パクパクですわ!のキャラに転生したんだけど、何か違いますわ……   作:クレナイハルハ

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パクパクですわ!!(挨拶)

お久しぶりですわ、今作品は頭を空っぽにして読むことをおすすめしますわ!


【番外編】激奏ですわ!(ファン感謝祭)

 

 

注意、本作品はウマ娘プリティーダービー

春のイベントストーリー(嘘)

『激奏!走れ!奏でろ!勝利と感謝のシンフォニー』のネタバレを含みます。

 

 

 

 

 

 

 

春、トレセン学園のウマ娘達は学園の大イベントといっても過言ではない『ファン感謝祭』の準備を始めていた。毎年続くファン感謝祭をより良い物にしたいと考えた理事長により、ファン感謝祭に新たなイベントが追加された。

それは、ウマ娘のウイニングライブの前にウマ娘によるバンドグループの演奏を入れようと言う物だった。理事長こと秋川やよいは早速このイベントを盛り上げてくれるであろうウマ娘達……ツインターボ、ダイタクヘリオス、スマートファルコン率いる逃げきりシスターズへの協力を求めた。またこのイベントを成功させるためグランドライブを成功させて見せた実績を持つライトハローが協力している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

秋川やよいside

 

各教室から聞こえてくる学生達の楽しそうな歌声や楽器の演奏に私はゆっくりと頷いた。

 

「うむ、練習も上手く行っているようだな……それにしても今までウイニングライブと言えばウマ娘が踊り歌うモノだと言う固定概念に捕らわれていたな……彼女には感謝せねばな」

 

「あ、リジチョー!」

 

聞こえてきた元気そうな声に目を向ければ、イベントに協力してくれているウマ娘であるダイタクヘリオスとツインターボが手を振る姿があった。

イベントに参加するウマ娘達への呼び掛けや演奏順など、様々な事を手伝っている彼女達に返事を返す。

見れば、本人達もイベントに参加するためバンドの練習をしていた様子だった。

 

「感謝!二人とも、準備は上手く行っているようで何よりだ」

 

「もち!色んなウチらでこのイベント絶対に成功させっからね!ね、ターボ!」

 

「うん!ファンの人達にありがとーって気持ちを込めてがんばるもん!」

 

「うぇーい!」

 

「いぇーい!」

 

元気一杯な彼女達は周りのウマ娘達やトレーナー、教職員の力を借りてこうしてイベントを開催するため頑張ってくれている。

彼女達のトレーナーは勿論の事だが、ライトハローや職員達も楽曲の提案や楽器の調達、演奏の補助を手助けしている。

彼女達の元から離れ、理事長室へと向かう。

 

「本当に()()には感謝せねばな。我々では思い付かなかった」

 

そう呟きながら理事長室に入ると、待っていたたづなが今だに不安そうに口を開いた。

 

「理事長、先日のメッセージですが本当なんですか?()()()が、このイベントに参加するだなんて」

 

頭に過るのは、不登校児扱いとなっている()()のウマ娘。4人はその内の一人によって保護されアグネス、トウカイ、メジロ家の協力によって情報が規制されている。そして最近発見されたことが密かに報告された最後の一人は、華麗なる一族が今も保護し情報を規制している。

 

「同意!どうやら、彼女の説得によりリモートや配信形式にはなるが参加出来るらしい。確かに、彼女達の存在を露見させるのは世間を混乱に陥れるだろう。だがたづな、彼女達が初めて参加してくれようとしているのだ、これを無下には出来ない。それに彼女達のような存在がもし今後も現れるとするならば、そろそろ分かることだけでも情報を掲示した方が良いだろう。少なくとも、詳しいお知らせは後日に説明するよう報道すればいい」

 

「分かりました、では私はそれぞれの名家の方に連絡をいれますね」

 

「うむ、頼んだ」

 

たづながウマホを手にし理事長室から出ていくのを見守ったやよいは、彼女達が一体どんな曲を練習しているのか楽しみにしつつ、手元の資料や書類に目を通すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

アーリースタイルside

 

 

「いやぁ、それにしても……まさか同意してくれるとは思いませんでしたわ」

 

そう言いながら目の前で楽器演奏の練習をする三人とリモートで歌の練習しているウマ娘へと目を向ける。

 

『同志……いや、友人からの願いなら、断る事はないと思う私』

 

「まぁ、一応学園所属の身だし一つくらいは参加しておいた方が良いからねぇ。それにしてもリモートとは上手いことを考えたじゃないかアーリ」

 

読んでいた楽譜から顔を上げてそう話すシオンの頬が微かに上がっている様に見える。彼女の楽譜を持っていない方の手はキーボードに添えられている。その楽器の配置というか、操作が楽しそうで何よりですわねぇ。

 

「まぁ、これならみんなが参加しやすいかと思いまして」

 

始まりは秋川やよいさんがファン感謝祭なるお祭り?学園祭?的な催しで何かないのか迷っていた様子をたまたま見かけた私が相談に乗り、ふとハ○ヒを思い出したので、生徒でバンドを結成して演奏会をするのはと提案したのが始まりだ。

その案をやよいさんは即決で採用した為に、私としてはそれでいいのか理事長、会議とかしなくて良いの?と思いましたが、まぁ学園のトップですし大丈夫でしょう。

そしてトレセン学園から家に帰る際、ふとアニメやネットでバンドを組んで演奏している学生キャラ達を思い出し、帰ってきてからみんなに提案したのだ。

当然だが、ネイチャとナナは学園に暗い感情を感じているのは明らかですので、何処かしらの防音設備の揃った場所をお借りしてリモートで行うのはどうかと提案したところ、皆が同意してくれた為にこうして練習が出来ている。

この世界にいた同志とは、やよいさんを通じて間接的に出会ったのだが、互いに互いを認識したとたんに同志だと理解した。ちなみにちゃんとリアルで会うのは当日の予定だ。

 

「ネイチャさんは学園に行かずに学園のイベントに参加できることに驚きというか……私もナナもリモートで助かってるよアーリ」

 

「うん、ボクたちにとってあの場所は……嫌な思いしかない場所だからね」

 

『二人の闇が深そうで、少し怖いけど気になる私……あ、当日なら其方と合流して練習出来そうだよ』

 

それぞれベース、ギターを持ったネイチャとナナの言葉に同志であるウマ娘が軽く引いているのがウマホに映し出されている。

 

「それにしても、アーリがボーカルじゃないのは驚きだねぇ」

 

「ぶっちゃけ、カラオケで95点以上を叩き出してたナナとネイチャに歌ってもらおうかと」

 

「おや?まだ根に持っていたのかい?」

 

「あなた方には分からないでしょうね!90点を出すのがやっとの私の気持ちなんて!」

 

「クックック、それなら今度練習にまた行くかい?」

 

「行くなら皆でいきたいですわ……打ち上げはカラオケにします?」

 

そう、あれは女神様(ガチ)とカラオケに行ったときの事だ。私はカラオケで90点以上を叩き出してかなり天狗になっていた。そんな私を絶望のどん底に叩き落としたのは、私以外の4人のカラオケの採点だった。

アーリースタイル、91.58点。

アグネスルクシオン、96.55点。

ナナシノテイオー、98.99点。

ワイドネイチャ、95.33点。

ダーレーアラビアン、99.99点。

その時はネイチャがお馴染み3着~と非常に楽しそうに話していたので、その時は笑顔で対応しておりましたが。

 

「さて、練習の前に実は提案がございまして……曲の始まる寸前に名乗りを入れようかと」

 

『ご友人……ふざけても良いのですか?』

 

「我々が格好良く行くので、最後にぶち壊して下さい」

 

『さすがは同志!そこに痺れる憧れるぅー、本番での会場の反応が楽しみで仕方がない私!』

 

「なんと言うか、本当にアーリは我々と同じような存在を引き寄せるようだねぇ」

 

ウマホに映るウマ娘となった人物は、どうやら学祭とかだと面白おかしく立ち回るのが好きっぽさそう、というかしてそうですわね。こう、何に関しても全力全開といいますか。

ちなみにだが、会場の様子は私たちの方にタブレット端末を通して伝わる予定ですわ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春のファン大感謝祭、最初の1日。トレセン学園は賑やかな空気に包まれていた。

学園には屋台が並び、各々が考えたイベント。

大食い大会やパソコンのタイピング速度対決、逃げ切りシスターズのゲリラライブやアストンマーチャン人形との写真撮影会、模擬レースなどの催しで大きく賑わっている。

沢山の人達がウマ娘達のファンとしてこの場に足を運んでいる……いや、ファンだけでなくこの学園に通うウマ娘の友人や家族もこの場へと足を運んでいる。

目立つ金髪をフードで上手く隠し、北海道から来た女性や、麦わら帽子を被った初老の男性に若くしてフィギュアスケーターを目指す少女。

他には、Bの文字が特徴的な髪飾りを付けたウマ娘と有名な芦毛で怪物なウマ娘に手を引かれるハンティング帽を被った40代くらいの男性や、妹から聞いたとあるウマ娘に会いに来たSPに囲まれたウマ娘。

そして後にお祭り娘や願いを叶える宝石とも呼ばれるウマ娘のファン1号とも言えるようなメガネの男性とパーカーの男性。

そんな全員が、放送の案内を聞き春のファン大感謝祭初日限定イベントであるライブ会場へと足を運んでいた。

今回のファン感謝祭では、理事長の発表により新イベントであり理事長の名付けたウマ娘達がバンドを組み演奏を発表する『激奏!走れ!奏でろ!勝利と感謝のシンフォニー』が行われることを報道されていた為だ。

今回のファン感謝祭は三日間行い、その初日でこのイベントを行うのには理由があった。それは万が一不評であり、ファンの人達から反響を買ったらと次の日の恒例のイベントで挽回出来るのではと保険を考えた一部の人達によるものだ。

いかに秋川やよい理事長の進めるイベントとはいえ、流石に最後のイベントには押し込めなかったのである。

そんなイベントの進行は勿論理事長秘書、駿川たづなである。ウマ娘達はイベントの為に楽器の調整や運搬をしているためである。

 

「それでは、理事長。開会の挨拶をお願いいたします。」

 

「うむ!この度は集まってくれた沢山のウマ娘のファンの皆様、感謝する!是非、最終日まで全力でこの春のファン大感謝祭を楽しんでくれ!」

 

マイクを握りイベントの進行を行うたづなとやよい理事長の横では、この場で演奏する最初のバンドチームであるダイタクヘリオスとツインターボが率いる『爆走☆ウィニングシンファニー!』が待機していた。ちなみにだが、なぜシンフ()ニーなのかと言うとチーム名を書類に書く際に、ツインターボが間違えて()()()()()()()()()()()()と間違えて書いた際にイクノディクタスが「流石ですねターボさん、心を意味するシンと人を笑わせるようなというファニーでシンファニー、人を心から笑顔にするという造語を作り出しチーム名にするとは」と頷いて称賛した事が始まりだ。

それに対して「それただ、単に間違えただけなんじゃ……」と首をかしげるパーマーと「マジ!?ターボってばマジ天才すぎ!」と驚くヘリオスがいたのだが、それは過去のお話である。

 

「うぅ、緊張してきた……」

 

「パマちん、そんな肩張らずにパリピってアゲてって楽しんでこ?楽しまなきゃダメっしょー?」

 

緊張した様子で胸を押さえるメジロパーマーを元気付け励ますようにダイタクヘリオスが笑いながら背後から抱き締める。

 

「へ、ヘリオス?」

 

「マジで練習してきたんだから大丈夫だって、ウチらで会場バリ盛り上げていくっしょー!」

 

「アンコールも含めた楽譜の準備は完璧です。最初から会場は盛り上がること間違いありません」

 

その場に問いかけるようなダイタクヘリオスにイクノディクタスがメガネをくいっとさせながら微笑み、今にも会場に走り出しそうなターボを片手で止めている。

 

「宣言!それでは『激奏!走れ!奏でろ!勝利と感謝のシンフォニー』の開催をここに宣言する!最初にこのイベントを開催するために尽力してくれたウマ娘達のバンドに演奏して貰おう!たづな!」

 

「はい!最初のチームはこのイベントを成功させた立役者といっても過言ではないツインターボさん、ダイタクヘリオスさん、イクノディクタスさん、そしてメジロパーマーさんのチーム『爆走☆ウィニングシンファニー!』の皆さんです!」

 

その放送に勝負服姿の彼女達が深呼吸するなか、ツインターボはいの一番にステージへと走り出しながら三人のウマ娘に手を振る。

 

「ターボエンジン、最初からハイマットフルバーストだ!みんな、ターボについてこーい!!」

 

ツインターボの声に笑いながら三人はステージへと駆けていった。彼女達の演奏に会場の人達は大きく盛り上がった、沢山の笑顔が広がった。

その後も続々と様々なウマ娘達のバンドチームが演奏していった。スマートファルコン率いるチーム『逃げ切りシスターズ』、ハルウララの率いるチーム『ウラライキンデジ』、NT…ではなくナリタトップロードの率いるチーム『Road to the Top』、ウイニングチケット率いるチーム『BNW』など他にも沢山のチームが参加した。

そして、恐らくは午前の部の最後のバンドグループの番へと入った。

やよいは手に持った扇子を強く握りしめ、彼女達がこの世界のウマ娘のファン達に受け入れて貰えるよう、学園の皆に知って貰えるよう思いながら会場に設営された大きなモニターを見据えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

イベント会場の観客席には沢山の人達がおり、自分のチームの演奏が終わったウマ娘達は生徒用の席で演奏する人達を見ていた。その中でパーカーを着ている男性は手に持っていたイベントの配布パンフレットを見ながら口を開いた。

 

「これで午前最後の演奏か、あの子達は午後の部みたいだな」

 

「……この『激奏!走れ!奏でろ!勝利と感謝のシンフォニー』。本来ならばウイニングライブで歌い踊るウマ娘達が楽器を手に演奏するというイベント」

 

「どうした急に……」

 

突如として語りだしたメガネをかけた男性に友人であるパーカーを着た男性が何度口にしたのかわからない疑問の言葉を口にする。

 

「このイベント、どの子も演奏と歌が素晴らしかった。いつもは歌って踊るウマ娘達が演奏をする、だが最後を飾るならば恐らくは今まで演奏してきたウマ娘達の中でも特に凄い子達が選ばれてるんじゃないかって」

 

「確かに、そうかもな……」

 

そんな彼らの会話を他所に、会場でバンドをチームの演奏を聞いていたトウカイテイオーはマックイーンと共にこのイベントを楽しんでいた。演奏も終わり次の演奏者の事を見ようとしたトウカイテイオーは次のチームについて載っている場所をみて首をかしげた。

 

「あれ……ねぇ、マックイーン。パンフレット見せて?」

 

「えぇ?構いませんが、あなたも持っているじゃないですか」

 

「それが次の演奏チームについて書かれてるところが潰れてて読めなくてさ、印刷した時にインクが掠れたのかな?さてさて……あれ、こっちも潰れてる!?」

 

「そんなまさか……本当ですわ!?」

 

パンフレットのミスらしき場所に驚いていた彼女達のもとにツインテールの少女が首をかしげながら歩み寄る。

 

「あれ、なんか困り事?」

 

「ネイチャ!いいところに、ちょっとネイチャのパンフレット貸して!」

 

「は、はい?」

 

一方、その場から少し離れた場所ではステージの演奏を見ていたダイイチルビーはたまたま居合わせたダイタクヘリオスと共に会場で演奏をみることになっていた。

 

「お嬢どしたん?さっきからウマホ持ってるけど」

 

「別に、何でもありません。お気になさらず」

 

ふとダイイチルビーはウマホのメッセージアプリを開いてメッセージを確認した。だが彼女が学園についてから送った彼女へのメッセージには一つも既読がついていなかった。

即座に家のものに彼女が前のように無茶していないか確認して貰うようメッセージを送ろうか悩む彼女はそう言いながらウマホをポケットにしまう。

 

「おやおや、カフェ?偶然じゃないか」

 

「……驚きました、あなたのような方はこのような催しには興味が無さそうなので来ないのかと思っていましたが」

 

「いやはや、理事長にこの場に来るよう言われてしまってね?私は自分の科学実験体験イベントで忙しいんだがねぇ」

 

「そうですか……それは一体何を実験するんで──え?『面白いことが起こりそう』ですか?それは一体……」

 

その時だった、楽器等の準備を終えたのかステージを閉じていた幕が開いていく。そして見えたのはウマ娘も、そして楽器すらと存在しないステージだった。

「え?」「どうなってるの?」「どうなってるんだ?」「誰も、いない?」「運営のミスか?」「演出?」「つ、次のグループは!?」「うそ、インクで掠れて消えてる!?」「急いで次のグループを呼んでこなきゃ!」

その光景に会場の人達、そして学園の生徒すらが疑問の声を漏らし騒ぎ始めた次の瞬間、駿川たづなさんの放送が響き渡った。

 

『続いての午前の部最後のバンドのチームのご紹介です』

 

その言葉と共にステージに設置されている背後の巨大なモニターが起動する。それにより会場の人達の騒ぎが収まっていき、やがてモニターへと視線を向ける。

モニターにはNow Loadingと表示されており、画面端には犬のようなリスのような不思議な生き物が走っているのが映し出されている。

 

『みなさま、トレセン学園に所属していますが学園に登校していない()()()()()()()()()()()の存在をご存じでしょうか』

 

その言葉に、エアグルーヴは驚きの声を漏らしながら近くにいたシンボリルドルフの方を見つめる。

 

「会長!そんな情報は……」

 

「……まさか」

 

シンボリルドルフは片手を顎に添えて誰なのか考え、即座に思い当たる人物を思い出してクスリと笑った。

 

「会長?」

 

「ふふ、エアグルーヴ。今は静かに見届けようではないか」

 

「……会長がそうおっしゃるのなら……」

 

『今回は、彼女達自らリモートでなら参加できると表明した為にこうして配信形式での参加となっています。本イベントを動画配信でお楽しみの皆様の閲覧されている映像も一時的にそちらの配信へと切り替わります。それではどうぞ』

 

そう言いながらたづなはマイクを切り、アナウンスを終えるとふと気になったことを理事長に尋ねた。

 

「そう言えば理事長、彼女達のライブってどんな風に始まるとか紹介とか一切要望がありませんでしたよね?」

 

「肯定!!それなのだが彼女達が自分達で自己紹介やバンドグループの紹介をすると話していてな。まぁ、楽しみに待つとしようではないか」

 

映像はNow Loadingから切り替わっても真っ暗な画面は真っ暗なままであり音声のみが伝わってきた。

 

『会場へお越しのファンの皆様、学園の皆さん?ごきげんよう。』

 

聞こえてきた聞き覚えのある声にトウカイテイオーやナイスネイチャ、サトノダイヤモンド。他にもメジロ家のウマ娘達がぎょっとした様子で近くにいたメジロマックイーンを見るが、メジロマックイーンは物凄い勢いで首を横に振り否定する。

 

『我々は、元いた世界からはじかれ』

 

更に聞こえてきた声にカフェがジト目で横にいるアグネスタキオンを見つめる、そして少し離れた場所から感じる不登校だなんて嘘ですよね!?といった表情を向けてくるダイワスカーレットに、冷や汗を流すアグネスタキオン。そして語り文句にかすかな同族を感じて静かにモニターを見つめる眼帯をつけたおや……ではなくタニノギムレット。

 

『この世界にたどり着いた、外れ者達』

 

聞こえた三人目の声に、ぎょっとした様子でキタサンブラックやナイスネイチャ等のウマ娘達からの視線に先程のメジロマックイーンのように首を横に振って否定していたトウカイテイオーはふと思い出した。

 

『そんなハズレ者の私たちが集まり、生まれたバンドグループ』

 

そして聞こえてきた新たな声に会場の観客や彼女の誕生日を祝ったことのあるウマ娘達、トウカイテイオーとメジロマックイーンはぎょっとして近くにいたウマ娘……ナイスネイチャを見つめる。

 

「ま、まってこれ私の声!?いやいやいや、ネイチャさん学園は休まず通ってますよぉ!?皆勤賞ですって!?」

 

「ってことは……マックイーンもしかして──」

 

「まさか、また彼女達ですの……」

 

『バンド名はWorld Rejecters(ワールド・リジェクターズ)。』

 

新たに聞こえた声にダイタクヘリオスは目を見開き隣を見る、そしてダイタクヘリオスに見つめられたダイイチルビーは「まさか」と、こぼしながらモニターを見つめる。

 

『イカれたメンバーを紹介するぜー(棒読み)、ドラムは我等がリーダー!』

 

突如として棒読みから感情の籠ったダイイチルビーの声に思われる叫びと共に映像が切り替わる。一つの部屋が映し出され、そこに映っていた学園の制服を着ていた五人の少女を見て会場は困惑の声で溢れた。

そんな中で、後ろの真ん中に設置されたメジロマックイーンと瓜二つだが髪色や顔が少し違うウマ娘が勢い良くドラムを叩きポーズを取りながら口を開いた。

 

『ドラマー、アーリースタイル!』

 

続くようにドラムの隣に設置されたキーボードを叩き、口元をニヤリとさせながらアグネスタキオンと瓜二つのウマ娘が口を開く。

 

『キーボード、アグネスルクシオン』

 

続いて前列にいるトウカイテイオーと瓜二つだが、強者の風格を感じさせる見た目でベースを軽く鳴らしながらめんどくさそうに少女は口を開く。

 

『ベースとボーカル、ナナシノテイオー』

 

ナナシノテイオーを名乗ったウマ娘の隣に立つ何処かナイスネイチャより弱気な雰囲気を感じさせるウマ娘がナナシノテイオーのように軽くギターを弾いてからギターを構えつつ片手で小さく手を振りながら口を開く。

 

『ギターでボーカル。わ、ワイドネイチャでーす!』

 

いつもの恥ずかしがり屋なナイスネイチャの気弱な姿に何名かの商店街メンバーが胸を押さえている。

そして最後の一人、ダイイチルビーと瓜二つの少女は華麗に手にしたバイオリンを弾くと突如としてニヤリと笑いながら片手でピースを作りながら片目の近くに持っていき、ウィンクしながら笑顔で口を開いた。

 

『ちょりーっす!!!!ダイニルビーでーす!』

 

そんないつものダイイチルビーからは考えられない動作をするウマ娘に、会場のウマ娘が様々な反応を見せるなか、このイベントを成功させた一人が膝をついた。

 

「ヘリオス!?」

 

「無理、お嬢からウィンクであんな挨拶とか無理……もう無理尊すぎて死ぬ」

 

「いや、あの取りあえず立って!?なんかヘリオスあそこで倒れてるアグネスデジタルみたいになってるから!?」

 

一方でダイイチルビーは片手で頭を押さえながら口を開いた。

 

「……華麗なる一族としての教育が必要ですね」

 

そんな彼女達を他所に、画面に映る少女達はアーリースタイルがスティックを三回鳴らす事を合図と共に演奏を開始した。

 

『You count the medals 1,2 and 3!』

 

『Life goes on Anything goes Coming up OOO!』

 

曲が始まり楽しそうに、先程までは見せなかった笑顔で歌い演奏する。

彼女の歌から感じられるのは、経験した故の思いのようにも感じられた。

ナナシノテイオーとワイドネイチャの歌で語られる要らない、持たない、夢も見ないという歌詞には……全てを失ったがゆえに解放された自由な状態で生きている。

 

『Anything Goes!その心が熱くなるもの!』

 

『満たされるものを探して』

 

自分達で失ったからこそ、今の自分を満たしてくれるナニカを探し求めている事を自身で表しているように感じられた。

 

『Life goes on!本気出して、戦うのなら!』

 

『負ける気しないはず!』

 

一曲が終わった瞬間に、会場から拍手が次々と鳴り響く。そんな会場の反応を見たのかアーリースタイルが口を開いた。

 

『会場の皆様?盛り上がってますかー?次の曲に参りますわ!さぁ、どんどん行きますわよぉ!』

 

『ふふ、アーリはテンションが上がってきたみたいだねぇ』

 

その後もアーリースタイルセレクトの楽曲が続いた。三つに別れた日本でLOVE&ピースを掲げる正義の味方や水星の魔女が告げる祝福の音色等、アンコールまでしっかり演奏しきった。

彼女達がそっくりさんであることを忘れて普通にライブ演奏を楽しんだ会場の人達であった。さて、そんなアーリースタイル達の様子を見て理事長こと秋川やよいは何故か彼女達全員が制服に袖を通している姿を見て感動して涙目になっていたりする。

 

『ご清聴ありがとうございました皆さん、これにて私たちのライブを終えますわ。さてさてライブも終わりましたし打ち上げにスイーツパラダイスでもいきますわよー』

 

『本当にスイーツ好きだねぇ、アーリ。』

 

『ご友人!ご友人!食べ放題に行きたい私!』

 

『たまには焼き肉もいいんじゃない?』

 

『ワイドさんはナナに賛成ー』

 

そう言いながら防音の部屋から出ていく五人の様子が配信され映像は途切れた。

そうして『激奏!走れ!奏でろ!勝利と感謝のシンフォニー』午前の部は大成功におわったのであった。

 

 





ダイニルビー「番外編だから絡めた私」

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