東方幻創弾 〜Phantasm memories from Buster.〜 作:蒼いなんでも屋
むきゅー。
魔理沙とアリスについて行く形で、紅魔館へやって来た星羅は、館内で目当ての人物・咲夜と、紅魔館の主レミリアに会う。
レミリアは星羅の運命に何かを視たようだ。
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席に座り直したレミリアは、星羅と向き合いこう言った。
「私の能力、知りたい?」
「えっと……はい」
「【運命を操る程度の能力】よ」
「……運命を?」
ジェスチャーのように、片手を挙げてみせるレミリア。
「未来予知ではないの。でも、その気になって視た相手の直近の運命を、私は読み取る事ができる」
「……」
「勿論人のみならず、割となんでも視れるわ。直近でも先が分かればちょっとしたきっかけを作って、その運命を変える事もできるの」
掲げた手を動かして、まるで弄るような仕草をしてみせた。
「だから貴女がここにやってきた訳も、大方わかるわ」
レミリアは一呼吸おくと、咲夜を見た。
「……咲夜、この子と話してあげなさい」
「……え?」
話の流れ的に自分には話が振られないだろうと、うっかり腹をくくっていた咲夜は、予想外の指名に呆気にとられていた。
「この子の目的は……咲夜、貴女に会う事よ」
レミリアは言いながら、その紅き見透かした目を星羅に注いでいた。
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「パチュリー! 本借りてくぜー」
「はぁ……まったく、相変わらずねぇ。……はぁ、少しは反省しなさいよ……」
地下、大図書館。
そこで、パチュリー・ノーレッジは、ばたばたと魔理沙を追いかけていた。
「はー、はー……」
「おいパチュリー、身体が保ってねえぞ」
「はぁ、うるさいわよ、心配するなら……はぁ、返して……!」
魔理沙は、実は走ってない。
箒に乗ってるのではなく、速歩き程度の速さで歩いているだけ。
一方パチュリーは、パジャマにも見える紫色の服を盛大に揺らして、走っていた。
……速度が完全に速歩きだが。
「はぁ…はぁ……もう、無理……」
「へへーん、じゃあ借りてくぞ」
ギブアップしたパチュリーを横目に、去ろうとする魔理沙。
すると、
「ちょっと待ったぁ!!」
「ぬおぉ!?」
何者かが彼女の前に立ちはだかった。
「パチュリー様になんて事を! 許さないぞー!」
「……って、なんだ小悪魔かよ……ほら邪魔だぜ、あと私別にパチュリーを攻撃してないぞ……」
赤髪に悪魔らしい羽根を生やした、司書の小悪魔。
足止めとばかりに、両腕を開いて魔理沙を通せんぼする。
なんとか魔理沙を押し留めんとするも、しかし圧倒的に実力の劣る小悪魔、結局魔理沙に適当にあしらわれてしまった。
「あ……ちょ、ちょっと!!」
「よし、今度こそじゃあなー! また借りる本ができたら来るぜ。身体、お大事にー」
扉を開いて、図書館を出て行く魔理沙。
「ま、魔理沙……待ちな……さい……
……む、むきゅー……」
パチュリーはそんな彼女へ向かってぷるぷると手を伸ばし、か弱い悲鳴ののち、ぱたっと倒れた。
小悪魔はそれに絶叫するのだった……
「ぱ、パチュリー様ぁー!!!」
因みに魔理沙は泥棒はしたが別にパチュリーを攻撃したわけではない……。
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「……記憶喪失、ね。まさかそんな話が実在するなんて」
咲夜は、改めて星羅から彼女の経緯を聞き、考えるように顎に手を当てた。
何もわからないまま、霊夢と魔理沙に拾われた事。
最近世間を騒がす「機怪」に狙われている事。
そして、幽々子を救い出し、妖夢との繋がりの証を得た事。
どれも、ただの外来人にはできない芸当だ。
「もう一度整理すると……ここに来たばかりのあなたは、どういう訳か他人との記憶をメモリとして共有できる、そして今のそれは私って事、ね」
「はい」
「……正直、信じられないのよね」
咲夜はふう、とため息をつく。
「そんな事、普通に考えたらありえないし、見ず知らずの相手だもの、いきなりそんな事言われたって困るわ」
「……ですよね」
「……でも」
間を置いて、続ける。
「……あなたと会うのは、初めてではない気がするのよ」
「……はい?」
「おーい、星羅に咲夜ー、何してるんだ?」
下層階から上がってきた魔理沙が、通路のど真ん中で話す2人を見て問いかけてきた。
抱える本を見て、星羅が質問返しをする。
「魔理沙。その本は?」
「パチュリーのだぜ。借りてきた」
「……またあなたは面倒な事を」
ドヤ顔の魔理沙に咲夜は呆れるように呟くと、
「折角だわ。星羅、ついて来なさい。パチュリー様の大図書館へ案内するわ」
と、地下へ向かって歩き出した。
戸惑う星羅は、後ろから声をかけられる。
「ほら、行ってこいよ」
「魔理沙」
「私は先に戻ってるぜ。なんかわかったら、お前も戻ってきな。大丈夫だって、パチュリーならなんとかしてくれるさ、行けばわかるぜ」
「……うん」
それは彼女なりの気遣いだろうか。
そんな魔理沙に促され、星羅は咲夜のあとを追った。
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「うー……」
パチュリーは椅子に座り、なんとか気をとり直していた。
レミリアの親友であるパチュリーは、彼女の許可を得て紅魔館地下に大図書館を設置している。
毎日そこに籠もって本を読み漁るため、魔法使いなのだが喘息持ちの虚弱体質、という有様である。
実際の強さは相当のもので、特に属性攻撃に優れるのだが、喘息のせいで詠唱しきれないことがある。体調が良くないとそもそも戦うことも難しい。そのため運動出来ずに図書館に籠もり、余計に運動不足を促進させてしまっている。
今日はどうやら体調が優れないらしい。
小悪魔が持ってきた飲み物を口にしながら、呟く。
「今日は厄日ね……客はやってくるし魔理沙も来るし。何なのよ……しかも人間でしょ? 下手に出ていったら怖がって逃げ帰りそうだからって戻ったら今度はあの泥棒よ。大図書館もろとも結界で覆ってしまおうかしら」
「お客さんを邪険に扱わないでくださいよ。それに咲夜さんならちゃんと対応してくれますって。それに、普通の人間はここに寄り付きませんから」
「……はぁ、分かってるわよ。こあ」
小悪魔……もとい、こあはそんな主人をなだめると、机の本を抱えて仕舞いに向かった。
こあは赤い長髪に司書らしい白黒の服を纏った、パチュリーが自身の使い魔として呼び出した悪魔。
元々“小”悪魔なので対して強くはないが、パチュリーへの忠誠心はかなりのもの。基本は広大な大図書館でパチュリーの雑務全般を任されているが、たまに咲夜をはじめ他の手伝いをする事もある。
ちなみにここにはもうひとり、小悪魔がいる。
「パチュリー様! 咲夜さんですよ」
さっきのこあよりもほんの少し小さく、髪はショートヘアーの小悪魔。
「例の人間さんも一緒です。お話したい事があるって咲夜さん言ってました」
「……はぁ、入れてあげなさい。ここあ」
「はーい」
この子は通称、ここあ。
こあの後に呼び出された双子の妹(自称)で、同じくパチュリーの大図書館で働く司書として暮らしている。
髪の毛以外はほとんどこあと同様であるあたり、やはり双子なのだろうか(自称とパチュリーは受け取っている)。
ここあは図書館の扉を開く。
「失礼します、パチュリー様。こちらは幻島 星羅です」
入ってきたのは、いつになく真剣な表情の咲夜と……
「星羅です! よろしくおねがいします!!」
……その雰囲気をぶっ壊す星羅だった。
「ふうん、なるほど。知らぬ間に幻想入りして、記憶も無くなってて、更には謎の敵に追われてる……ね」
パチュリーは読書用の眼鏡を外し、星羅を見た。
「そうね……星羅。これからいくつか質問するわ。あなたはなるべく正直に答えてくれるかしら」
「……はい、わかりました」
「緊張しなくてもいいわ、ただ答えてくれればいいから。まぁ、目の前の
「えっへん」
「悪魔だぞー」
「こら、こあにここあ」
どうしても固まりがちの星羅に、咲夜がとんと肩をつつく。
「咲夜さん?」
「大丈夫よ、パチュリー様を信じなさい。わからないことだらけだとは思うけど、まずは信じてくれるかしら? 今は私たちも、あなたを信じるから」
「……そうですね、咲夜さんの言う通りです」
「さっきの雰囲気破壊はどこいったのよ」
パチュリーは軽く毒づくと、人差し指をたてて話し始めた。
「それじゃあまずひとつ。あなた、記憶喪失って言っていたけれど、なんでもいいわ、何か一つでも覚えていた事はあった?」
「……名前だけは、何故か頭に浮かんできました。他は最初は何も覚えて無かったんですけど……バスターを起動したら、またいくつか思い出しました」
「ばすたー?」
こあの問いに、星羅は腕時計に手を伸ばし、
「……バスター……オン!」
《Buster-on!!》
一声叫ぶと、慣れた手付きでボタンを押し、ライズバスターを起動した。
弾け飛ぶ腕時計、光り輝く結晶。
時計だったそれは星羅の右腕に纏わり付き、四角柱の銃身と4枚のスタビライザーを構成、最後に銃口が合体して、腕と一体になった銃を顕現させた。
《Rise Buster,ready……》
「これには、自分と、条件はわかってないけど、特定のだれかの記憶からスペルカード……スペルメモリを生成して、それの弾幕を出力する事が出来るんです」
星羅はバスターを構えたりポーズをとりながら答えた。
「……」
パチュリーはしばらく沈黙していたが、
「……な、ななななにそれ!? 魔法? にしては異色過ぎるし……召喚系の技? 星羅……あなた、何したの??」
唐突に出現したライズバスターに、取り乱しているようだ。さっきまでの体調不良はどこへやら、立ち上がって顔を突き出していた。
どうやら知らない事象に驚いたらしい。
「パチュリー様?」
「だいじょーぶですか??」
こあとここあが様変わりした主人に慌てる。
咲夜はそんな3人を横目に、星羅に問う。
「……それが、あなたの武器なのね」
「はい。でもなんでコレを持っているのか、実際の使い方はあるのか、そもそもスペルメモリって何なのかも……覚えてない、というか、わからないんです」
「そう……確かにそれは辛いわね、わからない事だらけで大変じゃないの」
「でも霊夢や魔理沙はそこまで気にするなって。具体的な事がわかるまでは自分を信じろって、言ってくれたんです」
「そうなのね。相変わらず、優しいんだから」
「……こほん、思わず取り乱したわ……ごめんなさい」
パチュリーがようやく落ち着いたらしく、席に腰掛けた。
ズレた帽子を直して、再び問いかける。
「じゃ、2つ目よ。これはかなり大事な質問だから、真面目に答えて。
あなたの持ってる、能力は何?」
「…………!」
その質問に、星羅は絶句した。
急に黙りこくる彼女に、周りは皆「?」と首を傾げた。
質問者のパチュリーも、どうしたの、と星羅を促す。
「星羅? 言えない能力でも抱えているの?」
「……そういえば……わからないです」
その言葉に、今度は皆が黙った。
そう。
星羅は幻想入りしたあの日以来、未だに自身の能力に目覚めていない……と言うよりも、使っていない。
気にした事も、能力を使ってみようと思った事も、今まで無かったのだ。
「記憶がないから、記憶に関連するのかな、とは思うんですが……わからない、知らないんです」
「……」
咲夜は顔をしかめた。
予想はしていたが、手掛かりが少ない。
手助けしたくても……難度が高すぎる。
そもそも彼女は外来人。しかも、自分と同じただの人間。
万事休すか?
そう思った時だった。
「……そう、なるほどね」
パチュリーは何か納得したように頷き、
「他にも質問しようと思ってたけど……星羅、あなたも辛いでしょ? だいたいわかったから、あとは私に任せて」
「……え? わかったって……何が?」
きっぱりと、皆に宣言した。
「……これに当てはまるものを、この大図書館から探すわ」
「……え!? この中から!?!?」
「パチュリー様!?」
星羅と咲夜は、心底耳を疑った。
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「……まさか私まで呼ばれるとは思わなかったけれど、パチェ?」
「どうせレミィのことだから、彼女……星羅を助けるつもりが無いならここにいないでしょう?」
「ふふ、私はただ、あの人間に興味を抱いただけよ」
「だからって私まで呼ばなくても」
「美鈴は黙って作業しなさい」
「ひえー、咲夜さん〜……!」
レミリア、パチュリー、咲夜、美鈴、こあとここあ、そして星羅。
皆はパチュリーの頼みで、星羅の立たされた状況を打開するための知恵……本を、探していた。
あまりにも広すぎるので、レミリアや美鈴も呼ばれているのだ。
「絶対見つけてやる……私の、これからの手掛かりを……!」
星羅は暗示をかけるように、呟いた。
ダンカグでむきゅーと言ってるところをほとんど見た事がないです。レアボイスなんでしょうね(単に出かけさせてないだけ)
次回、美鈴とのほのぼの回(予定)。
この中で、番外編やってほしいのは?
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紅魔館組
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レイマリ
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うどみょん