パクパクですわ!のキャラに転生したんだけど、何か違いますわ…… 作:クレナイハルハ
パクパクですわ!!(挨拶)
何故かウィニングでソウルな歌を熱唱したら泣かれましたわ……訳が分かりませんわね?
???side
最初から、私はずっと騙されていた。
『君が必要だ』
『君のお陰だよネイチャ !』
『君がいてくれれば勝てる!だから一緒に頑張ろう』
数ヶ月ぶりに現れたあの人の声が、嬉しくて頑張って走っていた。
慣れた芝ではなく不慣れなダートコース、砂に足を取られて芝よりも体力が持っていかれるレース場を走るのは凄く難しくて大変だった。
だけどレースでは勝つため……トレーナーさんを勝たせる為に、トレーナーさんの指示を聞いた。
捨てられたくない、一緒にいたい。
そう思いながら一緒に走る子を睨み付け、嘘をささやき、無理に加速したり追い上げて揺さぶり焦らせてペースを崩させる。
勝てなくても良い、せめてアタシの力があの人の力に、勝ちに繋がるのなら……あの人が私を求めてくれるなら。
その思いでアタシはひたすら走り続けた。私のトレーナーさんの他のウマ娘は一着を取る中で私はずっと三着以下、私はダートが苦手だから。
オグリキャップさんやコパノリッキーさんの方がずっとキラキラしてて、それに比べてアタシは……そう考える思考を止めてひたすらダートコースを走り続ける。
『ネイチャはこんな扱いで良いもん?ネイチャは何の為にトレセン学園にきたもん?』
それは………
『ネイチャさん、良ければですが私のチームに移籍をした方が』
イクノ……でも、トレーナーさんが求めてくれるから。
『大丈夫?ネイチャ 最近、元気無いよね?』
うん、大丈夫、私は大丈夫だから。
アタシはこれが合ってる、アタシが一着になれなくてもチームで勝てれば良いんだって自分に言い聞かせる中で友人達の声が頭を過る、でも私はそれを断り続けてきた。
本当は分かってたんだ。
トレーナーさんがアタシを捨て駒として使ってることを、でもアタシはチームで選ばれない他のウマ娘より良いかなって………そう思ってた。
『君のお陰でチームで勝てた』
そのトレーナーさんの言葉が嬉しくて、凄く嬉しくて、でもトレーナーさんは他のウマ娘達と話していて、悲しくて苦しくて、それでもレースを頑張る。
全てはトレーナーの為に、なのに
私は…………とうとう捨てられた。
あの人の隣にいたのは、やっぱり私じゃなかった。あのウマ娘ちゃんの隣に、あの人は居たんだ。
嫉妬すら湧かない、自分よりあの子の方が強くて役に立てる。
あの子は圧倒的な実力も、才能も持ってる主人公だから。それが嫌で、理解したくなくてその時の感情のままに走り出した。
色んな声が聞こえたけど、全てを無視して、走った。一人になりたかった、誰にも見られたくなかった。
友達も、居場所である学園も、アタシを求めてくれたトレーナーもアタシの走る意味も全てを失った。
涙が溢れてくる。
周りを勝たせる為に、他のチームの子達を邪魔して、それで私が勝つんじゃなくて周りを勝たせようとして……もう私には、キラキラなんて残ってないよ、こんなのもういやだよ。
自己嫌悪、そして大きな喪失感。
気が付いたら周りは真っ暗に成っていて、アタシは橋らしき場所に佇んでいた。
「アハハ、アタシ……何やってんだろ」
もういっそのこと…………。
「隣、失礼しますわ」
聞き覚えのある声に隣を見れば、何故かコンビニの袋を持ったメジロ家の令嬢でテイオーのライバルであるメジロマックイーンらしき人物が佇んでいた。
二人して橋の下に流れる川の水を眺める、沈黙が続き若干の気まずさを感じ始めた時、彼女は口を開いた。
「何があったかは聞きませんが、せめて今だけは隣にいますわ」
そう言ってメジロマックイーンが袋から取り出したのは値引きされたチョコバナナクレープだった。
思わず受け取り、食べて良いのか考えているとメジロマックイーンも私と同じ物を取り出して食べ始める。そして彼女から送られる食べませんの?と言う視線に思わずクレープに口をつける。
静かな橋の上ではお互いにクレープを咀嚼する音が大きく聞こえた。
何故、メジロマックイーンがこんな所にいる?
時間的にも、この場にいるはずはない。
なのに、何故かメジロマックイーンはここにいて何故かアタシの隣にずっといる。
「なんで、アタシなんかの事を……」
「あなたが酷く思い詰めた顔をしていたので、心配でして。身を投げるような事をするようなら止めないといけませんから………それに」
「それに?」
「貴方に似た子を、知ってますの。絶対の勝利の代償として大切なものを失って、世界からも見放されてしまった、そんな子を」
初めて、彼女の事をちゃんと見た。
確かにメジロマックイーン、でも私の知る彼女より目の前にいる彼女の髪は白っぽく、何より顔がキリッとしていた。
そんな彼女は例えるなら私を心配する祖母のような、本気で私を心配しているそんな気がした。
その時に気づいた、この人は隣に来たんじゃなくて、隣に居てくれているんだ。
私に、優しく接してくれて心配もしてくれている。そう考えたら凄く嬉しくて、あったかくて涙が溢れてきた。
「アタシの話、聞いて貰っても良い?」
嗚咽を溢しながらそう口を開くと、メジロマックイーンは優しく微笑みながら頷いた。
メジロマックイーン(原案)side
育成ゲームにおいて、楽しみ方は多く存在する。だが育成ゲームをやり込むにおいて、プレイヤーには段階が存在する。
まず、第一段階。
ゲームを始めたばかり、ビギナーの事を指し、育成するキャラクターのボイスや物語を楽しむ純粋な状態だ。キャラクターの育成では確率発生するコマンドの失敗を恐れ、成功率の高い物を選択する事で育成キャラのグッドエンディングを求める傾向にある。
次に第二段階。
ゲームに慣れた為に、沢山のキャラクターを高ランクまで育成して熟れた状態を指す。ビギナーから脱却し育成のサポートアイテムも多く存在する為に、いかに高ランクのキャラクターを育成するかを楽しみ、コマンドの失敗を恐れなくなる。
そして最後の第三段階。
キャラクターの反応を無視して、効率的かつ高ランク強キャラクターの育成をする状態。ゲームの総合評価で上位に入る事を考え、様々なイベントに対してメタを張り、対策能力を有するキャラを育成するようになる。
対策としてスピード特化やパワー特化、相手の動きを妨害するデバフスキルを多く取得させ育成を行うことで、いかにゲームに勝つかを考えるようになる。
この中でシオンとナナは第三段階に達したプレイヤーが作成したのだろう。
そして恐らく目の前にいる彼女の話を聞く限りだと、ナナと同じく第三段階。それもその場限りの相手の対策用に作られたインスタントなメタキャラクターの可能性がある。
強力なウマ娘でチームを組んだ世界線からこの世界に来たのでは?と考えられる。
まぁ、私はウマ娘をプレイしていないので、そこまで育成にパターンや型の種類があるのかはわからない。
だが彼女もまたナナのように心に傷を抱えているのは間違いないだろう。
そしてこの世界へと辿り着いた彼女の近くに、偶然私がいた………理事長、また貴方に動いて貰わなければなりませんわね。
そう思いながら、私は彼女の手を取った。
「取り敢えず私の家で、詳しいお話を聞かせて貰えます?」
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