閃の軌跡~剣神~   作:灰色の剣神

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4話 邂逅

八葉の師、ユン・カーファイがリィンの元を去って、2年

リィンは15歳になった。

ユンがリィンの元を去ってから、リィンは各地を旅をした。

リベールでは、かの剣聖に、クロスベルでは風の剣聖に・・・そして、不本意なことに共和国では、姉弟子を名乗る女剣士に追い掛け回されたこともあった

リベールもクロスベルもリィンに意志であったし、兄弟子に剣を見てもらえたことは何よりの経験となった。

だが、共和国の女剣士に関しては自身の意思ではなかったと言っておこう。

共和国には元々観光的なつもりで訪れたつもりだった。

そして、妙な気配を感じたため、共和国にあるとある森林を訪れた時のことだった・・・

 

 

 

 

 

―――――――――――――――――――――――――――――――

 

1年前・共和国

 

「これは・・・」

 

森林自体は至ってどこにでもあるような所だ

だが、違うのはその濃密な気配、人の気配でもない、魔獣どもの気配でもない

明確な”なにか”を感じるが、それがなにかまではわからない

 

「さて、いつまで隠れてるつもりだ

かくれんぼがしたいわけじゃないだろ」

 

リィンは、太刀を鞘から少し出しながら、こちらを見ているであろう”誰か”に向けて言う

 

「ふむ、気配は消していたつもりだったが・・・」

 

「生憎、敏感肌なもんでね」

 

そこに現れたのは、奇妙なお面で顔を隠し、忍びのような装束を身にまっとた者だった

声からして男性だろう

おそらくだが、成人もしていることだろう

 

「警告しよう、今すぐここから立ち去れば怪我無く済もう

だが、拒めば命の保証はせん」

 

「悪いな、そこまで教養良く育ったわけじゃないんでね・・・

素直には、聞けないな」

 

「残念だ

なら、その命もらい受ける」

 

そう言うと、忍び装束は投擲する

それは、巨大な手裏剣だった

暗器とかで使われる小型の手裏剣ではない、大型の手裏剣だ

リィンは、それを軽く弾く。

弾かれた手裏剣はどこか飛んでいくのではなく、旋回して再びリィンに襲い掛かる。

 

「こいつは・・・」

 

リィンは、今度は弾かず、そのまま太刀で手裏剣を受け止める

受け止められた手裏剣は忍び装束の手に引き戻された

 

「なるほどな

鋼線か・・・」

 

先の攻防で、リィンはあの手裏剣の動きの正体に当たりを付ける

 

「・・・・・・・」

 

忍び装束は無言だ

 

「図星・・・ってことでいいんかねぇ・・・」

 

顔は覆われているし、言葉も発しない忍び装束なのでリィンの先の考えがあってるかわからない

まぁ、生死を分けた殺し合いで、相手の戦術等を理解して挑む方が珍しい

分からないことのほうが多いのだから・・・

 

「まぁ、やってみればわかるか・・・」

 

そう言うとリィンは、忍び装束に向かって真っすぐ走り出す。

忍び装束はリィンに向かって手裏剣を投げる

だが、リィンは身体を反らし、それをかわす

忍び装束の攻撃はまだ終わってない、忍び装束が手元を動かすと先程リィンがかわした手裏剣が引き戻されるようにものすごい速度でリィンに襲い掛かる

リィンが忍び装束の元にたどり着くより、手裏剣の方が早い。

 

―――やはり、鋼線かなにかで操ってるか・・・

 

リィンは先の手裏剣の動きの正体が間違ってなかったと確信する。

リィンは横目で手裏剣の位置を確認しながら忍び装束の元へ走っていく。

手裏剣はどんどんリィンとの距離をつめ、回転しながら迫っていく

手裏剣がリィンに当たる瞬間、リィンの姿が消える

 

「なっ・・・!?」

 

顔が覆われているせいでどんな顔をしているかわからないが、声からして驚愕していることだろう

 

「―――驚くのは結構だが・・・

がら空きだ」

 

忍び装束が気づいた時にはリィンはもう忍び装束の目の前にいた

急いで、手裏剣を引き戻し、防ごうとするが、もう遅い

リィンの太刀は十字を描き、忍び装束を斬り裂く

 

「がっ・・・」

 

忍び装束は、鮮血を散らしながら、斬られた衝撃で後退する

 

「・・・さて、別に詳しい話を聞きたくて戦ったわけじゃないし

まぁ、いいんだが、けどオレの質問には答えてもらおうか・・・

武器も違うし、手裏剣術があるなんて聞いたことなかったが、その歩法に流れ、”八葉”だな?

勝ったし、これくらいは答えてもらおうか?」

 

 

「・・・八葉の流れを汲んでいるのは確かだ

だが、我らが修めているのは黒神一刀流」

 

「黒神・・・」

 

「それに、”我ら”は負けてはおらん」

 

忍び装束が言うと、茂みの中から様子を見てたのであろう

同じような格好の連中が一斉に姿を見せ、リィンに向かって大型手裏剣を投げる

おそらくは先の忍び装束と同じく、手裏剣に鋼線をくくり付けて、操ることは可能だろう

 

「悪いな、もう”見切った”」

 

「斬」

 

リィンは太刀を片手に辺り一帯を一閃し、すべての手裏剣を弾き落とす。

 

「馬鹿な・・・」

 

それを見た、忍び装束の一人は呟いた

 

「さて、色々喋ってもら・・・・!?」

 

リィンは咄嗟に気配を察知し、後方に飛ぶ

そこに”なにかが”駆け抜けた

 

「へぇ、完全な不意打ちのはずだったんだけど・・・

これもかわすと来たか・・・

流石は”八葉の後継”と言ったところかな

”弟弟子くん”」

 

それは、白銀だった

白銀の長髪に、黒の戦闘装束、そして、大太刀を構えた、女剣士がそこにはいた。

 

「・・・白銀の剣士

それにその大太刀に八葉の名を語ると言うことは

全くの無関係ということではないみたいだな・・・」

 

「まぁ、そうだね

八葉とは少なからず縁があるとだけ答えてておくよ

それにしても、君、想像以上だね

クロガネに手傷を加え、その他の忍の一斉攻撃も弾き飛ばし、私の気配を察知し、かわす・・・か

これは、先が楽しみだ」

 

「・・・・・・」

 

リィンは、女剣士を見据える

明らかに、先の忍び連中より”格上”

そんなに消耗はしていないが、どうするかと思案していると・・・

 

「”姫”、何故ここに・・・」

 

「やぁ、クロガネ、派手にやられたね。

なに、感じたことのない気配があったものでね、見に来たんだ。

まさかそれが”弟弟子”だとはね。

本当、驚いたよ」

 

リィンが先程、斬った忍びはクロガネと言うらしい

 

「さて・・・と

”弟弟子くん”今は君と事を構える気はない。

先程、クロガネの忠告通り、今回は引いてくれないかな?」

 

「この漂っている、妙な気配を見逃せと?」

 

「フフ、まぁそうだね

この濃密な気配・・・見逃せと言うのは酷だというのはこちらも承知さ・・・

だけど・・・引いてくれないと”こちらも”君を殺すしかなくなる”」

 

「・・・・どうやら、尋常ではない事情ある模様

今回は引きましょう・・・

それに、この森、”なにか”があるのは間違いないようだが、その謎を解き明かすのはオレの役目じゃなさそうだ」

 

「フフ、助かるよ

しばらくは共和国にいるんだろう?

縁があれば、また会おう」

 

「えぇ

機会があればまた」

 

リィンは、太刀を鞘に納め、踵を返し、森から立ち去るのだった

 

「どうやら、姫の殺気が効いたようですね」

 

「いや、私の殺気に怯えたとかじゃない

”弟弟子”の実力なら、多分どうにかできたことだろう・・・

けど、それをしなかったのは本当に私たちの想いを汲み取ってくれたってことだろう・・・

やれやれ、本当末恐ろしいのを”最後の弟子”にしたね、老師は・・・」

 

"姫”と呼ばれた女剣士は先程のリィンの様子を思い出しながら言う

 

「けど、喰えない”兄弟子達”と違って、可愛げがあるじゃないか

明日にでも、顔を出しに行こうかな」

 

「姫・・・」

 

「さて、皆、クロガネの怪我の手当てをしてやってくれ

手当てが済んだら、戻ろうか」

 

”姫”の言葉に皆動き出す

そして、ここからはリィンと”姫”による地獄の攻防の始まりだった・・・

次の日から”姫”は忍び達に言った通り、本当にリィンの元に顔を出しに行ったのだった・・・

 

 

 

共和国・龍來

 

 

森を出たリィンは”龍來”で食事を取っていたところ・・・

 

「やあ、弟弟子くん

龍來は観光名所としても絶景だし、食べ物もうまいだろう」

 

「ぶっ・・・!!」

 

昨夜、明確な敵対関係と言うわけではなかったが、刃を交えたのは確かだ

その昨日の今日で普通に話しかけてきた”彼女”に驚き、リィンはむせる

 

「あ、貴女は昨日の・・・

”姫”と呼ばれていた・・・」

 

「あぁ、そう言えば、名前、名乗らなかったね

シズナ・レム・ミスルギだ

よろしく頼むよ、”リィン”」

 

”シズナ”と名乗った女剣士は、リィンの前に手を差し出す

 

「なんですか、これ」

 

「お近づきの証の握手さ」

 

「いや、お近づきって・・・

昨日、貴女の部下と殺しあったばかりなんですけど・・・」

 

「まあ、そうなんけど

昨日の敵は何とやらだ」

 

「はぁ・・・

名前を知ってることといい、色々聞きたいことはありますけど・・・

まあ、よろしくお願いいたします。

”シズナさん”」

 

これ以降、リィンは彼女に追い掛け回されることになる

少なくともリィンが共和国に滞在している間は・・・

そして、この邂逅がこの先のリィンの道に影響を及ぼすことになるのだが、それはまだまだ先の話だ

 




かなり早めの、白銀との邂逅でした。
補足しておきますと、シズナはこの時系列ではまだ”剣聖”に至っていません
現状では中伝です
リィンも原作と違い、沖田さんに育てられたことによって剣術の下地はあるので、実力は原作よりかなり高めです
まぁ、中伝です

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