仮面ライダーロード   作:剣舘脇

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初めましての方は初めまして、剣舘脇と申します。
主にクロスオーバー作品を書いていた私ですが、様々な作家様に影響を受け、この度オリジナルの仮面ライダー、『仮面ライダーロード』を書き上げました。

オリジナル仮面ライダーの小説を投稿するのは今回が初めてですが、自分なりに設定を練って書き上げた物でもあります。何卒よろしくお願いいたします。


episode1 次代の覇王

 ───精霊歴10᙭᙭年。

 

 此処より遥か彼方にある、誰も知らない異世界の一つ、精霊界。そこには火霊(サラマンダー)水霊(ウンディーネ)など各々が得意とする属性を司る精霊達が暮らしていた。

 彼等を統べるのは数多の精霊を従えし者。精霊達からは尊敬と敬意を込めて覇王(ロード)と呼ばれ、全身に精霊の力を宿した鎧を纏うその者は精霊界を統べる王の証たる大剣と精霊との契約の証たる鍵を手に、精霊達が平和に暮らせる世界をその手で創るべく、精霊界の支配を目論む悪魔達との闘いに身を投じていた。

 

 ───精霊歴11᙭᙭年。

 

 精霊界の支配を目論む悪魔と精霊界を護る宿命を背負う覇王の闘いは約100年続き、遂に悪魔の親玉である『オーディー』を討ち取った覇王の手により悪魔達の侵略を受けていた精霊界も平和を取り戻した。しかし、長年続いた闘いの復興も進みつつある中、精霊界全土を揺るがす大事件が起きる。

 数多の精霊を従え、精霊達の王でありながら未だ争いを続ける残党の悪魔達との闘いを続けていた彼の者が王の証たる大剣と精霊との契約の証たる数多の鍵を玉座に残し、精霊界から跡形もなく姿を消したのだ。それを知った王を慕う精霊達による決死の捜索も虚しく、依然として王の所在は掴めない。

 その上、精霊界の上に立つ王が不在という状況をこれ以上ない好機と見たのか、精霊界で暮らす数多の精霊達は自分に課せられていた覇王との契約という縛りを結んでいた根源であり自身の力の一端が宿る鍵を手に人間界へ繋がる門を開き、我先にと精霊界から人間界へと流れ込んだ。

 

 そして、精霊達が次から次へと逃げていった影響で今や誰も居なくなってしまった精霊界。かつて精霊達から覇王と呼ばれていた者が座っていた玉座に遺されたのは、使い手を喪った大剣のみ。

 それを見つけたのは王の帰りを待ち続ける精霊の一人であり、皆が覇王を見限り人間界へと逃げていく中一人精霊界に残る事を決めた、その力の強大さ故に覇王の側近とも言える赤き龍の精霊。

 しかし、その身体は覇王が居なくなり、覇王との契約が切れた影響なのか全盛期の力を喪い、今や小型犬の大きさまでに小さくなっている。

 

「嗚呼……我らが覇王、一体何処(いずこ)に行かれたのですか…? 貴方様が居なくなった影響で精霊界には私を除き誰も居なくなってしまいました……」

 

 赤き龍の精霊はまるで王は亡き者だと現さんばかりに玉座に突き刺さる大剣に自らの手を置き、王無き精霊界の現状をぽつぽつと言葉にしていく。

 

「もし、貴方様がこのまま精霊界に戻らないのであれば、私が貴方様の代わりを務めます。他でもない覇王の代わりとして覇王の側近たる私が皆を、再び精霊界へ連れ戻します……!」

 

 赤き龍の精霊は涙を拭い、使い手を喪った大剣を天に掲げ、覚悟を決める。そして主無き大剣と自身の力が宿る鍵を持ち、自分達が産まれた地を棄てて人間界へ逃げていった精霊達を追いかける為、遺された自分の力を使って人間界へ繋がる門を開いてその中に飛び込む。

 

 ───精霊界を統べる覇王が居ないなら覇王の代わりに自分が全ての精霊を精霊界へ連れ戻し、この手でもう一度精霊界を創り直す。

 

 その想いを胸に赤き龍の精霊もまた、他の精霊達と同様に人間界へ辿り着いた。そこで出会う、一人の青年との邂逅が自分とその青年の運命を大きく変えるとは知らずに。

 

 ───これは、数多の精霊を従えし『次代の覇王』となる未来を運命づけられ、その未来を背負って覇王へと至る覇道を歩む事となった一人の青年の話──

 

 

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 ───西暦20᙭᙭年。

 

 人類達の手によって発展を続ける人間界、とある住宅街にて一人の青年が今日の仕事を終えて疲労困憊といった様子で自宅へと帰ってきていた。

 適度に切り揃えられた黒髪にパーカー姿の青年の名は剣淵燈真(けんぶちとうま)。学生時代から血のにじむような努力を重ね、やっとの思いで今年のデビュー枠を勝ち取った新人漫画家である。

 とはいえ、デビューしたばかりの漫画家である彼にアシスタントは居らず、ストーリーやキャラを考え、原稿を仕上げるのは全て彼一人で行っている。それ故に彼は一般のサラリーマンと比べて過酷な日常を送っていた。

 

「はぁ……今日も疲れたな…」

 

 燈真は帰宅すると、まずは手洗いや炊事洗濯など身の回りの事を済ませる。そして、次の漫画のストーリー展開を考える為に一人用の机へ向かっていく。

 自室の端にあるこじんまりとした机の上にはGペンやトーン、原稿用紙などの漫画を描く際に必要不可欠な仕事道具がズラリと並べられている。そこが燈真の仕事場である。燈真は机の上にいつも持ち歩いているノートを広げ、次のストーリー展開をどうするかを鉛筆でざっくりと描いていく。

 納得のいくストーリー展開が描けるまで書いては消しを繰り返し、やっとの思いでコレだ、と思った展開を書き上げた頃には既に日付が変わっていた。壁に備え付けられた時計の時刻は夜の零時を指し示している。それを見た燈真は大きくため息をつく。

 

「あー……もうこんな時間か。つっても、次の〆切までまだ日数はあるし、この後はどうするかな…」

 

 いつもなら零時を過ぎた辺りで眠気が訪れるのだが、今日は何故か頭が冴えていた。自分が納得のいくストーリー展開やコマ割りなどをびっしりと描き上げたノートを一旦閉じ、長時間机に向かっていたせいで凝り固まった身体を解す。

 眠気が来ないとはいえ時間も時間だしそろそろ寝なきゃ駄目だな、と思った燈真は日々の習慣となっているストレッチを行った後、寝間着に着替えようと椅子から立ち上がったその時だ。

 

助、けて……

 

「……ん? 今、なんか聞こえたような…? ま、多分空耳や幻聴なんかだろうし、さっさと寝るとしますかねぇ」

 

 今にも消え入るような声で燈真の耳に誰かの声が聞こえてくる。しかし、今の時間帯は深夜。急ぎの用が無い限りは誰もうろつかない時間帯である。

 幻聴や空耳と片付ける前に何故か妙に気になるから念の為、と思った燈真は閉め切っていたカーテンを開けて外を見やる。日は登っていない時間帯の為、視線の先は夜の帳が降りていた。

 夜遅い時間帯だからなのか街灯も一つ残らず灯っておらず、人が歩いている様子も見受けられない。先程聞こえてきた声はやっぱり気の所為だったか、と開けたカーテンを閉めてもう一度寝間着に着替えようとした時だ。

 

お願い……誰か、誰か助けてくれぬか……

 

「はぁ……ったくよ、俺としては空耳って片付けたいんだが何度も聞こえるんじゃ空耳……じゃあねぇよな? 一体誰なんだ、こんな時間に助けを求めてるのはよ…」

 

 先程聞こえてきた声より少し大きく、それでいて確かに助けを求める声が燈真の耳に届く。仕方ない、と寝間着に着替えるのを辞めた燈真は動きやすい服装に着替え、自宅の外に出る。

 夜の冷たい空気が肌をなぞる。凍えないようにお気に入りのコートをしっかりと羽織り、助けを求める声の主を探す。暗闇の中、何も手掛かりが無い状態での捜索は骨が折れるなと考えつつ、燈真は声の主の捜索を続けた。

 

 ───声の主の捜索を開始し、夜の二時を過ぎた頃。

 

「う、うぅ……」

 

「……ん、なんだ此奴? トカゲ……にしてはなんか赤くてデカいし、背中に羽っぽいの付いてるし…もしかして、此奴があの声の主なのか? つーか、やけにボロボロだな…」

 

 暗闇を照らす為に持参してきていた端末の備え付けライトで足元を照らしていると、街路樹の傍に横たわっている声の主と思われる生き物を見つけた。

 見た目は空想上の物語に出てくる幻想の生き物、ドラゴンに酷似している。しかし、その生き物は小型犬くらいの体格である。更に、野良犬にやられでもしたのか小さな身体と羽は傷だらけであり、今にも息絶えそうな様子だ。

 見つけたからには放っておける筈もなく、ひとまず自宅に連れ帰る事にした。一刻も早く手当てをしなければこの得体も知れない生き物は命を落としてしまうかもしれない。そう思った時には寒さなど知ったことか、と羽織っていたコートを脱いで謎多き生き物をコートで包み、抱き抱えて大急ぎで自宅へ帰っていく。

 

(頼む、もう少しの辛抱だから堪えてくれよな…!)

 

 自分の声が今抱えている謎多き生き物に届いているのかは定かではないが、声をかけ続けなければ駄目だと何故か本能的に悟っていた。それから来た道を全速力で駆け抜け、やっとの思いで自宅に転がり込んだ時には四時を回っていた。

 こんな時間にもなれば流石に眠気が襲ってきてはいたが、自分の事よりもまずは手当の方が最優先だと燈真は思った。だが、今まで動物の手当などした事がこれっぽっちも無い燈真はスマホの検索機能を駆使して得た情報を頼りに覚束無(おぼつかな)い手つきで謎多き生き物の手当を始める。

 

「動物の手当なんざやった事ねぇが…やるしかねぇ。えーと、ここはこうして……羽っぽい箇所は鳥類の手当の仕方で良いんだよな、多分。後は傷がある所を包帯で巻いてっと……よし、なんとか出来たな」

 

 見様見真似ではあるもののドラゴンっぽい見た目の生き物の手当を終えた燈真。手当に夢中になっていたせいで周りが見えなくなっており、窓から差し込んでくる陽の光に気づいて端末に内蔵されている時計を見れば朝の六時を過ぎていた。

 それを見た燈真は結局徹夜しちまったなとため息を一つした後、どっど押し寄せてくる疲れと眠気に身を任せる形で謎多き生き物の隣に倒れ伏せ、そのまま深い眠りについた。

 

 ───燈真が眠りについた後、燈真から手当を受けたドラゴンっぽい見た目の生き物が微かに動いた───。

 

 

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 ───燈真が眠りについて昼を過ぎた頃。

 

 とある会社に務めている女性会社員が昼食を買い終え、職場に帰る前に子供達が遊んでいる公園に備え付けられているベンチにて一人昼食を摂っていた。

 野菜ジュースに鮭おにぎり二個という、誰の目から見ても栄養は足りてないだろうと思われる昼食を済ませ、一息ついた所で虚ろな瞳で澄み切った大空を眺めている。その表情は絶望に満ち溢れていた。

 

(はぁ……今の仕事に就きたくて必死に頑張っていた頃が馬鹿馬鹿しく思えてくる。同期は着々と業績を上げてるのに私は上司にダメ出しされて頭を下げる毎日……周りの職員も憐れむ目で見ているし……ほんと、私って何の為に生きてるんだろ…)

 

 女性会社員は今の自分が置かれている状況に嫌気が差し、これからの人生を諦めようとしている傍ら、まるで自らの鬱憤を晴らすが如く執拗に怒鳴り散らす上司の事が憎たらしく思えてきていた。

 今の仕事を辞める前に一度でいいから上司に対して何か復讐をしてやりたい、でも今の自分にそんな事が出来るのか、と葛藤を繰り広げていた時だ。

 

『へぇ……? お前、中々面白い奴だな?』

 

「……え?」

 

 明後日の方向に向いていた意識を現実に引き戻すかのように、誰かが耳元で囁く。その声に気づいて周りを見渡しても公園で遊んでいる子供達の姿しか見えず、誰も居ない。溜まった疲れによる幻聴だったのか、と鞄の中から栄養ドリンクを取り出して飲もうとした時。

 

『おい、そこのお前。そうそう、お前だお前。なーに無視してんだよ、その濁り切った目を見開いてよーく見てみな?』

 

 先程聞こえてきた声が真正面から聞こえてきた。幻聴にしては妙にハッキリ聞こえてくる為、仕方なく声の言う通りに目を凝らして見る。すると、先程まで何も居なかった筈だった空間に、赤い鱗に覆われた体を持つトカゲのような生き物が居る事に気づく。

 しかし、おかしな点がいくつかあった。自分に声を掛けてきたであろうトカゲのような生き物は空想上の生き物である『サラマンダー』のように全身に炎を纏っており、翼も無いのに宙に浮いていたのだ。

 言葉では言い表せないような出来事が目の前で起きているという事に驚いて変な声が出そうになるがなんとか既の所で堪え、自分の目の前に居る生き物に恐る恐る話しかける。

 

「私に話しかけてきたのは……貴方で合ってる?」

 

『そうだ、やっと気づいたか。ま、どういう訳か俺の姿はお前以外には見えてねぇみたいだがな』

 

「え……そう、なの?」

 

『嗚呼、お前に話しかける前にそこに居るガキに声を掛けたんだが、俺の声はおろか姿すらも見えてねぇみたいだったからよ』

 

「え? それじゃあ、子供達には見えていないのになんで私には貴方の姿が見えてるんだろ…」

 

『さぁな。()()である俺にすら分からねぇ事なんだ、人間のお前にも分からねぇ事だろうよ』

 

 なんだか小馬鹿にされたような気がしたが、問題はそこではない。今自分の前で当たり前の様に人語を話すトカゲのような生き物は自分自身の事を精霊と言ったのだ。

 一部地域では信仰の対象でありながら小説やゲームなどの空想上に生きる生命とされており、私達が住むこの世界には存在しない筈の存在である精霊。それが今自分の目の前に居るのだ。そんな事を考えてると、精霊から話を進めてきた。

 

『まぁ、そういう細かい話は置いとくか。俺、頭を使うのはあんまり好きじゃねぇからな。さっさと本題に行くとするか。お前、俺には無いものを持ってるな?』

 

「私にはあって貴方に無い、もの……?」

 

『そうだ。お前達人間にあって俺には無いもの……憎み、葛藤、焦り……そういった()()だよ』

 

「貴方は、それが知りたいの……?」

 

『嗚呼。その代わりにといっちゃなんだが、お前に俺の力を貸してやる。力をどう使うかはお前の自由。どうだ? お前にとって悪い話じゃねぇ筈だろ?』

 

 トカゲのような見た目の精霊の言う通り、確かに悪い話ではない。私が抱いている感情を教える代わりに大きな力が手に入る。

 悪魔の誘いとも言うべき甘い誘いなのは分かっていたが、いつも怒鳴り散らしてくる上司に対して復讐が出来る機会を手放したくないという気持ちの方が大きかった。

 

「……分かったわ。感情について教えてあげるから貴方の力、私に貸して」

 

『OK、今ここに契約は成立したぜ。俺はお前を通して感情を知っていくからよ、後はお前の好きにしな』

 

 そういうとトカゲのような見た目の精霊はなにやら呪文のようなものを唱えると、自らの体を鍵のような物に変える。通常の鍵と違う点は鍵全体が炎のような形状をしている点。

 それを手にした女性はこれをどうやって使えばいいのか、と思っていると、左手の甲に鍵穴のような刺青が彫られている事に気づく。ここに先程の鍵を差し込めば良いようだ。

 

 精霊の姿から変わった、炎の形状を取る不思議な鍵を手にした女性は不敵な笑みを浮かべていた───。

 

 

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 場所は変わり、燈真宅。時刻は午後三時を過ぎた辺りの事。疲れのせいで爆睡する燈真の横では燈真の手当を受けたドラゴンっぽい見た目の生き物が目を覚まし、自分の隣で寝ている燈真を起こそうと躍起になっていた。

 

……ろ、お主

 

「…んん、一体何なんだよ……」

 

……きろと言って…るのだ!

 

「だから何なんだよ……徹夜して疲れてるんだからもう少し寝かせろって……」

 

 そう言いながら全く起きる気配の無い燈真。いつまで経っても起きない燈真に対して痺れを切らしたドラゴンっぽい見た目の生き物はというと……

 

「いい加減……起きぬか馬鹿者ぉぉぉぉぉ!!!

 

い"っでぇぇぇぇぇぇぇ!? 嗚呼もう!! 分かった分かった起きるから離せっていだだだだだだ!!!」

 

 燈真の頭に思いっきり噛み付いた。これには流石の燈真も起きるしか無く、自分の頭にかぶりついた生き物を引き剥がそうと悪戦苦闘していた。

 それから数分の間格闘し続け、やっとの事で引き剥がす事に成功した燈真。幸いにも噛み付かれた箇所に歯型がくっきりと残るだけで大事には至っていなかった。

 

「はぁ……ようやく起きたか、この馬鹿者が」

 

「いつつ……俺としては、お前に色々ツッコミをしたい気持ちで山々なんだがな……ったく、最悪だ…」

 

 噛み跡を隠すように室内で帽子を被っている燈真。そんな燈真を見てやれやれ、といった様子でいるドラゴンっぽい見た目で人語を話す生き物。見るからに珍獣であるその生き物を前に、燈真から話を切り出す。

 

「……んで? 話は変わるが、聞きたい事がある。お前が昨晩助けを求めてた奴でいいんだよな?」

 

「うむ。人間に我の声が届くとは思ってはおらなかったのだが……()()()()()()()()()()()()()()

 

「あ? 聞こえる者が居た……? まぁいいか。俺が見つけて手当したから良かったものの、すんげぇボロボロだったし、あのままじゃ野垂れ死にだったぞお前」

 

「嗚呼、手当してくれたのもお主だったか。その件も含めて感謝しているぞ、人間」

 

「お、おぉ……? なんか、こそばゆいな…」

 

 いくつか引っかかる点はあるものの、自分の手で人語を話すドラゴンっぽい見た目の生き物。羽も本物らしく忙しなく動かして宙に浮いていた。それは一旦置いといて、次の質問に移る。

 

「んじゃあ、次の質問だ。お前の名前を教えてくれよ。どう呼べばいいか分からねぇしな」

 

「そうか、まだ名乗っておらんかったな。我はビートル、気高き龍の精霊であるぞ」

 

「ビートルか。俺は剣淵燈真、燈真でいい───って、待てよ!? お前今、精霊っつったか!?」

 

「うむ。我は正真正銘の精霊であるぞ? それが何かおかしいのか?」

 

「いや、まぁ……十分おかしい事しか、ねぇんだけどよ…?」

 

 精霊。一部地域では信仰の対象であり、小説やゲームなどに出てくる空想上の生き物の総称。空想上の生き物であるが故に現実世界に精霊が居る方がおかしいのだ。

 だがしかし、自らを精霊と称する謎多き龍の姿をした生き物、ビートルが目の前に居る。夢なのかと頬を思いっきり抓るが鋭い痛みが返ってくるだけ。夢では無い事は確かだ。

 それからビートルの話を聞いてまとめるとこうなる。まず、ビートルは精霊界と呼ばれる世界から俺達人間が暮らしている人間界にやって来たという事。その目的はただ一つ、此方側に逃げてきた同胞達を再び精霊界に連れ戻す為。

 精霊達が自分達が暮らしていた世界から人間界にやって来た理由は、精霊界を治めていた王様が突如姿を消したのが一番の理由。王……精霊達はロードと呼んでいるらしいが、とにかく其奴との契約という縛りが精霊達にとって嫌悪感をもたらしていた原因らしい。

 其奴が突然不在となったお陰で精霊達は晴れて自由となり、これ見よがしに自分の持つ力を以て人間界へとなだれ込んで来たようだ。

 

「……長々と話してしまったのだが、そういう訳なのである」

 

「まぁ、お前達の事情は大体分かったから良しとするが……なぁ、ビートル。俺に手伝える事はあるのか?」

 

「燈真よ、我を手当してくれた事には感謝しておる。だが、これは我と精霊界の問題である。人間であるお主が首を突っ込む問題では無いぞ」

 

「だがな、お前の話をここまで聞いておいてはいそうですかって引き下がれる訳無いんだわ。だからよ、何か手伝わせてくれよ。俺はしがない漫画家だけど、何かの役には立てる筈だぜ? だからさ、頼ってくれよ。な?」

 

 そう言うと同時に机の上に置いておいたスマホが緊急アラートを発しながら小刻みに震え始めた。一体何事だ、とアラートを止める傍らスマホの通知欄を見る。

 スマホに届いていたニュースの通知を二回タップして開き、全容を確認する。すると、目を疑うものが飛び込んで来た。

 

「なになに……? 『炎を操る化物が都市部に出没、近隣地域に被害をもたらしている』……だと? 一体何が起きてるんだ? 昨日までそんな奴なんて居なかった筈だが…」

 

炎を操る化物……まさか、彼奴が!?」

 

「ん? おい、ビートル。この化物についてなんか知ってるのか───って、おい! 何処に行くんだよ!」

 

 燈真の横でニュースを見ていたビートルは都市部に出没した化物に心当たりがあるのか、制止も聞かずに外へ飛び出して行った。彼奴一人で何が出来るのか、と燈真もビートルの後を追う。

 

 時刻は夕方に差し掛かる頃、燈真が都市部に着くと同時にビルが次々と爆発していく光景を目の当たりにする。逃げ惑う人々の悲鳴、騒ぎを聞きつけてやって来たパトカーのサイレンで阿鼻叫喚と化した街。

 その中でただ一つ、人の波を突っ切って飛んでいくドラゴンっぽい生き物の姿を見つけた。紛れもなく、燈真の自宅を飛び出して行ったビートルである。

 

「あっ、居た……! おい、待てよビートル!!」

 

 ビートルの姿を見失わないように、人の波を強引に掻き分けて後を追う。やっとの思いで人の波を抜けた先にあるビルに入っていくビートルを追う形で燈真もビルの内部へ入っていった。

 度重なる爆発で揺れるビル。所々火災が起きて非常ベルが彼方此方で鳴り響いてはいるが、燈真以外に人の気配は無いようだ。安心する傍ら、先を急ぐ。

 そうして、ビートルが居ると思われるビルの屋上へと着くとすぐに、ビートルが誰かと言い争っている声が聞こえてきた。

 今出ていくのは流石に危険か、と考えた燈真は一先ず屋上へ繋がる扉の前で立ち止まり、扉に耳を近づけて扉越しに話を聞こうとした時。鈍い音と共に何かが叩きつけられる音が何度か聞こえてくる。

 

(この音、まさか……!?)

 

 嫌な予感が頭を過ぎっていく。扉に隔たれた先ではあの炎を操る化物とビートルが闘っているに違いない。しかし、ニュースで見た化物はビートルより遥かに大きかった。そんな奴に小さい奴が立ち向かっていくのは、まるで蟻を踏み潰す子供のような構図だ。

 そう思った燈真は危険を承知の上で扉を開け放ち、戦場と化した屋上へと出る。予想が的中したのか、傷が増えて苦しんでいるビートルの姿が目に入ってきた。その先には高笑いをする蜥蜴と人間を合わせ、炎で象った鎧を着たような姿を取る化物。

 ビートルの手には小さな体躯では取り回しが難しそうな、装飾が剥がれている大剣が握られている。だが、重症に次ぐ重症で持っているのもやっとといった状態だ。燈真は慌ててビートルの元に急ぎ、安否を確認する。

 

「おい……おいビートル! 生きてるのか!?」

 

「う、ぐ……その声は……と、燈真……なのか?」

 

「嗚呼、俺だ。ったく、一人で無茶しやがって! 俺を頼れって言っただろうが!」

 

「だが……これは我の問題であってお主には何も……」

 

「んなの関係ねぇって言ってんだろ! いいからお前は此処で休んで後は俺に任せろ、いいな!?」

 

 他にも何か言いたそうにしているビートルを強引に黙らせて安全な場所に寝かせ、化物の前に立つ。産まれてこの方こういった非常識な出来事に遭遇した事は無く、一歩間違えたらその先に待ち受けているのは()だ。

 常に死神の鎌が首元にあてがわれているような、とてつもない恐怖が身体を襲い、両足はガタガタ震え、へっぴり腰になる。そんな燈真を見ていたトカゲと人間を合わせたような姿の化物は余裕そうな表情で佇んでいた。

 

『おいおい、さんざん覇王の側近だと抜かしてたうざったい龍の次はへっぴり腰の人間かよ? そんな奴が俺と闘える訳がねぇよなぁ?』

 

「……嗚呼、正直言って無謀だと思っているさ。それは一番俺が分かってる。俺はこんな闘いとは無縁の、漫画だけを書いていた人生を送っていたからな」

 

『へぇ? そうだとしても俺に立ち向かうだけの根性はあるのか。だったら……あの龍の前にお前を始末させてもらうとするかッ!』

 

「───っ!」

 

 化物は容赦なく火炎弾を燈真に向けて放つ。対する燈真は火炎弾を辛うじて避けるが幾つか避け切れずに喰らい、痛みと火傷で身体が痛み始める。それでも尚燈真は立ち上がり、化物に対して攻撃出来る隙を伺う。

 しかし、燈真は丸腰。仮に攻撃出来たとしても出来るのは殴る蹴るの二つだけ。それも、化物が纏う鎧には蚊ほども効かないだろう。

 

(どうする…? どうすればこの状況を打開出来る……!?)

 

『おっと、考えてる所悪いが余所見は厳禁だぜ?』

 

 打開策について考えていれば、当然の事ながら気は逸れる。その隙を見逃さない化物は燈真に……ではなく燈真の後ろ、安全な場所に寝かせているビートル目掛けて火炎弾を放っていた。

 

「しまっ……ビートル─────ガア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!」

 

 思考を強引に断ち切ってビートルの元に向かう燈真。筋肉が切れる音が聞こえ、足に痛みが走る。それでも走るのを辞めなかったお陰か既の所で間に合ったのだが、今度は化物が放った高出力の火炎弾をまともに喰らってしまう。

 自分の肉が焼ける焦げ臭い匂い、左足から伝わってくる鋭い痛み、全身に広がる火傷による熱さと痛み。最早立っているのも不思議なくらいに満身創痍、といった様子の燈真に、ビートルは悲痛な叫びを上げながら自分を庇った理由を問う。

 

「何故だ……何故だ燈真!? 先も言ったがこれは我の、精霊界に住む我の問題である! お主が傷つく理由でも、問題でも無いのだぞ!?」

 

「げ、ほ……へ、へへ……これも言った筈だぜ、ビートル。お前がやろうとしてる事を俺にも手伝わせろって。確かに、一人だと無理かもしんねぇけどよ……二人なら案外、何とかなるかもしんねぇぜ…?」

 

「だからと言って……!」

 

「いいかビートル、よく聞け。此処で奴を倒さなきゃお前の言う精霊界はおろか、俺が住むこの街も危ないんだよ。今、それをやれるのはこの場に居る俺達だけだ。違うか?」

 

「それは、そうなのだが……」

 

「だったらよ、俺が……いや、()()()やるしかねぇだろ? だから、俺に力を貸せ! 一人じゃない、一匹でもない! 一人と一匹、俺達二人で彼奴を倒すぞ、ビートル!!」

 

「燈真……うむ! 我等二人で彼奴を……我が同胞だった者、()()()()を倒すぞ、燈真!!」

 

 燈真がビートルに対してそう言い、ビートルがそれに応えるように返すと、突如としてビートルが手にしていた大剣が光を放ち始めた。剥がれていた装飾が戻り、錆びていた刀身が元の輝きを取り戻す。

 今度こそ二人を仕留めようとトドメの一撃を放とうとしていたトカゲと人間を合わせたような姿を取る化物───《サラマンダーフォルズ》は大剣から発せられる光の衝撃波に吹き飛ばされた。

 

「……ん? 此奴は、お前が持ってた剣だよな?」

 

「うむ。かつて精霊界を統べる我らが覇王が振るっていた大剣である。これを振るえる事は即ち王たる素質と器を持つとされているのだ。尤も、我のような精霊が持っていてもタダの武器なのだが……」

 

「そうなのか。精霊であるビートルが使えないんじゃ、人間の俺だったら此奴を使えたりするのか?」

 

「それは分からぬ。だが、遺された我の力を使えば或いは……」

 

 そう言うなり、ビートルは呪文を唱え始める。すると、瞬く間にビートルの身体は龍の形状を取る鍵へと変化した。突然の出来事に驚きを隠せない燈真。

 

「───は? え、何コレ。ビートル? どうなってるのコレェ!? おまっ、鍵になってるじゃねぇかよ!?」

 

『細かい事は良いから早く我を持て、燈真』

 

「お、おう。分かったよ…」

 

 言われるがままにビートルが変化した鍵を手にする燈真。すると、ビートルが手にしていた大剣が変化し、バックルのようなものへと変化して燈真の右手に収まる。バックルと言っても中心に鍵穴の付いた剣が鞘に収まり、バックルの代わりを果たしている。

 

「うおっ!? 剣が、変化した……!?」

 

半信半疑だったのだが、まさか……燈真、お主はあの方と同じ…

 

「んで、ビートル。此奴をどうしたらいい?」

 

『あ、嗚呼……すまない。それを腰に当てるのだ』

 

「おう、分かった」

 

 言われるがまま精霊界の覇王が振るっていた大剣が変化したバックル───《ロードドライバー》を腰に当てる燈真。すると、バックルの右側からベルトが伸びてひとりでに燈真の腰に巻き付く。

 

《lord driver!!》

 

「おぉ、すげぇ…! ビートル、次はどうしたらいいんだ!?」

 

『我が変化したこの鍵を待機状態にし、バックルの中心にある鍵穴に差し込んで回すのだ』

 

「OK…!」

 

 ビートルからの指示通りに、燈真は手にした鍵───《プリミティブライズキー》を正面に構えて持ち手部分のトリガーを押す。

 

《loading primitive!!》

 

 収納されていたブレード部分が展開し、キーの起動を確認した燈真はそのままロードドライバーの中心の鍵穴にプリミティブライズキーを差し込み、一回転させる。

 

《set up!! primitive lord!!》

 

 プリミティブライズキーの持ち手部分がロードドライバーの中心になるように折れ、鍵穴を埋める形でエムブレムとなる。すると、龍の雄叫びと共に重厚なクラシックが辺りに流れ始めた。困惑する燈真を他所目に、ビートルが最後の指示を飛ばす。

 

『そうしたら剣を抜き放って変身と叫べ、燈真ッ!』

 

「お、おう! ─────変身ッ!!

 

 ロードドライバーの持ち手部分にあるトリガーを引き、バックルから剣を抜刀し、力の限り叫ぶ燈真。すると……

 

《我の行く道は原初の道───プリミティブロード!!》

 

 音声と共に燈真の全身が黒のアンダースーツで覆われ、その上に西洋の騎士を思わせる銀色の鎧のようなアーマーが装着されていき、更にアーマーの一部が龍を思わせる意匠へと変化していく。

 龍騎士を思わせる意匠が入った仮面が燈真に装着され、最後に龍の翼を思わせる漆黒のマントが出て変身は完了する。龍と騎士が一体となった鎧を纏う仮面の騎士が体制を立て直したサラマンダーフォルズを真っ直ぐと見据える。

 

『なっ……!? そ、その姿はまさか!?』

 

 サラマンダーフォルズが狼狽えているのを他所目に、仮面の騎士はバックルから抜き放った剣を構える。バックルに納刀されていた時とは違い、『無』のエムブレムが輝く大剣となっていた。

 見た目こそ大きく違うが、仮面の騎士が手にしている大剣こそかつて精霊界を統べる覇王が振るっていた大剣。それを振るうのは精霊界を統べる《次代の覇王》、その第一歩を踏み出した姿。

 

 ───仮面ライダーロード プリミティブロード。生誕の瞬間である。

 

 ロードはその手に持つ漆黒の刀身を持つ大剣『ロードセイバー プリミティブ』を構え、サラマンダーフォルズを真正面から斬り付けていく。

 対するサラマンダーフォルズも負けてたまるか、といった様子で次々と火炎弾を放つが、ロードは冷静にそれ等を全て叩き斬った。

 前のように通用すると思っていたサラマンダーフォルズは大剣を構えたままでほぼ無傷でいるロードにサラマンダーフォルズは底知れぬ恐怖を覚える。

 

『な、なんでだ……!? なんで俺の攻撃が効かないんだ!? 奴の姿はあの憎き覇王に似ているが、その力は覇王より遥かに下だというのに……!』

 

 ロードに攻撃が効かない事実を受け入れ難く、躍起になったサラマンダーフォルズはヤケクソといった様子で立て続けに火炎弾を放つが、ロードは冷静にそれを弾き、防ぎ、斬る事で無力化していく。

 とても初めて変身したとは思えない程に冷静沈着な動きで着実にサラマンダーフォルズを追い詰めていくロード。変身者である燈真自身もその力に驚いていた。

 

「す、すげぇ……! これが、俺の……いや、()()の力か! ビートル!!」

 

『うむ。よもやここまでとは、我の想像以上だぞ燈真!』

 

「よっしゃ、このまま行くぞ!!」

 

 ロードは自身の力となっている精霊、ビートルの力をも使い、マントを龍の翼に変えて縦横無尽に空を飛ぶ。その様は、まさに龍と言って差し支えない。

 その機動力を活かし、ロードはサラマンダーフォルズに連続で斬撃を浴びせていく。負けじと攻撃するサラマンダーフォルズだが、自慢の火炎弾はロードに通用せず、だったら、と格闘戦で対抗するサラマンダーフォルズ。

 しかし、ロードの身を守る鎧を彷彿とさせるアーマーには傷一つ付けられない。半ば自暴自棄といった様子で攻撃を続けるサラマンダーフォルズだが、一瞬の隙を突いたロードの渾身の一撃を喰らって屋上から落下する。

 

『ぐ……ち、ちくしょう……!』

 

 先程の一撃が決定打となったのか、サラマンダーフォルズはその場から立ち上がれずにいる。それを屋上で確認したロードは龍の翼を展開して音も無く地面へと着地した。

 自身に迫ってくる鎧特有の金属音を感知したサラマンダーフォルズは最後の力を振り絞って立ち上がる。しかし、立っているのもやっとといった状態だった。

 

「さてと……そろそろ終わりにしようか!」

 

『ひぃっ…!』

 

 満身創痍のサラマンダーフォルズには死刑宣告とも言うべき一言が告げられる。先程まで微塵も感じていなかった「死」という恐怖が全身を支配し、軽い悲鳴がサラマンダーフォルズの口から出た。

 それを余所目に、ロードは自身が持つ最大の攻撃を放つ準備に入った。自身の得物であるロードセイバーをバックルへ納刀し、トリガーを引く。そして持ち手部分を一度納刀した方向へ押し込んだ。

 ライズキーに内包されていた精霊の力が解放され、ロードの右足に銀と黒の二色のエネルギーが集約していく。完全に集約したと同時にロードは龍の翼で遥か上空へと飛び上がり、エネルギーを纏った足でサラマンダーフォルズ目掛けて急降下、力の限り蹴り飛ばした。

 

「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

《primitive!! lord finish!!》

 

『ギャアァァァァァ─────ッ!!』

 

 エネルギーの奔流によるものなのか凄まじい爆発を引き起こし、サラマンダーフォルズはその場に倒れ込む。サラマンダーフォルズの身体はボロボロだが木っ端微塵にはなっていないようだった。

 しかし、気になる点が一つ。サラマンダーフォルズの身体の中に別の生命が居るのだ。よく見ると、燈真と同じ人間……それも、何処かの会社員と思われる。

 街を崩壊させ、友達を傷つけた敵を倒して一件落着、と行きたかった燈真は力を貸してくれた精霊ビートルに問いかける。

 

「おいビートル、これは一体どういうことなんだ? 奴の身体の中に人が居るんだが…」

 

「ふむ……我を含めた精霊は、覇王の力無くしてはこうして他の生命に取り憑く事は出来ないのだ。それがこうして取り憑いているという事は…」

 

「もしかして……俺達人間が暮らす世界に流れ込んだ、覇王とやらの繋がりが切れた精霊に取り憑く事を可能とするくらいの強大な力を貸している黒幕が居るって事、なのか?」

 

「おそらくは。我もそういう事はあまり考えたくないのだが、如何せん情報が少なすぎるのだ。今はそう仮定するしかない」

 

「そっか。ところでさ、精霊と取り憑かれた人を分離させるにはどうしたらいい? 流石にこのままには出来ないだろ?」

 

「うむ。ロードセイバーを使うのだ」

 

 コレを使うのか、と燈真はバックルから再びロードセイバーを抜き放つ。ビートルの変化したプリミティブライズキーが装填されたままのロードセイバーの刀身は光すら通さない漆黒の刀身のままだった。

 コレでどうするのか迷っている燈真に変化を解き、燈真の傍に来たビートルが倒れ伏したサラマンダーフォルズの左手付近を指差す。ビートルがロードセイバーから抜けた影響でロードセイバーの刀身は漆黒から銀色へと戻っていた。

 

「闘っている最中に見えたのだが、奴の左手の甲に核となるコア……我等精霊の力の一端が宿る鍵が差し込まれている筈なのだ。生命に取り憑く際に契約を結び、契約者に出来た鍵穴に己の持つ鍵を差し込んで取り憑くのがごく一般的なやり方であるからな」

 

「なるほどな。つまりこの人も精霊と契約してこんな化物になっちまったって事か……で、その鍵をコイツで破壊すればいいのか?」

 

「本来であれば破壊しなくても大丈夫なのだが……此奴の鍵からは我と同じ精霊の力の他に何か良くない、得体のしれない物を感じる。故に奴の鍵は一旦破壊し、契約者から精霊を解放するのが良いであろう」

 

「ん、りょーかい。さっきまで知らなかったとはいえお前の同胞を手に掛ける事になっちまって悪いな、ビートル」

 

「此奴を助ける為だ、それは構わぬ。それよりも早く彼奴を苦しみから解き放ち、助けてやってくれ。燈真よ」

 

「おう」

 

 ビートルの指示通り、サラマンダーフォルズの左手の甲には炎を象った鍵のような物が刺さっている。それを確認した燈真はロードセイバーを振るってそれを破壊すると、サラマンダーフォルズの身体は瞬く間に霧散し、サラマンダーフォルズが倒れていた場所には精霊と契約したと思われる女性会社員が倒れていた。

 ロードセイバーで破壊した精霊の鍵はロードセイバーの中心にぽっかりと開いている鍵穴へと吸い込まれ、新たな鍵《ライズキー》として燈真の手に収まる。これで今度こそこの事件は解決しただろうと思った燈真は全身の力が抜け、それに呼応する形でロードの変身が解ける。

 

「……よし。なんとか終わった事だし、帰るとするか」

 

 生身で受けた数々の火傷や傷跡は治っていなかったが、自宅に帰る事くらいなら出来るだろう。そう思った燈真は相棒の精霊ビートルと一緒に傷だらけの身体を引き摺りながら帰路へとついた───。

 

 

 »»»»»»»»»»

 

 

 ───画して、闘いとは無縁の人生を送っていた漫画家、剣淵燈真は数奇な運命により精霊界を統べる次代の覇王、仮面ライダーロードの力を手にした。

 しかし、この時の燈真はまだ気づいていなかった。この闘いはまだ始まり、物語で言う序章に過ぎない事を。もう、今までの()()()()()()()()()()。燈真の身体にも少しづつ変化が訪れている事を。




なんとか書ききれて肩の荷がおりたような気がします、はい。

それはさておき、今回私が執筆したオリジナル仮面ライダー、仮面ライダーロード。鍵を使った特撮作品はあるけどライダーでは居なかったな?と思い至ったのがきっかけです。特に意識した訳では無いですが、仮面ライダーセイバーに近い感じになってしまいましたが。変身シークエンスとかetc.....

導入編として書いていた筈がめちゃくちゃ長くなってしまいましたが、次回からは仮面ライダーロードも本格的に始動します。更新は不定期になってしまいますが、他の作品を含めて宜しくお願い致しますm(*_ _)m

それでは(・ω・)ノシ
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