仮面ライダーロード   作:剣舘脇

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v(。・ω・。)ドモ。剣舘脇です。

第三話、次なる怪人の登場回となります。
まぁ……タイトルで大方察しはつくかもですが。


episode3 悪風

 ───陽の光が暗闇に覆われた部屋を照らす。一体どのくらい寝ていたのだろうか、と未だ寝惚けている頭を無理矢理に叩き起こした燈真は隣で寝ている龍の精霊ビートルを起こさないように気をつけながらゆっくりと身体を起こした。

 身体を起こしてすぐに傷の具合を確かめる。昨日の闘いによって出来た無数の傷の内、火傷の跡はまだ痛みを発していたが、切り傷などの傷の方は粗方塞がりを見せていた。

 

(……案外、塞がるの早かったな。あれ? でも俺、自然治癒力……だったっけ。確か、そんなに良くなかったような気がするんだけど…)

 

 本来、切り傷などの傷は一週間程度を費やして治るとされている。自然治癒力が高い人はそれよりも短い日数で治ったりするのだが……両親からの遺伝なのか、生まれつきなのかは定かではないのだが、燈真は他の人と比べて幾らか自然治癒力が低かった。

 それ故に日常で出来た傷は勿論の事、フォルズとの初めての邂逅及びロードへの変身前の戦闘で負わせられた切り傷などはそう簡単に治る筈が無いのだ。しかし、火傷は癒えていないが他の傷は粗方塞がりを見せているという現実。自分の身に何か起きているのは確実である。

 だが、いくら考えてもその答えに辿り着ける訳が無く、それについて思考を巡らせるのを一旦辞めた燈真はビートルとエルモスが起きてくる前に朝食を済ませようと考え、昨日と比べて幾らか軽くなりつつある火傷の痛みを堪えながら台所へと向かう。

 

「えーと……? 色々作り置きしてた奴がある筈なんだが……お、あったあった。日頃から小まめに作っておいて良かったわほんと」

 

 冷蔵庫の中を見れば、レンジで温めればすぐに食べる事が出来るように調理され、パックに小分けにされた料理達がずらりと並んでいる。ちょくちょく作り置きしているとはいえ、毎日食べている物だから流石に数は少なくなっていた。

 後でまた作らなきゃ駄目か、と思った燈真は一旦その考えを頭の片隅に追いやり、ずらりと並ぶパックの中から幾つかを適当に選んで取り、レンジに突っ込む。ビートルとエルモスの二匹は精霊だけど人間の食べ物でもちゃんと食うのかな、と考えながら()()()()()()()()()()()()()()を用意し、二匹が起きてくるのを待ちながら朝食を摂る。

 二匹の精霊が起きてくるその間、燈真は何をしているかと言えば、朝食を摂る傍ら昨日出来なかった原稿作業である。刃物を使うトーン貼りなどは集中しないと傷を作ってしまう為流石に出来ないが、下書きなどの鉛筆を使う作業は片手間に出来るようになっていた。

 

「……ん、美味い」

 

 高校生の頃から一人暮らしを始めてはや数年、一人で身の回りの事をやってきたが、炊事に関してはそれなりに上手くなっていた。

 自分が手間を掛けて調理した料理に対して舌鼓を打ちつつ、作業を続ける。そして、燈真が朝食を摂り終わったと同時にビートルが起きてきた。

 

「お、やっと起きたか」

 

「……うむ、おはようだ。燈真」

 

 眠たそうに欠伸をするビートルにエルモスはどうしているのか聞いてみると、エルモスはまだ寝ていると答えが返ってくる。無理に起こす必要は無いな、と考えた燈真はエルモスの分を取っておく事に。

 いくら精霊とはいえビートルは小型犬ほどの大きさ。それ故に人間が座る椅子に上手く座れず、仕方なくテーブルの上に行儀よく座る事になった。まぁ、テーブルの上に座っている時点で行儀が良いとは言えないが、それはそれとしておく。

 

「嗚呼、そうだ燈真。傷の具合はもう大丈夫なのか?」

 

「ん? 嗚呼。どういう訳か切り傷の方は粗方塞がっていたな。まぁ、身体のあちこちに出来た火傷の跡とか左足の怪我は治るのにもう少しかかりそうだけど、無茶しない程度には行動する分に支障は無いぜ」

 

「そうなのか……」

 

「まぁ、付いた傷ならその内治るから気にすんなよ。取り敢えず朝食にするか?」

 

「……うむ」

 

 朝食を済ませた燈真が原稿作業を続ける中、燈真が用意した朝食を食べるビートル。人間が食べる物は存外気に入ったようで、何度かお代わりをせがむほどだ。そうこうしてる間にエルモスも起きてくる。

 ビートルが美味しそうに食べる様子を見て、エルモスも遠慮がちに朝食を燈真に頼んだ。それを聞いた燈真は予め用意していたエルモス用の朝食を温め直し、エルモスに差し出す。料理を出されてすぐにがっついたビートルとは違って最初は警戒していたが、程なくして警戒を解いて食べ始める。

 エルモスも人間界の食べ物はすぐに気に入ったらしく、ビートルの隣で一心不乱にがっつきを見せる程だ。そんな光景を見ながら原稿作業を続けていると、食べ終えたビートルが今度は燈真がしている事に興味を示した。

 

「そういえば燈真、先程から何をしているのだ?」

 

「嗚呼、これの事か? 漫画を書いてる……って言ってもそういやお前達精霊には()()なんて、あんまり馴染みの無いものだったりするのか?」

 

「うむ。興味がある故、見てても構わぬか?」

 

「ん、邪魔……はしないようだから別にいいぜ」

 

 そう言いながら、燈真はビートルに今自分が行っている作業を見せる。聞けば精霊界に住む精霊達は燈真達人間のように労働はあまりしないらしい。とはいえ、精霊界は人間界と違って一歩間違えたら生死に関わる状況に陥っていたようだから仕方ないと言えばそれまでではあるが。

 ビートルが燈真の原稿作業を見ていると、今度はエルモスもビートルと同じように燈真の近くで原稿を仕上げる作業を見ていた。二匹とも興味津々といった様子で見入っている。二匹にずっと見られながら作業を続けている燈真は作業の片手間に二匹の似顔絵を描いてやると、ビートルは喜び、エルモスは驚いた様子をそれぞれ見せていた。

 

(初めて出会った時から思っていた事だけど、こいつ等も俺達人間のように感情があるんだな…)

 

 そんな事を思いながら、原稿を仕上げる作業を続ける燈真だった。その裏で、力を喪った精霊達に力を与え、暗躍している謎の存在の事を知らずに。

 

 

 »»»»»»»»»»

 

 

 ───炎を操る化物こと『サラマンダーフォルズ』と、謎多き仮面騎士こと『仮面ライダーロード』の戦闘があった街並み。化物が暴れた爪痕が忌々しく残る倒壊したビル群と戦場と化した広場の修復が進む中、陽の光が殆ど差し込まないとある裏路地にて。一人の青年が傷だらけでうずくまっていた。

 何処かの高校に通っているらしくネクタイを通した白のシャツの上にブレザーを羽織り、暗い色のズボンと運動靴を穿いているその青年は、無数に出来た傷だらけの身体を引き摺りながら、ボロボロの制服などにも目をくれずに周囲に散らばって土を被った教科書やノート、学生鞄を必死に集めていた。

 どうやらこの青年はつい先ほどまで卑劣な奴らによる虐めを受けていたらしい。俗に言う弱い者虐めである。その証拠に青年の身体に出来た傷は明らかに人の手によって付けられた傷が多数見受けられ、青年の周囲に散らばっている教科書などには青年を虐めていたと思われる人物達の足跡が残されている。

 

「……なんで、僕が、僕だけがこんな目に合わないといけないんだ…? 僕は、彼らに何かしたのだろうか…」

 

 ボロボロの身体に鞭打ち、自分と同じようにボロボロになり果ててしまった自分の私物を回収し終えた青年は、虚ろな目で空を見上げる。しかし、陽の光もまともに入らない裏路地には空すらも満足に見れない。

 そんな状況だからか、ため息の一つも出ず、傷だらけで満足に動かせない身体を地面に放り出したまま、この先の人生すらも諦めようと目を閉じようとした時だ。

 

『───ねぇ、そこの人間。まだ生きてる? もし、まだ生きてるなら返事をして欲しいなー?』

 

「……え? この声、一体誰、なんだ…?」

 

 目を閉じる前に何者かの声が耳に届き、絶望の念で一杯だった青年は聞こえてきた声に返答する。しかし、謎の声が聞こえるだけで声の主は姿が見えない。もしかしたらあれは幻聴だったのだろう、と青年は再び目を閉じようとしたが。

 

『ちょっと、何もかも諦めたかのように目を閉じようとしないで目を凝らして周りをよーく見てよ!? これじゃあ私が貴方に声をかけた意味が無いじゃない!』

 

「……はぁ、分かったよ。周りを見ればいいんだろ…」

 

 声の主は目を閉じる前に青年から見て周囲をよく見る事を促す。半ば自暴自棄に陥りつつあった青年はそれに従い、目を凝らして自分の視界に入る場所をよく見ると、先程まで自分以外何も居なかった筈の空間に小さな羽で飛ぶ乙女のような姿を取る不思議な生き物が居る事に気づく。

 まるでおとぎ話に出てくる妖精のような見た目の生き物は、空想上の生き物とされる『シルフィード』と酷似しており、その証拠にその生き物の周囲には風が渦巻いている。

 青年は今見ているものが現実なのか、と何度か目をこすって何度も確認するが、自身の目の前で忙しなく羽を動かして宙に浮いている妖精のような生き物はハッキリと見えている。信じられない、といった様子でまじまじと見る青年に、その生き物は青年に話しかける。

 

「え……? 嘘、だろ? だって、さっきまで何も居なかった筈なのに…」

 

『あー、良かった。ようやく私が見える人に会えた。他の人間は私の姿が見えてないみたいだったから、こっちに来た意味が無いなーって飽き飽きしてたんだー』

 

「えと……き、君は一体……だ、誰なんだ…?」

 

『まぁまぁ、私の事は後々。それはそうと貴方、あんな奴等に虐められてさぁ……悔しくないの?』

 

 謎多き存在である妖精のような生き物はつい先程まで青年が虐められていた現場を見ていたようだ。だったらなんで助けてくれなかったんだ、と言いかけた所でその言葉を飲み込む。そして、青年は妖精のような生き物に対して今まで募ってきた思いの丈を打ち明けた。

 

「そ……そんなの、凄く悔しいに決まってるだろっ! 毎日毎日虐められて、耐え切れなくて何度も担任や両親に相談もした! けれど、担任は勿論の事、他の先生も僕の両親ですら聞く耳を持ってくれない! 皆、あいつ等の肩を持ってる! 彼奴らから見て弱者である僕の話なんて誰も聞いてもくれないし、見向きもしてくれない……!」

 

 今まで誰にも言えなかった、募りに募った辛く苦しい思いを矢継ぎ早に外へ吐き出していく青年。その目にはいつの間にか涙がとめどなく溢れ出し、止まる事を知らない。次々と地面に吸い込まれていく青年の涙を、青年の言葉と共に聞いていた妖精のような生き物は最後までじっと聞いていた。

 やがて、ずっと抱えていた思いの丈を吐き出し切った青年が落ち着くのを待ち、落ち着いた所を見計らった妖精のような生き物は青年にある提案を持ち掛ける。その提案は、身も心も弱り切った青年には甘美な響きの提案だった。

 

『貴方の気持ちはよく分かったわ。思ってたより人間って薄情な生き物なのね? 同じ人間を助けるどころか逆に寄って集って虐めるなんて最低だわ……ねぇ、もしかしたら()()の私になら貴方の事を手伝えるかもしれないけど……どうする?』

 

「え、精霊……? 精霊って本当は存在しない筈じゃあ……ま、まぁいいや。僕の味方が増えるのは嬉しいし、僕が彼奴等に復讐出来る力が振るえるなら……例え悪魔にだろうと魂を売る覚悟くらいならある…!」

 

『そう♪ 貴方は私が知りたいものを持っているみたいだし、貴方に力を貸してあげる。どう使うのかは勿論貴方次第……どう? 貴方にとっては悪い話じゃないと思うわ』

 

 担任にも、自分の両親すらも裏切られ、もはや何もかも信用出来なくなっていた青年にとって風を纏う乙女のような、妖精のような生き物の甘く妖艶な誘いは荒み切った青年の心の隙間にするりと入り込み、溶け込むのもそう時間はかからなかった。青年はその誘いに乗る前に一つ、どうしても気になる事を聞く事に。

 

「あ、でも……その前に一つ聞きたい。君が知りたいものって、一体なんなんだ…?」

 

『嗚呼、肝心な事を言うのを忘れていたっけ? 私が知りたいのは心を持つ人間が抱える()()よ。今まさに貴方が私に打ち明けたものが何なのか、私はそれを知りたいの』

 

「……そう、なんだ。なら、いくらでも教えるよ。だから、非力な僕に力を貸してくれるのか……?」

 

『えぇ、勿論♪ じゃあ、今ここで私との契約は成立って事でいいわね? 後は貴方を通じて人間の抱える思いというのが何なのかを知っていくから、私の力をどう使うのかは貴方の好きにしていいわ♪』

 

 青年が目の前の存在を空想上の生き物である精霊だと疑問に思う前にそう答えを返すと、それを了承と捉えた妖精のような生き物は頷く。そして、次の瞬間。乙女のような、妖精のような生き物はなにやら呪文のようなものを唱え始める。すると、謎多き存在である生き物の姿は瞬く間に鍵のようなものに姿を変えた。鍵全体が形を得た風のような形状をしており、何処か禍々しさを感じさせる。

 

 立て続けに起きる出来事に困惑する青年だが、その鍵を手にすると同時に右の手首に鍵穴のような刺青が彫られている事に気づく。コレが契約の証であると察した青年はニヤリと不敵な笑みを浮かべ、早速と言わんばかりに鍵を展開させて右の手首に彫られた鍵穴のような刺青に差し込んで回す。

 すると、先程契約を交わした乙女のような、妖精のような生き物が姿を現して青年の肉体に憑依。その直後、青年の肉体に変化が訪れた。青年の肉体は段々と化物へと変化していく。

 

 青年と契約を交わした存在こと風を司る精霊『シルフィード』と人間が混じり合ったような見た目をした化物……風を模した濁った緑色の体表と装甲が特徴の化物である『シルフィードフォルズ』は全身からとめどなく溢れ出す力に歓喜の声を上げる。

 

『ふふ……あはははははは!! これが、これが僕の力……! これなら、この力なら! 僕を散々虐めてきたあいつ等に、僕の話に聞く耳を持たなかった奴等に復讐が出来る…! 待ってなよ……今度は僕がお前達を虐めてやるからさぁ……!!』

 

 夕日も沈み、夜の帳が降り始めた時間帯の裏路地にて一人、精霊と契約してその身を異形のものへ変えた青年の変わり果てた声が辺りに響き渡った……。

 

 

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 ───それから何日か経過した頃の昼前。〆切の日に余裕を持たせて間に合わせた燈真が、出来上がったばかりの漫画の原稿を折れが無いように気を付けながら大事に封筒の中に仕舞って出版社宛に送付した頃の事。

 帰り際に何か足りないものを含めて色々買っていこうか考えながら何気なく開いたスマホのニュース一覧を眺めていた燈真の目に、ある不可思議なニュースがトップページを飾っている事に気づく。

 

(……ん? なんだ、このニュース……なんか、こう……上手く言い表せないけど、何かがおかしいな…)

 

 燈真が目にしたのは、『絃寧(げんねい)高校の生徒が行方不明』というニュース。一見何もおかしい所は無いように思えるそのニュースだが、燈真がおかしいと感じたのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という点。そして、今回は遂にニュースのトップページを飾るに至ったという事例である。

 日常に於いて行方不明のニュースはごく稀に流れる事があっても、こうもほぼ同じ内容のニュースが連日のように並ぶのは何かがおかしいと思っても仕方ない。一先ず何かがおかしいと感じたニュースの件について考えるのは後回しにした燈真は、不足してきた食材や調味料などを買う為にいつも世話になっているスーパーへと立ち寄ってから自宅へ帰る事にした。

 それから何事もなく無事に自宅へ帰ってきた燈真はまず、買ってきた食材などを仕舞ってから次の原稿に取り掛かろうとしたのだが、先程のニュースが忘れられずにいた。心ここに在らず、といったそんな様子の燈真を見かねたのか、ビートルが声をかけてくる。

 

「燈真、さっきからどうしたのだ? イマイチ作業に身が入っておらぬようだが……」

 

「んあ? あ、嗚呼……すまねぇ。なんつーか、帰り際に見たニュースの事が忘れられなくてな…」

 

「ニュース? 燈真、それは一体なんなのだ?」

 

「あー……口で説明するよりかは見せた方が早いな。ほら、これだよこれ」

 

 そう言いながら、燈真は片手でスマホを操作して例のニュースをビートルに見せる。燈真から見せられた、燈真の悩みの種になっている原因と思われるニュースをジッと見ていたビートルはそのニュースから気になる点を見つけたらしく、なにやら唸り声を上げ始める。

 

「ん? 急に唸り出してどうしたんだよ、ビートル」

 

「いや何、このニュース……であったか? これは、我もなんだか昨日も一昨日も同じものを見たような気がしてならぬのだ……」

 

「あ、やっぱお前もそう思うよな?」

 

「という事は……燈真もなのか?」

 

 ビートルの疑問に、燈真も頷く。連日ニュースになっている絃寧高校の生徒行方不明事件、その全てに共通するものがあった。同じ高校の生徒、時には教師すらも行方不明となり、目撃者は誰一人として居ない。

 更に言うと、生徒や教師が行方不明となる日はいつも決まって風がやたらと強い日になるという点。そこまでの共通点があるとなれば、同一犯による犯行なのは確実。しかも、この行方不明事件には凡そ人の手には不可能な超常の力が関わっていると見ていい。

 

「なぁ、ビートル。これってもしかして……」

 

「うむ。我も燈真と同じ答えである。ところでエルモスよ、貴様はどう見ているのだ?」

 

「───はぁ!? おまっ……ここで俺に振るかフツー!?」

 

 ビートルから唐突に話題を振られたエルモスは酷く慌てた素振りを見せる。驚くのも無理はない、誰だって不意に話しかけられたら慌てるというもの。だが、そこは火を司る精霊エルモス。すぐに落ち着き、自分の考えをビートルと燈真に告げた。

 

「ったくよぉ……ま、俺もお前らと同じ考えだよ。とてもじゃないがこいつは人間業とは思えねぇ。おそらく、以前の俺のように精霊と契約した奴の仕業に違いねぇさ」

 

「やっぱりか。つっても、そいつを捕まえるのはちょっと厳しそうだな……」

 

「うむ…どうするべきなのか……」

 

 燈真達が頭を抱えるのも無理はない。なにせ、風の精霊と契約した犯人がいつ現れるのか分からない上に用も無いのに高校で犯人が現れるまで張り込みも出来ない。仮にそんな事をしていたら不審者扱いをされるだけであり、まさにお手上げ状態である。そんな中、燈真とビートルを見かねたエルモスが助け舟を出した。

 

「……なぁ、お前ら。そんなに悩む必要はねぇと思うぜ?」

 

「ん? それは一体どういう事なんだよ、エルモス」

 

「はぁ……いいか? 手掛かりならお前らの話の中に既にあるだろうよ。つーか、お前ら揃いも揃って口にしてたじゃねぇか。ほんの数分前の事だぜ、もう忘れたのかよ?」

 

「むっ、エルモスよ、それは一体どういう……はっ!? そうか……そういう事なのだなエルモスよ!」

 

 エルモスにそう言われ、先程まで交わしていた燈真との会話を改めて思い返したビートルはエルモスの言う『手掛かり』を既に口にしていた事に気づいた。絃寧高校の生徒や教師が行方不明になる時は決まって風が強くなる。つまり、裏を返せば精霊と契約した人物は絃寧高校の生徒や教師をさらっていく時は決まって風を起こすという事に他ならない。

 それに伴い、今回の行方不明事件を引き起こしている犯人と思しき人物が契約している精霊の正体も分かった。風と言えば四代元素の一つである『風』、それを司る精霊。有名所で言えば『シルフ』や『シルフィード』が思い浮かぶであろう。今回救うべき精霊が分かった燈真は、何かに弾かれるように意識を其方へ向ける。

 

「今回は風の精霊か……なぁ、ビートル。其奴は風の精霊っていうくらいだし、勿論風を操る力を持っているんだよな?」

 

「うむ。彼奴の操る風は攻撃は勿論、防御や回避にも使えるのだ。その上、おそらくエルモスの時と同様に人間と契約してフォルズとなっている筈。手強い相手になるのは確実であろうな……」

 

「という事は、しっかり作戦を立てなきゃ駄目って事か…」

 

 フォルズに堕ちた精霊及び精霊と契約した、今回の一連の事件を引き起こした人物双方を助ける為。次の〆切日までまだ日にちがあり、余裕がある燈真はビートルとエルモスの二匹と日付が変わるまで作戦会議を開いた。

 

 

 »»»»»»»»»»

 

 

 ───そして、次の日の朝。いつもより早く起きた燈真はビートル達が起きてくるのを待ちながら朝食を済ませ、窓から外を見やる。日が昇ってくる時間帯なのは確かなのだが、今日は雲が空全体を覆っていた。天気予報によると今日一日は曇りの予報らしい。

 曇りと聞いて、一つ思い当たる節があった燈真は急いでスマホを取り出し、慣れた手つきで操作して例の行方不明事件の天気を調べる。そして、昨日は気づかなかった事実に気づく事が出来た。

 

「(やっぱり……彼奴は決まって曇りの日にあの事件を起こしているのか…! そして今日もこれまでと同様に曇りの日…だとしたら今日も起こす筈だ…)ん? 待てよ…? 仮にそうだとしたらやべぇぞ……!?」

 

 こうしちゃいられない、と急いで身支度を済ませた燈真は慌てて家を飛び出そうとする。お気に入りの靴を履いた時、丁度良いタイミングでビートルが起きてきた。ビートルは慌てている燈真を見て不思議そうに首を傾げている。

 

「……燈真? こんな朝早くにどうしたのだ…?」

 

「昨日言ってた彼奴が事件を起こす法則性が分かった気がするんだ。俺の考えが正しけりゃ……今日! 今日新しく事件を引き起こす筈だ!」

 

「なぬっ…!? そ、それは本当なのか燈真!?」

 

「多分、というか絶対そうに違いない! 寝起きで悪いが行くぞビートル!」

 

 まだ眠そうにしているビートルを引き連れ、未だ寝ているエルモスを置き去りにして自宅を飛び出した燈真。向かう先は言うまでもなく絃寧高校。連日行方不明事件の現場となっている高校だ。スマホの地図機能を頼りに肌寒さが残る空気の中、人の気配が無い道を自転車で駆け抜けていく。

 冷たい空気が容赦なく襲うが、そんなのはお構いなしといった様子で自転車を漕ぐ足を止めない。一分一秒でも早く辿り着かねば新たな犠牲者が出てしまうかもしれないのだ。フォルズを止め、精霊と精霊と契約した人物を救えるのは他でもない、自分達しか居ないのだから。

 

(とにかく、間に合ってくれよ…っ!)

 

 自分の懐に入ってぬくぬくとしているビートルを他所目に自転車を飛ばす事二、三十分。ようやく絃寧高校に辿り着いた燈真は事が起きる前に何とか間に合った事に肩を撫で下ろし、他の人に怪しまれないように注意しながら近場の自転車止めにここまで乗ってきた自転車を止め、遠くから何か変化が起きるまで見張る事に。

 燈真の目線の先では連日の事件現場と化してしまっておそらく休校となっている絃寧高校の前を通り過ぎていく、他校の生徒と思われる学生達が各々自分の通う学校へと向かっている。その中でただ一人、多数の学生に紛れて絃寧高校の校門の前で忙しなく辺りを見渡している絃寧高校の生徒と思しき人物を見かけた。

 

「……ん? ビートル、なんか様子がおかしい奴が居る」

 

「む? 其奴は何処に居るのだ、燈真」

 

「ほら、彼処。絃寧高校の校門前に居る奴。他の奴等とは違って彼奴だけ、しきりに周りを見渡している。まるで人の目線が気になる素振りだ」

 

 燈真が指差す先には依然として絃寧高校の前から動こうとしない学生らしき人物が居る。段々と人の流れが無くなっていくにも関わらず、その人物は動こうとしなかった。そして、完全に人の流れが無くなったその時。燈真達の目線の先で学生らしき人物が周りに誰も居ない事を確認すると閉ざされた校門を無理矢理乗り越えて絃寧高校の校内へ入っていった。

 普通であればまずしないであろう行為を躊躇う事なくやってのけた、明らかに様子がおかしい学生らしき人物を追いかける燈真とビートル。そのまま真正面から追いかけてもいいのだが、万が一他の人や先程入っていった学生にバレでもしたらどうなるか分からない。どうするか悩んでいた燈真だが、ここである事を閃く。

 

「あっ、そうだ。この手があったじゃねぇか。ビートル、あの時のベルトは持って来ているよな?」

 

「うむ。勿論だ燈真。して、何をする気なのだ?」

 

「今は説明する時間が惜しい。お前はあの時みたいに鍵に変化してくれ」

 

「ふむ? なるほど、そういう事であるな!」

 

「そういう事。さぁ……行くぜっ!!」

 

 燈真がしようとしている事に納得がいったビートルは肌身離さず持っていたロードドライバーを燈真に手渡して自らを鍵……プリミティブライズキーへと姿を変える。燈真はロードドライバーを腰に当て、ビートルが変化したプリミティブライズキーを手にした後、トリガーを押して起動、ブレード部分を展開させて待機状態へと変える。

 

《loading primitive!!》

 

 音声が響き、キーの起動を確認した燈真は続いてロードドライバーの中心にある鍵穴にプリミティブライズキーを差し込み、一回転させる。

 

《set up!! primitive lord!!》

 

 プリミティブライズキーの持ち手部分がロードドライバーの中心になるように折れ、鍵穴を埋める形でエムブレムとなる。途端、辺りに龍の雄叫びと共に重厚なクラシックが流れ始める。それを他所目に燈真はロードドライバーの持ち手部分にあるトリガーを引き、バックルからロードセイバーを引き抜いた。

 

「───変身ッ!!」

 

《我の行く道は原初の道───プリミティブロード!!》

 

 掛け声と共に燈真の全身が黒のアンダースーツに覆われ、その上に西洋の騎士を思わせる銀色の鎧のようなアーマーが装着されていき、更にアーマーの一部が龍を思わせる意匠へ変化していく。そして、龍騎士を思わせる意匠が入った仮面が装着され、最後に龍の翼を思わせる漆黒のマントが出る事で変身は完了した。

 龍と騎士が一体となった鎧を纏う仮面の騎士、仮面ライダーロードへの変身を完了した燈真は周囲に誰も居ない事を再確認した後、マントを龍の翼へと変えて空へ飛び立つ。そしてそのまま絃寧高校の屋上へ向けて飛翔を開始した。

 

 そう。燈真は空から絃寧高校へ入る事にしたのだ。それから程なくして、燈真は絃寧高校の屋上へ無事に降り立つ。一旦変身を解除した燈真はロードドライバーを装着したまま辺りを見渡す。程なくして屋上から校内へ続く扉を見つけた燈真はその扉を開けようとしたが、扉に手を掛けた所で思い当たる節があった。

 普通であれば、学校の屋上には生徒達に無断で侵入されないように非常時を除いて常に鍵が掛かっている筈なのだ。その事をすっかり忘れていたのを今になって思い出した燈真。だが、ここで立ち止まる訳には行かない、と扉に手を掛けた時。ある異変に気づく。

 

「……ん? この扉…鍵が掛かってない。って事は、もしかして開いてる、のか? それに……校内から風が来てる、だと?」

 

「風…やはり彼奴で間違いないようだ、燈真。昨日も言ったのだが、闘う時は十分気を付けるのだぞ。怪我もまだ治りきっていないのだろう?」

 

「おう。んなこと分かってるよ」

 

 屋上と校内を隔てる扉はどういう訳か鍵が開いていただけじゃなく、校内から屋上へと風が吹いていた。屋内にも関わらず風が吹いているのは、通常ではありえない事が校内で起きている事は確か。それに、自分より先に入っていった生徒の安否が気になる為、意を決して扉を開けて校内へと入る。

 屋上から下の階に続く階段を駆け下り、屋内にも関わらず風が吹いている先は一体何処なのか、と内心焦りながら各階の教室を見て回る。誰も居ない筈の校舎を駆け抜けていって、最後になった一階の一年教室を見て回ろうと足を踏み出した時だ。

 

う……ウワァァァァァァァァァァ!?

 

「ん? 今の声……まさかっ!?」

 

 そう遠くない場所から誰かの叫び声が聞こえてきた。しかも、偶然か必然か声が聞こえてきた方向は謎の風が吹いてくる方向と同じ。声が聞こえてきた方向に自分達より先に校内へ入っていった此処の学生と今回の事件の首謀者……風の精霊と契約した張本人とフォルズへ堕ちた精霊が居る。

 その声を聞いた燈真は声が聞こえてきた方へと走り、ある教室へと辿り着く。風が吹いている元となっている教室は『1-A』の教室らしい。だが、引き戸式の扉の隙間からは一階に着いた時に感じた風よりもっと強い、文字通りの強風が吹き抜けてくる。

 

「(間違いない、奴は此処に居る。早く行かねえと、俺達より先に校内へ入っていった奴が危ない…!)ビートル、準備はいいか?

 

……うむ。燈真、我はいつでもいいぞ

 

よし……行くぞっ!」

 

 扉を開け放ち、中に乗り込む。すると、そこに居たのは無理矢理校内へ入っていった学生が酷く怯えた表情を浮かべながら教室の隅で何処ぞの金髪で弱虫の学生よろしくガタガタと見て分かる程に震えていた。

 近場には隠れられる場所が無い為、教室の隅で震えていたのだろう。震えていた学生には一先ず目立った怪我は無いようだ。その事に安堵していると教室内で吹いていた風がより一層強さを増したような気がした。

 

「───不味いっ! 一刻も早く外に出るのだ燈真っ!!」

 

「お……おうっ!」

 

 教室内に渦巻く風はどんどん強さを増していく。ビートルに言われるがまま、燈真は教室から転がり出た。その途端、荒れ狂う暴風が教室の壁を轟音と共に吹き飛ばす。土煙が舞う廊下の先、先程まで教室だった場所から何者かの影がうっすらと見える。陽炎のようなゆらゆらと揺らめくその影は土煙が晴れていくと共に輪郭がハッキリとしてくる。

 そして、完全に土煙が晴れた時。教室の壁だった瓦礫を蹴散らして現れたのは、風を模した濁った緑色の装甲と体表を持ち、乙女と人間を強引に融合させたような見た目の化物がそこに居た。

 妖艶な雰囲気を醸し出しながらそれでいて不気味な見た目の化物は右手に掴んでいる何かを燈真の居る方向に投げ捨て、燈真達を見据える。化物が投げ捨てた何かに燈真達が目線を向けると、先程教室内にてガタガタ震えていた生徒だと分かる。しかし、息はもう長くないだろう。

 あともう少しだけ、手を伸ばすのが速かったら助けられた筈の命を救えなかった事に後悔の念と化物に対する怒りを覚えた燈真が睨み付けている事に気づいた化物───『シルフィードフォルズ』は顔に当たる部位を歪ませ、吐き捨てるように言葉を発する。

 

『ん……? お前達は、見かけない奴等だな。僕……いや、俺は此処の生徒にしか興味が無い。分かったらとっとと何処かに立ち去れ』

 

「だからと言ってはいそうですか、って簡単に引き下がる訳ねぇだろ。連日の行方不明事件、首謀者はてめぇで合ってるな?」

 

『嗚呼、その通りさ。んで? それが分かった所でどうする気だ? 人間という種族を超えた力を手にしたこの俺に、ただの人間であるお前が勝てるとでも思ってるのか?』

 

「嗚呼、勝てると思ってるさ。俺……いや、()()ならなっ! 来い、ビートル!!」

 

「うむ! 行くぞ燈真!!」

 

 羽織っていたコートを翻し、ビートルが変化した鍵……プリミティブライズキーを手にした燈真はプリミティブライズキーを起動し、ロードドライバーに差し込んで一回転させ、龍の雄叫びと重厚なクラシックが流れる中、持ち手のトリガーを引いてバックルからロードセイバーを引き抜いた。

 

《set up!! primitive lord!!》

 

「───変身ッ!!」

 

《我の行く道は原初の道───プリミティブロード!!》

 

『な、なにぃ……っ!? なんだ、その姿はッ!? お前は一体何者なんだッ!?』

 

 本日二度目の仮面ライダーロードへ変身した燈真を見たシルフィードフォルズは、自分の目の前に堂々と立つ仮面の騎士に対して酷く狼狽えていた。酷く狼狽えているシルフィードフォルズを仮面を通して見据える燈真……仮面ライダーロードは声高らかに名乗りを上げる。

 

「『俺は……いや、俺達はロード。仮面ライダーロードだっ!!』」

 

『か……仮面ライダーロード…? いや、誰だろうと構わない! 俺の復讐を邪魔する奴は、誰であろうと倒すのみ!』

 

「へっ……俺達二人の覇道! 阻めるものならやってみやがれ…!」

 

 ───そうして、二人目の怪人ことシルフィードフォルズとの闘いが幕を開ける。




やっと、完成しました……!
次回はシルフィードフォルズとの戦闘シーンをメインに書いていきます。

なんだかんだで一万文字書いてるな……このまま次も書けるよう頑張って執筆していきます、はい()

それでは、また次回。ではでは(・ω・)ノシ

※感想その他、いつでもお待ちしております。

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