生】させて何の意味があるよ?」

「≪ソーシ≫への挑戦状?」

「・・・・ははっ。全然笑えねぇーよ、そんな展開」

 ヘラヘラと笑いながら、両手を大袈裟に上げているこの青年は・・・・

 

 ―――黒城蒼志《こくじょう そうし》。

 

 真っ青に染めた髪と少し蒼み掛かった黒色、≪深海色(ダークブルー)≫の瞳が特徴の青年である。青年と言うのも歳が18であり、もう殆ど大人だからだ。身長は175cm程で、黒を基調としたラフな服装をしていた。

 そしてその隣に立つ少女は・・・・

 

 ―――シェリア。

 

 太陽の陽射しを受けて美しい輝きを放つ白銀の髪と、一切の曇りのない蒼玉色(サファイア)の瞳が特徴の≪少女≫である。CG(コンピューターグラフィック)も裸足で逃げ出すような端正な顔立ちで、見る者全てを魅了させる。

 外見は辛うじて≪中学生程度≫に見えるが、彼女の実年齢は≪2歳≫。何故なら、彼女が≪製造≫されたのが≪二年前≫だから。

 そう、彼女は≪人間≫ではない。蒼志たちの世界に存在する他種族の内の一人なのだ。

 ≪機甲種(メカニクル)≫と呼ばれる種族であり、簡単に言うと≪機械っ娘(きかいっこ)≫である。

 ≪少女≫は、8000年以上の歴史を持つ≪機甲種≫の『最新技術の結晶』であり、『最高傑作』とまで称されている。この世に存在してからまだ二年という歳月しか経っていないと言っても、その≪性能≫は言うまでも無いだろう。

 身長は145cm程だが、その≪存在感≫は途方も無く大きかった。

 

 

 

 蒼志は両手を頭の後ろに組んだまま、目を瞑って口を開く。

「それで、俺たちはこれからどうすればいいのか教えてくれよ? ―――自称≪神様≫?」

 

「あれ? どうして分かったのかな♪」

 

 するとすぐ近くに立っていた木の陰から、蒼志たちを此処に連れて来た≪張本人≫が姿を見せた。

「それに、自称じゃなくて、紛れも無く≪神様≫なんだけど」

 蒼志たちを此処・・・・≪異世界≫に連れて来た、少年は笑顔のまま続ける。

「そういや名乗ってなかったかな―――」

 

「―――『テト』・・・・それが僕の名前。よろしく『英雄』さん」

 

「あぁ、どうもね」

 蒼志は≪少年≫、≪テト≫の方に顔を向けて、片手を上げて見せた。

 しかし、その手には―――

 パンッ! と、乾いた音が辺りに響く。辺りには反響するように響くその音はまるで≪銃声≫。

 ・・・・いや、訂正しよう。この瞬間、紛れも無く≪銃声≫が響いたのだ。

「まだ≪説明≫して無かったね。この世界で『殺傷は出来ない』んだよ、英雄さん?」

「何だ、先に言えよ。こっちは≪本気≫だったんだからな?」

 そう言った蒼志の手には、【マットブラックの拳銃】が握られていた。そして、その銃の銃口は≪テトの額≫に突き付けられている。

「≪神様≫に銃を向けるなんて、罰が当たっても知らないよ?」

 銃口を突き付けられているのに、テトは笑顔を崩さない。

 それを≪確認してから≫、蒼志は銃を下ろす。

 ちなみにこの間、シェリアは微動だにせず立ったままだ。

 

「でも、≪この僕≫ですら≪視界に捉えるのがやっと≫だった。さすが≪英雄≫と呼ばれるだけはあるね♪」

 そう。テトは「自分はこの世界の≪神様≫だ」などと言っていたが、蒼志の動きを≪捉える事しか出来なかった≫のだ。

 それが意味する事なんて、実に単純明快な事。

「僕は、君たちが持っている『戦闘技術』に惚れたんだよ! その『力』を、是非≪この世界≫でも使ってくれないかな?」

 ―――蒼志は『強い』。《神すら驚かす程に》・・・・・・

「《神にすら挑み、そして勝利した》・・・・。そんな《人間》が居ると言う≪噂≫を異世界で耳にしてね、すごく興味が湧いたんだ」

 ―――そして、もちろんシェリアだって『強い』。

「此処は僕が創った世界、【盤上の世界(ディスボード)】!」

 そんな蒼志とシェリアが並んで見つめる中、テトは両手を広げながら高らかと叫ぶ。

 

「この世界で、≪君たちの力≫を観せてくれっ!」

 

「それが、俺たちを此処に呼んだ理由か?」

 蒼志は顔を伏せたまま、テトに問いかける。

「そうだよ♪ がっかりさせたかな?」

 蒼志の問いに笑顔の答えるテトを見て、次にシェリアが口を開いた。

「いいえ。まったくそうは思いません、むしろ」

 ここで蒼志も顔を上げ、今度は二人同時に口を開くと・・・・

 

「「―――《上等》だ、やってやるよ! そっちこそ、俺たちを≪敵に廻した事≫後悔すんなよっ!」」

 

 シェリアは右手、蒼志は左手でテトを指差しながら大声で告げる。

 まさに、それは【宣戦布告】だった。

「・・・・様式美として、もう一度言わせて貰うよ?」

 そう言って、テトは今までの中でも≪一番の笑顔≫になって告げた。

 

「ようこそ、僕の世界へッ!」

 

 

 

 

 

 

「この世のすべてが単純なゲームで決まる世界。そう―――人の命も、国境線さえも」

 テトが姿を消してから少し経った後、蒼志《そうし》は小さく呟いた。

 ≪ゲーム≫と称すのなら、もちろん【ルール】が存在する。

 それこそ、【十の盟約】―――。

 

 【一つ】この世界におけるあらゆる殺傷、戦争、略奪を禁ずる

 【二つ】争いは全てゲームによる勝敗で解決するものとする

 【三つ】ゲームには、相互が対等と判断したものを賭けて行われる

 【四つ】”三”に反しない限り、ゲーム内容、賭けるものは一切を問わない

 【五つ】ゲーム内容は、挑まれたほうが決定権を有する

 【六つ】”盟約に誓って”行われた賭けは、絶対遵守される

 【七つ】集団における争いは、全権代理者をたてるものとする

 【八つ】ゲーム中の不正発覚は、敗北と見なす

 【九つ】以上をもって神の名のもと絶対不変のルールとする

 

 ホント、良く出来た【ルール】だよ。

「≪もう一つ≫を除けばな・・・・」

 

 【十つ】みんななかよくプレイしましょう

 

 何の≪拘束力≫も無い、余分な【ルール】。

 だが、これが【十の盟約】の全てである。

 最後のは『どうせお前らは、仲良くなんて出来ないだろ?』と、皮肉を言われているようにしか聞こえないが。

「【九つ】目で、≪以上をもって≫と締めくくってる。恐らく、実際に≪拘束力≫があるのはここまで。・・・・ソーシはどう思う?」

「ん? いや、俺もそれで正解だと思うぞ?」

 シェリアが可愛らしく首を傾げて尋ねてくるので、蒼志もすぐに返答する。

 その答えに納得したのか、シェリアは蒼志の腕に≪抱き付いた≫。

「えっと・・・・、シェリア?」

「出発する」

「・・・・何処へ?」

「ソーシの隣に付いて行く。だって、ソーシの隣が≪私の居場所≫だから」

 シェリアは蒼志の顔をじっと見詰めたまま、そう声を上げる。

 もちろん、そう言ってくれるのは嬉しい。大変に嬉しいのだが、

「さて、どうしたもんかな?」

 現在地すら分からないのに目的地が分かる程、蒼志は出来の良い≪人間≫ではなかった。

 

「じゃあ、≪あの人たち≫に聞いてみる?」

「でも、そう親切に教えてくれるのか? それにアイツ等、たぶん≪人≫じゃないぞ?」

 シェリアの言葉に、今度は蒼志が首を傾げる。

「一応、聞いて見た方がいいと思う」

「まぁ~、もしかしたら親切に教えてくれるかもしれないか・・・・」

 蒼志はシェリアの言葉に納得すると、

「すいません! 道に迷ってるんですが、道案内って頼めます?」

 少し離れた場所にある、≪三本の木≫に向かって尋ね掛けた。

 別に蒼志の頭が可笑しくなった訳ではなく、用があるのは≪三本の木≫の≪後ろに立っている方々≫。先ほどのテトのように、木の陰に隠れているのだ。

 ・・・・≪人≫ではない、≪何か≫が。

「隠れても無駄。すでに存在は把握している」

 シェリアも口を開くと、ようやく≪何か≫が姿を見せる。

「何故、≪人類種(イマニティ)≫が此処に居る? 此処は貴様ら≪ハゲザル≫の居て良い場所では無いぞ!」

 真っ先に声を上げたのは、頭に≪犬耳≫を持つ≪犬人間≫のような男。よく見ると、≪尻尾≫まで付いている。

 木の陰から出て来たのは≪三人≫だが、その全員が≪動物≫と≪人間≫が雑ざったような姿をしていた。

「≪獣属種(アニマルティ)≫?」

 シェリアが首を傾げながら、小さな声で呟く。その声は隣に居る蒼志にしか聞こえなかった。

「いや。たぶん違うと思うぞ、シェリア。何たって、此処はもう≪俺たちの世界≫じゃない」

 ≪獣属種≫とは、蒼志たちの≪元いた世界≫に居た≪種族≫。つまり、この≪異世界≫には居ない筈なのだ。だが、言われて見ればそっくりである。≪人間≫のような姿をした≪獣≫であり、≪高い知能≫を持っているのだから。蒼志たちと≪会話≫が成り立っている時点で・・・・

「って、言葉は通じるんだな。この≪異世界≫」

 ≪世界が違う≫と云うのに、言葉は通じるらしい。まぁ手間が無くて助かるのだが。

「お前たち、まさか≪人類種≫のスパイかっ!?」

 今度は≪イタチ耳≫を持つ男が、蒼志たちを指差しながら声を上げる。

「成程。≪こっちの世界≫は俺たち≪人間≫の事を、人類種(イマニティ)って言うんだな」

「≪向こうの世界≫の、人間種(ヒューマン)よりはカッコいい」

 先ほどの質問など聞えていなかったように、蒼志とシェリアは会話を弾ませる。

「じゃあ、もしかして≪こっちの世界≫は獣属種(アニマルティ)って言わないんじゃないか?」

「たぶん、もっとカッコいい名前♪」

「マジか! おーい、あんた等って名前なんt・・・・」

 

「「「いい加減にしろッ! このハゲザル風情がッ!!」」」

 

 蒼志たちは気付かなかったが、どうやら怒らせてしまったようである。

「お前たち! 私たちと≪ゲーム≫しなさいっ!」

 すると今度は≪猫耳≫を持った女が、蒼志たちに向かって叫ぶ。

「私たちが勝ったら、全て話して貰うからね! それと、そっちが持ってる情報も渡して貰う!」

「はぁ? ≪ゲーム≫? 何で≪ゲーム≫なんかする必要があるんだよ? 欲しけりゃ≪力尽く≫で奪えば・・・・」

「ソーシ。≪こっちの世界≫では、それは≪出来ない≫」

「え? ・・・・あぁ、【盟約】か!」

 【盟約、その一】この世界におけるあらゆる殺傷、戦争、略奪を禁ずる、だったか? その【ルール】のせいで、≪力尽く≫は不可能な訳だ。

 【盟約、その二】争いは全てゲームによる勝敗で解決するものとする。

 争い事が起きれば、―――≪ゲームで解決する≫しかないのだ。

 しかし、それならこっちにも≪考え≫がある。

「確か【盟約、その五】で、≪ゲーム内容≫は挑まれたほうが決定権を有するんだよな?」

 蒼志が片手を上げながら、猫耳を持つ女に尋ねる。

「えぇ、だからそっちが≪ゲームの内容≫を決めるのよ。まぁ何を選んでも、貴方たちに≪勝ち目は無い≫けどね」

「りょーかい。だったら、俺たちが勝ったら≪いくつか頼み事≫するね。ゲーム内容は・・・・」

 ここで蒼志は一呼吸置いて、

 

「―――≪格闘ゲーム≫、なんて如何だ?」

 

 大きく息を吸ってから、ゆっくりと口を開いた。

「「「はぁ?」」」

 それを聞いた≪獣人間たち≫は、間の抜けたような声を漏らす。

「≪何でもアリ≫の≪実戦型リアル戦闘シュミレーションゲーム≫、通称≪格闘ゲーム≫。略称は≪格ゲー≫ね♪」

「ルールは簡単。≪戦闘継続不可能になった方≫か≪敗北を認めた方≫の負け。≪何でもアリ≫と云うのは、文字通り≪何をしても不正にならない≫事」

 蒼志の言葉にシェリアが続いて説明する。

「「≪乗る≫か≪降りる≫かは、そっちが決めな!」」

 キメ顔で≪獣人間たち≫を指差す蒼志とシェリアは、その表情に余裕を感じさせる笑みを浮かべた。

 ―――しかし、

「・・・・は、ははっ! どうやら本当のバカだぜ、コイツ等よぉっ!」

 ≪犬耳≫を持つ男が、笑いながら声を上げる。その隣で≪イタチ耳≫も≪猫耳≫も、お腹を押さえて大声で笑っていた。

「私たち≪獣人種(ワービースト)≫に、≪リアル戦闘ゲーム≫ですって? ホントに人類種ってバカなのねっ!」

 ≪猫耳≫、≪獣人種≫の女は笑い過ぎたのか、目に涙を浮かべながら口を開く。

「・・・・で、どうすんだよ? ≪乗る≫、≪降りる≫?」

 だが蒼志は、そんな獣人種たちを半眼で見詰めるだけだ。

「もちろんいいぜ、乗ってやるよその≪ゲーム≫っ! まさか自ら≪相手の方が有利なゲーム≫を提案するとはな! 本当にバカな種族だよ、お前等。≪身体能力の違い≫? いや、≪格の違い≫ってヤツを教えてやらぁっ!」

 蒼志の問い掛けに、≪イタチ耳≫が大声で答える。どうやら≪了承してくれた≫ようだ。

「じゃあ、最後にもう一回≪ルール≫の確認だ。この≪ゲーム≫―――≪何でもアリ≫の≪格ゲー≫は、≪戦闘継続不可能になった方≫か≪敗北を認めた方≫の負けだ。もちろん、勝敗が決まるまでTKOは一切無いぜ。腕が飛ぼうが足が飛ぼうが、待ったは無い。【盟約、その三】で≪ゲーム内容≫は自由だからな! ≪ゲーム内≫のこれら(斬る・撃つ・殴る・蹴る)は≪殺傷≫には含まれない。何故なら、これらはただの≪攻撃コマンド≫だからな」

 そして、と最後に蒼志が付け加える。

「尚、この≪ゲーム≫は俺とお前等。つまり、≪1対3≫で行われるモノとする」

 そう告げた蒼志の顔には、笑みが浮かんだままである。

「―――う、自惚れるのも大概にしろよッ! この劣等種がッ!! 1対3だっ!? 俺たち獣人種を舐めてんのかッ!!」

 ≪犬耳≫の男がその口から鋭く尖った犬歯を見せながら、大声で怒鳴る。

 だが蒼志の表情からは、まだ余裕が消えない。

「そっちこそ、あんま人類ナメんじゃねぇーぞ♪」

 そう言ってから蒼志は、すでに片手に持っていた【マットブラックの拳銃】の銃口を―――

 

 ―――――≪自分の頭≫に向けた。

 

「それじゃあ≪開始の合図≫は、俺が務めるぜ?」

 蒼志はまるで≪拳銃自殺≫でもするかのように、自分の頭に銃口を向けた拳銃の引き鉄をゆっくりと・・・・引いた。

 パンッ! と、乾いた音が辺りに響く。

 もちろんそれは、蒼志が持っていた拳銃が上げた≪銃声≫なのだが。

 ・・・・どう考えても≪終了の合図≫でしかないそれを、≪獣人種(ワービースト)≫たちはただ黙って見ている。しかし、刹那の刻が流れた瞬間。

 獣人種たちは、≪戦慄≫した。

「さぁ、【盟約に誓って(アッシェンテ)】といこうぜ!」

 『銃弾を頭に受けた筈の蒼志が、その場で両手を広げ、悠然と立っていた』のだから―――

 

 

 

「どうした? ≪ゲーム≫はもう始まってるぜ。・・・・来いよ、≪格の違い≫ってのを見せてくれるんだろ?」

 まるで何事も無かったかのように、蒼志《そうし》は普通に立っている。

 先ほどの≪奇行≫の真意は、本人とシェリアにしか分かっていないのだが・・・・

「まぁ~、細かい事は如何でもいい! こっちも【盟約に誓って(アッシェンテ)】だ! とりあえず死ねよ≪ハゲザル≫っ!」

 そう言って最初に突っ込んで来たのは≪犬耳≫を持った男。

 だが―――

「お前の方が頭悪いんじゃねぇーか? だって、情報を得たい相手を殺したら情報が得られないだろ? それぐらい≪子供≫でも分かるぞ」

 蒼志は犬耳の攻撃を、あっさりと躱す。≪人外≫が放つ、人間にして見れば≪速過ぎる攻撃≫を。

「っ!?」

 躱された事に余程驚いたのか、≪犬耳≫に一瞬の隙が生まれる。その隙に蒼志は犬耳の背後を取り、≪思いっ切り蹴っ飛ばした≫。

 その≪攻撃≫は他の獣人種も、『視界に捉える事すら出来なかった』。

「ああああぁぁぁっ!!」

 今度はイタチ耳の男が突っ込んで来て、音速すら軽く凌駕する≪連撃≫を仕掛けてくる。

 しかし、蒼志はその全てを躱す。―――≪目を瞑ったまま≫。

「・・・・は?」

 これには流石に、イタチ耳も間の抜けたような声を上げる。だが、その間も連撃は休めない。何故なら、

「はぁぁあああっ!!」

 蒼志の後ろには、すでに拳を振り上げた猫耳の女がすぐ近くまで迫っていたからだ。そして猫耳の女は、躊躇う事無く拳を思いっ切り振るう。

 だが蒼志は、猫耳が拳を振るうよりも≪前から≫すでに体勢を変えており、猫耳の拳は空を切る。攻撃を放つ前に、すでに≪その攻撃を躱していた≫のだ。

 ―――まるで、≪未来でも視ているかのように≫。

「連携は良いと思うよ♪」

 蒼志は尚も笑顔で獣人種たちの攻撃を躱し続ける。

 ≪ゲーム≫が始まって数分しても、獣人種たちは蒼志に≪一撃≫も与える事は出来なかった。

 

「そろそろ、こっちから行くぜ!」

 そう言うと蒼志は、持っていた【マットブラックの拳銃】の銃口を犬耳に向けて引き鉄を引く。

「【炎の銃弾(フレイム・バレット)】」

 蒼志《そうし》の持つ拳銃から放たれたのは、【真っ赤に染まった銃弾】。

 ・・・・通常、銃弾は≪亜音速≫で飛翔するが、この銃弾は―――≪光速≫で飛翔した。

「ぐわぁっ!?」

 もちろん≪光速≫など躱せる筈も無く、銃弾は犬耳に命中する。

「あ、ごめん! ちょっと速過ぎたかな?」

「「っ!?」」

 イタチ耳と猫耳が驚いたのは、蒼志が謝罪したからではない。

 先ほどの【銃弾】が着弾した犬耳の身体から、≪大量の炎≫が出現したからだ。

 ≪炎≫はすぐに犬耳の身体を包み、燃え広がって行く。最早、イタチ耳や猫耳に成す術は無かった。

「くそッ!」

 するとイタチ耳は仲間を救う事を放棄し、蒼志の隣に立つシェリアに向かって殴り掛かる。

 だが、そんなイタチ耳の攻撃を蒼志は『片手で受け止めた』。

 ≪獣人種(ワービースト)≫の攻撃を片手で受け止めたのも驚きだが、イタチ耳が本当に驚愕したのは≪そこ≫ではなく・・・・

「―――どうして、≪俺より早く動ける≫んだよッ!?」

 蒼志が≪イタチ耳が攻撃を仕掛ける前に、すでにシェリアの前に移動していた事≫に、イタチ耳は驚愕を隠せない。何故なら、攻撃を仕掛けてもいないのに、その攻撃の≪通過地点≫まで正確に把握していること。それに、イタチ耳が蒼志ではなく≪シェリアに攻撃する≫事すら、事前に把握していたのだから。

「おい、こら! ≪1対3≫って言ったよな、ルール無視してんじゃねぇーよ」

 イタチ耳の驚愕など何処吹く風で、蒼志は半眼でイタチ耳を睨む。

「お、お前・・・・。本当に、≪人類種(イマニティ)≫なのかっ!?」

 慌てて距離を取ったイタチ耳が、その表情に≪恐怖≫を浮かべながら声を上げた。

 ―――【未来視】が出来る≪人間≫など、聞いた事も無いのだから・・・・

「さぁな。俺たちが≪人間≫かどうかなんて、アンタ等が勝手に決めな」

 【マットブラックの拳銃】を片手に、蒼志はヘラヘラと笑いながら答える。

「・・・・っ! で、でも、まだ負けてないッ!」

 そう叫んだ猫耳は、蒼志に向かってもう一度殴り掛かかった。しかし、今度はその手に≪一本のナイフ≫が握られている。≪殺傷能力≫は極めて低いが、無いよりはマシであろうという判断だ。まぁ、普通に考えれば≪人間相手≫に≪ナイフ一本≫というのは十分に効果がある。

 だが、―――≪蒼志≫は別だ。

 蒼志が持っていた拳銃を発砲すると、猫耳が持っていた≪ナイフの刃の部分だけ≫が綺麗に消失する。つまり、刃の部分が≪折られた≫のである。これによって、猫耳の持つ≪ナイフの殺傷能力≫は完全に無くなってしまう。

「・・・・っ!?」

 猫耳が驚いている間に、今度は蒼志の方から駆け出す。猫耳の背後を≪あっさり≫奪うと、持っていた拳銃の銃口を≪猫耳の頭≫に向けた。

「どうする? ―――死ぬ?」

 蒼志は猫耳に向かって、晴れやかな笑顔を向けるのだった。

「≪何でもアリ≫って事は、≪戦闘方法≫や≪攻撃手段≫が自由という事だけじゃない。≪戦闘中に何が起こってもいい≫。つまり怪我人だけじゃなくて、死人すら出る事が≪このゲームのポイント≫」

 今までずっと黙っていたシェリアが、ここでようやく口を開いた。その美しい鈴の音のような声で言っている事は末恐ろしいのだが・・・・

「あれ? もしかして降参する気無いの? 一応、≪戦闘継続不可能≫つまり、≪相手を殺しても≫俺たちの勝ちなんだけどなぁ~。そのこと気付いてる?」

「わ、分かったっ! 降参するからもう止めてくれっ!!」

 蒼志の言葉の後、イタチ耳がすぐに両手を上げながら降参を認めたのだった。

 

 

 

 ≪ゲーム≫が終了すると、蒼志《そうし》はすぐに犬耳に向かって≪発砲した≫。

「「な・・・・っ!?」」

 これにはイタチ耳と猫耳が、それに【とある銃弾】をその身に受けた犬耳までもが驚愕する。

 蒼志が撃った銃弾は、【治療の銃弾(ヒーリング・バレット)】。着弾相手の負傷を治療する【特殊な銃弾】である。

 犬耳の≪炎≫で負った火傷や傷が≪一瞬で治った事≫に、≪獣人種(ワービースト)≫たちは驚愕したのだった。

「お、お前は、いったい≪何者≫なんだよ・・・・っ?」

 イタチ耳が震える声で再度、同じ質問を蒼志へと投げ掛ける。

 ≪獣人族≫の身体能力を軽く凌駕し、≪未来視≫すら可能のようかに思わせた人間。さらに人間が使えない筈の≪魔法≫まで使って見せたのだ。それが本当に≪魔法≫かは別として、到底≪ただの人間≫には思えなかったのである。

「≪人類種(イマニティ)≫は≪魔法≫を使用する事も、感知する事すら≪不可能≫のはずよ?」

 猫耳も傷が治ったばかりの犬耳に肩を貸しながら、蒼志へと問いかけた。

 

「―――あのなぁ~、俺たちは≪異世界≫から来たんだ。・・・・この世界の≪常識≫なんて押し付けられても困るんだよ」

 

 蒼志の言葉を聞いて、≪獣人種≫の三人は暫し固まってしまう。

「ソーシ。まだそれ言ってなかった。知らなくて当然」

「え? そだっけ?」

 シェリアの言葉に蒼志の方も驚くが、獣人種たちの方が驚愕が大きい。

「まぁ、なんだ。俺たち≪異世界人≫だけど、よろしくなっ!」

「よろしく」

 獣人種の事など何処吹く風で、蒼志とシェリアは隣り合って並び、その手に≪ピースサイン≫を作るのだった。

 

「それじゃあ、俺たちが勝ったから≪いくつかの頼み事≫を聞いてくれよ♪」

「【盟約その六】、”盟約に誓って”行われた賭けは、絶対遵守される」

 蒼志とシェリアは最初から最後まで≪笑っていた≫のだが、それも今となっては簡単に理解出来る。

 何故なら―――

「≪自分たちにはそれだけの力がある≫って訳か・・・・。お前たち、本当に≪人間≫なんだよな?」

 これもすでに何度目かという程の聞き飽きた質問を、犬耳が再度口にした。

「何度言えば分るんだよ? 確かに≪シェリア≫は人間じゃないけど、俺はただの人間だぜ。まぁ・・・・」

 隣に立っているシェリアの頭を撫でながら、蒼志は初めて≪苦笑い≫を浮かべて声を上げる。

 

「知名度低めの異世界で、ちょっと≪過激な過去≫を持った人間―――だけどな」

 

 蒼志の言葉を真横で聞きながら、蒼志に頭を撫でられていたシェリアは、気持ち良さそうに目を細めるのだった。

 

 

 

 

 

「さて、シェリア。最初の≪目的地≫が決まったぜ」

 ≪獣人種(ワービースト)≫の三人と別れた後、蒼志《そうし》は笑顔でそう告げた。

「俺たちの≪目的地≫は・・・・」

「≪人類種(イマニティ)≫の最後の国、≪エルキア王国≫―――その首都エルキア」

「大正解☆ そうと決まればさっそく出発だ。そして・・・・」

 蒼志はイタチ耳から貰ったローブを、シェリアは猫耳から貰ったローブを翻し、颯爽と歩き出す。

 その手には犬耳から貰った≪ルーシア大陸≫の地図を持ち、今この瞬間、二人の声が重なった。

 

「「≪人類種の王様≫気取り―――≪『  』(くうはく)≫ってのに会いに行こうかっ!」」

 

 先ほど得たばかりの情報だが、この二人を焚き付けるのには十分だった。

 

 

 

 【この物語】は―――かつて≪英雄≫と呼ばれた青年と、その≪妻≫である少女の、強い絆で結ばれた【≪夫婦≫の物語】

 

 

 

    Go for the next again!!!

 

 

 

 

 

 

 




ちなみに、僕が副委員長をやっている図書委員会の活動目標ですが・・・・
『ノーブック・ノーライフ』に決定しました(笑)
全校生徒の前で発表するとき、「自分たちの活動目標は、ノーゲ・・・・あっ!? すいません、間違えましたっ!」は、今でも良い思い出です(実話)

―――感想等、書いてくれると嬉しいです!
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