パクパクですわ!のキャラに転生したんだけど、何か違いますわ…… 作:クレナイハルハ
今日も窓から学園を去るウマ娘の姿が見えた。
彼女は悔しそうに、悲しそうに涙を流しながら友人であろう学園の制服を着たウマ娘と抱擁を交わしている。
『ごめんね…マックイーン。ボクは君に勝ちたくて、追い付きたくて……それで何度も諦めないで頑張ってきたんだけど、もうボクは……ボクの足はもう、頑張れないみたいなんだ』
ドクン、心臓が早く鼓動する。
『ライス、楽しかったよ。マックイーンさんと走れて……ブルボンさんとも走れた……だからっ、大丈夫だよ。明日も、マックイーンさんは大事なレースなんだよね……頑張ってね』
四度目の骨折に諦めたように笑う彼女と、過酷なトレーニングにより療養を余儀なくされた彼女。
二人が悲しそうに笑う姿が脳裏を過る。
視界が狭まり、張り詰めた心が…
もう、走るのを止めていいんじゃないでしょうか?
屋敷を買い直すめぼしが付いた、病気で倒れたお婆様の病気を治す手術費も貯まった。
もう十分じゃないでしょうか?
何度も見てきた光景が、学園から去っていくウマ娘の言葉が脳裏に過る。
『あの時、勝ってたら私はまだ学園にいられたのにッ!』
『あと少しで、初めて勝てると思ったのにッ!』
私が勝ったから、私が彼女を敗北させたから。
『これ以上他のウマ娘のファンを敵に回していいのですか?他のウマ娘の夢を潰して楽しいんですか?』
私は自分の為に、沢山のウマ娘達の夢だけでなくレースを見ている人達の夢を踏みにじってきている。
楽しくなんかない、辛くて苦しい。
『かつてメジロアサマが見せたメジロの走り、そして誇りを受け継ぐべきウマ娘の走りと思えないがそこのところはどう思っているのか?』
ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい。
けど、でも私は……それでも私はメジロ家を…。
深く息を吸って、吐く。
深呼吸を繰り返して、思考を制御する。
負けた人達の事なんて考えるな、優先して考えなければならないことはなんだ?
メジロ家の復興だ、今考え込む事じゃない。
次のレースは目前に迫っている。
鍛えなければ、敗北など許されない。
メジロ家復興のためには、シンボリルドルフを越える最強の、最強無敗のウマ娘という存在が必要なんだ。
私が、最強無敗にならなくてはならないのだ。
あの屋敷を取り戻す為に、働いていた爺や達を取り戻すため、またメジロ家の屋敷でみんなと過ごすためにも………私は走らなくてはならない。
歩みを止めては、ならない。
どんなに苦しく過酷な道であろうとも、全てを取り戻すと誓ったあの日、全てを背負う覚悟はした筈だ。
私の、覚悟は変わらない……変えてはいけない。
XXXX年、彼女の伝説が刻まれた。
始まりが地の底ならば、そこから空の果てまで羽ばたいてみせよう。
全てを失ったのなら、全て取り戻して見せよう。
それが運命ならば、それに反逆してみせよう。
今亡き家の誇りを背負い、進む先は蕀の道。
失くした全てを取り戻すため、駆け抜ける。
敗北など許されない、許されるは1着勝利のみ。
ウマ娘のレース界に刻まれたのは、今後塗り替えられることのないであろう最強無敗の偉業を成した彼女の名。
最強無敗伝説、乗り越えられることのない偉業。
彼女は名優から覇王へ、そして伝説となる。
無敗で駆け抜けたそのウマ娘の名は
─────メジロマックイーン。
つい先日まで売りに出されていた豪邸、一目見てその大きさに目を見開くような外観の建物はその豪邸を買った、正確には買い直したウマ娘。
メジロマックイーンにより再びメジロ家の屋敷となった、屋敷を買い戻したマックイーンはもう一度雇うことが叶った家で働いていた人達や集まったメジロのウマ娘達へと自分で作ったすき焼きを振る舞った。
最初こそメイドや爺やに止められたものの、メジロ家が没落した後に独り暮らしをしていたマックイーンの料理技術は過去にメジロ家で働いていた料理人の舌を唸らせる程に成長しており、屋敷に集まった全員がそのすき焼きに舌鼓を打っていた。
みんなが嬉しそうに食べる姿に、マックイーンはどこか満足そうな顔をして自身も料理を頬張った。
メジロのウマ娘達は後日から全員が屋敷に住む事になり夜の7時頃に帰宅した。
つい先程まで賑やかに感じられた屋敷はしんと静かであり、過去に過ごしていた部屋のベッドに座り込んでいたマックイーンはボーっとしていた。
全員は無理だったが、戻ってきてくれた爺やにメイド達数人を雇う資金は数年分はある。
倒れてしまったお婆様の病気を治す手術費も貯まって手術を終え目覚めるのを待っている状況。
ライアンやパーマー、ドーベル達が屋敷へ引っ越した際に使う部屋の用意も出来た。
「なんだか少し、疲れましたね……」
ベッドに背中から倒れ、懐かしい天井を見つめる。
もう私は他のウマ娘の夢を壊さなくいい、走らなくていい、後はこの屋敷でこれからの生活を続けてさえ行ければ───。
『かつてメジロアサマが見せたメジロの走り、そして誇りを受け継ぐべきウマ娘の走りと思えない』
過去に記者や出会う人に言われた言葉を思い出す、果たして今の私に彼女達と過ごす権利はあるのだろうか?
がむしゃらに出られる重賞レースに出場し続けた、勝ち続けた。
そうでなければ取り戻せないと思い、そう信じていたからどれだけ傷付いても駆け出せた。
どんな言葉も無視することが、はね除けることが出来た。
何度か、彼女達とレースで対面したことを覚えている。
ならば私は、彼女達の夢のレースを……ライバルとの雌雄を決する機会を全てを壊してしまった?
【被害者続出、ライバルとすら戦えず】
【独占インタビュー、阻止された側の気持ち】
【途絶えた三冠の夢】
【ライスシャワー涙の引退】
【トウカイテイオー又もや骨折、覇王の呪いか】【覇王蹂躙、彼女は本当にメジロなのか?】
思い出せばこれが、私が勝ったときに見たレースの記事だ。一方で、みんなは……。
【メジロライアン、ライバルアイネスフウジン破り1着、メジロの誇り】
【メジロアルダン高松宮1着、その硝子でどこまでいけるのか】
【爆逃げウマ娘、メジロパーマー全てを引き離して1着】
【メジロドーベル1着、魅せてみせたメジロの走り】
【メジロブライト1着、怒涛の追い上げ!?】
【メジロラモーヌ、堂々の1着】
体温が低下していく、もうこの家に私はいない方が良いのかもしれない。
後のこと全部、彼女達に任せて私は消えた方がうまく行くのかもしれませんわね。
その考えが脳に浮かび、気が付けば私は部屋を出て、屋敷の外へと出ていた。
真っ暗な夜道、街灯で照らされた道は思いのほか明るいけど誰もいない。
夜道を歩くのは慣れている、深夜に住んでいたボロアパートの近くにあった公園でよくトレーニングしていた経緯から私は夜道には慣れていた。
トレセン学園に入学した私は、寮に入るお金がなくてボロアパートから学園まで走って通っていた。
独り暮らしに関して、料理は事実を知って唯一私にアパートの一室を貸してくれたあのボロアパートを管理しているお婆ちゃんが教えてくれた。
時々アルバイトとトレーニングから帰ると、カボチャの煮物がおいてあったりして、おばあちゃんには感謝していた。
数日前に、こうして屋敷を取り戻せるまで支えてくれた感謝として温泉旅行をプレゼントした。今頃はお婆さんは温泉宿でゆっくりしているだろう。
そんな事を考えていたからなのか、気付けば私は夜中にトレーニングをしていた公園へと向かっていた。
懐かしさから少し公園に寄ろうかと感じた時だ、公園の方から何故か温めた牛乳らしき匂いがした。
不思議に思いながら公園の入り口から公園内に入るとそこには、キャンプで使うような小さなカセットコンロを地面に置きコンロで小さな鍋にいれた牛乳を温めている男性が折り畳みの椅子に座っていた。
「何を、しているんですの」
気が付けば口から男性の行動に対する疑問が口から漏れていた。
「いや見ての通り牛乳を温めてホットミルクを……って、え?」
私の呟いた言葉を聞いたからか、男性は振り返ると驚いた様子で私を見つめていた。
Episode.0『オリジン』完了
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