今回はロード初の別形態登場回です。
まぁ、前回同様タイトルで大方分かってしまうと思いますがね…(´・ω・`)
それではどうぞ!
シルフィードフォルズは未知の敵であるロードの出現に酷く狼狽えていたが、ロードの存在は自らの復讐の道を邪魔する排除すべき存在と判断した。
『俺の邪魔をする奴は、仮面ライダーだろうがなんだろうが吹き飛ばす……! 俺の復讐の道は、邪魔させやしないッ!』
「へっ。上等だ、俺達の覇道を止められる気でいるならやってみろ。てめぇのその高く伸びた鼻、真っ二つにへし折ってやるよ…!」
自身の得物であるロードセイバーを構え、相手の出方を伺うロード。対するシルフィードフォルズは先程教室の壁を吹き飛ばしたように自身の周囲に風を発生させ、攻撃の準備を整える。
何方が先に仕掛けるのか、辺りを妙な静けさが包み込む。均衡を破ったのはシルフィードフォルズの巻き起こす風の音に紛れて教室の壁だった瓦礫の山が崩れ落ち……音を立てて地面に落ちた時とほぼ同時に、双方は仕掛けた。
『───ふっ!!』
「喰らえ───何っ!?』
ガキィン、と何かがぶつかり合う甲高い金属音が辺りに響く。ロードとは違って一見無防備に思えるシルフィードフォルズだが、契約しているのは風を司る精霊。
その力を操るだけはあり、自身に纏わせていた風を防壁のように振るって上段からの斬撃を防いでいた。当たると思っていたのか、ロードの仮面の内で燈真が驚愕の表情を浮かべる。
「剣が届かねぇ、だと……? この野郎…っ!」
『おっと、攻撃が届かなくて残念だったなぁ? おら、吹き飛べよっ!!』
「う”っ……!?」
力を込めて押し切ろうとするロードだが、それを嘲笑うように途端、シルフィードフォルズは自らを護る防壁として利用した風を片腕を使って再び振るい、ロードを遠く離れた壁や地面へ次々と叩きつけた。自身を取り巻く強風のせいでまともに受け身の取れないロードはそのまま質量を伴ったダメージを立て続けに負う。
「がぁっ!?」
『大丈夫なのか、燈真!?』
「ぐっ、げほっ…嗚呼……なんとか、な。にしても、お前やエルモスの言う通り厄介な代物だな……あの風。まずはアレをなんとかしねぇとまともに攻撃出来ねぇぞ?」
風のフォルズことシルフィードフォルズの最大の特徴はその風にある。自然に吹く風は勿論、任意に引き起こす事が可能であり、強さも調整可能。その上攻撃、防御、回避など全てに隙が無い。
ビートルの精霊としての力も勿論強い。然し、それでも限界というのは存在する。事実、ビートルの力を宿したロードはシルフィードフォルズの操る風の力に対抗する術が無かった。
───だが、ロードに打開策が無いという訳ではない。ちゃんと用意しているのだ、次なる一手を。
「ビートル、エルモスはどうしてる?」
『今の時間帯ならおそらく起きている筈だが……今からエルモスを呼ぶとなれば相応の時間はかかるぞ? 燈真』
「構わねぇ、今すぐに呼んでくれ。要件は手短にな。ちなみに、今から呼んだとしてエルモスが俺達の元に来るまでどのくらいかかる?」
『うむ……早くて三十分であるな』
「オーケー……それで十分だっ!」
精霊は気を許した相手同士であればテレパシー……俗に言う精神感応によって言葉を交わせるらしい。とはいえ距離が開けば開くほどテレパシーが届くかどうかは賭けに近くなってしまうが、戦場と化した絃寧高校と燈真の自宅間の距離は自転車で二、三十分の距離。そのくらいの距離なら問題ないようだ。
一先ずエルモスがやって来るまでシルフィードフォルズの注意を引きつつ戦闘を続ける事を改めて決意したロードはビートルとの会話を一旦止め、ロードセイバーを地に突き刺して軸にして立ち上がる。それを見たシルフィードフォルズは顔に当たる部位を歪ませて驚いた表情を浮かべつつ、感嘆の言葉を口にした。
『ほぉ…? 貴様……確か、ロードといったか。まだ息があったとはな』
「へっ、名を覚えてくれて感謝してる……って言えばいいか? つーかさぁ、俺達があのくらいでやられるとでも思ってたのか、お前」
『いいや? そうは思っていない。むしろ、仮面ライダーなどと名乗っておきながら
「チィッ……てめぇの方がちょっとばかし優位に立ってるからと言って、好き勝手言ってくれるぜ…!」
地に突き刺したロードセイバーを抜き放ち、改めて構え直すロード。対するシルフィードフォルズも自身を中心に渦巻く風の強さをより一層増していく。
先程とは全く違う風量から察するに、本気を出したのだろう。そして、何を思ったのかシルフィードフォルズはいまや暴風といっても差し支えないほどに強まった風を自身を中心として豪快に周囲に散らした。
シルフィードフォルズの制御下を離れて自由になった暴風は狭い廊下の更に先、教室だった部屋の反対側の壁や窓すらも容赦なく吹き飛ばし、突拍子も無い攻撃に対して不意を突かれたロードは風に巻き込まれる形で絃寧高校の校舎の外……校庭に投げ出される。
土煙を上げながら地面を何度も転がるが、すぐに立ち上がるロード。その一瞬の隙を突いたシルフィードフォルズが風を操って急加速し、ほぼ一瞬ともいえるスピードで距離を詰めて風を纏わせた拳をロード目掛けて繰り出していた。
まともに喰らう訳には行かない、と咄嗟の判断でロードセイバーを盾代わりにしてシルフィードフォルズの拳を防ぐロードだが、力で押し負けている感覚が拭えない。
(んな……っ!? 此奴、見た目によらず馬鹿力かよ!? いや、そうじゃねぇ……多分、風を圧縮して生まれた圧力も併用してやがるっ!)
ロードの予想通り、腕力に加えて風の力を上乗せしたシルフィードフォルズの拳は確実にロードを追い込んでいく。このままじゃせり負けると直感したロードは見様見真似で相手の力を受け流し、一瞬だけ体勢を崩させてから逆回転の回し蹴りを放ち、バランスを崩した所にロードセイバーの斬撃を二、三回喰らわせる。
予想外の反撃を喰らったシルフィードフォルズは大きく怯み、やっと反撃出来たロードは絶好の機会を逃すまいと次なる攻撃を仕掛けるが、それもシルフィードフォルズの操る風の防壁に阻まれた。
自身の攻撃を受け流して回し蹴りをお見舞いし、体勢を崩された所に斬撃をもらうという予想外の反撃はもらったが、その後の攻撃が自身に届かない事を確信したシルフィードフォルズは不敵な笑みをロードに向けている。
「くっそ……! やっぱあの風が邪魔だ…早くなんとかしねぇと…」
『どうしたロード。貴様の力はその程度か?』
「舐めんじゃねぇぞ……まだまだこれからだっ!」
風による迎撃を警戒するように距離を取ったロードを嘲笑うように挑発するシルフィードフォルズ。対するロードはもう一匹の精霊がやって来る事を願いつつ、構え方を変えた。
先程まで両手で構え、振るっていたロードセイバーを右手に持ち、空いた左手に何やら力を込め始める。コレを試すのはぶっつけ本番であり、ビートルも想像がつかない精霊の力の
『燈真、一体何をしているのだ…?』
「まぁ見てなって……っ!」
ロードはある物を形作る為、左手から腕にかけてビートルの力を流し込んでいた。一体何をしているのか首を傾げているシルフィードフォルズの前で、ロードの左手から腕にかけてとある物が出来始めている。
力の奔流は徐々に実体を帯びていき、完成に至る。ビートルの力を流し込んで形作られたそれは西洋の騎士の標準的な装備として剣と一対で描かれているもの。身を守る手段の一つ、盾である。盾にも
縁を黄金で象り、中心には龍と剣の意匠が施された漆黒の盾を構えたロード。漫画家として日々頑張っている燈真の持つ豊かな想像力とビートルの精霊の力を織り交ぜた芸当にして離れ業。それを見たシルフィードフォルズはまたも感嘆の声を上げる。
『なるほど…? ロード、貴様はそんな芸当も出来るのか。だが、身を守る物が増えた所で何になる?』
「単純に手数が増える。今はそれだけで十分なんだよ」
『要するに馬鹿の一つ覚え、という奴か』
「まぁ、そうとも言うな……って、誰が馬鹿だゴラァ!! よーし分かった。てめぇのその自信に満ちた顔、完膚なきまでに叩きのめしてやるよ」
さっさと来いと言わんばかり左手で挑発するロード。その挑発に乗ったシルフィードフォルズは再び風を巻き起こし、ロードに襲いかかった。その裏で、ロードが呼んだ次なる一手が来ている事を知らずに。
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場所は代わり、ロードとシルフィードフォルズが戦闘している頃。燈真宅では事態を把握していないエルモスがやっと目を覚ます。いつものように燈真とビートルが起きてくる時間より遅い時間帯に起きてきたエルモスだが、いつも居る二人が居ない事に気づく。
「……あ? 何処行ったんだ彼奴等?」
燈真とビートルの気配が感じられず、辺りを見回しても姿を認知出来ない。ため息一つ零したエルモスは一先ず腹ごしらえをする為、冷蔵庫の中を漁って手頃なもの───ハムとベーコン───を自分の炎で炙って食べる。そうして、エルモスが腹ごしらえを済ませた時。
『───エルモス! 起きておるな!?』
「うぉぅっ!? は……え? その声、ビートルか!? てめぇ今何処に居やがる! 燈真の奴も居ねぇぞ!?」
『えーと……今はげ、ん、ねい、高校…? という場所で燈真と共に風のフォルズと戦闘中である! 道順は我が教える故、大至急来てくれぬか!?』
「はぁ!? い、今からか!? ちょ、待っ……」
エルモスの脳内に突如響くビートルからのテレパシー。切羽詰まったような声で戦場までの道順を一方的に教えられ、その後すぐにテレパシーは途切れた。
「……チッ、ったくよ…行けばいいんだろ行けば。まぁ、退屈しのぎには……なりそうだからいいか」
また一つため息を零したエルモスは不敵な笑みを浮かべ、燈真の家を飛び出し、先程テレパシーにて教えられた道順通りに戦場へ急ぐ。
自分の操る炎を勢い良く噴射し、ジェット機の如き推進力で目的地まで一直線に飛ぶ。道中、高速で走り抜ける鉄の塊───乗用車やバスなどの乗り物───にぶつからないように気をつけつつ、速度を上げていく。
(俺の予想通り、風の精霊もフォルズになってやがったか。まぁ、俺を呼んだのは妥当な判断だろ。風と炎っつったら俺の司る炎の方が相性良いからな)
ビートルから教わった道順通りに目的地に向かいながら、エルモスは風の精霊について考えを巡らせていた。エルモスと風の精霊、後の二匹、地の精霊と水の精霊を合わせた四匹の精霊は『四大精霊』と呼ばれている。
四大精霊はその肩書きの通り、数多く存在する精霊の中でも屈指の実力を持つ精霊としてその名が広まっていた。だが、彼等も属性の有利不利には悩まされているのだ。属性にも三すくみで勝敗を決めるじゃんけんのように有利不利が存在する。
水は炎に強いが地に弱い。風は地に強いが炎に弱い……といったようにそれぞれの属性に有利不利がある。先述の通り風と炎の相性は炎の方が有利なのだ。燈真がエルモスを呼んだのは相性による戦況を覆そうと試みたからに違いない、とエルモスは考える。
(……ま、俺がこうして存在出来てるのも彼奴のおかげだしな。いい加減、ただ飯喰らいじゃないって所を見せなきゃ駄目だろうよ)
精霊との契約も無しに精霊の姿が見え、声が聞こえる特殊な人間である燈真。フォルズとなって暴れていた己を倒した、覇王に酷似した風貌の仮面の騎士の正体。其奴が次なる精霊を救う為に戦場に赴いている。
そして、ビートルがあれだけ切羽詰まったような声を荒らげていたという事は今まさにピンチに陥っているという事。それもその筈、燈真は戦闘経験などロクに無い一般人。そんな奴がまぐれでフォルズとなった自分を倒したとはいえ、その後の戦闘も余裕で勝てる訳がない。
ビートルにとってフォルズを倒して精霊を助けられる唯一の希望である彼奴に、そう簡単に死なれてはビートルの奴が困り果てるに違いない、と思いながら先を急ぐ。そうして、やっとの事でビートルが指定した戦場と化した場所に着いた頃。今度はエルモスからテレパシーを送ると返答がすぐに返ってきた。
『着いたぞビートル! お前と燈真は今何処に居る!?』
『ようやく着いたかエルモス! そこまで来たら後は分かるであろう!?』
そう言われて辺りを見渡すと、遠くから風が唸る音が響いてくる。その音が聞こえてくる方向に向かえば、あの時の仮面の騎士と濁った緑色の体表と装甲を持つ化物───『シルフィードフォルズ』が闘っている光景が目に入る。
仮面の騎士こと『仮面ライダーロード』は以前フォルズに堕ちたエルモスと闘った時とは違う点があった。左手に中型の盾を、右手に剣を手にしていたのだ。西洋の騎士に近い戦闘スタイルとなったロードだが、ボロボロな点を見る限り、案の定苦戦を強いられていた。
「……やっぱりな。しゃあない、助けてやるか」
姿が見えたのなら話は早い。ここまで来た時と同様に炎を噴射して乱入するだけ、そうと分かればとエルモスは再び炎を使って急加速し、戦場に乱入する。突然巻き起こった爆炎にシルフィードフォルズは怯み、慌てる。対するロードは援軍が来たことに喜びを見せていた。
「エルモス、来てくれたか!」
「応よ。んで、彼奴を倒すために協力して欲しいんだな?」
「そうだ。ビートルの力だと彼奴と闘うには少々分が悪くてな……お前の力を貸してくれ、エルモス」
燈真の真っ直ぐな問いにエルモスは応える。真っ直ぐな答えを。
「嗚呼、勿論だ。まぁ、契約なんてちゃちなもんは俺達には必要ねぇな。つー訳で燈真、俺の力を託す。上手く扱えよな」
そう言い、エルモスは自身の身体を新たな鍵……ロードの新たな力の引き金となる《インフェルノライズキー》へと変える。炎を模した橙色に輝くそれを手にしたロードの仮面の奥で燈真はニヤリと笑みを浮かべる。
(さぁて……お前の力、見せてもらうとするか)
インフェルノライズキーへと姿を変えたエルモスは燈真が自身の力をどう使うのか楽しみにしつつ、キーが起動されるのを待つ。
───そして、キーの起動トリガーは押される。ロードに新たな力を宿す為に。
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エルモスが変化したライズキー、《インフェルノライズキー》を構えるロード。それに対して先程何が起きたのか理解出来ていないシルフィードフォルズは、ロードが手にしているライズキーを見て驚きの一声を上げた。新たな力を手にしたロードは酷く狼狽えているシルフィードフォルズに対してライズキーを構えたまま、ライズキーの起動準備に入る。
『貴様……その鍵はなんだ!? さっきの爆炎は、一体何をしたッ!?』
「困惑するのも無理はねぇよな……! こいつは、俺達の新たな力だっ!」
ロードセイバーをバックルに戻し、プリミティブライズキーをロードセイバーから取り外したロードは新たにエルモスが変化したインフェルノライズキーを右手に持ち直して正面に構え、持ち手部分にあるトリガーを押す。
《loading inferno!!》
収納されていたブレード部分が展開され、キーの起動は完了した。それを確認したロードはロードセイバーの空いた鍵穴にインフェルノライズキーを差し込み、一回転させる。
《set up!! inferno lord!!》
インフェルノライズキーの持ち手部分が折れてロードセイバーの鍵穴を埋め、炎を象ったエムブレムとなる。途端、プリミティブロードの変身時に流れる重厚なクラシックとは違って激しいロックが燃え盛る炎と共に流れ始めた。
ロードが何かするのは明白だった為、妨害をしようと試みるシルフィードフォルズは容赦なく暴風を叩きつける。しかし、ロードの背後からロードを護るように現れた、炎を纏った
風の勢いを受けた炎は消えるどころかその勢いを更に増し、風を与えれば与える程にロードを護る強固な壁としてより一層轟々と燃え盛る。
『俺が奴の攻撃を止めている内にやれ、燈真!』
「サンキュー、エルモスッ! ───ロードチェンジッ!!」
シルフィードフォルズが炎の防壁を突破するのに苦労している隙に、ロードはロードセイバーのトリガーを引いてバックルから引き抜き、叫ぶ。すると……
《我の行く道は業炎の道───インフェルノロード!!》
音声と共に、ロードの身に変化が起きる。西洋の騎士を思わせるアーマーはそのままに、黒のアンダースーツに炎のファイヤーパターンが刻まれる。
龍の意匠が刻まれたアーマーの一部は蜥蜴を模したものへと変化していき、龍の翼を思わせるマントは赤と橙色の二色に色付く。
最後に龍騎士を思わせる仮面の複眼の色が赤から黄金に変わり、銀色に輝くアーマーが熱せられた鋼のように深紅に染まり、変身は完了した。
───仮面の騎士こと仮面ライダーロードがその身に豪炎を纏った熱き姿、その名もインフェルノロード。爆誕の瞬間である。
「───おらぁっ!!」
ロードの斬撃によって爆炎の防壁が中心から斬られ、猛烈な熱風と共にシルフィードフォルズに襲いかかる。それに吹き飛ばされ、受け身を取ったシルフィードフォルズは歪んだ目を見開いた。そこに立っていたのは、先程まで手も足も出なかった仮面の騎士とは違っていたからだ。
『ぐっ…! 貴様……その姿は何だ!?』
「へっ、さっきも言っただろうが。これは俺達の新たな力だとな。さぁ……ここからは俺達が突き進む覇道だけだ。てめぇには一歩たりとも邪魔はさせねぇよ…!」
新たな力をその身に纏うロードは漆黒に染まっていた時とは打って変わって深紅に染まる大剣「ロードセイバー インフェルノ」を片手に、左手には新たな武装を装着していた。
火の精霊サラマンダーことエルモスの頭部を模した手甲、「エルモス・インフェルノナックル」。豪炎を放てる遠近両用のインフェルノロード専用武装である。インフェルノナックルをシルフィードフォルズへ向けたロードは、牽制として豪炎を圧縮した高出力の火炎弾を放った。
「まずは此奴でも喰らっとけ!」
『チィ……ッ!』
風は炎に通用しないどころか逆に力を与える事を先程知ったシルフィードフォルズは、炎を躱す事に専念するが、躱す事に専念し過ぎた影響で風を防御に回す事を失念した。それに気づいて苦し紛れの風を放つも、火炎弾は消えるどころかより勢いを増す。
風と炎の相性は風の方が分が悪いと悟り、ここは避けるしかないと回避行動を取ったシルフィードフォルズだが、その一瞬の隙を突かれて豪炎を纏ったロードセイバーの斬撃をまともに喰らい、大きく吹き飛ばされる。それを追い討ちするかのように、ロードは次なる手段に出る。
「お次は……此奴だ!」
ロードはエルモス・インフェルノナックルでロードセイバーの柄を握る。その途端、深紅に染まった刀身からより一層強さを増した豪炎が巻き起こる。そのまま両手でロードセイバーを下段に構えて力を集中させると、ロードセイバーを軸としてロード自身が宙に浮かぶ程の勢いで炎が噴出された。
それと同時にエルモスの幻影がロードに宿ると、ロードは正面目掛けて急激に加速していく。エルモスがここに来る時にやった移動方法だ。エルモスの力を扱えるロードもそれを使い、一瞬にしてシルフィードフォルズの眼前に迫る。
『くっ……風よ…っ!』
「───遅せぇんだよ!」
ロードの急接近に狼狽えたシルフィードフォルズは自身の身を護ろうと風を巻き起こそうとするが、それよりも一瞬だけロードの接近が速かった。
風による防壁が張られるよりも速く、シルフィードフォルズの手により僅かに巻き起こった風の後押しも受けたロード渾身の袈裟斬りをその身に何度も喰らい、またも大きく吹き飛ばされるシルフィードフォルズ。なんとか起き上がろうと試みるが、その身は既に満身創痍である。
『ちく、しょう……! こんな奴に、仮面ライダーなんかに俺の復讐の道を邪魔されるなんて…! 達成まで後、少しだったのに……』
「さぁて……そろそろ、お前の行く道を決めようか!」
最期の一言を発するシルフィードフォルズを他所目に、ロードは自身の得物であるロードセイバーをバックルに納刀し、トリガーを引く。一度押し込んだ後に再び抜刀すれば、深紅の刀身に橙色と黒の二色のエネルギーが力の奔流となって刀身に集約していく。
完全に集約しきったと同時に強く踏み込み、炎による爆発力を活かした加速と跳躍をし、遥か上空から急降下……落下の勢いも乗せた、トドメとなる斬撃をシルフィードフォルズに浴びせた。
「うらぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
《inferno!! lord finish!!》
ロードの一撃をその身に受けたシルフィードフォルズは何も言わず、ただその場に崩れ落ちる。そして、逃げ場が無くなったエネルギーは大爆発を引き起こした。倒れ伏したシルフィードフォルズを見たロードは、シルフィードフォルズが最期に何も言わなかった事に不気味さを覚えながらもようやく終わったのか、と肩の荷を降ろす。
そして、予想通りシルフィードフォルズの砕けた顔に当たる部位から覗くのは自分と同じ人間。おそらく気を失っているものの、絃寧高校の学生だろう。そして、契約者でもあり此度の行方不明事件を引き起こしていた犯人である。聞きたい事がある為、さっさと解放してやろうと思ったロードはビートルを呼ぶ。
「ビートル、彼奴の鍵が差し込んである場所は分かるか?」
「うむ。エルモスと交代してからずっと観察していたから分かる。奴の右の手首辺りに差し込んであるのを見たぞ、燈真」
「ん、分かった」
ビートルに言われるがままにシルフィードフォルズの右の手首をよく見れば、そこだけ装甲が分厚くなっている。何かを護っているかのような部位をロードセイバーで破壊してみれば、風と形容しがたい何かが織り交ざった形状を取る禍々しい鍵が差し込まれていた。
一思いにロードセイバーを振り下ろし、それを破壊する。破壊された鍵はロードセイバーの中心、ライズキーを差し込む鍵穴に吸い込まれた。鍵を喪ったシルフィードフォルズの身体は揺らぎ始め、間もなくしてシルフィードフォルズから元の男子学生に戻る。ロードは念の為男子学生に息があるかどうかを確認する為に近寄り、その隣ではビートルとエルモスの二匹が見守っていた。
「……ん、大丈夫。息はあるみたいだ」
確認を終えたロードの一言を聞いたエルモスとビートルの二匹はホッと肩を撫で下ろす。ロードは続いてシルフィードフォルズ自ら命を奪ったと思われる、あの時投げ捨てられた学生の元に向かう。息はあるのかどうかをもう一度確認しておきたかったのだ。
身近に居たのに助けられなかった後悔の念が強いが、万一生きていたらという淡い期待を抱いていた。一階部分が無残に破壊された校舎に入り、奴と初めて邂逅した場所へと向かう。瓦礫の山となった場所からそう遠くない場所にあの時の学生が居た。息があるか確認すれば、まだ辛うじてあるようだ。
「もしかして、まだある、のか……?!」
そう呟くロードは既に変身が解けており、燈真に戻っていた。燈真は後をついてきたビートルにロードドライバーを預け、エルモスに治療を頼む傍らスマホを取り出して救急車を呼び、続いて申し訳なさを感じながらも学生の懐を漁って学生手帳を手にする。緊急連絡先として自宅の電話番号が記載されていると考えた為だ。
少ししてそれらしき電話番号を見つけた燈真はすぐにそこへ掛け、留守電にメッセージを残して学生手帳を元の場所に戻す。これで自分が出来る事はもう無い、とその場を後にし、まだ息がある男子学生……今回の契約者を抱えて絃寧高校を後にした。
シルフィードフォルズとの闘いを終え、近場の公園のベンチにに此度の契約者である男子学生を寝かせた燈真。時刻は既に夕方を過ぎており、夜を迎えようとしていた。本来であれば自宅まで送り届けたかったのだが、学生の自宅が分からなかったのと他の行方不明者が何処に居るのかを聞きたかったのがある。仕方なく起きるのを待つ間、燈真とその学生両方の事を心配する二匹の精霊。そんな時、燈真が寝かせていた学生が意識を取り戻したのか、声が出る。
「……燈真。契約者だった者が気づいたようだぞ」
「ん、そうか」
ビートルにそう言われ、燈真は目が覚めたばかりの契約者だった男子学生に声をかける。最初こそ錯乱して何も話せなかった学生だったが、徐々に冷静になったのか少しずつ話してくれるようになった。毎日のように虐めを受け、耐え切れなくなって相談もしたが誰にも信じてもらえず、絶望していたある日。
その日も虐めを受けており、人生を諦めようとした時に風を纏う妖精のような見た目で自らを精霊と名乗る生き物と出会い、思いが知りたいという要望に応える形で力を手にした彼はフォルズとなって復讐の道に進んだ……との事。
戦闘中、契約していた精霊の意思は殆ど感じられなかった所を見る限りでは、この学生の抱いていた怨みは精霊の意識を封じ込める程に大きかったと見ていい。だが、この学生がやった事は許されざる事。その事を言おうか迷った燈真は、今ここで言うのを躊躇った。
「君は……そこまでしたかったのか?」
「……何が、言いたいんですか?」
「復讐、といったな。仮に復讐を成し遂げた所で何になる。その後に残るのは……埋まる事のない、途方もない虚しさしか無いんだよ」
「───っ! 貴方の言う通り、そうかもしれません……でも! 僕には、僕の味方になってくれる人が居なかったんです……だから、精霊と名乗る奴の誘いに乗ったんだ!」
そこまで言い、男子学生はその場を後にしていった。走り去っていく学生の背中を見送る事しか出来なかった燈真は後を追う事をせず、自宅に帰る事に。ちょっと上から目線だったかな、と内心後悔しながら。その様子を見ていたビートルとエルモスは燈真の自宅に着くまで何も言わないでおいた。
既に夜を迎えた時間帯にやっと帰ってこれた燈真達は、まずは夕飯にする事に決めた。三人とも今回の闘いで酷く疲れているのもあり、夕飯を平らげた後は三人揃って風呂に入ってから就寝する事となった。とはいえ、燈真は日付が変わるギリギリまで原稿作業に取り掛かっていた。
(……今回みたいな奴をこれ以上出さない為には、黒幕を叩かないと駄目か…)
作業を続ける傍ら、燈真は考えていた。以前、フォルズとなったエルモスを倒した時にビートルが言っていた黒幕。依然として正体は掴めていないが、弱った精霊に力を与えて人間と契約させてフォルズに堕としている奴が居る筈なのだ。
今回暴走していた風の精霊から黒幕に関する何か有力な情報が得られると信じながら、今日の分を終わらせた燈真は一旦寝る事にした。明日は気晴らしに何処か行こうと思いながら。
»»»»»»»»»»
燈真がシルフィードフォルズを倒した後の事。当然の事ながら仮面ライダーロードとシルフィードフォルズの戦場となった絃寧高校は立入禁止となっており、校門の前には警察の人達が立っている。そこへマスコミ達が此処で何があったのかを聞こうと躍起になっているが、警察の方も現状を把握出来ていない状態だ。
そんな中、この場に明らかに似つかわしくない風貌の人物がやって来る。以前、火のフォルズとの戦闘があった場所にも現れた悪魔に似た風貌の人物だった。そして、さも当たり前のようにその姿はそこに居る人達には見えていない。
「この様子だと……遂に彼奴もやられたか。ったく、与えた力の回収は面倒くさいったらありゃしないな」
そうぼやきながら、謎の人物は背中に生えている翼をはためかせて校内に入る。辺りを見渡し、シルフィードフォルズが倒れていたであろう場所を見つけるとそこへ赴き、何か残されていないかを探す。そうして、探すこと数分。ロードの必殺技の影響を強く受けて残骸となった瓦礫の中から何かを見つけた。
それは、前回と同じくドス黒く形容し難い何かで象られていた鍵のようなもの。だが、それも前回同様ブレード部分は粉々に砕け散っており、持ち手部分のみとなっていた。それを見た悪魔のような風貌の何者かは大きなため息を吐く。
「これで二度目、か。こんな芸当が出来るのは……あの仮面の騎士しか居ないな」
そんな事を呟きながら、それを飲み込む。何故こんな事をするのか、目的は一つ。その中に刻まれた情報を得る為である。禍々しい鍵を飲み込み、暫しの間目をつむる。そして、得られた情報を反復していった。
「なるほど? あの仮面の騎士は『仮面ライダーロード』っていうのか。今のところは二つの姿しか持っていないようだが……炎を操る姿は火の精霊を味方につけたようだな。それで風の精霊と其奴が契約していた人間を分離させた、と。やっぱり
新たな情報を得た謎の人物はその場を後にする為、背中に生えた羽を使って空を飛ぶ。自分達の障害になる敵の情報を持ち帰る為。
という訳で第四話でした。
第五話はシルフィードフォルズの事件が解決した後の話から始める予定です。風の精霊の名前もその時に明かそうかと。
執筆の糧になりますので、感想その他いつでもお待ちしております。
それではまた次回(・ω・)ノシ