閃の軌跡~剣神~   作:灰色の剣神

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16話 ケルディックII

交易町ケルディック

トリスタから鉄道で1時間ほどの距離にあり、エレボニア帝国東部の都市でもある

帝国東部のクロイツェン州の北端近くに位置し、アルバレア公爵の領内である

つまりユーシスの実家の管轄だ

また、近隣には帝国の食糧供給に重要な役割を持つ大穀倉地帯を抱えている

大陸横断鉄道とクロイツェン本線の分岐点で交通の要所でもある為、古くから人と物が集まる町と言われている

それのもっともたるものが"大市"と呼ばれている市場だ

 

「へぇ、ここがケルディックかぁ」

 

「ちなみに特産品はライ麦を使った地ビールよ

君たちは学生だからまだ飲んじゃダメだけどね」

 

「いや、勝ち誇られてもな・・・・」

 

「別に悔しくありませんけど・・・」

 

「さてと、それじゃ早速今回の実習でお世話になる宿を案内してあげるわ

と言ってもすぐそこなんだけどね」

 

「あ、はい」

 

リィンたちはケルディックに着くとサラの案内で今回の実習の宿泊先の宿まで向かう

サラとは鉄道内で遭遇した

実技テストの時の話ではVII組生徒だけで向かうはずだったが、サラいわく最初はフォローするとのこと

それならばメンツ的にマキアスとユーシスがいるパルム方面に向かった方が良かったんじゃないかと伝えたが

めんどくさくなるのが目に見えているため本当に手が付けられなくなるまでは行きたくないとのことだった

本当にこの人教師かよと疑いたくなる言動だった

 

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「ふむ、紫電(エクレール)の君こんなところで会えるとは・・・

それに"剣神"も一緒にいるようだ・・・

何やら興味深い雛鳥もいるみたいだが・・・

フッ

まあいい、今は行くとしよう」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

リィンたちが案内されたのは駅からすぐ近くにある

宿酒場月見亭という所だった

 

「やっほー

おばちゃん」

 

「やあ、サラちゃん

どうしたんだい?

例の話は聞いてるけど、もしかしてあんたもかい?」

 

「ま、最初くらいは付き添おうとおもおってね

で、こっちが私の教え子たち」

 

 

「おお、そうかい

こりゃまた若い子たちだね」

 

「ま、世話になるぜ」

 

「よろしくお願いします」

 

「うんうん

今回の話はサラちゃんから聞いてるよ

アタシはマゴットここの女将をやってる者だ

とりあえず部屋に案内するからついておいで」

 

マゴットに案内された部屋は学院の実習に使うにしては素晴らしく広い部屋だったが

他に問題があり一波乱あった

主にアリサが叫んでただけであったが・・・

いくら実習とはいえ男女同じ部屋は・・・と躊躇していたのだが、同じ意見だったのはエリオットだけでリィンもラウラもさして気にしてないようだった

ラウラに諭されそこは渋々同意し、アリサは念の為リィンとエリオットに釘を刺すことで一旦は収束したのだった

男女同部屋問題が一区切りした所でマゴットから一つの封筒を渡される

封筒を渡すとマゴットも仕事がある為1Fに戻る

 

「とりあえず確認するか」

 

リィンはそう言うと封筒を開け中身を確認する

 

特別実習1日目

実習内容は以下の通り・・・

 

東ケルディック街道の手配魔獣

 

壊れた街道灯の交換

 

薬の材料調達

 

実習範囲はケルディック周囲200セルジュ以内とする

なお、1日ごとにレポートをまとめて、後日担当教官に提出すること

 

「成程・・・」

 

「これが特別実習・・・?」

 

「なんかお手伝いみたいな・・・」

 

「一応、魔獣退治も入ってるようだが・・・」

 

反応は思ったのと違う

その一言だろう、リィンに関しては"兄弟筋"からの連絡である程度は知っているため驚きはない

だが、他の三名は拍子抜けとも呼ぶべき反応である

 

「まあ、言いたいことあるなら

サラ教官にでもいえば良いんじゃないのか

そのための教官でもあるだろ」

 

リィンの意見に否定する者はいなくサラに確認する為リィンたちは下に降りる

 

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「んくっ、んくっ、んくっ

ぷはぁああああああああああ!

この一杯のために生きてるわねぇ!!」

 

「やれやれ

楽しそうだな」

 

「うん、満喫してるよね・・・」

 

「しかも。まだ昼前なんですけど・・・」

 

「あら、あんたたちまだいたの

私はここで楽しんでるから行っちゃって良いわよ」

 

下に降りるとサラは地ビールを満喫していた

喉越し良く一気にビールを飲んでいた

いい呑みっぷりであるが昼前である

 

「行く前に何なですか特別実習って」

 

「思ったよりハードじゃないのは助かりましたけど・・・」

 

「んー

まあそうね

必須以外の内容は別にやらなくていいわ

それ以外は君たちの判断に任せるわ」

 

「ふむ・・?」

 

「だから良い加減なことを言わないで・・・」

 

「・・・・その判断も含めての実習だろ?」

 

リィンはあまり口出ししたくはなかったがやむを得ないので口をだす

 

「ふふ

実習期間は2日間

A班は近いから明日の夜にはトリスタに戻ってもらうわ

それまでの間自分たちがどんな風に過ごすのか

精々、話し合うことね」

 

「・・・・・まあ、動いてみるか

みんな行こうぜって言いたいがトイレ行ってくるからみんな先に出ててくれ」

 

「え?

わかったよ、リィン」

 

「うむ。承知した」

 

「早くしなさいよ

 

リィンはそう言ってVII組を月見亭から追い出す

 

「で、何が聞きたいんだ

サラさん?」

 

「・・・あんたたちは何を探ってるのって聞きたいんだけどあんたも他の"兄弟筋"に聞いても答えはしないのはわかってるわ

リィン、加減はしなさい

あんたがその気になればこの手の者はすぐに片すことなんてわけないでしょう

それと、何かあった時フォローはして欲しいのよ

この学院で一番の実力者はあんたよ」

 

サラは確認したいことは確かにあるが聞くだけ無駄と判断し、何かあった際のフォローだけ任せ、サラは地ビールに口をつけた

 

「・・・善処はするさ

できる限りはな・・・

あんたが鍛えた連中だ

そこまでやわじゃないだろ」

 

「フフ

それもそうね

けど、リィン

あんたらも感じてるだろうけど、確実に何かが動き始めてる

もしもの時は頼んだわ」

 

「ああ・・・」

 

リィンはそう言うと月見亭を後にする

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「悪い、悪い

待たせたみたいだな」

 

「リィン、やっと来た」

 

「さて・・・と

サラ教官はああ言ってたが、どう動く?」

 

サラとの話を終え、エリオットたちと合流したリィンは問いかける

この特別実習の必須以外の項目はどうするのかと

 

「ま、別にやらないって選択肢もありだと思うぜ?」

 

「いや、ここはできる限りやってみるべきであろう」

 

「へぇ・・・?」

 

「元より、本来の所属するクラスよりハードになることをわかってて皆このクラスにしたのだ

楽な道を選ぶ必要もなかろう」

 

「まあ、確かにな」

 

「う、うん

そうだね」

 

「やってやりましょう!」

 

オレはほぼ強制加入だったけどなと内心呟くが特に反対する理由もない為、ラウラに従うことにした

リィンたちは実習を開始することにし、出来るだけ全ての実習をこなすとのことで時間を無駄にできない

リィンたちは忙しなく動くことになったのだが、この日は大市の開催日であり、エリオットたちは気になるようで、実習もある為簡単に回った

 

・壊れた街道灯の交換

これは滞りなく無事に終わった

依頼主の武具・工具 オドウィンにいるサムスから替えの街道灯と交換する際のコードを教えてもらい一人が交換でその間魔獣の対応は他の三人でやると言う作戦で特にみんな怪我もなく終わり、

切れた街道灯をサムスに渡して完了となった

 

・薬の材料調達

こちらも特に問題なかった

ケルディックの教区長から話を聴き、調達して欲しい薬の材料とその調達場所を聞き、リィンたちは調達した

大市のフリント薬局でベアクロー、西街道で農家やってる方から皇帝人参を調達し、教区長に渡して無事完了となった

 

・東ケルディック街道の手配魔獣

これも苦労はしたが特に怪我等なく終わらせた

東街道の農家サイロ老人から魔獣の特徴と場所話を聞き、リィンたちは討伐に向かった

最初リィンたちが討伐すると聞いたサイロ老人は心配そうな表情をしたが、士官学院の名前を出し、渋々ではあるが任せてくれた

目的の魔獣は東街道の外れにある高台にいた

スケイリーダイナ

恐竜型で中型サイズの魔獣だ

鋭利な爪に強靭な肉体、そのどれをとっても強力で一撃でも貰えば致命傷は避けられないだろう

だが、リィンというかラウラたちは戦術リンクを駆使し、最大限に連携し追い詰めていった

リィンは自身にきた攻撃を捌き、本当にやばそうだったらその攻撃を捌いたりし、自ら攻撃に転じることはなかった

あくまでリィンはサポートに徹し、撃破はラウラたちに任せた

腐っても士官学院生だ、リィンの力なくともラウラたちは無事撃破し、サイロ老人に報告し、大変感謝された

 

無事全ての実習項目を終わらせ、リィンたちはケルディックに戻ってきた

西街道の入り履付近で青色の軍服に身を包んだ男性たちが話していた

一人はヘルメット風ではなく帽子風なのをかぶってるからして恐らく小隊長クラスだろう

 

「おや。お前たちは・・・?

ふむ、この辺りでは見かけない顔だが・・・

いや、お前の顔どこかで・・・」

 

青軍服の帽子を被った男性はリィンの顔を見る

 

「気のせいだろ

他人の空似だろ

オレらはトールズ士官学院の生徒さ

ここには実習に来ててね」

 

リィンはとぼける

 

「トールズ・・・

あの名門の・・・」

 

「成程、確かにその意匠は見覚えがある

だがお前のその顔どこかで・・・」

 

「・・・・・・・」

 

リィンはバレないように意識でも刈り取るかと内心思い、無手でやろうとすると

 

「・・・どうやら、気のせいみたいだな

申し遅れたな、我々はクロイツェン州領邦軍

このケルディックの治安維持を任されている」

 

どうやらうまく勘違いしてくれたみたいだ

リィンはそっと息を吐く

 

「(領邦軍、それって確か・・・)」

 

「(大貴族によって運営され、地方の治安維持を行う軍組織・・・)」

 

「(国家正規軍とは、別系統のいわゆる準正規軍だな)」

 

「ふむ、実習とやらは聞いてないが・・・

諸君の学院の卒業生の中には我が領邦軍に在籍してる者もいる

名門の何恥じぬよう

精一杯、やり遂げることだな」

 

「ハッ

まあ、やるだけやるさ」

 

「うむ

結構、面倒なことは起こすなよ?」

 

「気をつけます」

 

「よし、詰所に帰投する!」

 

領邦軍の小隊長らしき人は部下二名を伴い去っていく

詰所に戻るのだろう

リィンたちは領邦軍が去っていったのを確認するとリィンたちも月見亭に戻るため歩き出す

実習内容は終わったがそれで終わりではない、本日の実習をレポートとして残しサラに渡さなければならないため、与えられた実習内容全て終わりました、はい、終了ではない

記録を残すまでがセットである

月見亭に戻る道中大市に開催会場の近くを通ると何やら騒がしくなっており、賑やかというよりはトラブルがあって叫んでる風に聞こえた

流石に無視するわけにもいかずリィンたちが様子を見にいくと若い商人と年配の商人が言い合いの喧嘩をしている状況だった

喧嘩の途中から来たため全てを把握してるわけじゃないが、どうやら商売場所を巡っての喧嘩らしい

口喧嘩では治らず遂に両者とも取っ組み合いの喧嘩に発展してしまう

 

「いかん」

 

「・・・・・・」

 

このままでは取っ組み合いでは済まさず殴り合いにまでなってしまう

ラウラが止めようと動き出そうとする

 

「「イタタタタッ!」」

 

意外にも一番傍観徹しそうなリィンが両者の手首を掴んでいた

いや、もはや握り潰そうとしてる

 

「おい、いい加減にしろよ

テメェら、周り見ろよ

子供に当たりそうになってんだろうが」

 

取っ組みあいに殴り合いになろそうになっていた二人は周りが見えておらず危うく子供にぶつかりそうになっていた

まだ10歳にも満たない幼い子供だ

 

「お前らのくだらない喧嘩でこの子に怪我させるつもりか?」

 

リィンは二人を睨みつける

普段から教会の子供達の相手してるのもあり子供の件になると敏感なようだ

 

「あはは・・・

まさか。リィンが動くとはね・・・」

 

「うむ

一番、動かなさそうであるからな・・・」

 

 

「そうね・・・」

 

VII組の面々もまさかリィンがすぐに動くとは思っておらず、驚いていた

学院でのリィンは不真面目でめんどくさがりと言った印象だ

だから真っ先にこう言った事象に対して動き出すとは思いもしなかったのだろう

 

「おう、少年

大丈夫か?」

 

リィンは両者の腕を締め上げたまま、問いかける

 

「う、うん」

 

「だったらお母さんのところに戻るといい

何もなくて何よりだ」

 

「あ、ありがと

お兄ちゃん・・・」

 

「ああ・・・」

 

リィンに助けられた少年は母親らしき人のところに走って行く

その母親もリィンに頭を下げる

 

「さて・・・と

お前ら、少しは頭を・・・・」

 

「やれやれ

何をやっておるんじゃ

しかも幼い子供に怪我までさせるところじゃったみたいじゃの」

 

 

「あんたは・・・」

 

「元締め・・・」

 

「成程な・・・」

 

締め上げてるうちの一人がそう言葉にするのを聞いてこっちに歩いてくる老人の正体を察する

その後、元締めが出てきたことによって場は納まった

改めて元締めが許可証を確認したが、同じ時間、同じ場所で記載されたあった

そこで大市の開催期間中交代交代で使うことにし、その場は収めるのだった

その後、元締めに招かれ元締めの家にリィンたちはお邪魔していた

 

「それじゃ、あの実習の依頼はあんたが?」

 

「うむ、士官学院のヴァンダイク学院長とは旧知の仲での

今回、お前さんたちの実習向けに適当な頼み事を見繕って欲しいと頼まれたんじゃ」

 

「そうだったんですか」

 

「ご配慮、感謝する」

 

「いやいや、とんでもない」

 

「面倒な依頼も一通り片付けてくれたみたいだし

先ほどの件にしても殴り合いになる前に止めてくれて助かったわい

何より子供に何事もなくてよかった」

 

「ああ、そうだな・・・」

 

リィンは静かに頷く

あの商人二人は正直どうでもいいが、あの子供に何もなかったのはリィンにとっても何よりのことだ

 

「ヴァンダイク学院長の言ってた通りか」

 

「あん?」

 

元締めがリィンを見ながら言う

リィンは何のことかわからず首を傾げる

 

「素行はお世辞にもいいとは言えぬが子供には優しい生徒がおるとな」

 

「ゴホッ、ゴホッ!」

 

元締めの突然の暴露にリィンは咳き込む

 

「ふむ、そうなのか?」

 

「へぇ、貴方にそんなところがねぇ・・・」

 

「あれ、リィンのことだったんだ

なんか噂になってたけど・・・」

 

「学院長、なんでそのことを・・・・!」

 

それを聞いた、ラウラ、エリオット、アリサは生暖かい目線をリィンに送る

当のリィンは気恥ずかしいのかそっぽを向いていたが・・・

 

「お主にも色々あるんじゃろうが

子供に優しいのは恥ずかしいことではないぞ」

 

「・・・・そうだな」

 

リィンは否定するのも違うと思い素直に受け止まる

 

「ふむ

リィンのことはひとまず置いといて

ご老人、市の許可証というのは本来領主の名で発行されるもの

今回の手違いは些か腑に落ちぬのだが・・・」

 

「そうじゃの

本来であれば、公爵家がその管理をするのだが・・・」

 

「公爵家って・・・」

 

「アルバレア公爵だな」

 

「うむ

四大名門の一角じゃな

しかし、最近面倒なことになってな・・・」

 

「・・・・・・」

 

「実は先日大市での売上税が大幅に上がってしまたんじゃ

売り上げから相当な割合を州に納めなくてはならなくての、商人たちも必死になっておるんじゃ」

 

「(聞いてた通りか・・・)」

 

「売上税・・・

軽々しくあげて良いものでは無いが・・・」

 

「うーん

帝都ではそんな話聞かないですけど・・・」

 

「まあ、あそこは皇帝陛下もいるし、軽々とあげられないだろうな

まあ、ラウラの言うように簡単に上げられるものでもないけどな・・・」

 

しかも帝都にはあの鉄血もいる

そんなことすれば動くのは必至だろう

 

「その、反対とかは出なかったんですか?」

 

「当然、バリアハートにある

公爵家には何度も陳情に出かけた

じゃが、一向に取り合って貰えず門前払いじゃ

その状況が2ヶ月ほど続いておる」

 

「まあ、普通に考えて許可証の手違いも意図的だろうな」

 

「まあ、流石に決めつけるのは良くないが・・・

ただ、先ほどの騒ぎにしても以前なら詰所の兵士が駆けつけてきた・・・」

 

「帝国を守る正規軍と違い、領邦軍は治安維持が目的の組織

本来なら仲裁に来るはずだ」

 

「だろうな」

 

「うむ

どうやら、増税への陳情を取り消さぬ限り、不干渉を貫くつもりらしい

そのようなことを詰所の隊長から仄めかされたばかりでの」

 

「あいつか・・・」

 

リィンは先ほどの部下二人を率いてた領邦軍の男性を思い出す

 

「いや、余計なことを話してしまったようじゃな

これはワシら商人の問題じゃ

客人が気にすることではない

お前さんたちは実習に集中するべきじゃろう

明日の朝も今日と同じく幾つか依頼を用意してるでの」

 

「成程、そういう事情か・・・」

 

「1日ごとに実習課題の依頼が用意されてるんですね?」

 

「うむ

それなりに面倒なことをやってもらおうと思っておる

お願いしてもいいかの?」

 

「それが今回の実習だしな」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

元締めの家を後にしたリィンたちはケルディックの広場にて先程の件で話し合っていた

 

「何だか、理不尽だよね」

 

「まあ、そうだな」

 

「領地における税を管理するのは貴族の義務であり権利・・・

帝国の制度がそうなってる以上仕方のないことだけど・・・」

 

「他家のやり方に口を挟むわけではないが・・・

此度の増税と露骨な嫌がらせは流石に問題であろう

アルバレア家公爵当主・・・

色々、噂を聞く人物ではあるが・・・」

 

「えーっと。ユーシスのお父さんだよね

ユーシスに相談するわけには行かないのかな」

 

「子息とはいえ無理だな

当主の決定は絶対だ」

 

「やっぱり無理かぁ・・・・」

 

エリオットはガックリと肩をおろす

 

「うんうん

悩んでるみたいね、青少年たちよ」

 

「サラ教官・・・

なんだあっちに行くのか?」

 

「ええ、グダグダになってるみたいだからね

フォローに行くわ」

 

リィンの問いにサラは肯定する

エマから連絡があり、こっちじゃ手がつけられないと

 

「まあ、そう言うことだから

ここはあんたらに任せるわ

せいぜい、悩んで何をすべきか考えてみなさい

女神の加護を・・・

レポート期待してるわ」

 

サラはそう言うと駅に入って行った

サラが駅に入るのを見送った後リィンたちは夕飯を取り、本日分のレポート書いた

夕食はどれも新鮮な食材を使ってて美味しかった

そして明日に備え、今日はもう寝ようと話になったところ・・・

 

「リィン」

 

「おまえから声をかけるかんて珍しいな」

 

「正直、迷いましたが、聞いておこう

そなた、なぜ本気を出さない

今回のことだけではない、最初のオリエテーリングのガーゴイル戦、そして実技テスト」

 

「・・・・・」

 

「それにそなたの剣に太刀筋

八葉一刀流に間違い無いな?」

 

「帝国じゃそんな知られてない流派だし、何よりオレの場合他の流派も盛り込んでんだけどな」

 

「確かにそなたの場合、八葉の他に別の流派の太刀筋も見えた

だが、ベースを八葉にし、自分なりに昇華してる・・・

そうではないか?」

 

「へぇ・・・

よく、みてるな」

 

ラウラの指摘にリィンは感心する

ラウラの指摘通り、リィンは八葉をベースに"彼女"の剣を組み合わせ自分なりに昇華していた

達人クラスならともかくまだ皆伝に至ってない者に見破られるとは思わなかった

 

「我らアルゼイド流は他の流派の研究を欠かしておらぬ

そして、父に言われたのだ、"剣の道を志すならいずれ八葉の者と出会うであろう"とな」

 

「あの光の剣匠がね・・・

老師も興したかいもあるってもんだろ」

 

「再度問う

何故、本気を出さない?

此度の実習・・・もっと言うなら手配魔獣の時、明らかに手を抜いてた

攻撃に徹せず、捌くことしかしなかった」

 

「やれやれ

甘く見ていたかな・・・」

 

ラウラの指摘にリィンは呟く

それとなくバレないようにしていたつもりではあったが、いくら道半ばの未熟者とはいえ武芸者にはバレバレだったようだ

 

「リィン・・・

お主は・・・」

 

「ラウラ

確かにオレは本気を出しちゃいない

だが、それはオレの本気についてこれる奴がいないからさ

だから実技テストの時はVII組の中ではなくサラ教官が相方を勤めた」

 

リィンはこの際はっきり言うことにした

それとなく誤魔化したところでこの武芸者は納得しないだろうと判断したからだ

まぁ、はっきり伝えても納得はしないだろうが・・・

 

「それは・・・」

 

ラウラは今月の実技テストを思い出す

リィンの時は明らかにサラは悩んでいたし、その果てにサラは自ら相方を務めることにした

それはリィンとVII組の間には隔絶とした実力の差かあると言うことであろう

 

「なるほど・・・

そなたの事情は理解した

理解はするが納得はできぬ!」

 

「だろうな・・・

こいつを理解しろなんて言わない

だが、オレの本気を出させたいならせめて皆伝に至ってないと話にならねぇ」

 

「其方は我が父と同格とでも言うつもりか」

 

「光の剣匠・・・

さてな、やりあったことないからわからねぇが・・・

なんならサラ・・・いや、サラ教官でもオレの本気にはついてからねぇだろうな」

 

光の剣匠・ヴィクター・S・アルゼイド

帝国において武の最高峰とでも言うべき人物だ

ラウラの父であり、彼の名前は帝国中に知られている

それと同格かと問われると会ったこともやり合ったこともないためいまいち解答がしづらい

だが少なくともサラでは足りないしもちろんラウラなどもっての他だ

 

「違うとは言わぬのだな」

 

「まあ、そうだな

だったら明日に響く可能性もあるから勧めはしないが

お前のその手で確かめてみるか?」

 

「なるほど

わかりやすい・・・」

 

リィンの提案にラウラは即座に乗った

内心はやめておいたほうがいいと思うが言っても刺激するだけだろう

 

「エリオット、アリサ

悪いが、先に休んでてくれ

オレらはちょっと野暮用があるんでな

街道の外れでいいだろ?」

 

「ああ、問題ない」

 

リィンはアリサとエリオットに断りを入れ、ラウラを伴い街道の外れのある所に連れて行く

そこは魔獣もいなく、戦うには絶好のシチュエーションだ

武人のやることは単純だ、気に入らないなら剣を取り証明する

それだけだ

 

「八葉一刀流 中伝

リィン」

 

「アルゼイド流 中伝

ラウラ・S・アルゼイド」

 

「「いざ、尋常に勝負!」」

 

「はあああああああ!」

 

ラウラは雄叫びを上げ、上空に飛び上がりその落下の勢いのまま大剣を振り下ろす

 

リィンは半歩横にずれラウラの斬撃を交わす

ラウラは大剣を切り返し横に薙ぐ

 

「・・・・・・・・」

 

リィンはしゃがみ込み大剣の横薙ぎをかわしきる

 

「くっ・・・・」

 

「その年齢にしては大したもんじゃねぇか

いすれは理に至れるだろう」

 

「そなたがいうと嫌味にしか聞こえぬぞ」

 

「そうかもしれないが、本心だぜ

じゃあ、いくぜ?」

 

「なっ・・・!?」

 

リィンは宿地でラウラの前まで移動しそのまま太刀を横水平に振るう

 

「これはっ・・・!」

 

ラウラは大剣を前に掲げ太刀を防ぐが衝撃までは殺しきれない

ラウラは太刀の斬撃の衝撃で後方まで吹っ飛ばされる

 

「緋空斬・連」

 

リィンは焔を己が太刀に纏わせそれをラウラに向けて連続で飛ばす

 

「ああああああ!」

 

吹き飛ばされ大勢を整えるひまがなかったラウラには防ぐ術がない

焔の斬撃は全弾ラウラに命中する

 

「こ、これがリィンの実力の一端・・・」

 

ラウラは大剣を杖代わりにして立ち上がり、リィンの強さに戦慄する

リィンは水平に太刀を持ち再度焔を太刀に纏わせる

 

「ま、まずい・・・」

 

ラウラは何とか大剣を構え、リィンの攻撃に備える

 

「隙だらけだ」

 

声がしたのはラウラの背後だった

ラウラは一瞬たりともリィンから意識を外してはいなかった

それにも関わらずラウラはリィンに背後を取られた

 

「オレに届くにはまだまだだな」

 

リィンはラウラに焔を纏った太刀を首に突き付ける

 

「ああ、私の負けだ・・・」

 

ラウラは静かに自らの負けを認めた

ラウラ自身感じていた先の立ち会いリィンは全く本気など出してはいないと

もしリィンが本気だったのなら自分は一瞬でやられていたであろう・・・と

その事実が彼女の誇りもプライドもズタズタにしたのだった・・・

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