施設内は再び暗闇に包まれ、突然の出来事にココは理解に数秒かかった。
「発電機がやられたか...どうやらカレンさんは間に合わなかったみたい。完全に私の誤算だ。バルメ!カレンさんが危ない。この暗闇じゃNVGを装備した奴らに分がある。C棟に行ってカレンさんの援護をするんだ。」
ココは鋭い目をバルメに向けながら言った。
バルメは無言で頷くと、グロック17をホルスターから抜き、初弾を装填してからコンバットナイフも腰から抜き、左手にナイフ、右手に拳銃を持って地上へ繋がるエレベーターへと向かった。扉が横にスライドすると、エレベーターへ乗り込んだ。バルメは最後に振り返り、ココの顔を見る。綺麗なプラチナブロンドに薄い碧眼、かつて道を見失っていた自分に世界のカギを与えてくれた人に敬愛の意を込め、バルメはココに敬礼をした。
「ココ、どうかご無事で」
言い残すと同時に扉が閉まり、エレベーターが動き出した。
「あんな事言っちゃって、縁起でも無いですね...」
バルメはナイフに反射した自分の顔を見る。漆黒の輝きを持つコンバットナイフは、不安げに俯く自分の顔を鈍く写し出していた。無機質な機械音がエレベーター内で反響するなか、モニターを見る。あと15秒もすれば暗黒の地上へと出るだろう。バルメはナイフを握りしめ、決意を固めた。エレベーターが減速し、地上1Fで止まると同時に、扉が開いた。暗闇の中、バルメは勢いよく駆け出した....
一方、B棟中央ホールではワイリとマオが合流していた。
「ワイリ!ココさんに頼まれて爆薬を大量に持ってきた。こいつで敵の部隊を吹き飛ばしてくれ。その間の護衛は任せろ、レームさん達も抑えていてくれる。」
マオがワイリに大きなバックパックを預けながら言った。
「任せてください。すぐに済ませます。」
ワイリはバックパックを受け取ると、しゃがんで中身を確認した。IEDやC4が入っているのが見えた。爆薬の量は十分だろう。だがレームにルツ、いくらあの二人がいるとは言え、敵の部隊を長時間足止めするのは不可能に近い。爆弾をバックから取り出す中、ここに来る前、無線越しに聞いたココの言葉がワイリの頭をよぎった。
(この際損害はどうなっても構わん!)
この言葉が"爆弾魔ワイリ"を刺激すると同時に、ワイリの口角があがった。
爆弾を両手に持ちながら、ワイリはホールを見渡した。ホールは広々としていて、暗闇の中でもその大きさが手に取るようにわかった。ホール内の中央には大きな柱が一本、柱の隣には上に繋がるエレベーターが左右に1機ずつあり、壁際の天井にはシャッターと思われるものがズラリと並んでいた。おそらく、ココが制御室から操作し、このシャッターを下ろして奴らを閉じ込めるのだろう。ワイリはバックパックを再び背負い、爆弾を手にホール内を駆け回っていった。
その頃、ワイリ達の上、B棟屋上では依然激しい戦闘が続いていた。二人の弾薬も残りわずかで、レームがM733のマガジンを装填した。空になった弾倉が濡れたコンクリートの上へと落ちた。ルツの周りには薬莢が散乱しており、戦闘の激しさを物語っていた。ココの部隊の中でもトップの腕を持つだけはあって、二人はナイトナインの頭を押さえ続けていた。だが、弾薬が無くなっては元も子もない。あとは時間の問題であった。ワイリが爆弾を設置する前にこちらの弾薬が無くなった場合、B棟は奴らの手に落ち、部隊は全滅するだろう。今まで多くの戦闘を経験し、こういった一か八かの瀬戸際に立たされた事は数多くあった。だが、この戦いは他とは違うことを、彼ら自身がよく理解していた。雨に濡れるスコープを覗きながら、レームは引き金を引いた.........
~to be countinued