パクパクですわ!のキャラに転生したんだけど、何か違いますわ…… 作:クレナイハルハ
アグネスタキオン(原案)side
名門メジロ家に生まれたご令嬢、落ち着いた淑女的な物腰と気品から、周りから羨望の的となっていた。自身の血筋に強い誇りを持っており、母と祖母が獲得した「天皇賞」で3世代勝利を目指している。
それが、私の知る彼女についての情報だった。
学園の廊下で希にすれ違うくらい、そんな友人でも何でもない関係。
モルモット君との3年間を過ごした私はある日、私は自身の住んでいた世界とそっくりだが違う世界へと、勝負服姿で転移した。
得られた情報としては、私がまだ研究室に籠っている事。トウカイテイオーが骨折したが奇跡の復活を遂げたこと。メジロマックイーンの容姿が私の知るものと僅かに異なっていること。
そんな状況下、金品を持ち歩いて居なかった私はその世界でどうにか生きていた。
そしてたまたま近くにあった海へと足を運んだとき、私は見覚えのある背中を見つけた。
もしかしたら、彼女も私と同じように、この世界に転移してしまった同じ存在なんじゃ。そう思いながら彼女へと近付き、見えた彼女は──
『フフフ!よろしいですわ。なら戦争ですわ、一匹も残らず捕まえて差し上げますわ!』
──そう言いながら海に入り、手に持った網を縦横無尽に振るって様々な生き物を捕獲していた。
『フフフ、魚ごときが私を煽るのが悪いんですわ!』
例えるなら、無邪気に水遊びする子供。
お嬢様要素の欠片もない、そんな彼女の行いや仕草。いつもキリッと引き締められていた顔は破綻し、楽しそうに笑い、一瞬だが本当に彼女は私の知るメジロマックイーンなのか?と疑問を覚えた。
そんな彼女は網に一杯になるまで生物を捕獲すると荷物の置いてある私の方へと歩いてきた。そこで彼女に話しかけたのが、私と彼女の出会いであり、この世界で始まった生活だ。
あれから彼女と過ごす中で、驚いたのは彼女は最初から生活拠点を持っていたと言う事だ。まるでずっとこの世界で、その場所で過ごしていたと思えるほどのアパートの部屋。
テレビや冷蔵庫、エアコンなどの一般的な家具。それはまだ普通だ、彼女がこの世界で生活する際に持っていても可笑しくない。
だが、部屋に置かれているのは噂に聞く人をダメにするソファやパソコン、パソコンの近くに置かれたゲームのコントローラーや、ヘッドフォン。棚に飾られた数々のロボット? と思われるプラモデルにアニメのDVDの数々。
更には目立たぬ様にキッチンのすみに置かれたリュック。中には塩コショウ等の調味料の数々に、カセットコンロが入っていた。
明らかに私と同じように転移してきたとは思えない程に、整っていた。一体彼女はこの世界にいつ転移してきたのだろうか?
そもそも、彼女にこんな趣味があったのだろうか? 勝手な偏見ではあるが彼女はそう言った娯楽で遊ぶぐらいならばトレーニングをするような人物だったはずだが。
また、テレビのスイーツバイキングのカップル割に学園の問題児とも呼ばれた私にカップル役を頼んでまで店に行き、幸せそうに笑う彼女に対し考えたのが、本来の彼女の性格がこっちの方なのではないか、と言う事だ。
メジロ家として、いや彼女自身の使命とも言える「天皇賞」で3世代勝利。自身に課した目標の重圧に耐えていたからこそ、あのような完璧な優等生となっていたのではないか。
そんな疑問を抱え過ごす中で、私は彼女の一つの行為に対してある疑問を感じるようになった。
それは彼女の食事だ、彼女はいつも少食としか思えないほどの量しか食事をしなかった。
人間が食べる1食分の量しか食べなかった。ウマ娘なら、もっと食べなければ体が持たない。もしかしたら彼女は自身の食べる量を減らして、私に与えているのか? そう考えたが彼女は『何を言ってますの? 私はそんな量食べられませんわよ?』と、これが普通の食事量と言った。
それに彼女は、どちらかと言えば庶民的な生活をしていた。本当にお嬢様だったのか? と思わせるほどに。
やはりおかしい、本当に彼女はメジロマックイーンなのか?
そんな考えのまま過ごす、そんなある日。
彼女がウマ娘を拾ってきた。それもこの世界では知らぬ人はいないと言えるトウカイテイオーと思われる謎のウマ娘。
彼女は私やメジロマックイーン、この世界とも違う世界から転移してきたらしい。そんな彼女と共に、賞金を狙い私たちは闇レースを走った。
そして彼女が倒れた際に原因として考えられたのが、ハンガーノック。彼女は食べる量が酷く少なかった、だからと考えていた。
メジロマックイーンを家へと運び、ウマ娘の摂取する必要のある量のお粥を作りメジロマックイーンへと差し出した。それを見て彼女が小さく溢した言葉を私は聞いた。
『絶対に
へぇ………ヒト、ねぇ?
トウカイテイオーに彼女の世話を任せてテーブルに両肘をついて腕を組み、思考する。
彼女はウマ娘だ、何故ウマ娘である彼女が食べるはずなのに
そもそも彼女は本当にメジロマックイーンなのか?
確かに彼女がメジロマックイーンだとするなら、可笑しいと思うことが大量にあった。
これは、トウカイテイオーがいない間に少し話を聞いた方がよさそうだねぇ。
「ねぇ、アーリー?」
メジロマックイーン(原案)side
私は何故か目が覚め、布団から上体を起こし時計を見る。時計の針は夜中の1時を指していた。時間的にシオンやナナは眠っているのだろう。
そういえば、最近で1人の時間は、何処か久しぶりな気がする。
ふと、窓から見えた夜空に浮かび上がる月を見上げる。
考えてみれば、私がメジロマックイーン原案となったあの日から、結構な日々が過ぎましたわね。あのときは慣れなかったですわ口調は自然と出るようになって、シオンやナナの前でもメジロマックイーンとして振る舞えている。
いつか私が本当のメジロマックイーンではないとバレる日が来る。どの物語でも最終的にはそうなるのが定番なのだ。
もしバレたら私は一体どうなるのだろう?シオンやナナは私の事をどう思う?向けられる感情はどう変化する?
それを考えると、少し怖くなり布団を握る手に力が籠る。その時だった、私が寝ていた部屋の戸が開き誰かが入ってきた。振り向くと、普段着姿のシオンが立っていた。
「起きていたんだね、アーリ」
「シオンこそ」
そう言うとシオンは黙って私の隣に座り込み、私の瞳をじっと見つめてくる。思わず視線を逸らしたくなり、俯く。
「な、なんですの?」
「君、メジロ讃歌はまだ歌えるのかい?」
「へ?何それ………」
何それ?メジロ讃歌!?なんぞそれ!?
私の讃歌とつくのだから歌だとは分かるのですが、私が知ってるウマ娘の曲はうまぴょいぐらいですわよ!?
「へぇ、知らない………君は、一体何者だい?」
あら?もしかしてさっきの思い出に浸ってたのってフラグだった?
「わ、わたくしはアーリー……じゃなくて!メジロマックイーンですわ」
「メジロ讃歌はメジロ家なら歌えて当たり前だと聞いた事がある。今更、そんな嘘が通じると思っているかいアーリィ?」
そう言って詰めよって来るシオン、何故かその手には試験管が三つ握られている。
あれ、私終わった?
「ヒィィィ!?な、なんか怖いですわよシオン?落ち着いて下さいまし!」
「私は十分落ち着いているよ?さぁ、さっさと白状したまえアーリィ?」
うう、ここまで追い詰められたら話すしかないですわ。
「じ、実は私は本物のメジロマックイーンでは無いのですわ……」
そう口にすると、ようやくシオンはこちらへと詰めよって来るのをやめ、試験管をしまった。
「私は元々は人だった、ただの人間でしたの。ある日、私は気が付いたら貴方の世界のメジロマックイーンの姿になって、ウマ娘の存在する世界にいたのですわ」
「ウマ娘の存在する?」
「えぇ、人間だった時に私のいた世界ではウマ娘は空想上のキャラクターでしたの」
「へぇ、随分と非科学的な事を言うんだねぇアーリは、まぁ信じるんだけどねぇ」
「へ?し、信じてくださるんですの!?」
「実際に私は非科学的な状況にあっているからねぇ」
そう言って可笑しそうに笑うシオン。確かにシオンも原案の世界からこっちの世界に転移したから、信じてくれるのだろうか?
「それに、君が人間だった。それが事実なら君がレース後に倒れたのも頷ける。」
「レース後に倒れた理由?」
うーん、体調管理が甘かった?それとも貧血?
それとも数日前に食べた野草で作ったスープがあたりましたの?
「君は栄養失調になっているんだよアーリ」
「へ?なんでですの?私、普通にご飯は食べてますのよ?」
「あぁ、食べてるねぇ……人間が一回の食事で摂取する量を」
「?」
「つまりだアーリ、君は人間としての感覚がまだ残っていて無意識に食べる量にブレーキがかかっているんだ。これぐらい食べればもうお腹いっぱい、と言う風にね。つまり君はウマ娘としての食事、ウマ娘の代謝に必要な分の栄養を摂取していなかったんだ」
「な、なるほど? つまり、もっと食べないといけないってことですの?」
「そうなるね、次からは君の食事は私が様子を見てもっと食べるべきか否かを指示しよう」
「助かりますわシオン……」
「なに、君の事を思っての事だ。確かに君はメジロマックイーンではないかもしれないが、私やナナにとって今の君が私たちの知るメジロマックイーンであり、アーリースタイルだ。だから君に対して、何か思うことはない。」
「ありがとう、ですわ」
「だが、君が人からウマ娘になっていた事は誰にも言わない方が良い。変に目を付けられるわけにはいかないからね、これは私たちだけの秘密にしておこう」
「分かりましたわ、もし私がメジロマックイーンに関することでボロを出したらフォロー頼みますわよ? 私がメジロマックイーンについて知ってることはお嬢様である事とスイーツ好きという事しかありませんので」
「それは、とても骨が折れそうだねぇ」
そう言って笑っていると、部屋の入り口の戸が開く音がして二人で振り返る。そこにはパジャマ姿のナナが無表情のまま暗い瞳から涙を流し立っていた。
「良かった。二人とも、居た………」
とんでもなく心やられてません貴方!?
ナナがフラフラと私の布団へと近付き、そのまま布団に入ってきた!?
「ちょっ!?……ナナ?」
「捨てないで、ボクは……ボクは……まだ──」
そう呟きながら私の服の裾を握りしめて眠るナナ。取り敢えずナナの頬についた涙を人差し指で拭うと、まるでそこに居ることを確認するように抱き付いて来たナナの頭を撫でる。
「……彼女は彼女で、色々と闇が深そうだねぇ」
「そうですわね。シオン、今日は三人で寝ましょう?ナナもその方が安心するでしょうし」
「やれやれ、世話のかかる帝王様だねぇ。」
シオンはかけ布団と敷き布団を持ってきて隣に横になる。さて、明日からはパクパクですわしなければならない日の始まりですわね。
すぐに体調を戻す為に頑張りますわ!
………あれ?じゃあ、もしかして以前にスイーツパラダイス行った時私は限界まで食べていたと錯覚していただけで、まだ食べられた?
治ったら三人でスイーツパラダイスにでも行きましょう、そうしましょう。
ご愛読ありがとうございます
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