東方幻創弾 〜Phantasm memories from Buster.〜   作:蒼いなんでも屋

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 半霊に「みょん」と言わせたらアレでしょうか。


 いいや。やっぱり。……イメージ壊れるから、やめとこう……。






 はい。すいません。
 本編始まります。









007. 半人の隠し事

「おーい、半霊ー?」

 

「いたら返事しろ〜!」

 

「もうひとりの私ー!どこなのー?」

 

「いや質問の仕方よ」

 

 

 

 

 

 半霊が突然妖夢からいなくなったといい、彼女の頼みで霊夢、魔理沙、そして星羅は半霊探しを手伝っていた。

 

 今のところは、機怪出現や大した事件も何ひとつ無く、割と平和だったため探す事自体は楽だった。

 

 

 が、

 

 

 

「……いないんだが??」

 

 

 魔理沙はそう言って、欠伸をしてしまった。

 

 

 

 

 案の定手掛かりなど一つも無く、それどころかそもそもどこにいるのかわからないので探したくても思う様に探せないのだ。

 

「本当に何も心当たりは無いのね? なんか……見つかる気がしなくなってきたんだけど」

「……」

「……? まぁ、無いか……」

 

 

 隠れんぼ、というよりは落ちた針を探し出すレベルの捜索状態。

 何となくいそうな場所を順々に巡ったが、やはりいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 アテもなく探していたせいで疲れた四人は、人里の甘味処で大福を食べていた。

 いつも(と言っても一週間)星羅が世話になっているところだ。

 

 まぁだから何だという事で、結局星羅は四人分を奢った。

 貯めておいて良かった、と星羅は始めて思った。

 

 

 

「……」

 

 ぼうっと空を眺める妖夢。

 

「……はぁ」

 

 そしてひとつ、ため息をついた。

 

 自分の探し物……否、“捜”し物のために皆を付き合わせた挙げ句、未だ見つからない事に申し訳無い気持ちになっていたのだ。

 

 それを見て、大福にかじりつきながら魔理沙が言った。

 

「まあそんな落ち込むなって。案外、すげぇ近くにヒントがあったりするかも知れないだろ?」

「……そういうものなのかな」

「……そしたら私達の眼が節穴って事になるんだけど?」

 

 霊夢が皮肉げに言う。

 そして、

 

「どこ行ったんだろ、ほんと。しかもこんな時に」

 

と、呟いた。

 

 今は、撃退したとはいえ、いつまた機怪とやらが現れて、幻想郷や星羅の安全を脅かすかわからない時期。

 異変の真っ最中なのだ。

 そんな時に、今こそ暇とはいっても、こうしてアテなく捜すのは時間の無駄だし、割ときついものだ。

 飛び回って捜すのもあるが、それでは見落としが増えてしまう。

 そのため、手当たり次第、という訳ではないが地道に捜し続けるしかないのだ。

 

 

 

「ねぇ、妖夢」

 

 ふと、星羅が言った。

 

「冥界に行ってみない?」

「……え?」

 

 妖夢が顔を上げると、魔理沙が星羅の意図を理解した。

 

「なるほどな。冥界には幽霊がいっぱいいる。その中に混じって半霊がいるかもって事だろ?」

「確かに、幽霊達なら何か知っているかも知れないし。一理ありそうね」

 

 霊夢も納得といった顔をした。

 

 

「行ってみようよ。ね?」

 

 そう言い、笑う星羅。

 

 そんな星羅の笑顔を見て、妖夢は思った。

 

 

 ……こんな時に、こうしていられるのって、良いな。

 彼女なら、きっと……。

 

 

「……はい! そうする事にします!」

 

 

 妖夢も自然に、微笑んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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少女移動中……

 

 

 

 

 

 

 

 

「この部分いるのか?」

「原作再現風な感じよ」

「へー……」

 

 

 

 

 

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「うわー!! 寒い! 高い! 怖いよぉ……ぅ!」

 

「星羅ってこういうの苦手か……」

 

「良かった仲間だ」

 

「妖夢、そこで安心するな……」

 

 

 

 

 空は夜の様に暗く、ところどころの灯火は妖しげに光っている。

 長く続く階段の先に、屋敷、白玉楼が見える以外は、怪しげな光浴びる花々しか見えなかった。

 そして人魂がふわふわとそこらを飛び回る。

 

 ここは冥界。

 死を迎えた者の集う、停留所。

 

 

 

 そのど真ん中(階段の中程かつ幅的にも真ん中)で、星羅は耐えかねて震えていた。

 

 太陽光が無いからか寒い。

 階段が長すぎて高い。

 そして、周りの人魂、幽霊が不気味過ぎて怖い。

 

 星羅にとって特に怖いものはダメらしい。

 

「よよよ、妖夢も幽霊だっけ……???」

 

……と、完全に混乱している。

 

 当の妖夢は、

 

 

「……」

 

何故か、ぼうっとしていたが。

 

 

 

 

 

 

「これこのまま幽々子に会って平気なの……?」

 

 霊夢が魔理沙に(ささや)くと、魔理沙も不安げな表情をした。

 

「大丈夫じゃねー気がしてきた……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、こういう予想は大抵裏切らない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あら、あなたが星羅ちゃんね! 私は西行寺 幽々子。白玉楼の主よ。気軽に幽々子って呼んでn」

 

 

 

 

 

 

「うーーーーーわーーーーー出たぁぁぁァァァ!!!!」

 

 

「……あら?」

 

 

 なんとか白玉楼に到着、出迎えに幽々子が現れたのだが、やっぱり星羅は彼女の周りにいくつか浮かぶ霊魂にとうとう限界突破。

 文字通りぶっ倒れてしまった。

 

 

「……幽々子、久し振り。コイツこのまま屋敷に放ってくれない?」

「悪いな幽々子、私達は妖夢のツレみたいな感じで来たんだぜ」

「すみません幽々子様、まだ見つからなくて」

 

「……そういう事、ね。良いわ〜、みんな中に入ってちょうだい」

 

 そう言うと、幽々子はよっこらしょと星羅を抱き上げて中へと連れて行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「う〜ん……寒い、高い、怖いダス……」

 

 

 

 半寝ぼけ状態の星羅を端に置いておき、霊夢達は幽々子に、なんにも戦果が無かった事を伝えた。

 

「ふぅん、やっぱりいなかったのね」

「はい……すみません」

「別に妖夢が謝る事はなにもないわ」

「いや幽々子、コイツがもっとしっかりしていれば半霊失くす事態になんてならないわよ」

 

 霊夢が言うと、幽々子は驚きの発言をした。

 

 

 

「そんな事無いわ。だって

 

 

 

 

 

 

たまにある事だもの」

 

 

 

 

 

「「「……!?!?」」」

 

 

 霊夢、魔理沙、そして今ので覚醒した星羅も、三人は一斉に困惑した。

 

 

「ど、どういう事なの妖夢?」

「ええっと……実は」

 

 

 妖夢はどこか恥じらいながら、事を話した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「け……け……喧嘩ぁぁ!?」」」

 

 

 三人は再びズッコケた。

 

 

 

 なんと自分と半霊の自分とで、たまに喧嘩してどちらかが家出する、という事がある。

 らしい。

 

 オマケにひどいと一週間戻ってこないといい、それが起きるとすぐに反省して探し出す事になる。

 らしい。

 

 

 

「……実は昨日の帰りに、少し喧嘩してしまいまして」

「あら、なんでその事を言ってくれなかったのよ……」

 

 幽々子が尋ねると、

 

 

 

 

「……見てしまったんです。機怪を」

 

 

と、彼女に向かって妖夢は言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……あれは」

 

 

 買い出しからの帰り道、妖夢は草むらに何かの影を見た。

 

 

『……? 何かいたの?』

 

 半霊が尋ねると、妖夢は背中の楼観剣に手を掛けた。

 

 

「……何かいる。気を付けよう」

 

『見てくるよ』

 

と、半霊は飛び出していった。

 

「え、ちょっと! 勝手に行かないで!!」

 

 

 

『……アイツはこの(半霊の)私が見てくる。あなた(半人の私)は幽々子様をお願い』

「ねぇ!!」

『……いいから!!』

「……!」

 

 

 無理矢理連れ戻そうと、半霊の伸びた尻尾を掴む。

 

『ひゃっ!?』

 

 それに抵抗して半霊は体当たり。

 

「うわっ」

 

 

 その拍子に何かを落とす妖夢。

 半霊はそれを素早く拾い上げ、奥へと飛んで行ってしまった。

 

 

「……! しまった……」

 

 

 

 __どうしよう。

 バレたらきっと叱られるかも知れない。

 でも、余計な心配はかけたくない。

 

 

 

 起き上がった妖夢は、何かを決めたような辛い表情で白玉楼へ飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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「申し訳御座いません!!! 本当は気づいていたんです! でも幽々子様に心配をかけたくなくって……!!」

 

 妖夢はその場で土下座をした。

 

 人を騙した事に相応の罪悪感を覚えたのだ。

 そもそも妖夢は真面目な性格、こんな事は不本意だった。

 

 

 

「……」

「……妖夢」

 

 

 

 それを察して霊夢、魔理沙も黙る。

 騙された事は確かにアレだったが、素直に叱れる気になれなかったのである。

 

 

 

 

 

 

 そして、その様子をしばらく見ていた幽々子は、

 

 

「……ふふ、大丈夫よ。顔を上げなさい」

 

 

と、妖夢の肩に手をおいた。

 

 

「……?」

「私もごめんなさい。こちらも気付いていたのよ。あなたが隠していたのを」

 

 

 妖夢が涙目で幽々子の顔を見る。

 怒っていなかった。

 

「……そうなんですか!?」

 

「だって、大切な妖夢(あなた)をどれだけ見てきたと思うのよ、顔に現れてたわよ」

「えっ……」

「そもそも半霊が無くなったら普通わかるわよ?」

「……ですよね……」

 

 

 やはり適わないや、と妖夢は呟く。

 

 その頭を、幽々子はそっと撫でた。

 

「大丈夫。みんなでしっかり捜せば、きっと見つかるから」

「はい!」

 

 

 

 

「ま、騙された事に関しては、幽々子に免じて許してあげる」

 

 霊夢はそう言い、腕を組んだ。

 

「だから絶対捜し出すのよ。良いわね?」

「もー、霊夢はツンデレだぜ。私はやっぱり気にして無いぜ妖夢!」

「うっさいわね!!」

「やーいつんでれいむー」

「んもー!!」

 

 

 二人のやり取りを見て、心做しか救われる気持ちにされた妖夢。

 幽々子も微笑みながらそれを眺めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな中、ずっと端っこで何か考えていた者がひとり。

 

 

 

「ねえ妖夢、気になったんだけどさ」

 

 

 

 

 星羅だ。

 

 

 

「え?」

 

「半霊の感覚って……妖夢本人と、共有してるの?」

 

 

 

 言われて、幽々子以外がハッとする。

 その幽々子は、頷いて星羅に聞く。

 

「いいところに気が付いたわね。そう、そのはずよ。でもそれは一定条件下でないと成り立たないわよ」

 

 

「……妖夢、我慢してないで言ってよ。感じるんでしょ? 半霊(もうひとり)の事」

 

 

 

 なんと星羅は観察眼で見抜いたのだ。

 妖夢が恐らく感覚共有をしている事を。

 

「時々、妖夢ぼーっとしてたでしょ。わかるんだから」

「……!」

 

 

 

 妖夢は、少し黙って、そして言った。

 

 

「……うん。使ったんだなって、わかった」

 

 

 

 そして妖夢は幽々子に言った。

 

「幽々子様、私のスペルカードが一枚無いんです」

「まさか?」

 

 

「はい、魂魄【幽明求聞持聡明の法】です」

 

 

 

 半霊と動きを共にする分身技スペカを、妖夢はなくしていた。

 そして今日の間、時々感覚が狂うのだった。

 

 

 

「妖夢、つまりそれって」

 

 霊夢が聞くと、妖夢は頷いた。

 

「うん、多分半霊が持ってる。今、使ってるんだ」

 

 

 

 

 

 だが、魔理沙が呟いた。

 

「……でも、幽明求聞持聡明の法は確かお互いの感覚を揃えて高いシンクロ技を繰り出せるやつだろ?」

 

 努力家にして研究家の魔理沙らしい分析。

 妖夢も頷いて肯定した。

 

「そうだよ。それで?」

 

 

 

「……もしアイツ……半霊がなにかやらかしたら、妖夢。お前の身体はどうなるんだ」

 

 

 

 その発言に全員が凍りつく。

 

 妖夢の話では、半霊は機怪……侵略者を追っている最中なのだ。攻撃を食らってもおかしくない。

 それになにも対処出来ない本人は、かなり危ない事になる。

 

 

 

「妖夢、急ぐわよ。そうでないとアンタが危ない」

「……うん!」

 

 

 

 

 霊夢に言われて、立ち上がろうとする__

 

 

 

 

 

が、時すでに遅し、だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………!!! ああっ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 何かに吹き飛ばされたように、妖夢は倒れ込んだ。

 

 

「妖夢!」

 

 

 すかさず幽々子が抱きかかえて支えた。

 

 

「……う……あ」

「……霊夢、まずいわ」

 

 幽々子の言葉に、流石に危機感を覚える一同。

 妖夢は気は失っていなかったが、かなり辛そうだ。

 

 

「……星羅、今すぐ神社に行くわ」

「えっ?」

「紫を呼ぶ。多分そろそろ、半霊の居場所を掴んでいる頃よ」

 

 

 霊夢は走って表に出て、靴を履き飛び立つ。

 

「おい! 急がば回れだぜ!?」

 

 魔理沙も慌てて靴を履いて、箒で飛び出した。

 

 

「幽々子さん、妖夢をお願いします」

「わかったわ」

 

 

 星羅と、妖夢を担いだ幽々子もそれに続いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

[コイツ……意外にもやるようだナ]

 

 

 

 

 ひとりの機怪が、大剣で“彼女”を指す。

 

 

 

 

 騎士のような風貌をしたずんぐり、【ブレイドタイプ】である。

 

 

『……くっ』

 

[健闘シタと褒めてやろう……ダガ]

 

 ブレイドは、怪しく輝くその剣を高く掲げて、

 

 

[……“幽霊のなり損ない”ニハ、ワレワレは倒せんゾ!!]

 

 

 と、“彼女”へ振り降ろした。

 

 

 

『……黙れ!』

 

 

 “彼女”……半霊は白楼剣を逆手に持ち、大剣を弾き上げた。

 

 

 

『なり損ないだなんて……言うなっ!!!

 

 

 

私は……元から半霊、妖夢(あいつ)とは違うっ!!』

 

 

 

 

 ぼろぼろのまま、半霊妖夢は刀を握りしめて、目の前の敵へ再び斬りかかった__

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 幽々子様みたいに大食いだった時期がありました。

 あったんですがもうむり。


 次回、ついに二人の妖夢が出会います。

この中で、番外編やってほしいのは?

  • 紅魔館組
  • レイマリ
  • うどみょん

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