仮面ライダーロード   作:剣舘脇

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お待たせしました(´・ω・`)
時間が取れず、中々書けずにいました……

それではどうぞ(^ω^)_凵


episode9 激闘の後

 新たな姿を得た、風の力を操るロードによって土のフォルズことノームフォルズを撃破し、沙耶を助けた後の事。燈真達四人(その内精霊が三匹)は沙耶が目覚めるまで燈真の自宅にてノームフォルズ戦の反省会をしていた。

 先の戦いにてロードこと燈真は自身の幼馴染みである沙耶を攫われただけでなく、危うく傷物にされかけたという事実を前にして半ば暴走状態に陥っていたせいで普段の実力を出せず、ノームフォルズ相手に苦戦を強いられていた。

 絶え間なく湧き出る怒りに身を任せた結果、自分に力を貸してくれている精霊の声が聞こえなくなる程に視野が狭まり、何かが切れて頭が冷えた後に風の精霊であるフィンの力を借りるまではロード……燈真本人が勝てるビジョンは見えなかっただろう。

 

 ───故に、このような事を二度と起こさない為の反省会という訳である。ビートル達が連れ帰り、今はエルモスとフィンの二体が容態を診ている土の精霊と、燈真のベッドに寝かせている沙耶を他所目に、一人と一匹の反省会が始まる。

 

「……うむ。此度の反省会を始める前に、燈真。まずは同胞を救ってくれて感謝するぞ」

 

「嗚呼、お前との約束は守らないとな。んで、ノームだったか? そいつの容態はどうなんだ?」

 

「今はエルモスとフィンが診てくれている故、大丈夫であろう。さて、本題の反省会である」

 

「……だな。今回は完全に俺に非がある。つっても、彼奴に沙耶の事を彼奴に傷つけられかねたって思ったらあっという間に頭に血が昇ってな…後はお前の知る通り、あの(ざま)だ」

 

「ふむ、燈真はそれ程までにその娘が……沙耶が大事なのだな? 言い換えるならば、燈真は沙耶の事が好きという事なのか?」

 

「嗚呼……まぁな。彼奴とは幼馴染じみっていう腐れ縁ってのもあるし、親父が居なくなった後の俺を支えてくれてたのも沙耶(コイツ)なんだ。だから沙耶には返しても返しきれない恩が山ほどある。出来る事なら、俺の手が届く限りずっと守ってやりたい」

 

「そうなのだな。ならば尚更大事にするがよい。今回の事が無いようにな」

 

「嗚呼、分かってる。俺の大事な想い人の沙耶をこれ以上危険な目に遭わせねぇよ……絶対にな」

 

 想い人、燈真がその言葉を口にしたのは今回が初めてである。幼馴染じみの頃から(くすぶ)り続けていた恋煩いをひた隠しにし続けて幾数年、久しぶりに再会した時に想いの丈を打ち明けても良かったのだが、いざ言葉にすると覚悟した時に限って日和ってしまい、打ち明けられずに終わっていた。

 それが今回、ノームフォルズ……正確には精霊の自我すら抑え込む程の多賀野の異常な行動が引き金となり、燈真の調子を崩した結果となってしまったのは言うまでもない。今はまだ大丈夫かもしれないが、いずれそこを突かれて痛い目に遭うのは確実だろう。そうならない為にも燈真はより一層沙耶の事を気遣い、守っていかねばならない。

 幸いにも次のフォルズ出現情報はまだ出ていない上に今週分の仕事を燈真は既に終わらせている為、次の休日は完全に自由な一日となる。故に反省会はそこそこに、まずは燈真と沙耶の二人を好きな場所へ行かせようとビートルは考えていた。

 

「そうだ、燈真よ。次の休みとやらは沙耶と二人で出掛けたらどうだ? 漫画家の仕事、今週分は終わらせてあるのであろう?」

 

「ん? まぁ、そうだけど……アレか? 要するに、沙耶と二人でデートでもしてこいってか? まぁ、沙耶の奴も今回酷い目に遭っちまっただろうし、心のケアは重要だから俺としてもそうしたいのは山々だが……良いのか?」

 

「我と燈真の仲故、良いに決まっておろう? なぁに、ノームの事と燈真の家の事は我等に任せてゆっくり羽を伸ばしてくると良いぞ」

 

「そっか、そう言うならお言葉に甘えるとするか……ありがとな」

 

 ビートルに気を遣わせたような気がしてならない、といった様子の燈真だったが、ここの所仕事に沙耶や行方不明者の捜索にと休む暇が無かったのは事実。それ故にゆっくり羽を伸ばす良い機会だと考えた。

 連れ帰ってきたノームの方は未だに起きる気配が無かったが、その反面沙耶の方はそろそろ目が覚める頃合だろうと頭の片隅で考えていた燈真は、一旦時計を見てから次の行動に移る。

 

(ん……夜の九時? って事は彼奴を倒してから沙耶とノームを連れて家に帰ってくるまでにそんなに時間が経ってたのか…。んじゃ、まずは風呂沸かしに行くとするか。その後に沙耶を交えて飯で良いだろ)

 

 そう思った燈真は一旦この場を後にし、風呂場へと向かう。扉が閉まる音で気づいたのか、おとぎ話に出てくる白雪姫のように今の今まで気絶するように眠っていた沙耶がようやく目を覚ました。

 

 

 »»»»»»»»»»

 

 

 燈真が席を外した時と同時刻、燈真の手によってノームフォルズの魔の手から救われた沙耶がようやく目を覚ましてすぐに目に飛び込んでくる光景は、見知らぬ天井。

 

「あれ……此処、は?」

 

 見知らぬ天井を見るのはコレで二度目であり、今見ている天井は綺麗な天井な為、多賀野に拉致された時に見た廃ビルの天井ではない事は一目見れば分かった。それならば一体此処は何処なのだろう、と視線を横にずらせば、漫画を描く時に必要になる画材道具一式が並ぶ机。それを見た沙耶はすぐに気づく。

 

(……アレって、漫画家の仕事道具だよね? え、待って? じゃあ……此処ってもしかして、まちけんの自宅なの!?)

 

 どういう訳か幼馴染じみの頃から『好き』という想いを燻り続けていた想い人の家、それも燈真が使っているベッドに寝かされていた事を知った沙耶は飛び起きる。それと同時に机の辺りで何やら物音が聞こえてくる事に気がついた。

 物音が気になって様子を見に行くが、そこには誰も居ない。だが、そこに誰も居ないという訳ではなく、正確にはそこに精霊と呼ばれる空想上の生き物とされる生き物達が居るのだが、何故か最初から精霊の姿や声が聞こえる燈真とは違って沙耶は精霊の声は聞こえないのは勿論、姿も見えない。

 しかし、暴走した精霊の成れの果てであるフォルズと邂逅した影響なのかどうかは定かではないが、燈真ほどではないにしろ、沙耶は声や姿が分からなくても精霊の存在を僅かにだが感じ取れるようになっていた。ぼんやりと、僅かに見える輪郭を頼りに沙耶は燈真の仕事道具が並ぶ机の方へ向かう。

 

「えーと……確かこの辺に何かが居るような気がするんだけど…? なんかこう、ぼんやりしたものがもぞもぞ動いてるような、そうじゃないような……」

 

 そう呟きながら手探りで一体それが何なのか見ようと試みるが、沙耶に触れられようとされているビートル達は上手いこと沙耶の手から逃れて隅っこに逃げていた。動けないノームはフィンとエルモスの二匹が抱えている。

 それでも気の所為として片付ける事が出来ない程に気になりすぎた沙耶は、それからも何度かぼんやりと見える何かの輪郭を頼りに机の上を捜索するが、ビートル達は器用に躱していく。

 そんなこんなで沙耶がぼんやりと見える何かを掴もうと悪戦苦闘している最中、(おもむろ)に扉が開いて出来た隙間から燈真が顔を出す。その事に気付いた沙耶は慌てて机から離れた。

 先程まで机の近くで何やらドタバタしていたであろう沙耶を扉の隙間から覗いていた燈真は一体何をしていたのかと首を傾げている。

 

「……沙耶? 良かった、起きてたのか。ってかお前、机の前で何してんだよ? 部屋の外までドタバタ音が聞こえてたが……」

 

「あ、えーと……な、なんでもない! まちけ……じゃなかった、燈真は気にしなくて良いよ!」

 

「ん? わざわざ言い直す必要あったか? まぁいいや、なんでもないなら良いけど……その、まぁ、なんだ。とりあえず今日は夜も遅いし泊まって行けよ、沙耶」

 

へっ!? えっ、あ……えぇっ!? とっ、ととととと燈真!? そ、そそそそれって一体どういう風の吹き回しなのかなぁぁぁぁぁっ!?!?

 

「ったく、夜中にデケェ声出して騒ぐな馬鹿沙耶っ! つーか、何驚いてんだ? こんな夜更けにお前一人だけを帰す訳にゃあいかねぇだろ。それに沙耶、お前はあんな目に遭ったばかりなんだ、また何かに巻き込まれたりしないかすげぇ心配なんだよ。だから今日と明日くらいは俺の傍に居ろ。良いな?」

 

えぇ、と、そのぉ…………………………はぃ」 

 

 燈真は精霊と契約を交わしてフォルズと化した悪意ある人間……多賀野の悪行に巻き込まれ、心身共に辛い目に遭った沙耶の事が心配でそう言ったのだが、沙耶の方はと言えば思いがけず燈真の家に泊まる事になってしまい、理解が追いつかずに顔から火が出るくらいに真っ赤になってしまう。

 何はともあれ燈真宅に泊まる事になった沙耶は、なんとかして平常心を取り繕うも心臓バックバクである。そしてそれは、燈真も同じであった。

 勢いで泊まって行けと言った手前今更撤回する訳にも行かず、フォルズと闘う時よりも激しく鼓動する心臓の音を紛らわすようにイヤホンを両耳に突っ込んでいた。

 

(……ったく、こんなんでドギマギするなんていつもの俺らしくねぇなぁ…仕方ねぇ、コレも惚れた弱味って奴かもしれねぇしな)

 

 そんな事を考えながら、燈真もまた、いつもの日常とは違う束の間の非日常に心が踊っていたのも事実。何時しか自覚しないようにひた隠しにしていたものが先のフォルズと化した多賀野の一件で浮き彫りになってしまった為、帰宅してから今までいつもの調子が出ず、恥ずかしさで一杯なのだ。

 そんなこんなで互いに風呂に入った後、何時ぶりかの久々に二人きりの夕飯時。風呂を沸かす前、予めビートル達に『夕飯は好きな物を食べていい』と伝えてあった為、ビートル達は燈真の仕事部屋にて食事をしている。

 多賀野との契約を破棄された影響なのかは定かでは無いが、未だ目覚めない土の精霊ノームの看病もある為、三匹の精霊は各々役割を分担しているのもある。それ故に今この時だけは燈真と沙耶の二人だけの時間という事だ。

 

「……い、いただきます」

 

「……お、おう」

 

 漫画家として日々を過ごしている傍ら、仮面の騎士こと仮面ライダーロードとして暴走した精霊を救う使命を背負っている燈真にとっては既に日常と化していた、精霊達の声は今だけは聞こえない。

 燈真と沙耶の二人しか居ない静かな部屋に食器が擦れる音だけが響く。幼い頃から長年隠して来た恋心を改めて自覚してしまった二人に流れるのは、とっても気まずい空気。

 お互いがお互いにどちらが先に口を開くのだろうか、と探りを入れている為、終始無言で食事を摂る時間だけが過ぎていく。だが、いつまでもこうしてはいられない。気まずい状況を打破する為、意を決して燈真から先に口を割る。

 

「あー……その、なんだ。こうして二人で食事すんのも懐かしいな。沙耶。俺達がまだガキの頃はよく二人揃って向かい合ってさ、仲良く飯食ってたのを思い出す」

 

「うん……そう、だね」

 

「ほんと、ガキの頃は色々あったけどさ……お前が傍に居てくれて良かったって本当に思ってるよ」

 

「……だって、あの時の燈真を放っておけなかったんだもん。燈真のお父さん、燈真と燈真のお母さんを置いて何処か行っちゃって、その事を知った燈真は凄く怒りに満ち溢れてて……お父さん、まだ見つかってないんでしょ?」

 

「まぁ、な。警察に捜索願を出してあるが、今日(こんにち)まで全くと言っていい程に有力な情報は無しだ。このまま見つからねぇなら最悪の場合、失踪宣言の手続きをしなきゃならないかもって俺の母さんが言ってたしな……」

 

「そう、なんだね……」

 

 そう語る燈真の表情は暗く、それを聞いていた沙耶もまた暗い表情になる。燈真の父親は燈真が小学生の頃に忽然と姿を消して以来それっきり音沙汰無し。警察には捜索願を出してあるものの、特にこれといった有力な情報が得られないまま既に十数年が経過している。

 燈真の母親は必ず父親が帰ってくる事を信じているが、このまま見つからないのであれば法律上死亡したとみなされる失踪宣言の手続きに踏み切るつもりでもある。

 しかし、出来る事ならそれはしたくない、と燈真と燈真の母親両名はそう思いながら燈真の父親が帰ってくるのをずっと願っているのだが……人間誰しも忍耐力の限界というものは存在する為、これ以上は流石に待てないのだろう。

 それ故に失踪宣言の手続きは父親が生きていて父親の帰りを待ち続けている二人にとっては最終手段でもあるのだ。その手続きをして受理されれば、燈真と燈真の母親両名と燈真の父親の関係はそこで切れる。

 もし、失踪宣言の手続きを終えて関係が切れた後に燈真の父親が帰ってきたとしても、その時には血の繋がりはあるにせよ既に赤の他人になっているという事だ。

 燈真と燈真の母親の二人を置いて何処かへ行ってしまった燈真の父親に対して、燈真は色々な感情が織り交ざった怨み言を口にする。十数年という父親が居ない間に燈真が積み重ねたものは、あまりにも重すぎた。

 

「ったく、親父も親父だ。なんで何も言わずにどっか行っちまうんだよ。俺はともかくとして、取り残された母さんが可哀想だと思わねぇのか、彼奴は。母さん、親父が居ない分頑張らなきゃって強がってるのが見え見えでさ……何かあったら怖いから生存確認も兼ねて逐一連絡はしてるんだが、毎日電話越しに泣いてるんだよ。聞いてるのも辛ぇしさ…」

 

「だよねぇ……燈真と燈真のお母さんを放っておいて今頃何してるんだろうね、燈真のお父さん」

 

「さぁな。警察の手にかかっても今まで有力な情報が得られてねぇって事は……ここまで来るともう最悪の場合を想定しなきゃならねぇ。例えば、あんま考えたくもねぇが何処か遠い地で命を落としてるとか、な」

 

「……それ、は、出来るだけ考えたくないね」

 

「出来るだけ、な。あのクソ馬鹿親父が何事もなく帰ってくるならそれでいい。そうしたら十数年もの間、ずっと母さんを泣かせてきた罰として俺が十数年の思いを乗せて力の限り親父をぶん殴るだけだ」

 

 そこまで言い、暗い話もここまでにしてそろそろ話題を変えるかと普段あまり飲まないお酒を取りに一旦席を離れようとした燈真だが……

 

「あ、燈真。ちょっとだけ、待ってくれる? ちょっとだけで良いから……!」

 

 そんな燈真を沙耶が慌てて引き止める。あまりにも必死に引き止めるものだから一体何事かと席を立とうとしていた燈真は首を傾げつつもう一度座り直した。

 

「ん? なんだよ沙耶、急に引き止めてどうした? 湿っぽい話をしちまったし、話題転換の為に酒持ってくるだけだぜ?」

 

「えと……その、ごめん急に。一つだけ、私と約束してほしくて」

 

「約束……? いや、ほんと急にどうしたよ?」

 

 沙耶が突然口にした『約束』の一言に首を傾げるしかない燈真。対する沙耶はと言うと、勢いで引き止めたのは良いものの、何を話すべきか迷っていた。

 永劫とも取れる数分の時が流れた後、覚悟を決めたのか意を決したのかは不明だが、真剣な表情の沙耶は先程口にした『約束』の中身を話し出す。

 

「燈真の事だから絶対無いとは思うんだけど……さっきの話を聞いてたらさ、燈真のお父さんみたいに燈真も何処か行っちゃうような、そんな気がして……ね? だから、私からの約束。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、燈真」

 

「……ふっ、バーカ。俺が何処か行く訳ねぇだろ? さっきの話を聞いたからって心配しすぎだわ馬鹿沙耶。でもまぁ、心配してくれてありがとな。約束する。俺は何処にも行かねぇからよ」

 

「……うん、ありがとう」

 

 何処にも行かないでほしい。それは先程燈真が話していた、行方不明者となって十数年が経過しても尚消息不明のままである燈真の父親とその息子である燈真の両名を重ね合わせてしまった沙耶が不安と恐怖に煽られた結果、口にした約束。

 心の何処かでは誰よりも正義感が強く、口は悪くても心は優しい燈真がそんな事をする訳がない、と沙耶自身分かっているつもりだったが、もしかしたら燈真も燈真の父親と同じように大切な人の元から……自分や燈真の母親の元から去っていってしまうのではと考えてしまい、不安に駆られたのも事実。

 そして、如何なる理由があろうとも一度結んだ約束は守らねばならない。それが想い人からの約束であれば尚更だ。心配の表情を浮かべる沙耶をなんとか安心させる為、燈真は沙耶との約束を守ると誓う。

 その後、深夜近くまで沙耶と燈真はお互い久しぶりにお酒を飲みながら談笑し、そしていつの間にか眠りについていた。そんな二人の様子を、燈真と共に闘う使命を背負っているビートル達は仲睦まじく眺めていた……。

 

 

 »»»»»»»»»»

 

 

 ───そして翌日。日付的には休みの日。いつの間にか寝ていた二人の内、燈真はすぐに起きていた。漫画家という職業柄、早起きするのが日課になっていた為、今日もそれで早起きしたという訳である。

 

(……あれ? いつの間に寝てたんだ俺? 酒飲んで沙耶と談笑してから先の記憶が全くねぇ。これだから酒飲むのは控えてたんだよな…)

 

 そう思いながら起きようと身体を起こそうとした時。何か柔らかいものに手が触れる。一体何なのだろうと痛む頭を押さえながら視線を下に向ければ……

 

「ん? なんか柔らかいものが触れ───ッ!?!?!? (え? は??? な、なんで沙耶が俺にくっ付いてんだぁぁぁぁぁ!? いやいやいやいや待て待て待て待て、昨日寝る前の俺は一体何したんだよマジでっ!?)」

 

 燈真を抱き締めるようにして寝ている沙耶が居た。規則正しい寝息を立てながらすやすやと寝ている沙耶を見ていた燈真だが、状況が掴めずに軽いパニック状態に陥る。

 そんなこんなで軽いパニック状態になりつつも必死で頭を動かして状況を整理しようとしていると、色々な意味で燈真が慌てているのを知らない沙耶がようやく目を覚ました。

 沙耶は寝ぼけ眼で燈真を見て、普段なら絶対見せないような緩んだ表情を浮かべている。そんな状態の沙耶を現実に引き戻さないように気をつけながら、燈真は朝の挨拶を告げた。

 

「お、おう……? お、おはよう沙耶」

 

「うん、おはよう燈真ぁ……わぁい燈真だぁ……ふへへぇ」

 

 まだまだ夢見心地でいるのか、意識はハッキリしていないようなそんな状態でいる沙耶。一見仲睦まじい光景のようだが、年相応の女性の身体が自身にくっ付いているという事実は変わらない。

 優しく離そうとしても華奢な腕から出てるとは思えない程の強い力でだいしゅきホールドをされており、このままだと色々な意味で理性が危ないと直感で感じた燈真は残っている理性が全て吹き飛ぶ前に沙耶を夢から現実に引き戻す決心をした。

 

「あー……その、なんだ。夢見心地な所本当に悪いが、いい加減起きようか。沙耶」

 

「………………んぇ? なんで~?」

 

「ほれ、そろそろ朝飯にすっからよ。嗚呼それと……俺も色々限界近いから早急に離れてくれると助かる。それとも……このまま俺に喰われるつもりか? なんてな」

 

「喰われ───えっ?」

 

 冷静さを装いつつも心臓バックバクな燈真が冗談混じりにそこまで言うと寝ぼけ眼で自分と燈真を交互に見た後、微睡んでいた眠気が急速に覚めていったのか茹でダコのように顔を真っ赤にし、人間とは思えない素早い動きで燈真から離れる沙耶。

 顔を真っ赤にしながら何も言わずに小動物のように縮こまる沙耶を見てひとまず己の理性が吹き飛ぶ心配は無くなったか、と一息ついた燈真はゆっくりと立ち上がり、台所の方に向かう。

 二日酔いなのかズキズキと痛む頭を抑えながら二日酔いの身体に優しい軽めの朝食を作っている途中で、先程まで縮こまっていた沙耶が隣にやって来た。

 

「お……お、おはよう。燈真」

 

「………………おう」

 

 先程まであの状態だったのが衝撃的すぎたのか、目線を合わせると共に顔を赤くしてしまう為、二人して顔を合わせる事が出来ずに互いに顔を背けながら改めて挨拶を交わす。

 それから少しして燈真お手製軽めの朝食が出来上がり、二人は会話もそこそこに朝食を共にする。そうして、朝食を食べ終えた後。またも凄く気まずい空気が二人の間に流れる。

 とはいえ、朝の出来事が脳裏をチラついてマトモに目線を合わせる事も出来ないため、このままだと昨日の二の舞だなと考えた燈真は早々に話を切り出そうと口を開こうとした時、燈真はビートル達が起きてくる気配を感じた。

 ビートル達のおかげで気まずい空気の流れは断ち切られた為、そこに感謝しつつ燈真は沙耶に待ってるように言い、ビートル達の元へ向かうと既にビートルは起きていた。

 

「お、やっぱ起きてたか」

 

「うむ。昨日はお楽しみであったな、燈真よ」

 

んなっ!? そ、そそそそそんなんじゃねぇってのっ!!」

 

 ビートルにわざとらしく茶化された事に心底驚き、今日の朝の事を思い出してしまった燈真は酷く取り乱したが、ビートルは高笑いをして誤魔化す。

 

「なぁに、冗談であるぞ。エルモスとフィン、後はノームの奴はまだ起きてこぬ故、後は我等に任せて出掛けて良いぞ?」

 

「ったく、茶化すんじゃねぇよこんにゃろう。んじゃ、お言葉に甘えて今日は沙耶と出掛けてくるわ」

 

「うむ。偶には闘いや仕事の事を忘れて羽を伸ばして来るが良い」

 

 それもそうだな、と頷いた燈真は改めて沙耶の元に戻り、それからすぐに沙耶と共に久江市の街中に出掛ける。久しぶりのオフの時間というのもあり、燈真は勿論沙耶も羽を伸ばす良い機会だった。

 だが、この時の二人はまだ知る由もない。次なるフォルズと精霊達を意図的に暴走させている悪意ある存在が二人を狙っている事を。その事を二人が知るのは、まだ先の話である。




ようやく完成したぁ……(´・ω・`)
燈真の過去、少しだけど確実に距離が縮まる二人、次なる相手が二人を狙っているという事実が迫りつつある中、果たして燈真は沙耶を守れるのか…?

ひとまずここまで、次はいよいよ地水火風の四匹目に当たる精霊が登場……出来たら良いな(願望)

ここまでお読み下さりありがとうございました、また次回(・ω・)ノシ

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