とある魔術と科学の東西冷戦(コールドウォー) ーーI'll break your fuck'n fantasy!!ーー   作:名無 太郎

6 / 6
 今回は本SSにおける学園都市の歴史的背景についてごく大まかに説明させていただきます。



中間章 学園都市略史 その1(ルイーズ=サトゥルノ著『都市と教会 学園都市秘史』より)

 大戦末期の1944年冬。戦前から各国で蓄積されていた超心理学の研究成果やスパイやドイツ軍捕虜、暗号解読などから得た情報を基に、ロサンゼルス郊外の学芸都市にて、米国・英国・フランスの三カ国の合同実験が秘密裏に行われた。約半年後のマンハッタン計画に比肩する極秘プロジェクトである。

それが、我が国における本格的な能力開発研究の第一歩となった。翌年1月、能力開発を受けた最初の兵士二小隊がそれぞれバルジの戦いとイタリア戦線のゴシックライン突破戦に投入された。実際の戦果そのものより国家機密として厳重に秘匿されていた技術が敵国に漏洩しあまつさえ自分達以上に安定して使いこなされているという精神的な衝撃の方が大きかったという。

 現在のアカデミック・シティの起源の一つはこの頃英国内や米国内の保養地に相次いで建設された、未熟な能力開発技術や戦闘により負傷したり障害を負った兵士軍属の療養施設にある。中でもマイアミ近郊にあったものが最大規模で設備も充実していた――(中略)人間個人の思い込みの力で物理法則を捻じ曲げ、思い通りに操る超能力の出現は原子爆弾の発明とともに人間の理性と英知がついに自然を完全に征服するに至ったことの紛れもない証左であったが、同時に人類の科学力がついに人類自身をも滅ぼせる段階に到達したことをも意味していた。大戦後、来るべき最終戦争に備えて各戦勝国は競って旧枢軸国の技術や研究成果を奪い合った。超能力開発技術を戦勝国が共同で管理する暗黙の協定が反故にされるのも自然な成り行きであった。

 

 一方、国際社会でも旧来の科学文明の有り方を見直す時期に入っていた。直接の契機となったのは1945年秋の、アルバート=アインシュタイン、バートランド=ラッセル、フレデリック=キュリーなど先の大戦がもたらした惨禍に心を痛めた世界各国の科学者たちの提言である。彼らの構想とは、先端技術産業を中心とした産・学・住一体の街づくりを通じて人類社会の理想的な在り方を追求し、科学技術や学問を人類共通の幸福や世界平和実現に役立てる、といったものであり、その舞台となる新しい街はいかなる国家や政治的勢力・企業にも属さない「完全独立教育研究機関」でなければならなかったのだ。

 

 この動きは、当時ソ連や英仏同様旧ナチス・ドイツから超能力開発のノウハウを引き継いだばかりで、歴史が浅くオカルト₍₁₎への免疫が低い祖国の防衛に生かせないものかと暗中模索していたアメリカの国益とも合致するものであった。アメリカ上院はその年の暮れ、計画への資金援助を議決した。翌1946年3月、提言に賛同する科学者や実業家たちはアメリカからの多大な支援を受けて後の統括理事会の前身となる組織を結成し、超能力開発研究計画のアドバイザーを務めた科学者にして実業家の――そして英国情報機関のエージェントでもあった――エドワード=クロウリーの呼び掛けの元に「学園都市創設準備基金」を設立して世界各国の政府機関や企業から資金を募り始めた。アメリカからの出資が最も大きかったといわれており、そのためこれらの組織は当初アメリカのシンクタンクという形で設立された。

 

1947年10月7日、大統領令で始まったVeterans' Emergency Housing Program(復員軍人緊急住宅供給計画)が同年1月に資金不足で中止を余儀なくされたことで再開発がひと段落ついたフロリダ州ハイアリア市ほかいくつかの町が第三学園都市に指定され、それと同時にロサンゼルス郊外の学芸都市は第一学園都市に改称、アラスカ州にあった経済に関する実験都市で通称「ショッピングセンター」が第二学園都市に改称した。ハイアリア市には前述の療養施設があった。当初の都市開発の動きは同市周辺に限られたごく小規模なものであったものの人口が瞬く間に急増したことに伴い活発化、2年後には都市更新プログラムに基づき連邦政府の支援が大規模化したこともあってすぐに隣のマイアミ市にまで波及、さらには西の湿地帯にも広がり最終的にはマイアミ・デイド郡全域を飲み込むほどにまでなるがそれについては後述する。1947年12月1日に発起人にして最高責任者であったクロウリーが英国の片田舎で急死した₍₂₎ことにより存続が危ぶまれたが、むしろ彼の遺志を汲むかのように流れが加速した。同じような学園都市は英国、フランス、ソ連においても建設された。

 

 

(₁)超常の力を操る一連の技術をここではそう呼称する。魔術という呼称もあるが筆者には区別がつきかねるのであえてこのようにした。

(₂)一説によると「ただの人間が自由自在に奇跡を起こせるようになった」と宗教関係者から恨みを買い暗殺されたといわれるが真偽は不明

 




 60~70年代の洋画や洋書の翻訳のような言い回しや地の文を再現しようと努力しておりますがなかなか難しいですね。もうしばらくお待ちください。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。