「閣下、本当に大丈夫ですか?」
「・・・・・・」
クレアの心配をよそにリィンとオズボーンの模擬戦を強行したのが、問題だったのかそれ以前の問題なのか今となってはもうわからないが、模擬戦をやるとなってもクレアの過保護は発揮されていた
獲物も実剣ではなく、そこを考慮しての木剣、木刀の類なのだが、クレアは未だに考え直すよう説得しようとしていた
「なぁ、木刀でやるんだぜ?
そんな、心配することなんて・・・」
「リィンさんは、黙ってて下さい!!」
「えぇ・・・」
流石にここまで来るとうざいし、不完全燃焼になってしまったらリィン自身たまったものではないのでリィンもクレアを宥めようとするが、逆に強い口調で返されてしまう
「いくら実剣ではないとはいえ、なにかあってからでは遅いんです!!」
「木剣と木刀でどうやったらその"なにか"が起きるんだよ」
リィンは突っ込む
これでは埒があかないのでほぼ力づくでクレアを黙らせ、やっとリィンとオズボーンの模擬戦が開始される運びとなった
ちなみにクレアのあの奇行とも呼ぶべき過保護を見たものは何故か「あんな、クレア大尉も素敵だ・・・」とか「可愛い・・・」だとか+の声しかでてこなかった
理解できないとリィンは頭を抱えた
オズボーンも彼女の過保護には顔には出さないが、教育方針間違えたのか・・・と悩んだそうな
「それでは、リィンVSギリアス・オズボーンの模擬戦を開始します」
「おい、閣下が模擬戦するらしいぜ」
「相手誰だよ?」
「なんでも情報局の臨時スタッフらしいぜ」
何故か先程まで奇行に走ってた、クレアが審判をする事になった
あの過保護を見るにすぐに中断とか言いかねないなと内心思ってると、あの鉄仮面のオズボーンも若干ではあるが、顔が引きつってた
鉄血宰相が模擬戦をすると聞きつけ、ギャラリーが増えていた
対戦相手のリィンを見て大丈夫か?、まだ子供じゃないかという声が聞こえてきてリィンはムッとする
「リィンさんも閣下も準備はよろしいですか?」
「うむ」
「あぁ」
「それでは、開始!!」
クレアの声とともにリィンもオズボーンも動き出す
お互いに距離を取る為、後方に飛ぶ
「フフ、リィンよ
お前の武、見せてもらおう」
「・・・その余裕突き崩してやるよ」
「フフ、楽しみだ」
オズボーンは、そう言うと木剣を構える
「む・・・!?」
ー疾い!
オズボーンがリィンに意識を集中してるとリィンの姿が消える
これには流石のオズボーンも審判のクレアも驚愕の表情を浮かべる
"彼女"の代名詞とも呼ぶべき、高速歩法"縮地"
リィンは一瞬でオズボーンの背後に移動し、木刀を横水平に振るう
だが、オズボーンも伊達に軍属出身ではない、足を軸に体を反転させ、リィンの斬撃を木剣で受け止める
「・・・気配は消してたつもりなんだがな」
「フフ、長年の経験というものだ」
「成程・・・」
リィンも足を軸に身体を回転させ、その勢いのまま木刀をオズボーンの木剣に叩き込む
「む・・・・」
その剣撃はオズボーンの予想より強烈で衝撃を殺しきれず後方に飛ばされるが、足に力を入れ多少飛ばされる程度で済む
リィンは縮地でオズボーンの周り円を描くように駆け抜ける
「裏疾風・乱」
そして縮地の速度のまま四方八方からオズボーンに斬りかかる
対してオズボーンもリィンの高速の剣撃を捌くが、すべて捌けるわけではない
想像を遥かに超えた実力だった
高速歩法 縮地
その極致は最早、瞬間移動とも呼ぶべき代物だ
「これほどとは・・・」
オズボーンは感嘆の声を漏らす
もし予定通りにリィンが"あの一家"に拾われていたらここまでの実力を有するのはまだ先だったのかも知れない
"彼女"と"剣仙"の導きによって高められた武
ーあの幼かった子供がここまで・・・
"彼女"と"剣仙"殿には感謝しかあるまい
性格のほうは大分歪んでしまったようだが、そこは私が矯正すればいいだろう
だが、私もまだお前に負けてやるわけにはいかんなー
「フン!」
リィンは縮地で高速で移動し、オズボーンの側面から太刀を振るう
それを予期してたのか、タイミングを合わせ、オズボーンは木剣を振るい、リィンの斬撃を弾く
「なに・・・!?」
リィンはオズボーンの予想外の斬撃に驚愕する
弾かれたのに驚いたわけではない、裏疾風は速度重視の型だ
斬撃の重さも対象を斬り伏せられる分にはあるが、あのように剛撃とも呼ぶべき斬撃を受けてしまうと弾かれてしまう
だが、リィンの裏疾風の勢いを殺してしまうほどの斬撃
想像以上だと、驚愕したと同時に笑みを浮かべる
一度、大きく体制を崩されてしまっては、裏疾風の軌道を修正するのは不可能だ
もう一度、一からやるか、別の手を考えるしかない
「・・・ま、やるだけやるしかねぇな」
リィンは重心を低くし、太刀を眼前に構え、左手を刀身に添える
平突きの構えだ
リィンの姿が消える、縮地でオズボーンに迫り、木刀をオズボーンの首を狙い、突きを放つ
オズボーンはリィンの実力の高さは驚嘆に値すると評価する
これならかの黄金の羅刹や結社最強の"鋼"にも届きうるかもしれないと
ーだが、まだ若いな
そんな疾いだけの突きなど同じように弾いて・・・!?
オズボーンは、先の疾風の斬撃を弾いたように木剣でリィンの突きを弾こうとする
だが、リィンの木刀はオズボーンの木剣が触れる前に消えてしまう
「これは縮地!?」
オズボーンは叫んだ
先のリィンの突きはもう攻撃に入っていたしそこから縮地で移動するなど不可能に近い
しかも、"攻撃の体制に入ってた"にも関わらずだ
そこからノーモーションで縮地を使い、姿を消して見せた
それは最早常人の領域では出来ない芸当だ
「唸れ、一、二、三!!」
リィンは縮地で距離を取り、圧縮した焔を木刀に纏いそれを飛ぶ斬撃として三連続で繰り出す
「くっ・・・!?」
先のノーモーションでの縮地で虚を突かれたオズボーンは対応がワンテンポ遅れ、攻撃がまともに"入る"
「滅!」
リィンの叫びと共に焔の斬撃は"爆発"する
「がっ・・・」
予想だにしない追加攻撃にオズボーンはまともに受け、後方に飛ぶ
「逃がすか、これで幕だ!!」
リィンは縮地でオズボーンに追いつき、とどめと言わんばかりに木刀を振り下ろす
斬撃がオズボーンに届くと思われたがなぜかリィンの斬撃はオズボーンに当たる前に止まってしまう
「なに・・・!?」
リィンは驚愕の声を上げる
リィンが木刀を止めたわけではない、どういうわけか、"見えない力"でリィンの木刀が止められているのだ
見えない力はまるで手のように木刀を掴み、木刀を持っているリィンごとぶん投げる
「チッ!」
リィンは壁に足を付き難なく体制を整える
「・・・・・どういうことだ」
リィンは立ち上がったオズボーンを鋭く睨んだ
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「閣下・・・」
審判を務めているクレアも今、この状況は困惑していた
突如に決まった、リィンと敬愛する上司の模擬戦、リィンの戦闘能力や剣技も想像以上だったし、オズボーンもクレアからすれば流石の一言だった
だが、今起きているこの現状は困惑しかない
オズボーンの隙を突き、勝機を見出し、リィンはオズボーンに木刀を振り下ろした
それは勝敗を決することのできた、一刀だった
リィンが寸前で止めたようには思えなかった
だけど、リィンの一太刀はオズボーンの寸前で止まっている
クレアは武人ではないが、今この現象が常軌を逸脱してることは理解できる
そして、その木刀は"なにか"に掴まれるようにリィンごとぶん投げた
難なく体制を整えてるリィンにクレアは安心したが、疑念は消えなかった・・・
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オズボーンはやってしまったと内心嘆いた
ー久々に会ったあの子、最後に顔を合てから数年、顔つきも体格も成長したものだ感心した
そして、流石に私との関係を今ばらすわけにもいかず上司と部下という立場ではあったが、久々の邂逅は心躍ったし、あの子の成長もうれしくあった
だからだろう、思わず"黑"の力を一瞬とはいえ解放してしまったのは・・・
リィンの実力の高さをオズボーンは見誤っていた
まさか、オズボーンから一本取れる程とはオズボーン本人も思いもしなかった
そして、決定打になった、先の一撃
よりにもよってそれをオズボーンは"黑"の力で防いだのだった
後悔しても遅い、リィンは不審がってこちらを睨んでいる
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先の自分の斬撃を防いだ、見えない力
あれは武術じゃないし、この世のものでもない気がするとリィンは思案する
異能持ちという線もなくはないがあれは異能にしては"底知れなさすぎる"
自身の"観の目"が告げていた、あれは"異質"だと
そしてそれ以上のことは見通せなかった
師のようになんでもかんでも見通せるほど"観の目"は万能じゃない
だが、あれは異能とはまったく別のなにかだと告げていた
「まぁ、考えても仕方ない
その"力"ごと打ち破る」
リィンは太刀を構えなおす
見えない力が壁になるってならその壁ごと突き破ればいいだけだ
「見せてやるよ、師直伝の剣を」
リィンはさっきと同様に平突きの構えを取り、そこから疾走する
「む・・・!」
オズボーンもリィンが仕掛けてきたと感じ取り、木剣を構える
「一歩、音越え・・・」
更に加速する
「二歩、無間」
「三歩、絶刀」
そして、それは最高速まで到達し、常人では視認できない程になる
「無明三段突き!!」
"同時"にオズボーンに襲い掛かる三つの突き
"ほぼ同時"ではない"まったくズレがない同時の突き"がオズボーンに炸裂する
「む!?」
それは防御不可の剣
壱の突きを回避すれば弐の突き、弐の突きを回避すれば惨の突き
防御も回避も許さない、必ず当たる突き
それが"彼女"の奥義、"無明三段突き"
だが、その技の負荷に耐え切れず、オズボーンに到達する前にリィンの木刀が刀身から粉々に砕けてしまう
「・・・・・オレの負けか・・・
クレア」
獲物が壊れてしまっては継続は不可能だ
無手でもやれないことはないが、これは模擬戦だ
そこまでこだわることでもないだろう
あの、"見えない力"の一端は掴みたかったが仕方ないとリィンは割り切る
「勝者
ギリアス・オズボーン!!」
勝者を告げるクレアの声が訓練所に響いた