S1204年4月21日
トールズ士官学院・グラウンド
先日サラから話があったように実技テストを行う為Ⅶ組の面々はグラウンドに集められていた
クラブ活動で馬術部やラクロス部が使う頻度が多いグラウンドだが、今は授業中の為馬術部の馬もラクロス部のラケットやボールも見る影もない
「さて、先日言ったように実技テストを始めましょうか」
「先日も言ってましたけど、実技テストって何をするんですか?」
「これの相手をしてもらうわ」
サラが指を鳴らすと銅色の人形のようなものが姿を現す
「に、人形・・・?」
なにもないところからの突然の出現にⅦ組の面々は驚く
「・・・・・・・」
リィンはその人形の出所の検討は大方付いていた
十三工房の一角
黒の工房の試作品ってところだろう
おそらく、黒の工房から直接買い取ったわけでもないだろう
"結社"関連の人形兵器や戦術殻等、結社の技術が闇マーケットを通じて売られてるのはそっち方面の人間や詳しい人物なら周知の事実だ
まさか学院が結社の人形を教材にするとは思いもしなかったが・・・
「本当、驚かせてくれるな・・・」
「リィン?」
「いや、こっちの話だ」
エリオットが首を傾げるがリィンは適当に誤魔化す
「いやぁ、とある筋から押し付けられちゃってね
厄介なんだけど、そこそこ強さを設定できたりと便利なのよ」
「・・・・・・・・」
結社関連だろうがとリィンは内心突っ込む
あの人形の形は原型こそ違うが、"彼女"の使っている獲物に面影がある
「あんたらにはこれと戦ってもらうわ
そこそこ強く設定してあるけど、勝てない相手じゃないわ
そう例えば"戦術リンク"を駆使すればね
逆に言えばたとえ勝ててもそれを使いこなせてなければ評価は最低になるでしょうね」
「直接的な戦闘能力の高さだと評価に結びつかないってわけね・・・」
「まずはそうね
エリオット、ガイウス前に出なさい!」
「うぅ、いきなり僕たちか・・・」
「フフ、まぁやるだけやろう」
「それじゃ、開始!!」
サラの開始の合図と共にエリオットとガイウスが戦術リンクを駆使し、戦術殻と戦い始める
「へぇ、やるもんだな」
リィンが二人の戦いを見て感心したように言う
「まあ、あの二人なら問題ないと踏んだのよね
二人で話す機会も多いみたいだしね」
「ふ~ん」
軽い返事をしながらリィンはガイウスとエリオットの戦闘に目を向ける
ガイウスが戦術殻の攻撃をいなし、隙を見てエリオットが魔導杖の疑似アーツを放っている
「戦闘は未経験と思ってたが・・・」
流石は名高きオーラフ・クレイグの子息と言ったところだろう
それだけではないだろう、
その成果が出ているのだろう
エリオットだけでなくガイウスも
十字槍の扱いも大したものだ、捌き、弾き、振るい、突く
達人と比べると見劣りするかもしれないが、ひとつひとつの動作が見事の一言だ
「ガイウス!」
「任された」
戦闘ももう佳境だろう
ガイウスが槍に風を纏い、それを突きと同時に解き放つ
その一撃が止めとなり、戦術殻は機能を停止す殻
「そこまで、勝者
エリオット、ガイウスチーム!!」
「戦術リンクもちゃんと使えてるようね
見事だったわ
戻っていいわよ」
サラはエリオットとガイウスの元に行きさっきの戦闘の評価を口にする
エリオットガイウスは集まった時の位置に戻る
「次はそうね
リィン以外全員前に出なさい!」
サラに呼ばれ、リィン、エリオット、ガイウス以外は前に出る
戦術殻も機能を再開している
「戦闘能力も低いわけじゃないし
勝てないわけではないと思うが・・・」
リィンはメンツを冷静に分析し、懸念材料である二人を見る
「うん・・・」
「そうだな・・・」
リィンが言いたいことを理解したエリオットとガイウスは何とも言えない表情をした
「それじゃ、開始!」
サラの合図と共に戦闘が開始するが・・・まぁ酷いものだった
ラウラとフィーの連携は文句なしのだった、ラウラが崩し、フィーが駆け抜け、エマが魔導杖やアーツを使ってのサポート、隙を見てアリサが弓で穿つ
問題はマキアスとユーシスだ
普段から犬猿の仲である二人だがそれは戦闘中にも発揮された
ユーシスもマキアスも他の人と戦術リンクを結ぶのは問題なかった
だが、二人が結んだ瞬間すぐリンク切れを起こした
そして取っ組み合いを始める二人もう色々カオスだ
「うーん、わかってはいたけど
ひどいわね・・・
問題点はわかってると思うから指摘はしないわ」
なんとか勝てたものの本当にラウラとフィーがごり押して勝ったものだ
連携もくそもあったものじゃない、マキアスとユーシスが・・・
「次はリィンなんだけど正直あんたの場合
合わせられる人がいないのよね・・・」
リィンも戦術リンクは誰とでも結べるとサラも思ってる
だが、リィンの動きに合わせられるかと言われると別問題だ
学生の中じゃ誰も合わせられないだろう
学生というかもはや達人クラスを連れてこないと話にならない
ガーゴイル戦の手を抜いてる状態であれなのだから
「仕方ないわね・・・
ラウラ、開始の合図、頼めるかしら?」
「え?」
ラウラは困惑した表情を浮かべる
「リィン、あんたは私とよ」
「・・・成程」
意図を察したリィンは前に出る
サラとリィンで実技テストを行うことになりⅦ組はどよめく
「リィンとサラ教官かぁ・・・」
「リィンは合わせられるのか?」
「ふむ・・・」
Ⅶ組の面々は散々言ってるが当の本人は気にしてない
なんならあくびしていた
「あんたね・・・・」
そんなリィンを見てサラは呆れる
「リィン、そなた準備はよいか?」
「ああ、いつでもいいぜ」
「サラ教官も」
「大丈夫よ」
そう言うとサラは導力銃とブレードを取り出す
サラの獲物だ
「リィン、あんた加減しなさいよ」
「わかってるって」
「本当でしょうね?」
サラは再度リィンに忠告する
この男、言わないと一刀で終わらせかねない
「それでは、開始!!」
ラウラの合図で両者動き出す
戦術殻は胴体のようなところでリィンを叩きつける
「ちょっ、あんた・・・!」
サラの忠告も虚しくリィンはその一撃を片手で掴む
リィンはそのまま戦術殻を投げ飛ばす
「加減しなさいっての」
「してるって
機能停止までは追い込んでないしな」
投げ飛ばされ戦術殻はなんとか体制を整えこちらに向かってきている
「・・・さてと決めるかね」
リィンは太刀を鞘から少しだし手を添える
「加減しろってのよ」
リィンとサラの元にやっとたどり着いた戦術殻は左右からブレードを突如出す
「なに・・・!?」
リィンもまったく予想してなかった攻撃法に驚愕する
「なんでだよ、腕なんてねぇだろ!!」
「あんたも知っての通り常識が通じない技術だから仕方ないわ!」
この戦術殻あるのは動体だけで腕や手と呼べるべきものは存在していない
そんな形状にも拘わらず左右から光剣とも呼ぶべき導力で構成されたブレードが出現させる
突っ込みたくもなるであろう
戦術殻は自分を軸にブレードを水平にしそのまま回転する
「生意気にも螺旋かよ!」
リィンはそれを見て武の基本の一つである回転の動き、すなわち螺旋であることを察する
「はっ
遅いんだよ!!」
リィンは戦術殻の動きを見抜き、太刀でブレードの斬撃を弾き体制を崩させる
「サラ教官」
「ええ、ここよ!」
サラは戦術殻に飛び込みブレードを一閃する
その一閃は戦術殻を機能停止に追い込むのには十分だ
「そこまで、リィン、サラ教官チームの勝ち!!」
ラウラの声がグラウンドに響いた
「さてと、色々イレギュラーだったとはいえ、今月の実技テストは無事終了ね
とりあえず、リィンに関してはこっちで考えとくわ・・・・」
毎月毎月あんな化け物に合わせてたまるかとサラは内心呟く
今回の実技テスト、本来"羅刹"レベルのリィンに合わせられたのはリィンが合わせていたからだ
こっちに相当合わせてくれたようだ
それでなければサラでもリィンに合わせるのは困難だ
本当に化け物クラスの実力者だと改めて実感する
「それじゃ、ひと段落ついたところでカリキュラムの話でもしましょうか
君たちVII組に課せられたカリキュラム・・・
ずばり、特別実習よ」
「特別実習ですか?」
「嫌な予感しかしないんだが・・・」
それだけでは内容を理解出来ないため、VII組は首を傾げる
「君たちにはA班、B班に別れてそれぞれ指定された場所に行ってもらうわ
そこで期間中、用意された課題をやってもらうことになる
まさに
「学院に入ったばかりなのに他の場所に・・・?」
サラの説明を受けたエリオットが不安そうな表情をする
「バレスタイン教官
それでオレたちは何時、何所に行けばいいんだ?」
「オーケー、話を進めましょう
さっきも言ったように君達にはA班、B班に分かれてもらうわ
さ、一部ずつ受け取りなさい」
サラはリィンたちに紙を渡す
そこに実習場所と班分けが書かれている
A班
交易町ケルディック
リィン、アリサ、ラウラ、エリオット
B班
紡績の町パルム
ガイウス、ユーシス、マキアス、フィー、エマ
「ほう、興味深い班分けだ」
「てか、嫌がらせだろこれ」
リィンはB班の班分けを見て言う
普段からユーシスとマキアスのやりとりは見ているためトラブルになるのは分かり切っている
それは担当教官であるサラが認識してないわけがない
つまり"わざと"だ
「ケルディックとパルム・・・
どっちも帝国の町なのか?」
外国から来たガイウスは帝国の地理等がわからなく問いかける
「うん、ケルディックは東にある交易が盛んな町だけど・・・」
「パルムは帝国南部にある紡績が盛んな町ですね」
「ちなみにヴァンダールの練武場もあるな」
ガイウスの問いにエリオットとエマが答え、リィンが付け足す
「日時は今週末、期間二日間になるわ
A班、B班鉄道を使っていくことになるわ
各自、それまでに英気を養っておきなさい」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
『そうかぁ、やっぱりおまえさんはケルディックになったかぁ
オレの予想通りだな』
「何を白々しい
それで例の洗い出しはどうなってる?」
『ああ、巧妙に隠されててな
"何もわかってねぇ"」
「そうか・・・」
『ま、こっちは任せてお前さんは実習に集中するんだな
多分荒れるぞ」
「だろうな
そんくらいは見通せる
何かわかったら連絡くれ」
リィンはそう言うと通信を切る
「情報局がまだ洗い出せない・・・?」
あのレクターも難儀してるとなると相当だ
今回の件、一筋縄じゃいかなさそうだ