「生存者」ツインターボ   作:しが

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ここから史実改変が目立ってきます。あと今さらですがオリキャラ(オリジナルウマ娘あり)です。


#4 Re:birth

「さぁ、福島競バ場、芝1800メートル。天気は曇り、バ場は良好。福島民友カップの開催です。出場ウマ娘を紹介します。1番人気、昨年の有マ記念以来、休養をしていたツインターボが一年ぶりに姿を現します。堂々の一番人気での入場です。」

 

「『逃亡者』、一年ぶりの走りに注目ですね。」

 

 

「2番人気、コールドストリーム。3番人気にクレイブウェールとなっております。各ウマ娘、ゲートインしました。そして…各ウマ娘、綺麗にスタートしました。…さぁやはり一番に躍り出るは一番、『逃亡者』ツインターボ。得意とする逃げを披露します。しかしこれは少し掛かり気味か?続くは9番、4番。…第二コーナーを迎えました。しかし各ウマ娘まだ誰も仕掛けません。先頭は依然ツインターボ。今日も快調に飛ばしております。何バ身離れているか今の段階ではとても分かりません。」

 

 

「ツインターボは今まで第三コーナーの終盤にはスタミナ切れを起こしています。勝負が動くのは第三コーナーでしょうか。」

 

 

「さぁ…第三コーナーに突入しました。ツインターボ、変わらず飛ばす!一人早く第三コーナーの中腹へ…ここで各ウマ娘、追い上げてきた。ツインターボのスタミナ切れを狙いに来たか。…おおっと、9番 ラビットボウル!ツインターボの背後に食らいつく!ツインターボ、ここでスタミナ切れか…減速が始ま…おおっとここで更にツインターボが加速する!ラビットボウルをどんどんと離していく。そしてたった今、第四コーナーを駆けている!」

 

 

「スタミナの問題を克服したツインターボは更に加速を可能にしたようですね。」

 

 

「そして残り200!しかしツインターボの背後には誰もいない!ツインターボ、速いぞ!他のウマ娘を寄せ付けない速さでツインターボ、今一着でゴールインだ!!」

 

 

歓声が上がる。…一年ぶりに復活したツインターボは他の9名のウマ娘を寄せ付けない速度でゴールインした。以前抱えていた問題であるスタミナも克服されており、スタミナ切れが予想されていた場でなんと更に加速することすら可能としたのだ。

 

 

 

「…ターボ、凄く調子良さそうね?トレーナー。」

 

 

「当然ですよ。今のターボさんの完成度ならばこの程度ならば相手になるはずもありません。重賞も狙えたでしょう。」

 

 

「しかしそれでは何故、福島民友カップに?ターボさんならば更に上を狙えたというのは同意しますが。」

 

 

「まずは…印象作りから入るためです。これからターボさんには重賞に出てもらうためまずは確実に制覇できるところを。今のターボさんにはこのレベルのウマ娘では食らいつけるはずもないというのは予測済みです。…そして一着を取ってしまえば『逃亡者』の復活はそれを見ていた人々から知らされるはずです。」

 

 

 

「おい、見たか?あの走り。一年ぶりだってのに凄い加速じゃなかったか?」

 

 

「ああ、そう思う。…今までのツインターボは体力が足りずに失速が多かったが今回は尽きると思ったところで更に加速した…これなら成れるかもしれない。」

 

 

「なれるって、何にだよ?」

 

 

「あの『異次元の逃亡者』の再来にだよ。」

 

 

 

 

「…と、このように更なるレベルアップを遂げたターボさんは話題を攫うのはまず間違いないでしょう。もともとある程度は目立っていたウマ娘ですので圧倒的な勝利を飾れば話題になることはそう難しくない。それに一年ぶりのレースということも箔が付く。」

 

 

「それで?それで?ターボが勝って話題になってどうするの?」

 

 

「ターボさんの望みを叶えるだけですよ。」

 

 

南坂はウィニングライブを行うツインターボを見ながら静かな言葉で締めた。…ツインターボが生きているということを刻む、その事に静かに協力するために。

 

 

 

――――

 

 

 

「チーム・カノープスか…。」

 

 

スピカのトレーナー、沖野は夕刊の一面を眺めながらほうと呟いた。

 

 

「ナイスネイチャ、イクノディクタス、マチカネタンホイザ…それにツインターボ。どれもパッとしてないように見えて勝つところは勝って、何より善戦が凄い。それにスター性のあるウマ娘もいる…か。」

 

 

夕刊の一面は福島民友カップでツインターボが堂々と復活した旨が伝えられていた。

 

 

「グレードが付かなかったとしても中央。決して弱いウマ娘ってわけではない。それを一年ぶりのウマ娘がぶっちぎるか…南坂の奴、どんなマネジメントしてるんだって…。」

 

 

沖野トレーナーの意識は同僚の優男、南坂へ向けられていた。ツインターボの圧倒的な勝利は一部とはいえすぐに話題となり、彼女に新たな異名が付き始めているのは沖野の耳にもすぐに入ってきた。

 

 

 

『最速の機能美の再来』。…それが誰を指すか、それは沖野は良く知っている。

 

 

 

「スズカの再来…とは言うが、確かにスズカに似通った所もある、あるが決定的に何かが違う。」

 

 

先頭の景色を譲らないサイレンススズカに比べ、ツインターボの走りは何かを決定的に欠いていた。

 

 

 

「…いや、でも一つ似てるな…あの時のスズカか。」

 

 

 

『沈黙の日曜日』と呼ばれたあの時。サイレンススズカの走りは死を纏っていた。実際にスペシャルウィークが居なかったら死んでいただろう。その時の走りにツインターボの走りは似ていた。

 

 

「まさか、そんな。」

 

 

沖野は馬鹿らしいと笑った。まさかツインターボがいつも死にそうに走ってるわけでもあるまいしと一笑に付した。…が、それが実際に正しいことであるとは、彼は知らない。

 

 

「…しかしまずはテイオーとマックイーンのことを考えないとな。カノープスの難敵なのは間違いないが…。」

 

 

――――

 

 

「まずは1勝。」

 

「おめでとう!ターボ!3コーナーでの更に加速凄かったよぉ!!」

 

「…ありがとう、タンホイザ。」

 

「おめでと、ターボ。レースの最中貧血とか起きなかった?」

 

「おめでとうございます、ターボさん。スタミナトレーニングの成果が着実に表れていたようですね。」

 

「イクノもネイチャもありがとう。…うん、大丈夫。ちょっと苦しかったことは否定できないけど貧血みたいなフラッて来たことはないよ。1800メートルなら大丈夫。」

 

レース後、チームカノープスは合流し、共に祝勝会を行っていた。実はこの時、ターボは嘘を付いている。

 

 

(…第三コーナーでの加速は…スタミナは余っていたし、脚も残せていた。ただ…心臓は張り裂けそうなくらい痛みを…)

 

あの場面、ツインターボは更に加速をしたが心臓が処理の許容範囲を超えて鼓動がとても早くなっていた。それに痛みもあったが、痛みなどとうに慣れたツインターボにとってその程度は障害と成り得なかっただけだ。

 

 

(身体の調子も良いし、コンディションも悪くない。それにスタミナが付いてることも実感できる。ただ…心臓だけ、心臓だけが保たない。)

 

 

ターボがウマ娘として仕上がれば仕上がるほど痛みは強まる。ウマ娘として完成されたツインターボに一体心臓はどれだけ持つだろうか?などと考えると恐ろしくなる。

 

 

「ターボ?」

 

ネイチャが心配したように声をかけてきた。しかしツインターボはその内面の不安を微塵も感じさせないように。

 

 

「…いや、何でもないよ。私は正直多くは食べられないから何を食べるかを考えてただけ。」

 

「あー、そういえばターボって少食だよねぇ。ウマ娘って少なからず大食いだと思ってたんけどターボって普通のヒトより食べてないんじゃない?」

 

「……流石にそれは………ないと思う。」

 

ツインターボはウマ娘の食べる量より遥かに少ない。というか普通のヒトの女性が食べるよりも少ない可能性すらある。

 

 

「食欲が余り無いだけだから…」

 

 

(あの時からずっとね…)

 

ツインターボの胃袋は8歳の時から膨らむことをやめてしまったのだから。

 

 

「トレーナー。」

 

「何でしょうか、ターボさん。」

 

「今度の休みに外出届けを貰える?」

 

「構いませんよ。しかし何処に?」

 

「…実家に。母さんに話したいことがあるから。」

 

「…………分かりました、申請は私が代わりにやっておきますよ。」

 

----

 

 

ツインターボの実家は府中からそう遠くない多摩市に位置する。元々は宮城県に住んでいたが8歳の時にここに引っ越してきた。これだけの範囲ならばトレセンに電車通学出来るがそれでも寮に入っているのは訳がある。

 

 

「……ただいま、母さん。」

 

「お帰り、ターボちゃん。この前のレース見てたよ。凄かったねぇ。」

 

…初老のウマ娘。この人物がツインターボの母親だ。昔に比べて随分と老け込んでしまったように見える。心労によりここまで老けてしまったのだが、その心労の元は……言うまでもないだろう。そして、加えてもう一つ理由がある。

 

 

「…これからも勝つから、見ててね。母さん。」

 

「楽しみねぇ…さ、ターボちゃん。あがってね。」

 

実家に帰る。数ヶ月振りの我が家に入る。それだけの行為なのにツインターボは何処か惜しむような気持ちに陥る。

 

 

(…私はあと何度ここの塀を跨げるのだろう。)

 

それは三女神のみぞ知るところだ。

 

 

「ターボちゃん、お団子食べる?昔から好きだったでしょ?」

 

「…食べるよ。でもまずは手を洗ってこないと。」

 

洗面所に向かうツインターボ。手を入念に洗っていると、二階から一人の人物が一階へと降りてきた。

 

 

 

「おっとこれはヒーローのお帰りかぁ。本当におめでたいねぇ、ターボ。」

 

「…サウス姉さん。…そうだね、皆にもお祝いされたよ。めでたいことにね。」

 

「…チッ、可愛げのない妹だね。何か親愛なるお姉さまに言うことがあるんじゃないの?」

 

「無いよ。何もない。私から貴方に言うことなんて何もないよ、姉さん。…母さんを悲しませる貴方にかける言葉なんて無いよ。」

 

「…お前っ!!」

 

それはウマ娘だった。ツインターボより一回りほど上か。

 

サウスベイ――ツインターボの直接の姉。

 

レースの才能には恵まれたが身体に恵まれなかったツインターボにたいして、非常に健康的なウマ娘として生まれたのにレースの才能は1ミリも持たずに生まれたサウスベイ。サウスベイは才能の溢れるツインターボに嫉妬心を抱き、敵視している。

 

そして、一方でターボもすっかり落ちぶれた姉が母を悲しませる要因であることも加味して、軽蔑している。…完成しうる最悪の姉妹関係がそこにはあった。

 

「…用がないなら消えて。本当は貴方には出てって欲しいけど。それを決めるのは父さんであって私じゃないから。…だから、せめて私の目に映る場所にいないで。」

 

「フフフ…本当に可愛げのない妹だこと、そんなにまた病院に送られたい?」

 

「やめておいた方がいい。鍛えている私と姉さんじゃどちらが有利かなんて論じるまでもないから。」

 

 

「……………チッ。アンタ、本当何時か後悔させてやるからね。」

 

「後悔なんて今さらするわけないよ。」

 

捨て台詞を吐き、姉は消えていった。

 

 

「ターボちゃん、サウスちゃんとお話ししてたの?」

 

「…うん。大丈夫だからね、母さん。それよりも聞いて欲しいな。」

 

「うん、どうしたの?」

 

「これ、今度のレースの優待券。G3だけど重賞に出るから…見に来てくれる?」

 

「…もちろんよ。ターボちゃんは偉いわねぇ。」

 

「…偉くないよ。」

 

 

――偉くなんかないよ、おかーさん。ターボは最悪の親不孝な娘だよ。

 

 

…その言葉を口にする気は弱った母親の姿を見て、霧散した。




Q タンホイザって何時入ったん?

A.第四話の直ぐあと。ちなみに今の時系列は11月。第四話は1月の冒頭。

Q.サウスベイって?

A.ツインターボの姉。繁殖牝馬だったためレースに出たことは生涯で一度もない。


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