バツンという音とともに、施設内が暗闇に包まれた。ヨナは敵を見失わぬよう、その場にとどまり敵の位置を無線で伝えた。狙撃されぬよう、しゃがみながら緑の光を目で追った。
「敵の人数は不明、NVGを装備してる。それに奴ら動きが速い。」
ヨナは壁の案内板を見てから再びインカムに向かって話し続けた。
「敵はC棟の庭園方面から現れた。移動方向から見て、B棟に回り込むつもりだ。」
短い雑音の後、ココの声が流れ出した。
「ヨナ、現在トージョがそっちに応援に向かった。トージョから武器を受け取るんだ。レーム、ルツ、ワイリ!三人はB棟に先回りして敵を狙撃しろ!時間を稼げ、動きをけん制するんだ。バルメと私はA棟のヨルムンガンドの制御室に向かう。ウゴ、マオ!二人はミナミ達の護衛に向かえ!カレンと合流して制御室に来い!」
再び、短い雑音が鳴り、今度はカレンの声が流れ出した。
「ミナミ博士達3人は既に確保した。ウゴ、マオ。現在A棟北階段にいる。このまま階を下りて直接制御室に向かう。二人とも北階段に向かえ。地下4Fで合流だ。」
ヨナは皆の動きを瞬時に記憶し、ハンドガンを抜いてセイフティーを外した。腰を低くしながら再び外を見た。すると、電源が内部電源に切り替わり、施設内が再び光に包まれた。ヨナは突然の光に少し目を細めた。すぐさま、アナウンスが流れた。
「現在、施設内にて停電、火災が発生しました。施設内にいる人は速やかに避難してください。繰り返します。現在、施設内にて停電、火災が発生しました。施設内にいる人は速やかに避難してください。」
このアナウンスは、ココが一般人を施設から避難させるために流したものだろう。ヨナは壁にかけてある案内板をひきはがし、それぞれの位置を確認した。通路から足音が聞こえ、ヨナはハンドガンを構え警戒した。壁から少し顔を出し、通路を見ると、トージョが2つのリュックを背負いながら走ってこちらに向かっていた。ヨナは武器を下し、トージョの方へと自ら向かった。
「ヨナ!無事か!?」
息を短く切りながらヨナに片方のリュックを手渡した。
「お前の武器だヨナ、予備マグもある。さぁ、B棟に向かうぞ!」
ヨナはリュックからプレートキャリアを引っ張り出し、すばやく着込んだ。予備マグをポーチに入れ、次にMASADAを取り出し、初段を装填した。トージョはヨナの準備が終わるのを確認すると、再び走り出した。
「ヨナ、敵はどんな奴だ?NVGを装備しているって言ってたが。」
走りながらトージョが顔を向けずに聞いてきた。
「わからない。でも、あの動きは見たことがある。キューバ・グアンタナモの時に交戦した部隊と似てる。もしかしたら奴らかもしれない。」
「ったくあの部隊かよ、それにこの天候・・・あの時もちょうどこんな嵐の夜だった。何かの因縁かよツイてねぇ」
トージョは悪態をつきながらも走り続けた。ヨナはキューバでの事を思い出した。あの部隊は動きが速く、かなり手強かった。もし仮に敵があの部隊だとすると、今回はココ達を守らなければいけない。ヨルムンガンドも同じだ。前回は逃げ切れたが、今回は撃滅するしかない。どちらにせよ、厳しい戦いなのは明白だった。二人は走り続け、ついにB棟へとついた。階段を駆け上がり、屋上へと向かった。扉をあけると、そこにはレーム、ルツ、ワイリがいた。既に交戦状態で、銃撃戦が始まっていた。ルツがブレイザーR93を地上に向けて撃った。すばやくボルトハンドルを引き、排莢した。スポッターのワイリが”命中せず”と言った。ルツから左方面に陣取ったレームが流れた敵に牽制射撃を行った。
「クソッ!奴ら、キューバの時の部隊だ。弾が当たらねぇ!!」
ルツがスコープをのぞきながら悪態をついた。その刹那、A棟の方で爆発音がした。軽い振動が体に伝わった。ヨナは反対側に駆け出し、屋上から爆発した方を見た。建物の壁が破壊され、少数の敵が侵入していくのを爆煙の中確認した。
「まずい、あっちが本命だ!この部隊は囮だ!」
ヨナが振り向きそう叫ぶと、トージョが駆け出した。
「あっちは俺が抑える!敵は何人だヨナ!」
「3人見えた!僕も行く!」
ヨナはトージョの後を追い、走り出した。ワイリが無線機を取り出した。
「ココさん!B棟の敵は囮です!A棟の壁が爆破され、3名侵入したようです。現在トージョとヨナが迎撃に向かいました。敵はキューバの時の部隊です。こちらの人数ではB棟の侵入も時間の問題です!」
ワイリが嵐と銃声の中、そう叫ぶとすぐさまココが応答した。
「B棟は捨てるんだ。B棟は封鎖する!大丈夫だ、隔壁は核シェルター並みの強度だ。後退しながら奴らを中に誘い込むんだ。制御室から操作し、奴らを閉じ込める。ワイリ!ワイリは隔壁内を爆破しろ!この際損害はどうなっても構わん!マオをそっちに向かわせた。マオと共にB棟の中央ホールに爆弾を仕掛けろ!後退したらA棟に向かえ!A棟はおそらく他の場所からも侵入を許しているに違いない。ヨナ達と合流し、迎撃しろ!」
「一体何人いるんだぁ?前回の倍はいるな...。」
話を聞いたレームが思わずつぶやいた。敵の人数が不明な以上、戦力を集中させる事ができない。このままでは戦況は悪くなる一方だった。現在確認できるだけで約12人、A棟にもあの少数だけでなく、別働隊が向かっているかもしれない。A棟の地下にはヨルムンガンドの制御室があり、ココもそこにいるが構造的に一番安全だし、何よりバルメ達がいる。
「俺が仕掛け終わるまで、なんとか抑えてください!」
そう叫ぶとワイリはマオと合流するため中央ホールへと向かった。B棟に侵入するには中央ホールを通るしかない。敵が内部構造をどれだけ把握しているかわからなかったが、今はココの作戦に従う他、案は無かった。
鳴り響く銃声は、嵐にかき消された........
~to be continued