薄暗い部屋の中に、男が約30人ほど集まっていた。部屋の明かりは手元が見えるくらいで、それぞれの顔は見えない。プロジェクターの光が空気のちりを浮かび上がらせた。光の先には、眼鏡をかけた神経質そうな男が立っていた。プロジェクターの光が眼鏡に反射していた。
「諸君、海軍中佐トリー・プレイムだ。今から作戦内容を説明する。"オペレーション・ラグナロク"は極秘扱いの任務だ。これから言う事の全ては一切他言無用である。その意味をよく理解して欲しい。」
プレイムが手元のボタンを押すと、プロジェクターの映像が切り替わった。そこには、悪魔の居城が映し出されていた。
「今回の目標は、南アフリカに建造されたメルヒェン社第二工場だ。表向きには"おもちゃ工場"となっているが、真っ赤な嘘だ。この施設には量子コンピューター、通称"ヨルムンガンド"があると思われる。可能なら技術を盗み出せ。不可能なら破壊しろ。だが、今回の最優先事項はヨルムンガンドの破壊ではない。手元の資料を確認して欲しい。」
プレイムはレーザーポインターを弄りながら言った。
男達はそれぞれ膝の上に置かれた資料を開いた。資料には顔写真と共に身体的特徴、経歴などが詳細に記録してあった。プレイムは全員が資料を開いたのを確認すると、眼鏡を指で上げながら、再び喋り始めた。
「今回の最優先事項は、ココ・ヘクマティアル、アマダ・ミナミ、レイラ・イブラヒム・ファーイザ、エレナ・バブーリンの殺害である。彼女達はテロリストであり、一連の騒動の首謀者だ。彼女達にはシュート・オン・サイト(目撃しだい射殺)の指令が下っている。情けはかけるな。ココ・ヘクマティアルがターゲットとなれば彼女の私兵とも交戦する事になる。察しの通り、彼らはキューバ・グアンタナモで戦った部隊だ。我々はそこで一度敗戦している。今こそ屈辱を晴らし、世界をテロリストの束縛から解放する時だ。」
プレイムは力を込めて言い放った。煮え湯を飲まされ、更にはブックマン暗殺の疑惑で拘留された彼自身、かなり頭にきている様子だった。男達はそれぞれ無言で頷いた。すると、一人の男が手を挙げた。
「中佐、ひとつお聞きしたい事があります。」
「何だ?」
「施設内の一般人の処理はどういたしますか?」
プレイムが短く息を吐いてから言った。
「施設内の一般人、研究員は射殺しても構わない。この作戦は表沙汰にはならない。故に、証拠となるもの、痕跡の抹消、関係者は消す必要がある。だが後処理は他の隊に任せればいい。君達の目的はあくまでもあの4人の殺害だ。邪魔する者は必要なら消せ。」
思わぬ発言に空気が一瞬ざわついた。彼らの正義の為に戦うが故に、無関係な人間まで殺さなくてはならないのだ。だが、反対する理由がなかった。事実ヨルムンガンド計画を阻止せねば、この作戦以上の犠牲が増える事は明白だった。彼ら自身もプロであり、私情を作戦に持ち込んではいけないのはそれぞれが良く理解していた。決意が固まると、それぞれ立ち上がり、敬礼をした。プレイムは全員が立ち上がり、敬礼したのを確認すると、最後にこう言い放った。
「幸運を、ナイトナインの諸君_____」
〜to be continued