閃の軌跡~剣神~   作:灰色の剣神

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3話 邂逅

リィンの旅路:剣聖への道と黒神一刀流との邂逅

師である八葉一刀流のユン・カーファイがリィンの元を去ってから2年、リィンは15歳になっていた。師の元を離れたリィンは、各地を旅して修行を重ねた。リベール王国では「剣聖」と称される者に、クロスベル自治州では「風の剣聖」と呼ばれる者に剣を見てもらう機会に恵まれた。兄弟子たちとの出会いは、リィンにとって何よりの経験となり、その剣の腕を磨き上げる糧となった。

しかし、共和国での出会いは、リィンの意志とは異なる形で訪れた。元々は観光目的で訪れた共和国で、リィンは奇妙な気配を感じ取る。その気配を追ううちに、彼は龍來から少し離れた崑崙の地へと足を踏み入れていた。

崑崙の地は、一見すると何の変哲もない渓谷だった。しかし、そこには人の気配でも魔獣の気配でもない、明確な“何か”が濃密に漂っていた。

「さて、いつまで隠れてるつもりだ。かくれんぼがしたいわけじゃないだろ?」

リィンは太刀を鞘から少し抜き、周囲に潜むであろう“誰か”に問いかけた。

「ふむ、気配は消していたつもりだったが……」

隠れていた人物が姿を現す。それは、奇妙な面で顔を隠し、忍びのような装束を身につけた男だった。声からして成人しているだろう。

「警告しよう。今すぐここから立ち去れば怪我無く済む。だが、拒めば命の保証はせん」

男の言葉に、リィンは不敵に笑う。

「悪いな。そこまで教養良く育ったわけじゃないんでね……素直には聞けないな」

「残念だ。ならその命もらい受ける」

男が投げたのは、通常の暗器とは異なる巨大な手裏剣だった。リィンはそれを軽く太刀で弾くが、手裏剣はどこかへ飛んでいくことなく旋回し、再びリィンを襲う。

「こいつは……」

リィンは今度は弾かず、太刀で手裏剣を受け止めた。受け止められた手裏剣は、まるで生きているかのように男の手に引き戻される。

「なるほどな。鋼線か……」

リィンは先の攻防で、手裏剣の動きの正体を見抜いた。忍び装束の男は何も語らないが、リィンの推測が当たっていることは明らかだった。

「まぁ、やってみればわかるか……」

リィンは真っ直ぐに男へと走り出す。男は手裏剣を投げるが、リィンは身体を反らしてかわす。しかし、男が手元を動かすと、手裏剣はものすごい速度でリィンに襲い掛かった。リィンが男の元にたどり着くより、手裏剣の方が速い。

「やはり、鋼線かなにかで操ってるか……」

リィンは手裏剣の位置を横目で確認しながら走り続ける。手裏剣が当たる寸前、リィンの姿が消えた。

「なっ……!?」

男の驚愕の声が漏れる。リィンは既に男の目の前にいた。急いで手裏剣を引き戻して防ごうとするが、間に合わない。リィンの太刀は十字を描き、男を切り裂いた。

「がっ……」

男は鮮血を散らし、衝撃で後退する。

「……さて、別に詳しい話を聞きたくて戦ったわけじゃないし、まぁ、いいんだが、一つ質問に答えてもらおうか……武器も違うし、手裏剣術があるなんて聞いたことなかったが、その歩法に流れ、“八葉”だな?」

リィンの問いに、男は呻きながら答える。

「“八葉”の流れを汲んでいるのは確かだ。だが、我らが修めているのは“ 黑神一流」

「"黑神"……」

「それに、“我ら”は負けてはおらん」

男がそう言うと、茂みの中から同じような格好の者たちが一斉に姿を現し、リィンに向かって大型手裏剣を投げつけた。

「悪いな、もう“見切った”」

「斬!」

リィンは太刀を片手に辺り一帯を一閃し、全ての手裏剣を弾き落とす。

「馬鹿な……」

それを見た忍びの一人が呟いた。リィンが次の行動に移ろうとしたその時、彼は咄嗟に気配を察知し、後方に飛んだ。彼のいた場所を、“何か”が駆け抜ける。

「へぇ、完全な不意打ちのはずだったんだけど……これもかわすと来たか……流石は“八葉の後継”と言ったところかな、“弟弟子くん”」

そこに現れたのは、白銀の長髪に黒の戦闘装束を身につけ、大太刀を構えた女剣士だった。

「……白銀の剣士。それにその大太刀に八葉の名を語ると言うことは、全くの無関係ということではないみたいだな……」

「まぁ、そうだね。八葉とは少なからず縁があるとだけ答えておくよ。それにしても君、想像以上だね。クロガネに手傷を加え、その他の忍の一斉攻撃も弾き飛ばし、私の気配を察知し、かわす……か。これは先が楽しみだ」

リィンが先ほど斬った忍びは、クロガネという名らしい。“姫”と呼ばれた女剣士は、リィンの実力に感嘆する。

「さて……と、“弟弟子くん”。今は君と事を構える気はない。先程、クロガネの忠告通り、今回は引いてくれないかな?」

「この漂っている、妙な気配を見逃せと?」

「フフ、まぁそうだね。この濃密な気配……見逃せと言うのは酷だというのはこちらも承知さ……だけど……引いてくれないと“こちらも”君を殺すしかなくなる”」

女剣士の言葉には、リィンを“殺す”という明確な殺気が込められていた。

「……どうやら、尋常ではない事情ある模様。今回は引きましょう……それに、この森、“なにか”があるのは間違いないようだが、その謎を解き明かすのはオレの役目じゃなさそうだ」

リィンは、これ以上深入りすべきではないと判断した。

「フフ、助かるよ。しばらくは共和国にいるんだろう?縁があれば、また会おう」

「えぇ。機会があればまた」

リィンは太刀を鞘に納め、踵を返し崑崙の地から立ち去った。

「どうやら、姫の殺気が効いたようですね」

「いや、私の殺気に怯えたとかじゃない。“弟弟子”の実力なら、多分どうにかできたことだろう……けど、それをしなかったのは、本当に私たちの事情を察したんだろうね。やれやれ、本当末恐ろしいのを“最後の弟子”にしたね、老師は……」

“姫”と呼ばれた女剣士は、リィンの様子を思い出しながら呟いた。

「けど、喰えない“兄弟子達”と違って、可愛げがあるじゃないか。明日にでも、顔を出しに行こうかな」

「姫……」

「さて、皆、クロガネの怪我の手当てをしてやってくれ。手当てが済んだら、戻ろうか」

“姫”の言葉に、皆が動き出す。そして、ここからがリィンと“姫”による地獄の攻防の始まりだった……。

龍來での再会、そして“追い掛け回される”日々

翌日、崑崙の地を出たリィンが共和国の観光名所である龍來で食事を取っていると、不意に声がかかった。

「やあ、弟弟子くん。龍來は観光名所としても絶景だし、食べ物もうまいだろう」

「ぶっ……!!」

昨夜、明確な敵対関係ではなかったものの、刃を交えたばかりの“彼女”の出現に、リィンは思わずむせる。

「あ、貴女は昨日の……“姫”と呼ばれていた……」

「あぁ、そう言えば、名前、名乗らなかったね。シズナ・レム・ミスルギだ。よろしく頼むよ、“リィン”」

“シズナ”と名乗った女剣士は、リィンの前に手を差し出した。

「なんですか、これ」

「お近づきの証の握手さ」

「いや、お近づきって……昨日、貴女の部下と殺しあったばかりなんですけど……」

「まあ、そうなんけど。昨日の敵は何とやらだ」

「はぁ……名前を知ってることといい、色々聞きたいことはありますけど……まあ、よろしくお願いいたします。“シズナさん”」

これ以降、リィンはシズナに追い掛け回されることになる。少なくともリィンが共和国に滞在している間は……。そして、この邂逅がこの先のリィンの道に影響を及ぼすことになるのだが、それはまだまだ先の話である。

 




かなり早めの、白銀との邂逅でした。
補足しておきますと、シズナはこの時系列ではまだ”剣聖”に至っていません
現状では中伝です
リィンも原作と違い、沖田さんに育てられたことによって剣術の下地はあるので、実力は原作よりかなり高めです
まぁ、中伝です
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