破壊の繭と行く旅路   作:月侍

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 息抜きです。ハイスピードプロローグ。


プロローグ

 ポケットモンスター、縮めてポケモン。この星に住む、不思議なふしぎな生き物。

 空に、海に、森に、山に、時には宇宙に。様々な場所に住む。

 

 OK?ここまではだいたい皆知ってると思う。

 

 そして自分ことクリュザは、ニホン地方ヒョウゴシティ……じゃなくて、エナム地方ロットタウン出身の15歳。一応、ポケモントレーナーだ。

 

 何が言いたいか?まあ、その……なんだ。

 

 どうも、ポケモン世界に転生しちゃったらしいね!こんちくしょうが!

 

◆◆◆

 

 元々俺は、イラストレーターだった。ソシャゲとかラノベとか広告とかの絵の仕事をしていた。

 趣味はゲームで、その中の一環でポケットモンスターシリーズもやっていた。メインのもそうだが、不思議のダンジョン、レンジャー、トローゼetc.つまり立派なポケモンオタクだった。

 

 そんなわけで、その日は確か古本屋に昔のシリーズの攻略本を探しに行った帰りだった気がする。どうやって死んだかはよく分からないけど、多分歩道橋かなんかから足を滑らしたのだろう。よく階段で転けてたし。

 

 それで、目を覚ましたら、ロットタウンに住む一般家庭の子になっていたという訳だ。訳が分からない?俺も未だに分からないよ。

 

 転生を自覚してからマズ思い出したのは、「エナム地方、ロットタウン」なんて本編外伝どれかにあったっけ?ということ。ちなみに無かった。まあ描写されてないけど存在する地方なんだろうな。

 

 でもって、俺はロットタウンのちょっと裕福な一般家庭で育った。4人と2匹家族で、父さんはホテルマン、母さんはカフェの店長、妹は現在7歳で小学生。それから、父さんの昔からの友人であるイェッサンと、母さんの姉妹みたいなものであるチルタリス。

 そんな家族なもんで、俺は将来どーしよっかなー、ポケモントレーナーなろっかなー、と、呑気に考えたりしていた。10歳になったら旅でもするかー!とか父さんに言ったら、『せめて中学校には行け』と言われてしまったので、中学校に行ってからの旅立ちとなった。つまり、周囲の友人よりも遅く旅が始まることになってしまったということだ。

 

 まあ、父さんと母さんの心配もよく分かったし、イェッサンと母さんが用意してくれる弁当を楽しみに、今日までなんとか(赤点ギリギリなのからは目を背けといて)生きてきた。

 

 

 そういう訳で、今日が旅立ちの日となる。

 お気に入りのロングコートを羽織って、リュックサックを背負い、靴を履く。

 

「クリュザ、きちんとワールシティの研究所まで行ける?大丈夫?ワルトちゃんがついてくけど心配で……」

「大丈夫だって。通る森もよく遊びに行ってたとこだしさ」

「本当だな?きちんと定期的に連絡は入れるんだぞ?!」

「お土産まってるねー!」

「分かってるって」

 

 ロットタウンには、マサラタウンのように研究所がある訳では無い。最初のポケモンを貰いに行くなら、隣町であるワールシティまで行かなければならない。ただ、ロットタウンとワールシティの間には、黒い森という森がある。ヤグルマの森みたいな感じの森だ。

 そこを越えるために、母さんのチルタリスのワルトがワールシティまではついてきてくれる。黒い森はむしタイプとくさタイプのポケモンが主に生息しているのだけど、道を間違えて奥に行けば、ペンドラーに出くわす可能性がある。そのためにもワルトが来てくれる。

 

「お兄ちゃん森で迷っちゃダメだよ?ほーこーおんちなんだもん」

「大丈夫だってば!そんじゃ、いってきまーす!」

 

 家族に見送られながら、住み慣れた家を飛び出した。まずはワールシティまで行かないとな……

 

◆◆◆

 

 森を歩く。一応舗装された道があり、そこに沿って進む。左右には草むらがあるが、ワルトがいるとはいえあまり踏み入れない方がいい。

 

 ワルトは少し後ろを飛びながらついてきてくれる。

 

「クリュザ!どこ行くんだー?」

「うわっ?!と、ロベリアさんか……」

 

 左側の草むらから声をかけられ振り向くと、三ツ首のドラゴンポケモンを連れた青髪の男性が手を振っていた。

 ポケモンレンジャーのロベリアさん。この辺り担当らしくて、昔からお世話になっている人。俺にとって兄みたいな存在だ。父さんの友人の子だとかなんとか。

 

「いやー、今日やっと旅の許可が出て。ワールシティにポケモン貰いに行くとこなんですよ」

「それで、ワルトちゃんがそこまでの護衛ってわけだね。うんうん、理解理解!」

 

 ロベリアさんは、そう朗らかな笑顔で頷いた。ロベリアさんの相棒である三ツ首のドラゴンポケモン……サザンドラのバルドは、ワルトとなにやら話し(?)ている。

 

「ニシキギ博士のとこに行くんだね。今日はペンドラー達も大人しかったし、最悪ワルトちゃんに歌ってもらったらいいよ」

「ありがとうございます。そういや、ロベリアさんはどうして森に?いつもは湖の方にいますよね?」

 

 ロベリアさんの管轄はこの辺り一帯だけど、メインは反対側にある湖……かがみの湖とかいう湖らしいって前に聞いた。だから、こっちに居るのはちょっと珍しい。

 

 ロベリアさんは答えた。

 

「それがさ、昨晩何かがこの森に墜落したから調べて来いって言われちゃってさ」

「ほへー」

 

 確かに何か振動があった気がするけど、本当に何か落ちてたのか。とか呑気に思ってみる。

 

「まあ、気をつけてね?」

「はーい」

 

 そうしてロベリアさんに手を振って、歩みを進めた。

 

◆◆◆

 

「まよった」

 

 ここどこ?というのが率直な感想だ。

 

 ロベリアさんと別れてから数十分。道から逸れて、草むらの中にいた。コートが丈夫なのが幸いして、特に怪我はない。

 

 いや、原因は分かっている。「あっ!ヤナップ!」と思って近づいて、小さい崖から転げ落ちて、元の道に戻ろうとして多分正反対の方向に行ったんだと思う。ワルトともはぐれてしまった。どうして。

 

 

 現在の持ち物は、キャンプ道具と拾ったモンスターボールが5つ、さっき通りすがりの店員さんに貰ったまんたんのくすりがひとつ、その他諸々。アナヌケノヒモ?ナンノコトデスカネ?

 タウンマップもなければ、そらをとぶを覚えたポケモンがいる訳でもない。それどころか、手持ちはゼロ。大ピンチだ。

 

 幸いにも、さっき遠くで昼寝してるバタフリーを見た以外はポケモンは見かけていない。隠れているだけな気もするけど……いや、やけにポケモンいないな?

 

 止まっていても仕方がないので、進む。足元にだけは気をつけて。

 

 

 すると、開けた場所へと出てきた。ヤグルマの森にあった『しさくのはら』みたいに、突然開けた場所に出た。

 光がさしていて、一見するととても綺麗な場所だった。しかし、その中に一つ異様な部分があった。

 

 開けたその空間の真ん中に、大きなポケモンが倒れていた。

 赤と黒の色を持ったポケモン。全体的なシルエットは鳥ポケモンに近い。傷だらけでうなだれている。

 

「あれは……」

 

 脳内のポケモン図鑑を調べる。鳥ポケモンで、赤くて黒く、大きい。

 数秒とかからなかった。分かった、あのポケモンは、確か。

 

「……イベルタル?」

 

 はかいポケモン、イベルタル。カロス地方の伝説のポケモンで、その命が尽きる時に、周囲のあらゆる命を吸い尽くして繭となり眠りにつくというポケモン。

 

 それが、どうしてこんな所に?しかも、とても傷ついている。

 痛みからかは知らないが、こちらに気がついても睨みつけてくるだけで何もしてこない。

 

「どういうこった」

 

 分からん。わからんオブわからんだけど、ひとつ分かることはある。ロベリアさんの言ってた『墜落したもの』はおそらくこのイベルタルだ。

 

 どーするべきか、と思いつつも、このままほおっておくわけにもいかない。寿命尽きて命吸われるとかやだし、なんなら俺にはイベルタルをこのままにしてどっかに行く度胸なんぞない。

 

「……あー、えーっと、イベルタル?」 

 

 幸い、手元には貰ったまんたんのくすりがある。傷を治すだけなら、なんとかなる。

 

 手当をしようと一歩踏み出す。相変わらず睨みつけてくるだけだ。攻撃してくる気配は無い。

 

「手当、させて貰うぞ?染みるけど我慢、OK?」

 

 変な文になりつつ、イベルタルに言ってみると、イベルタルは(なんだこいつ)とでも言わん感じに僅かに首を捻った。

 

 

 まんたんのくすりの栓を開けて、傷に吹きかける。しみたのか、イベルタルは少し身をよじった。

 

 くすりの効果は凄く、細かい傷ならすぐに綺麗になっていく。大きな傷もふさがって行っている。凄い。これ、かいふくのくすりだったらもっとやべーんだろうな。

 

 

 数分で、一通り手当ができた。その辺にあったオレンのみとラムのみをもいで差し出すと警戒していたが、俺がひと口齧ると警戒せずに食べてくれた。「傷ついたポケモンにはオレンとラム!オボンがあればなおよし!」とは母さんの言葉だ。

 

 

「こんなもんか」

 

 イベルタルはのそっと起き上がり、翼を畳んだ状態で、その辺のオレンのみをもいでもっもっと食べている。

 

 元気になるのはやいなー、とは思ったものの、早くワールシティに行かないとと思い出した。ニシキギ博士、午後はよくフィールドワークに出てるんだった。

 

 と。

 

『ピユゥ!』

 

 聞き慣れた鳴き声がした。ワルトの鳴き声だ。俺を探しているのだろう。

 

「それじゃあな。なんで墜落したかは知らないけど気をつけろよー」

 

 そう言ってからイベルタルに背を向けて、ワルトの鳴き声の方へと向かう。

 

 

 イベルタルがこちらをじっと見ていたことに、その時の俺は気が付かなかった。

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