仮面ライダーロード   作:剣舘脇

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お待たせしました、第六話となります。
今回は前回登場したヒロイン視点から始まります。

それではどうぞ!


episode6 激土

 高校を最後にお互いの夢を叶える為に別々の大学へと進み、それ以来連絡を取っていなかった幼馴染みの燈真と連絡を取って久々に顔を合わせ、学生の頃のようにバカ騒ぎした日から数日が過ぎたある日の事。私、御劔沙耶は会社の屋上で昼休憩の時間を謳歌していた。

 私や燈真が暮らしている『久江市』の今日の空は澄み切った青空……ではなく生憎の曇り空だったが、そんな空を見上げていた私は、数年の歳月を経て久しぶりに会えた幼馴染みの事を考えていた。

 

「燈真……あの頃と比べて変わったなぁ…」

 

 久々に会った燈真は高校時代のツンツンした雰囲気をあまり感じさせず、歳相応の背丈を持つ大人の男性になっていた。学生の頃から人物絵やイラストを描くのが得意であり、コンクールで金賞を獲る程の実力を持つ燈真は今、新人漫画家として日々頑張っているらしい。

 その証拠に、私がよく読んでいたあだ名である『まちけん』を自身のペンネームにし、新人ながらに週刊少年誌でたった一つだけ空いた連載枠を勝ち取っている。会った時にその事も話したのだが、そこそこの評価を貰っているようだ。

 週刊誌は週一のタイミングで一話ずつ書き上げなくてはならないのだが、燈真はたった一人でそれをこなしている。アシスタントなどの手伝いも無しにやっているのだから、疲労は相当なものだろう。そう考えると、いつか身体を壊してしまうのではないかと不安になる。

 

「……あ、そうだ。今度、手伝いに行こうかな。一人でやるのは大変そうだし」

 

 そう呟いたと同時にそろそろ仕事に戻らないと駄目な時間だと言う事を思い出した私は、慌てて会社内に戻って午後の業務に取り掛かる。しかし、この後目を疑うような出来事に巻き込まれる事になるとは、この時の私はまだ想像すらしていなかった。

 その後、無事に今日の仕事も終わらせて帰宅の準備を終わらせた私は退勤して帰路に着く。その帰り道、背後から異様な気配を感じ、それに伴って今まで感じた事の無い悪寒を感じて振り返る。しかし、そこには誰も居ない。首を傾げる事しか出来なかった私は血の気が引いて行くのを感じ、怖くなって足早に自宅まで帰る事に。

 

「はぁ、やっと帰ってこれた……でも、さっき感じたのは一体なんだったんだろ…?」

 

 息を切らせながらなんとか自宅に帰ってこれた私は、息を整えながらそう呟く。自宅に入るまでの間ずっと感じていた異様な気配は、自宅に入った途端に跡形もなく消え失せていた。その事に疑問を抱くも、取り敢えず気にしなくていいかという結論に至った私は夕飯などを済ませて眠りにつく。

 

 ───()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 »»»»»»»»»»

 

 

 沙耶が自身の勤める会社、有名にして大企業の一つである会社『未来工房合資会社』の屋上で黄昏ていた時と同時刻。沙耶の事を見ていた人物が居た。その人物は屋上と会社内部を繋ぐ扉を沙耶にバレないギリギリの隙間の先で見ていた。

 背丈は凡そ男子高校生の平均身長と同じであり、他の社員と比べてちょっと太り気味の男性。名を『多賀野悟志(たがのさとし)』。彼は人柄も良く仕事の成績は良いものの、視力が極端に悪いのかフレームの無い丸眼鏡を常にかけており、その上常に猫背で太っている外見のせいで彼と同期の女性社員からは一言も話しかけてもらえていない。いわゆる外見で損をしているタイプである。

 自分自身の外見をコンプレックスに感じているものの、他人のせいにし続け、変える努力をしなかった自堕落すぎる多賀野なのだが、そんな多賀野にでも沙耶は気兼ねなく話しかけたりしていた。本来であればそこに愛などは関係ない。

 当然の事ながら沙耶も彼に対してその気は全く無いのだが、何を思ったのか多賀野は自分に話しかけてくれる沙耶を『自分にその気があるから話してくれている』と認識を捻じ曲げていた。しかし、多賀野に女性と話した経験は学生時代も含めて全くの皆無。

 それに加えてさも当然のように自分から沙耶に話しかける勇気を持ち合わせていない多賀野はこうして隙間から覗き見するというストーカー紛いの事をほぼ毎日のように繰り返していた。そして今日もまた、こうして沙耶の事を盗み見ているという訳である。

 

「……はぁ、御劔さんは今日も可愛いなぁ…他の女達とは違って俺にも話しかけてくれる優しい人だし、良い匂いもするし、俺に対してなんかその気があるみたいだしなぁ…」

 

 沙耶が多賀野を好き、というのは周りの社員は勿論沙耶自身もそう思っておらず、多賀野本人の歪んだ妄想に過ぎない。しかし、自身の歪んだ妄想に浸り、既に妄想と現実の区別が出来なくなっていた彼にはそんな事はもうどうでもよかったのだ。

 今日こそ声をかけ、自分の想いを告げようと屋上に踏み切ろうとしたその時。昼休憩の時間がもう終わりそうだという事に気づき、それと同時に沙耶が慌てて自分の居る方へと走って来ていた。自分が覗き見しているという事を忘れ、沙耶が来ている状況を好機と見た多賀野は沙耶の前に現れる。

 

「み、御劔さん……! お、俺は貴女の事が───」

 

「あれ、多賀野君? こんな所で何してるのさ。昼休憩は終わったよ、早く行かないと課長から大目玉貰うけど?」

 

「え、あ……そ、そうですね…」

 

「そうそう。あの人怒ると怖いしさ、怒られたくなかったら早く戻らなきゃ。じゃ、私は先行くね~」

 

 意を決して己の想いを伝えようとした多賀野だが、昼休憩の時間は既に終わっている。遅刻でもしたら課長から大目玉を喰らう事は明白。その事を沙耶に指摘され、萎縮してしまった。足早にその場を後にしていく沙耶の背中を見送る多賀野。

 しかし、自身の歪んだ妄想に取り憑かれている彼は既に妄想と現実の区別が出来なくなっている。故に沙耶が先程掛けた彼を心配する声も自分の都合の良い言葉へと変換していたのだ。沙耶の発した言葉をだらけ切った顔で反芻する多賀野。

 

「ふ、ふへへ……なんだ、俺と御劔さんって既に相思相愛だったんだ…どおりで、ねぇ……♪」

 

 当然ながら、沙耶は多賀野の事を一言たりとも好きと言っていない。同じ職場で働く人間として彼を心配しているだけなのだが、彼には沙耶が去り際に告白したように聞こえたのだろう。現に彼の顔はどうしようもないほどにだらけきっていた。

 その後、正気に戻ったのはいいものの自分の部署に戻る事をすっかり忘れていた彼は慌てて部署へ戻り、理由も無く大遅刻をした彼を叱る怒号が廊下まで轟いたという。そして、自分の後始末も兼ねた残業を終わらせた多賀野が自宅へ帰る身支度をしていた時。

 

『途中から観察していたんだが……お前、面白い奴だな?』

 

「え…誰、だ?」

 

『こっちだこっち。その手を止めてこっちを向け』

 

「なんだよ、急に……」

 

 突然、自分以外の声が耳に響く。命令口調に苛立ちを覚えるがその気持ちを抑え、身支度する手を止めて声がする方向に顔を向けると、そこには身長12cmほどの小人が居た。長いひげを生やした老人のような風貌で派手な色の服と三角帽子を身につけている小人は右手に身の丈以上の大きな木槌を構えていた。

 更に言えば、老人のような風貌の小人は宙に浮いている。通常ならまず有り得ない事が今目の前に起きているというのに、彼は驚く素振りを見せていない。むしろ、目を輝かせていた。おそらく、彼には目の前に浮いている老人のような小人が別の物に見えているのかもしれない。

 

『……おい、なんだその目は。お前に儂がどう見えているのか気になるんだが』

 

「何、って……俺と御劔さんを結びつける恋の救世主だろう? 違うか?」

 

『はぁ? ド阿保。儂はそんな存在じゃないわ』

 

「えっ、そうなのか? 俺にはそうにしか見えないが」

 

『だから違うと……まぁいい、()()である儂でもここまで話の分からん奴を相手にすると疲れるわい』

 

 そう言いながら自身を精霊と告げた老人のような小人は多賀野のすぐ前、机の上に座る。人間をそのまま小さくしたような、そんな存在である小人を見ても尚、彼は驚かない。多賀野を見据えた小人はため息をついた後、本題に移る事にした。心の中で声を掛ける奴を間違えたな、と後悔しながら。

 

『さて、早速本題に移るとしよう。儂がお前に声を掛けた理由は一つ、先程お前が言っていた"恋"というものを教えてほしい』

 

「え? なんだ、そんなもので良いのか?」

 

『嗚呼、それでいい。儂は恋というものを知らないからな。それの代わりと言ったらなんだが……儂の力をお前に貸す。儂は恋というものを知り、お前は儂の力を扱える。どうだ、悪い話ではあるまい?』

 

 傍から見れば、小人の提案は悪魔の誘いに他ならない。ごく普通の人間であればその誘いを断り、遠ざける事もしたのだろう。だがしかし、沙耶と己自身は(想いも伝えてないのに)既に相思相愛だと決めつけ、妄想と現実の区別が出来なくなっていた多賀野という男は別だった。

 

「よし。その話、乗った」

 

『何、無理にとは言わな───は? け、決断が早くないかお前…!? ま……まぁいい、そうと分かれば話は速い。今ここに儂とお前の契約は成された。儂はお前を通じて恋というものを知っていく。後はお前の好きにするがいい』

 

 そう言うなり、老人のような小人は呪文のようなものを唱える。すると、その小人はその身を鍵のようなものへと変えた。小人が手にしていた大木槌をベースに、硬化した土が質量を以て具現化したような不思議な鍵。その鍵からは、何処か禍々しい力を感じさせる。

 躊躇うことなくそれを手にする多賀野の首筋には、手にした鍵を差し込めと言わんばかりに彫られた鍵穴のような刺青が彫られている。その刺青を近くにあった鏡で確認した多賀野は、鍵をその刺青に差し込んで回すと、多賀野と契約した老人のような小人が現れ、多賀野の身体に憑依する。その途端、多賀野の肉体に変化が起き始めた。

 

 多賀野と契約を交わした精霊は四大精霊の一角、地の精霊である『ノーム』。元から老人と酷似したような風貌の精霊である。ノームは契約者である多賀野の肉体に憑依すると、瞬く間に自身ごと多賀野の肉体を土の色をより濃くした体表と装甲を持つ化物───『ノームフォルズ』へと変化させた。

 ノームフォルズとなった多賀野は右手にノームが持っていた身の丈以上の大木槌を振るい、社員の誰も使っていない机や備品に叩きつける。すると、木槌が叩きつけられた机や備品は瞬く間に土の塊と化す。そして、それらはやがて人型を模した土人形へと姿を変えたのだ。

 

「……凄い。この力があれば、俺よりか弱い御劔さんを護り、振り向かせられる…!」

 

 凡そ人間が持っていい力ではない、明らかに人の理から逸脱した力を手にしてしまった多賀野は、先程製作した土人形達に何かを命じる。命令を受け取った土人形達は我先にと会社から出て行った。それを見送った多賀野は笑い声を上げながらその場を後にしていく。

 

 ───この日を境に、久江市の各地で二十歳前後の女性だけが行方不明となる事件がお茶の間に広く知れ渡るようになった…。

 

 

 »»»»»»»»»»

 

 

 それから、何日かした後の帰り道。日々の習慣になっている週刊少年誌を買いに本屋へ立ち寄ろうとした時。スマホで聴いていたラジオが臨時ニュースを報せるチャンネルへと切り替わった。操作はしていないのに切り替わった事に疑問を抱いた私はそのニュースを聞く事に。

 

「……もう、一体なんなの?」

 

 渋々聞く事にした臨時ニュースの内容はこうだ。某日未明から久江市の各地で女性が次々と消息不明となっている事件が多発しているというもの。狙われている女性はいずれも二十歳前後の女性。犯行に及んでいると見られる犯人は以前として捕まっておらず、その手掛かりすらも掴めていないようで、警察も手を焼いているとの事。

 故に、先の条件に該当する女性は決して一人で外を歩かないように、どうしても用事があって外に出る場合は同行者を付けるかなどをして対策をしてほしい、との事だった。担当のキャスターがそこまで話した所で、ラジオのチャンネルは元のチャンネルへと切り替わる。しかし、そのニュースを聞いていた私は気が気じゃなかった。

 

「ど、どうしよう……何処かに隠れられる場所、無いかな……?」

 

 犯人が狙っているのは、二十歳前後の女性。それは、私もその対象に当てはまる。しかも、今は仕事帰りで日も落ちている。そこを一人で歩いているのだ。犯人からすれば今の私は格好の的であり、今から燈真を呼んだとしても来る前に犯人が来たら一巻の終わりである。

 今回は通販で買おうと決め、本屋に寄る事を諦めた私が急いで自宅へ帰ろうとしたその時、先程まで誰も居なかった道の先……街灯が照らす先に誰か居る事に気づく。街灯の灯りで照らされている何かをよく見れば、それが人影だと辛うじて分かった。

 

(もしかして、あの人影ってニュースでやってた犯人なのかな? だとすると、ここからじゃ帰れない…どうしよう……)

 

 恐怖が全身を駆け巡り、その場から動けなくなる。その間に例の人影はゆっくりとだが着実に此方側に向かって来ていた。今すぐにでもこの場から逃げ出したいのに、自分の身体は全く言う事を聞いてくれない。そうして、遂に私が動けない間に人影は私の前に来てしまっていた。

 つい先程まで人だと思っていたものを間近で見た私は息を飲んだ。私が見たものは、人ではなく人の形をした土の塊だった。普通であれば、土が明確な意思を持って動くなど有り得ない事なのだが、今目の前に居るのは確かに土の塊。それも、まるで人のように動いていたのだ。

 信じたくないのに目の前で起きている不可思議な出来事をなんとか理解しようとした時、ふと周りを見渡せば私の目の前に居る人型の土の塊が何体も居て、私の周りを取り囲んでいた。それに気づいた時にはもう遅く、逃げ場は無くなっていた。

 

「嘘……これじゃあ逃げられないよ…」

 

 そうこうしている内に私の周りに居る人型の土の塊は徐々に距離を詰めていく。もう駄目だ、と脳が理解してしまった私は糸が切れたようにその場に崩れ落ち、気を失ってしまう。意識が薄れていく中、最後に聞こえてきたのは何処か聞き覚えのある男性の声だった……。

 

 

 »»»»»»»»»»

 

 

「……ん、沙耶から着信? いっつも唐突に連絡寄越すけど、こんな時間に掛けてくるのは珍しいな」

 

 精霊達に手伝ってもらって次話の原稿を粗方終わらせ、後は仕上げに取り掛かろうとした時。机の上に置いておいたスマホがプライベート用の着信音を鳴らす。画面を点けると通知欄には"悪友"もとい"沙耶"からの着信があった事を報せていた。

 いつも唐突に連絡してくる沙耶だが、誰もが寝静まった夜中に突然かけてくる、といった事はしなかった。今日、こんな時間に掛けてきたというのは何か用事があったから掛けてきたと見ていい。しかし、何度か此方から掛け直しても沙耶のスマホには繋がらない。

 

(……沙耶の奴、間違えて掛けたのか? まぁ、誤操作はよくあるし、多分それだろ)

 

 そう考えた燈真は沙耶宛に『何か用でもあったのか?』とメッセージを送り、引き続き原稿書きに取り掛かる。しかし、この時の燈真は沙耶がフォルズによる事件に巻き込まれている事を知らない。その事に燈真が気づくのは、まだ先の話。




なんとか、書き終わりました……(´・ω・`)
次回も、沙耶視点からのスタートになります。

それでは、今回もお読み下さりありがとうございました。
また次回(・ω・)ノシ
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