「んで、急いでテスト五教科分教師に作ってもらったってか?」
居候のホロホロが感心と呆れの交じった声でまん太と葉月を見る。
葉山葉月の心残り。
それを解消する為に、まん太は葉月とテスト勝負をする事になった。
既に学年も上がっているまん太だが、彼女にとって意味ある事なのだろうと承諾した。
テキパキとたまおが準備する中で、つい最近、シャーマンになった木刀の竜が腕で涙を押さえる。
「しかし、あんな子が事故で亡くなっちまったなんて! メラ悲しいぜ!!」
見た目に反して意外と涙もろい竜は、葉月が交通事故で亡くなった事を嘆いている。
「しっかし、死んでもテストをやりたいとは。オレには理解出来ねーな」
「それを言うなら、シャーマンファイトだって普通のやつには理解出来ねーだろ? あいつにとってはテストがオイラ達にとってシャーマンファイトみてーなもんだって話さ」
「なるホロ」
葉の返答にホロホロが納得すると、準備を終える。
そこで葉月が質問する。
「あの……頼んでおいて今更なんだけど。私はどうやってテストを書けばいいの?」
葉月は幽霊である。
物も持てないし、ましてや字を書く事も出来ない。
それに葉が前に出る。
「あぁ。憑依合体をしようと思ってたけど、アンナのやつに怒られちまったからな」
「当然でしょ。女の魂を葉の肉体に入れるなんて破廉恥じゃない。妻として断固反対よ」
「そ、そうかな〜」
まん太が首をかしげるとアンナに睨まれ、委縮する。
じゃあどうするの、と不安がっている葉月に葉はウェッヘッヘと笑い、ポケットからある物を取り出す。
それは何処にでも売っている百円ちょっとのシャーペンだった。
「オメーんとこのかーちゃんから借りてきたんよ。コレ、葉月がずっと使ってたシャーペンなんだろ? 生前の持ち物さえあれば、オイラがお前をオーバーソウル出来る。蓮との試合で巫力の上乗せも出来るようになったしな」
「おーばー……?」
「ま! 説明するよりやった方が早ぇな。葉月! ヒトダマモード!」
葉がそう言うと、葉月の霊魂が野球ボールくらいの球体となる。
「
葉月の霊を無理やりシャーペンへと押し込む。
「よっと……!」
顔の輪郭がなんとか具現化してる状態だった葉月が姿がみるみると生前の姿を取り戻す。
具現化した葉月が驚いて自分の体を見ている。
「これ……すごい……」
「これなら、テストも書けるだろ? テストを書き終わるまで、オイラがオーバーソウルを維持してっから」
「あ、ありがとう……」
そう言ってシャーペンを手にする。
葉月とまん太はカンニングにならないように少し離れた位置に座る。
たまおが説明する。
「それじゃあ、一教科五十分×五。テスト、開始です!」
葉月もまん太もテストに集中し、解答欄を埋めていく。
一教科を終えても休憩を取らず、そのまま五教科全て書き終わる。
そして、テストの結果は────。
「あーあ。負けちゃった……」
まん太は五教科全て満点。葉月はいくつかニアミスをしており、届かなかった。
「葉山さん……」
まん太は彼女になんて声をかければいいのか分からない。
学年がもう違うのだから仕方ないとか、そういう慰めはダメな気がした。
「気は済んだか?」
「うん。なんかスッキリした。自分でも意外なくらい」
本当に悔いが無くなったように晴れやかな笑う幽霊の少女。
「私ね。勉強、あんまり好きじゃなくなってたの」
生前の自分を思い出すように語り始める。
「将来、お母さんに楽させてあげたくて。勉強を頑張ってたの。でもいつの間にか、友達の作り方とか、接し方とか分かんなくなって人付き合いから逃げる為に勉強に打ち込んでたんだと思う」
そうすれば人付き合いが出来ない葉山葉月を自覚せずに済むから。
「でも中学校に入ってさ。私より勉強が出来る子がいた」
葉月はまん太を見る。
「悔しかった。私はこんなに勉強を頑張ってるのに、どうして小山田くんに勝てないんだろうって。でも、小山田くんに勝ちたいって思ったら、勉強が少しだけ楽しくなった。だから一回だけでも勝って見たかったなぁって」
それが葉山葉月の未練。
葉月は付き合ってくれたまん太にお礼を言う。
「ありがとう。勝負を引き受けてくれて。小山田くんは私の目標で、憧れでした」
「……僕は、そんなんじゃないよ。僕だってずっと勉強ばかりで人との付き合い方なんて忘れてた。葉くん達に出会ってなかったら今もつまらなそうに勉強しかしてなかったと思う」
葉と出会わなければ、ただ親の言いなりのままだったろう。
葉月はまん太の言葉に怒るでも幻滅するでもなく、ただ手を差し出した。
「最期に、どうか握手を」
既にオーバーソウルは解けている。
まん太に葉月に触れる術はない。
それでもまん太は触れられない葉月の手に握手した。
「もういいんか?」
「うん。本当に心残り無くなっちゃったから。麻倉くん達もありがとう」
「気にすんな。迷える霊を導くのもシャーマンの役目だからな」
そうゆるく笑う葉。
「それじゃあ、成仏させるわよ」
アンナが数珠を手に葉月を成仏させようと動く。
「葉山さん!」
成仏しようとする葉月にまん太は声をかけるが、なにを言いたいのか、上手く纏まらない。
そんなまん太に、葉月は微笑んで小さく手を振る。
────さようなら、いつかまた……ね?
こうして、葉山葉月はこの世をさったのだ。
ふんばり温泉に浸かっていると、まん太がポロっと呟く。
「これで、良かったのかな?」
「なにが?」
「葉山さんに。もっとしてあげられる事があったんじゃないかって。テスト勝負だって、僕がわざと────てぇっ!?」
ホロホロがまん太の頭を叩く。
「なにするんだよいきなり!?」
「バーカ言ってんじゃねぇよ! そんなことしたら、あの葉月って女の子は絶対成仏出来なかったと思うぜ! オメーが全力で勝負してくれたから、アイツは満足出来たんだろうが!」
「そ、そうかなぁ……」
まだ悩んでいるまん太に、葉が自分の意見を言う。
「本心は分からねぇさ。でもあいつは笑って逝った。なら、それが全てなんじゃねーか?」
「うん。そうかな。そうだったら、いいな……」
彼女が逝ったあの世がどんな場所かは分からないけど、どうか葉山さんにとって安らかな場所であることを僕は願った。
────まん太。
「なにこれ?」
死んでどれくらい経ったのかは分からない。
あの世と呼ばれる場所で葉山葉月は自由に過ごしていた。
そんな日々に突然現れたロボット? のような物体に困惑していた。
「なにこれ……」
困惑が増してロボットを眺めていると、パカッと一部が開く。
「葉山さん!」
「小山田くん!?」
どうしてロボットの中から小山田まん太が現れて、葉月の混乱が増す。
すると、葉月の霊体を長い数珠が絡め取った。
「うえっ!?」
「グレートスピリッツの中を回ってたら、意外なやつに会ったわね」
「恐山さん? なに? え?」
突然数珠で拘束されて引っ張られる葉月。
「ア、アンナさん!? もう少しお手柔らかに!」
「役には立たないだろうけど、ついで連れてってあげるわ」
「ど、どこに……?」
「
「え? え?」
更に頭が混乱する葉月にロボットの中にいる小さな子供が不憫そうに話しかけてくる。
「あーなんだ。姐さんに見つかったのが運の尽きだと思って諦めてくれ」
「ホントにいきなりでごめんね、葉山さん」
「ほら! 無駄口叩いてないで行くわよ! まだまだ回らなきゃいけないところがたくさんあるんだから!」
「だからなんなのー!?」
数珠で拘束されたまま葉月は、意外に再会が早かったなーと現実逃避した。