東方幻創弾 〜Phantasm memories from Buster.〜   作:蒼いなんでも屋

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 唐突ですが、

……にわかってどこまでを指すのでしょうか。

 やっぱり原作未プレイだと「にわか」なのですかね?

 ……ダンカグくらいやろうかな、と思ってます。

 そんな原作未プレイヤローの作者は今日も執筆。
 テスト近いのになーにやってんだボケ。

 ところで妖夢といえば確かこの間の人気投票一位でしたね。
 これからそんな妖夢の活躍を描けるといいのですが。

 みょんみょん。





006. 立春の憂い事

「皆さーん! 春ですよー!」

 

 

 

 そう言いながら、春風漂わせて、博麗神社に春を告げる妖精がひとり、ふわりと現れた。

 

 彼女はリリーホワイト。文字通り春の訪れを知らせにやってくる存在である。

 幻想郷の人々は彼女を見て、彼女の声で、春を感じる。

 

 逆にいえば……その時くらいしか活躍の出番がない、ちょっと不遇な妖精だったりする。

 

 春の訪れを感知すると姿を現して、冬眠していた生き物達を目覚めさせ、桜などの春の花を満開にし、通った場所を春でいっぱいにする。

 春は興奮しているのでちょっと強いがそれ以外はあまり強く無く、子供達に捕まったりもするとか。ただ彼女が夏から冬の末期まで具体的に何をしているのかはあまり知られていない。

 

 

 

 

 

「……春、か」

 

 それを眺めて、星羅が呟く。

 横には霊夢もいた。

 

 

「アイツはリリーホワイト。春ですよーって言うだけの存在」

「そんな妖精もいるんだね」

 

 ふうん、と星羅が返すと、霊夢は

 

「春といえば、桜かしらね」

 

と、星羅の頭に乗ったあるものを手に取った。

 

 

 桜の花弁(はなびら)

 鮮やかなピンク色に染まり、散った物ながら生きているような印象を与えてくる。

 

 

「えっ乗ってたの? ……なんか恥ずかしい」

「よくある事よ、気にしないで」

 

 

 自分の頭に乗っかっていた事に顔を赤らめる星羅。

 

 

 

 そんな二人の近くを、

 

 

()ですよー、えへへ」

 

 

とリリーホワイトがニコニコしながらさり気なく通過、人里の方へ飛んでいった。

 

 

 

「うぅ……」

「アンタそういうところ変わってるわね」

「えぇ? だってなんか……恥ずかしいよ、やっぱり」

「そこまで恥ずかしがる事はないわよ? まぁ良いわ、それよりも」

 

 霊夢は神社のお賽銭箱を見やった。

 

 

「アンタ……もしかして律儀?」

 

 

 奉納金ケース(?)を取り出すと、そこには一枚の千円札と五百円玉が入っていた。

 まだ朝なのに、である。

 

 星羅は笑って言った。

 

「曲がりなりにも居候の身、これくらいの恩返しはしないとね」

 

 

 

 星羅はあれからしばらく、人里でもお世話になっている。

 魔理沙が大々的に(むしろ大袈裟に)「なんでもするらしいからよろしくなー!」と宣伝したのがきっかけで、個人的にお手伝いしたり、頼まれごとをしたり、(霊夢の)お使いをしたりと、いわゆる「なんでも屋」をしているのである。

 

 星羅はそれにより、成り行きで生活資金を稼いでいる。

 人里のお手伝いは自分からお金をもらっているわけではなく、基本無償でやっている。だが、何故か皆こぞってご褒美としてくれるらしい。

 お陰で香霖からもらったポチ袋はいつもいっぱいである。

 

 そんな彼女は毎朝、必ず少しでも賽銭箱にお金を奉納、毎日お参りを済ませている。

 霊夢は最初は星羅の仕業だとは思わなかったが、一週間も続いたので怪しみだし、今こうして誰の仕業か判明したのだ。

 

 

 

 

「別に私、そこまでしてお金を没収しようなんて思ってないわよ?」

「ううん、いいの。だって」

 

 霊夢の疑問に、星羅はサラッと答えた。

 

 

 

「霊夢は恩人。それに大切な友達だもん。お互い様ってやつだよ」

 

 

 

 その言葉に、霊夢はハッとする。

 

 彼女は何よりも、やはりそういう絆とかを大切にしているのだろうか。

 

 そういったものは、時にかえって危険を招く事もある。当然、誰もが持っていなければならないものでもある。

 特に幻想郷では尚更だ。

 

 

 でも、やっぱり霊夢は素直に嬉しかった。

 

 

「……そうね。……ありがとう、星羅」

 

 

 少しまごつきながら、星羅に思いを伝える。

 

 

「……うん!」

 

 

星羅も笑顔を返し、二人は笑った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ねぇ、今のリリーホワイトの()ですよーって」

 

 

「……」

「……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……おーい! 霊夢ー! 星羅ー!」

 

 

 

 ふと空から声が降ってくる。

 

 見上げると、そこには空飛ぶ物体が。

 

 

「……あれは、魔理沙?」

「もうひとり乗ってるわ」

 

 

 

 降りてきたのを見て駆け寄ると、魔理沙ともうひとりが立っていた。

 

 魔理沙はその子を指して星羅に紹介した。

 

 

「星羅は始めてだな。コイツは妖夢。冥界、白玉楼の剣士だぜ」

 

 

 魔理沙の紹介に、妖夢は頭を下げた。

 

「はじめまして。魂魄 妖夢です。冥界・白玉楼にて庭師兼剣術指南役を務めさせてもらっています」

 

 妖夢は頭を上げると、手を差し伸べる。

 

「魔理沙から話は伺ってます。星羅さん、よろしくおねがいしますね」

 

「こちらこそ、よろしくおねがいします」

 

 二人は握手。

 ただでさえ色白な自分の肌よりも白くなっているのを見て、星羅は、

 

 

「……もしかして、冥界っていうくらいだし……幽霊?」

 

と思わず聞いてしまった。

 

 

「あー……その事なんだが……」

 

 魔理沙が何か言いたげに反応する。

 

「魔理沙? 何か隠してるの?」

 

 霊夢が問いだしてみると、妖夢が代わりに答えた。

 

 

「実は……頼みがあるんです」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

________________

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………半霊を失くした!?!?」

 

 

 霊夢は思わず飲んでいたお茶を吹き出しかけた。

 

 

 

 妖夢はあの翌日、つまり今日になって、必死に自分の半霊を探していた。

 そんな様子を魔理沙に見つかり、事情を話して二人で神社にやって来たという。

 星羅が単に「肌が白い」という印象を抱いたのみだったのは、これが原因だ。

 それで妖夢は皆にも手伝って欲しいとの事。

 

 

「……つまりいつもの、半霊ちゃん……は、妖夢の周りをふよふよ漂ってるって事?」

「うん」

 

 妖夢は頷く。

 霊夢も気を取り直して、腕を組んだ。

 

「何も心当たりは無いのね」

「……特には、なにもない」

 

 

 

 

 正に、失踪。

 

 忽然と姿を消したのだ。

 

「うーむ……やばいぜ」

 

 霊夢、魔理沙、妖夢、そして星羅は流石に参った。手掛かりのひとつはあれば、人里や幻想郷の皆の協力で探す事は容易に出来る。だがそれすらも無いのでは、正直万事休すもいいところである。

 

 

 

 

 __そんな四人に、ふと声が響く。

 

 

 

 

「……お困りのようね? 霊夢に魔理沙、妖夢。そして、星羅ちゃん」

 

 

 

「……紫っ!? いつの間に!?」

 

 

 霊夢が振り返るとそこには、スキマに腰掛けるスキマ妖怪こと、紫がいた。

 

 何か知っているような口ぶりと笑顔をしているあたり、所謂「助っ人」としてやって来たようだ。

 

 

 

 

 ……星羅以外の三人が一斉に嫌な顔をしたのは、言うまでもない。

 

 

 

 

 

 

 

 紫はスキマを閉じるとふわりと床畳に降り立ち、そのまま座った。

 

「星羅について話しに来たら、妖夢の半霊が行方不明って幽々子から聞いてね」

「えっ、幽々子様から?」

「ええ。割と心配していたわよ」

「アンタらそういうとこで通じてんの何とかしなさいよ」

 

 

 言いながら紫は(神社の)お茶を、(勝手に)スキマから持ってきて一口。

 

「まぁ、それよりも聞いてほしい事があるわ。星羅ちゃんについてよ」

「え、何か知ってるのか?」

 

 魔理沙の反応を見て霊夢は呟く。

 

「いつもの事じゃない」

 

 それを受けて、星羅は「紫さんってそういう人なんだ」思った。

 

 あまり純粋に受け取ってしまうとアレなのは、後でわかるが。

 

 

 

 

「霊夢から星羅について聞いたけれど……興味深い事実がわかってきたわ」

「何だよ、それ」

 

 魔理沙の問いに、紫はきっぱりと言った。

 

 

「恐らく……

 

人為的な結界侵入の可能性が高いわ」

 

 

 

 

「「人為的!?」」

 

 霊夢、魔理沙が顔を見合わせる。

 妖夢も困惑した表情をしていた。

 

 紫は続けた。

 

「あの日について、藍に尋ねてみたのよ。そしたらね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 星羅が幻想入りしたあの日。

 

 霊夢からその事を聞いた紫は、自分の式である妖怪、八雲 藍(やくも らん)にある事を尋ねていた。

 

 

「今日、なにか変わった事はあった?」

「変わった事……ですか?」

 

 

 藍は紫が媒体に取り憑かせる事で生まれる、九尾狐の式妖怪。

 紫程ではないもののかなりの実力を持つ他、式でありながらさらに自分の式である化け猫妖怪、(ちぇん)を呼び出す事も出来る。

 

 紫は実は、暇な時もそうでなくても(ただし後者は場合にもよる)、12時間(半日)以上は眠っているのだ。しかも冬眠だってする始末。

 そのため彼女の本来の仕事である、幻想郷の結界管理は藍が代わりに請け負っている。

 

 幻想入りすると大抵結界に何かしらの反応があるらしい。

 勿論ちょっとしたものでは何ともないのだが(外の常識を弾いたり非常識を入れたりするなどの機能が普通に働くため)、人がいきなり、しかも誰かが連れてきたりしない場合は、少し結界が揺らぐ、とか。

 

 

 

「……そういえば、幻想入りの反応がひとつ」

「ふぅん、実は霊夢のところに来たのよ。幻想入りした女のコが……ね」

「そうなのですか? どうりで唐突に」

 

 藍はふむ、と顎に手を当ててしばらく考えると、ハッとしたように顔を上げた。

 

 

「でも先程の反応……なにか変でした」

「え? どういう事なの?」

 

「……こじ開けられたような感じです。

 

まるで、紫様の……スキマ展開能力のように」

 

 

 自分もよくわからないといった表情をして、藍は言った。

 

「……スキマを開くとその空間が歪むんですよ。まぁ紫様が開いたとは思いませんが……」

 

 

 

「………………スキマ……ね」

 

 

 紫はぼそっと呟いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃあ、星羅はその“人為的”な幻想入りをさせられたって事なの?」

「恐らくはそういう事になるわ」

 

 霊夢に対する紫の発言に黙りこくる一同。

 

 彼女の言ったことが正しければ、星羅の記憶も恐らく人為的に消されたのかも知れない、というのが予想ついてしまう。

 はっきり言って、そんな事は非人道的過ぎる。

 本人が許可したならば話は別だが、もしも無断ならば黙っていられない。

 そもそもそんな事幻想入りさせる人の考えが知りたい。

 そんな事を、霊夢は思った。

 

 

 

「……まぁ、兎に角よ。こんな事自分から言っておいてだけれど、星羅が例の侵略者どもに狙われる理由も、記憶喪失の原因もわからない以上はまだ決め付けられないわ。地道に探してみましょう、手掛かりを」

 

 

 紫が言う。

 深く考え過ぎるな、という意味を込めて。

 

 

「……だな」

「そうですね」

「……仕方が無いか」

 

 三人はそれぞれ納得した様子で背伸びをする。

 

 

「……………………………………」

 

 

 __何ひとつ言葉を話さない星羅を除いて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それじゃ、私は戻るわ。なにかわかったら遊びに来るから」

「遊びには来ないでよ」

「ふふ、冗談よ」

 

 霊夢にツッコまれながら、紫はスキマへと消えていった。

 

 スッとスキマが閉まった跡を見ながら、星羅は呟く。

 

 

 

 

 

 

「………………記憶喪失(わからないもの)、か」

 

 

 

 

……と。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さ、厄介者もいなくなったし。妖夢、アンタの探しもん見つけに行くわよ」

 

 霊夢が区切り付けるように言いながら、大幣を引っ張り出した。

 

「みんなで探したほうが楽じゃないの?」

「霊夢、珍しく乗り気だな」

 

 魔理沙が訝しむと、彼女は答えた。

 

 

「今は異変の真っ最中。行動するのが吉。……私の勘よ」

 

 

「……だな!」

 

 

 

 

 

 

 今は少なくとも、目の前の物事を解決するのみ。

 

 

 そんな霊夢の姿勢に、星羅も何かを思ったようだ。

 

 

 

「……そうだよね! 私も行く!」

 

「そうこなくちゃ。行くわよ妖夢」

 

「はい! よろしくおねがいしますね」

 

「一仕事するか!」

 

 

 

 

 四人は神社を飛び出し、春風の中へと飛び立った。

 

 

 

 

 

 




 幽々子様といえば「大食い(?)」「遠い言い回し」「どこか天然」、あと「普通に強い」。描写が難しい……!

 妖夢も敬語と素の時とで使い分けるのが大変だったりします。ていうか敬語使わない相手って最近減った……?

 次回は幽々子様も登場したら活躍させたいですな。
 妖夢活躍しなかったけど。



 ところで、横書きゆえにセリフと本文を最低一行は開けてます。読みにくいかな、と思いまして。
 いらないよ、という方はコメントおねがいします。
 多かったら詰めます。

この中で、番外編やってほしいのは?

  • 紅魔館組
  • レイマリ
  • うどみょん

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