ヨルムンガンド ANOTHER ORDER   作:マサクロ

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14話 NIGHT TIME THE RIGHT TIME 【phase8】

「状況は?」

 

「ホテルワン、ホテルファイブが全滅。ホテルツー、ホテルスリー、ホテルフォー、ホテルシックスを合わせ、残る隊員は12名です。」

 

「これ以上の損害は認められない。各隊分散して早急に制御室への道を探せ、デジタルに頼りきらず、アナログで嗅ぎ分けろ」

 

「了解、引き続き捜索を開始する。オーバー」

 

通信を切ると、合流した計4隊はぞろぞろと各方面へと移動を開始した。このA棟に辿りつくまでに既に6名の隊員が命を落としている。隊は3人1組で構成されており、ココ・ヘクマティアルの私兵9人を相手にするには、ナイトナイン側の兵士12人では仕留めきれない可能性がある。目標はヨルムンガンドの制圧であるとはいえ、この機会を逃すわけにはいかなかった。この場でココ・ヘクマティアルらを全滅させてこそ、ナイトナインの完全勝利と言える。ナイトナインの兵達は手際よく施設内を制圧していく。施設内の逃げ遅れた民間人はもうほとんどいなかった。例え外に逃げ延びたとしても、確実に他の部隊が口を封じている事だろう。このブラックオプスが語られる事はない。表の世界史として残るのは、ココ・ヘクマティアルというテロリストは、アメリカの手によって始末されたという事実だけ。それ以上、それ以下もない。アメリカがヨルムンガンドさえ手にすれば情報はいくらでも書き換えが利く。今回の任務は世界を悪魔の手から救う事だけが目的ではない、悪魔が産みとした産物をアメリカが手にし、世界を裏から支配する狙いも含まれている。決して失敗は許されないのだ。

 

「こちらホテルスリー、公開された設計図にはない通路を発見をした。」

 

「恐らくその通路が制御室へと通づる道だ。各隊至急A棟C-22にてホテルスリーと合流し、全隊集結次第突入せよ。」

 

魔物を討つ手は、すぐそこまで迫っている。その事にいち早く気がついたのは、ココであった。

 

 

~地下ヨルムンガンド制御室

 

 

「まずい、奴らにここを嗅ぎつかれた。」

 

ココの一言でラビットフットがわめきだした。

 

「マジで⁉︎ それ超ヤバイじゃん!あたしら早く逃げた方が良いって、キューバの時も死ぬ思いしたし、絶対今回もヤバイって!あのチビ(ヨナ)達が間に合わなかったらそれこそ自殺行為だって」

 

「ギャーギャーわめくな、思考の邪魔だ、黙ってろ。」

 

ココはモニターをじっと真剣な表情で見つめたまま言い放った。ラビットフットの言っている事は確かに正論だが、追い詰められているココにとっては耳障りな雑音でしかなかった。何より、それではヨナ達を見捨てる事になる。撤退するにもヨナ達との合流が先決だ。ヨナ達には既に制御室までの撤退を命じた。あと数分としないうちに到着するだろう。ここで最終防衛ラインを引き、侵攻してくるナイトナインを迎え撃ち、撃滅する。ナイトナインの全隊が集結してしまった今、分散したままでは確実に不利な状況に陥る。制御室が発見されるまでの間、何とか2隊までは殲滅する事ができたが、それでも状況は厳しいものだった。

 

「ココ!」

 

そうこう考えているうちにヨナ、バルメ、トージョがエレベーターから小走りでココの元に向かってきた。別の通路からはレーム、ルツ、ワイリ、マオが苦痛に顔をゆがめるレームを支えながら歩いてきた。

 

「レーム大丈夫ですか?」

 

「大丈夫だ、ただ左目をやられちまった...」

 

バルメが不安そうに尋ねると、レームは荒い息と共にそう返した。レームを壁によりかからせると、救急キットを持ってきたマオがすぐさま応急処置にかかった。ココは申し訳なさそうな表情をしながら、唐突に手をパンパンと叩き、皆の視線を一か所に集めた。

 

「みんな、聞いてほしい」

 

彼女の持つ薄い碧眼は、何かを見据えているようだった。

 

「知っての通り、我々はナイトナインの奇襲により不利な戦況に追い込まれている。既に奴らはこの制御室への道も探し出し、じき全隊がここに突入してくるだろう。我々に残された時間はあまりに少ない。最終防衛ラインはこの制御室となるだろう、撃滅はもちろんのこと撤退も視野に入れた戦闘を展開してもらう事になる。仮に奴らがここを占拠した場合、ヨルムンガンドは私の手で破壊する。実験データもだ。この戦いに敗れれば、我々は全てを失う事になるだろう。だが、己が命だけは失うな。生き延びる事を第一に考えるんだ。戦闘継続が困難と判断した場合、隔壁を閉鎖して制御室と脱出路を隔離する。脱出路からはハンヴィーで南西まで地下通路を通って移動し、戦闘区域から離脱する。最終決戦は近い、各自準備を怠るな!」

 

ココはそう言い放つと、モニターに向かいヨルムンガンドの破壊準備を始めた。この地上にあるヨルムンガンドは、データを削除したうえ制御室ごと破壊、衛星軌道上を回るヨルムンガンドは、データを削除し機体を分解、大気圏で全て燃え尽きるだろう。全ての行程を組み終えると、ココは端末を取り出し、コンピューターに繋いだ。最終決定権を端末に移すと、ココは端末の接続を切り、大切に握りしめた。

 

「たった今、全ての権限を私の端末に移動させた。私がコードを打ちこめば、ヨルムンガンドという存在はこの世から消える事になる。」

 

真剣なまなざしで言い放つココに、どこか不安げな様子が垣間見えた。

 

「お嬢、例えヨルムンガンドを失ったって、俺はお嬢に付いてくぜ」

 

いち早く察したのはトージョだった。きっと他の皆も理解はしていたが、余計に不安にさせはしまいかと、言うに言えなかったのだろう。

 

「俺もだ、他の奴らだってそうさ。お嬢への忠誠は揺らがないぜ。なぁ?」

 

レームが笑いながら、皆に視線を流していった。皆無言で頷き、各々がココへの忠誠を示していた。

 

「みんな、ありがとう」

 

ココはそう言うと、プラチナブロンドの髪をなびかせ、手を大きく振り上げた。かつて、ヨルムンガンドを発動した時のように。

 

「さぁ、状況開始!」

 

大きく振り上げられた手は、掴んだはずの空を、手放すようだった。

 

To be continued〜

 

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