ヨルムンガンド ANOTHER ORDER   作:マサクロ

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12話 NIGHT TIME THE RIGHT TIME 【phase6】

~A棟1F~

 

嵐の中、突如戦場と化したメルヒェン社第二工場は、一般人を巻き込んだ銃撃戦へと発展していた。爆薬により破壊された建物の壁からぞろぞろと入りこんでくる緑の迷彩に身を包んだ部隊が現れるも、状況がつかめない工場の社員達はただ唖然としている。目を疑う光景に言葉を発する間もなく、彼らの額に銃弾が撃ち込まれいていく。

 

「クリア、戦闘員は見当たらず。引き続き建物の捜索を続行する」

 

1人がそう言うと、他の2人が背後の気配を察知し、振り向くと同時に再び引き金を引いた。乾いた銃声と共に遠くにいた女が仰向けに倒れた。恐らく騒ぎを聞きつけてこちらに来た不運な一般人だろう。女は心臓と額に1発ずつ撃ち込まれていた。

 

「もうじき施設内の電源が落とされる、各自NVGの用意を」

 

その言葉が発されてから数秒で、施設が暗闇に包まれた。

 

「予定通りだ。我々はこの暗闇に乗じて可能な限りA棟を捜索する。恐らく量子コンピューターはこの棟の地下にあるだろう。地下へ通ずる道を探せ」

 

3人の兵は再び走り出した。

緑色のぼやけた光が6つ、ゆらゆらと軌道を残しながら暗闇の中で高速に動いている。時折見えるマズルフラッシュと、乾いた銃声。銃弾が頭の中を突き抜ける音と、人が倒れ込む鈍い音。不規則に奏でられる死の音楽が、突然ぴたりと止まった。薬莢が荒々しく床の上を転がる音が、背後で感じ取られた。最後尾の兵が唐突に叫んだ。

 

「コンタクト!!」

 

叫び声と同時に3人は振り向き、奥にある曲がり角の壁際に銃弾を浴びせた。彼らが引き金を引くよりも前に、成人よりも一回り小さい体格の男が出しかけていた胴体を来た方向へと引き戻し、後から続く男を通路の角へと押し倒した。薬莢が転がる音が感じられた時点で、相手が社員ではない事がすぐに理解できた。ブーツ独特の重々しい存在感が蹴られた薬莢の音に混じっていたからだ。

 

「戦闘員を2名確認!」

 

もう1人の兵が情報を味方に伝達しながら、3人は素早く後ろの曲がり角へと後退していく。後退と同時に、前方の暗闇から追い打ちをかけるように銃弾が飛んできた。銃弾がヘルメットの側面をわずかにかすめたのが感じられ、思わず動揺の声を漏らした。この暗闇の中、一瞬のマズルフラッシュだけで位置を補足し、見えはしないがそこにあるはずの頭へと弾を撃ち込む。恐ろしい程までの戦闘能力だ。連続した銃声が反響する中、投げ込まれる円柱状の物体が視界に入った。

 

「グレネード!」

 

叫びながら壁際へと身を隠し、口を開いた。凄まじい爆発音とともに細かな破片が壁に突き刺さり、衝撃で身体がビリビリと痺れた。一番壁際の兵が応えるようにグレネードのピンを抜き、敵の方向へ投げ込もうと壁から手をした瞬間、彼の右手が吹き飛び、足元にグレネードが落ちた。爆発までに約3秒ある。とっさに足でグレネードを蹴り飛ばし、壁に跳ね返って通路の奥へと流れ、再び爆音と共に破片が奥の方で飛び散った。運よく自爆は免れたものの、彼の右手は手首のあたりを撃ち抜かれ、ぬるぬるとした血を垂れ流しながら彼は苦痛に顔を歪ませた。庇うように後ろの兵が彼と位置を交代し、応射した。NVGに映るその姿は、紛れもない、あの元少年兵、ジョナサン・マルだった。

暗闇の中の戦いは、さらに激化していった......

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