他の書き物に夢中になってました
住宅街の夜、晩御飯を食べ終わってテレビを観たり、スマホを弄ったり、本を読んだり、あるいは仕事をしていたり。違いはあれどゆったりと過ごす時間だ。当然爆発音がすると誰もが気づいて様子を見に来たり、通報するだろう。
しかし今戦闘が起こり、爆発音が鳴り止まないこの場所は警戒区域の奥であり、住居のみが残って住民は誰一人としていない。
そして少女一人をスーツ姿のボーダー隊員が取り囲んでいた。
「先にこちらに戦闘の意思は無いということは言っておきます。なんなら武器を捨ててもいいですよ。トリガー解除は流石にできませんけど」
「って言ってますがどうします? 二宮さん?」
『実際今回はこっちのトリガーじゃないんでしょ? 俺らが時間稼いで太刀川さんたちがもう一人を取る。こっちとしても万々歳じゃ?』
「うわぁちっちゃいなぁ。辻ちゃんもあんなに小さい女の子だと戦いづらいよね?」
「…………いえ、戦います」
「無駄口を叩くな出水、犬飼……相手のトリガーの機能が完全に分からないならトリガーを起動している限り何をされるかわからない。作戦に変更はない」
そう言って茶髪の男……二宮がキューブ……たしかアステロイドかメテオラを私の頭に当てる。当たった衝撃で少し仰け反るが、ダメージはない。
「……ギムレットでもダメか。確かに通じない。だが、やはり仰け反ったか。ならば予定通りにいくぞ。」
「オッケー了解です」
通信でも入ったのだろうか、唯一スーツ姿ではない出水が両手からトリオンキューブを浮かべ、孤月を使っていた辻も銃に切り替える。
「迅さんの言った通りですか……多少はやり返しますからね!」
そう言って一番近くにいる辻に向かって走り出す。途中で弾を撃ってくるがダメージも特に喰らわないため、気にせずに駒を早めに落とす事を優先して短剣で払いのける。すると、その弾が爆発した。
「んっ!?」
当然ダメージは無い。ダメージは無いのだが、手と体が弾かれる。そして一度体制が崩れると立て続けに弾が当たる。
そしてその弾は全て爆発する、小南先輩とガチンコ勝負したときに使ってきたメテオラであり、通常のトリオン体だと喰らえば即死するため気にしていなかったが、ダメージを喰らわないカチカチの黒トリガー製のトリオン体ではその爆発で体は傷つかないが、衝撃で打ち上がる。爆煙が上がることで次の弾が見えなくなって再び被弾。
「この……!」
地面、若しくは壁に足が当たった感覚がしたので全力で蹴って離脱。すると爆煙の中から脱出して家の塀に突き抜けて家の中に突っ込んだ。
そしてそのまま外の様子を伺う。
すると躊躇なく家が爆破され、上から大量のメテオラが飛来した。
それを余裕をもって躱しつつ、一番近くにいる仕留め損ねた辻に向かって全力で突貫する。
辻は速さに目を見開き構えようとするが、速さに対応出来ずに短剣で銃を破壊。そしてそのまま大剣で右腕を切り落とす。
そしてそのまま犬飼に攻撃を仕掛けようとすると足に力を入れる。
すると膝裏に衝撃が走り、膝がかくりと曲がってそのまま膝を着く。司会街からの攻撃。そして視界に入れて警戒していたから二宮たちの攻撃でも無い。辻も撃つ余裕があったとは思えない。ということは……もう一人、おそらく狙撃手がいる。
そして膝を着いて仰け反っているという隙だらけの体勢は当然見逃されることがなく、再び爆発の波に飲まれる。
ダメージは無いが吹っ飛ばしによる混乱や動きの制限は私の黒トリガーを封殺するのに最適解とも言えるだろう。私を倒そうとするのであればジリ貧となるのは確実だが、時間稼ぎなら正解。おそらく私をここに釘付けにして、遊真から黒トリガーを回収。その後私を仕留めにかかるつもりなのだろう。だが、時間稼ぎは私の望むところでもある。迅さんからは私の仕事は時間稼ぎ。それさえ出来れば玉狛支部にまで本部連中は行かないし、遊真や私に危害が及ぶことが無いと聞いた。
つまりここで私がすべきことは目の前の敵をここに釘付けにすること。そして相手が攻撃できなくなったとき、つまりトリオンがほとんど切れた時に攻撃をしないことで敵意がないことを示すことだ。だがある程度の反撃をしないと他に援護が行くかもしれない為、落としきらない程度に反撃する。
メテオラでお手玉のように空中を舞いながらそんなことを考える。先程は驚いてしまったが、来ると思えば問題ない。体がグルグル回っているし、平衡感覚が今にもバグってしまいそうだが、黒トリガーを使ってグルグル回ってたことが味方してくれている。通常トリガーでも戦闘中に回ることがあるが、黒トリガーを使ってるときはそれはもうよく回る。
目を少し開けて様子を見ると、爆煙の隙間から本部チームがチラチラ見える。全員が作業のように淡々とメテオラを射出している。半数が無表情で機械のように見えて少し滑稽だ。
右手と左手を軽く握り直して自分の得物をしっかりと握ってることを確認して現実に向き直り、メテオラの連鎖を受けながらじっくりと考える。するとメテオラの来るペースや方向が変わらないヤツがいる。
それを最終確認すると空中で体勢を変えて足裏で踏むようにメテオラに触れる。すると思った通り、メテオラ包囲網から抜けることが出来た。
「やっべ!」
つまらなさそうな顔をしていた出水も少し焦った顔でメテオラを撃ってくるが、爆煙から抜けたため弾がよく見える。20数発飛んできた弾を大剣で叩きつけて起こった爆発の反動で躱し、それでも迫ってくる弾は先程と同様に推進力として使わせてもらう。そしてロケットのような凄まじいスピードで犬飼に突貫して短剣で右手を落とす。
そして二宮に向き直り、左足を前に出すと今度は左側から足の甲に弾が当たって転倒する。またスナイパーに体勢を崩された。そしてそのままメテオラに捕まる。撃つ度に場所が変わってる上に気をつけていても一瞬の緩みが出ればそこをつかれる。凄まじい腕前だ。
だがそれを何度か繰り返していると途中から明らかに弾幕が薄くなってきた。
おそらくトリオンギリギリ。二宮と出水は変わらず撃ってくるが、他2人は撃つのを止めている。
そしてまたしばらく経って、2人の弾幕も少なくなってきた頃。
二宮と出水の横っ腹を弾が襲い、真面目でキツそうな雰囲気の女性……木虎が犬飼の首に斬りかかった。
二宮たちは直前に通信が入ったのか、ギリギリで気づき二宮と出水はシールドで頭と心臓付近を守る。しかし二宮は左腕を失って脇腹に穴が空き、出水は二宮よりもシールドを広く展開していたため、手足を多少削られる程度で済んだ。そして犬飼は初撃を躱したがその次は躱しきれず、首を落とされた。
「嵐山隊、今より空閑雪の援護に回る!」
これで形勢逆転。メンバーを落とされ、残った二宮たちも満身創痍だ。
「……三輪たちは失敗したか。それにお前たちがこちらに来たことを考えるに、無駄だったという訳か」
「え? マジっすか、二宮さん?」
「ああ、迅のところは迅ひとりでやるそうだ。そして俺たちは勝った場合、空閑と二宮たちの戦いを止めるという役割があったんだ」
「その姿を見るに、手も足も出なかったようですけど」
「相変わらずだな木虎お前……」
どうやら戦闘が終わったっぽい?
「あの、ありがとうございます。私だけだと終わりそうになかったので、助かりました。木虎さんもありがとう」
嵐山たちに向かってそう話しかける。ちなみに嵐山隊と会うのはこれが初めて。迅さんからは助っ人が来るとしか聞いていなかった。まさか木虎が来るとは。
「いえ、任務ですので」
キッパリ。微塵もあなたのことを心配してませんよといった様子だ。
「あ、はい」
「ははは、もちろん迅からの頼みだからというのもあるが、空閑姉弟を助けたいというのもあるさ。木虎だっていつになく気合が入っていたようだしな」
「なっ……! そ、そんなことありません!」
「ふふふ、そうなんですね」
「二宮、出水、嵐山たちもお疲れ様。してやられたな」
「東さん! お疲れ様です。削られまくったし、中々上手くいかないもんですね」
「ああ、だが急造の作戦にしては思ったよりも機能した。トリオン消費度外視だから他に使い道はないが、なかなか面白かった」
「もうカッチカッチでしたね」
「いい経験をさせてもらったな」
私は嵐山隊の皆さんと、二宮さんと出水さん、東さんは3人で話した後出水さんや東さんと軽く話していると、迅さんが本部チームを撃退という通信が嵐山隊、そして東さんたちに入り、この戦いは私たちの勝利という形でひとまず終わった。
そして本当に重要なのはここから。
迅さんに連絡を入れると、本部長の許可が出たという報せを受ける。
そして私と迅さんは合流して本部に向かって歩き出した。
無茶苦茶な作戦ではあるという自覚はありつつ、通常トリガー相手ならほぼ無敵な雪さんトリガーをどうにかしようと思った結果こんなことに。
一定以下のダメージ無効みたいな実際にいるとめっちゃ面倒な相手